SGLT2阻害薬の主要7種は、血糖を下げる強さよりも、治療する病気と飲み方に違いがあります。ジャディアンスやフォシーガをすすめられた方も、薬袋に書かれた量と処方の目的を結びつけると、自分にその薬が選ばれた理由が見えてきます。
主要7種として挙がる商品名は、成分で数えると6種類です。血糖や体重への作用は共通していて、心不全や腎臓病に使える範囲は製品ごとに異なります。
この記事では、SGLT2阻害薬の主要7種について、成分・承認された使い道・用量と飲む時刻を比較し、効果や副作用の見方と薬選びの判断材料を解説します。
SGLT2阻害薬の主要7種は6つの成分に分かれる
デベルザとアプルウェイは、同じ成分を含む別の商品名です。まず商品名と成分名を対応させると、7つの名前が7通りの効き方を表すわけではないと分かります。
商品名と成分名の対応
成分名は、薬の作用を担う物質につけられた共通の名前で、一般名とも呼ばれます。薬袋に商品名が書かれていても、お薬手帳では成分名が併記されることがあり、同じ薬を別の名前で見ている場合もあります。
| 商品名 | 成分名(一般名) | 製造販売の会社 |
|---|---|---|
| スーグラ | イプラグリフロジン | アステラス製薬 |
| フォシーガ | ダパグリフロジン | アストラゼネカ |
| ルセフィ | ルセオグリフロジン | 大正製薬 |
| デベルザ | トホグリフロジン | 興和 |
| アプルウェイ | トホグリフロジン | 旧サノフィ・興和への承継合意あり |
| カナグル | カナグリフロジン | 田辺ファーマ |
| ジャディアンス | エンパグリフロジン | 日本ベーリンガーインゲルハイム |
表の現行製品の会社名は、薬の承認内容や飲み方を記した添付文書である各錠剤の電子添文に基づきます。アプルウェイの欄に示したのは、現在の販売状況ではなく販売体制が変わった経緯です。
アプルウェイは販売体制の変更に注意
アプルウェイとデベルザは、どちらもトホグリフロジン20mgの製品として販売されてきました。中外製薬・興和・サノフィの2020年2月の発表では、アプルウェイの販売を興和へ移し、トホグリフロジンの販売を1社にまとめる方針が示されています。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の同成分の検索結果に表示される販売名は、デベルザだけです。「主要7種」は古いお薬手帳や紹介文に残る名前も含めた数え方で、現在は7製品すべてを同じように選べるわけではありません。
薬袋では成分と含有量を一緒に見る
薬の照合に使うのは、商品名に加えて錠剤1つに含まれる成分の量です。たとえば「ジャディアンス10mg」と「ジャディアンス25mg」は同じ成分ですが、1錠に含まれる量が違います。
ダパグリフロジンには後発医薬品もあります。成分名で処方されたときも、商品名が変わっただけなのか、飲む量や治療目的も変わったのかを分けて確かめましょう。
SGLT2阻害薬は承認された使い道が異なる
2型糖尿病には各成分が使われますが、1型糖尿病や慢性心不全、慢性腎臓病への承認は一律ではありません。血糖を下げる薬として同じ仲間でも、処方できる病気の範囲は製品ごとに決まっています。
病名ごとの対象を比較する
承認された使い道を「適応」と呼びます。以下は各製品の電子添文にある適応を整理したもので、慢性心不全は心臓の働きが落ちて息切れやむくみなどを生じる病気、慢性腎臓病は腎臓の異常が続く病気を指します。
| 製品 | 糖尿病への適応 | 心不全・腎臓病への適応 |
|---|---|---|
| スーグラ | 2型・1型 | なし |
| フォシーガ | 2型・1型 | 慢性心不全・慢性腎臓病 |
| ルセフィ | 2型 | なし |
| デベルザ | 2型 | なし |
| アプルウェイ | 旧販売名。現行デベルザは2型 | 現行デベルザにはなし |
| カナグル | 2型 | 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 |
| ジャディアンス | 2型 | 10mg錠に慢性心不全・慢性腎臓病 |
アプルウェイは現行の電子添文を並べた欄ではなく、同成分のデベルザとの関係を示しています。適応が広いかどうかより、自分が治療する病気に合うかが、薬を選ぶ出発点です。
1型糖尿病ではインスリンとの併用が前提
1型糖尿病に承認があるのは、スーグラとフォシーガです。血糖を下げるホルモンであるインスリンの製剤と一緒に使う薬なので、この内服薬を始めてもインスリンは続けます。
ただし、1型糖尿病では追加する利点に加え、血液が酸性に傾くケトアシドーシスの危険も踏まえた判断が必要です。使うかどうかは、承認の有無に加えてインスリン治療の状況も含め、主治医の管理下で決まります。
心不全と腎臓病では追加の条件がある
フォシーガとジャディアンス10mgは、糖尿病がなくても対象となる慢性心不全や慢性腎臓病に使われます。カナグルの腎臓病への適応には、2型糖尿病を合併しているという条件があります。
慢性心不全では標準的な治療を受けていることが条件で、これらの薬はその治療に加えて使います。慢性腎臓病の適応では、腎臓の機能が著しく失われた末期腎不全や透析中の患者さんが除かれます。
心臓病や腎臓病もなく、体重を減らす目的だけで服用を希望する方は、まず内科で体重増加の背景と治療対象となる病気の有無を相談しましょう。
血糖と体重への効果は薬名だけで順位がつかない
血糖と体重への作用は、SGLT2阻害薬に共通しています。薬を替えれば大きく改善するという見込みより、飲み始める前の血糖や腎臓の働き、併用薬を含めて評価するほうが、自分の変化を捉えやすくなります。
血糖を下げる力の差は小さい
2型糖尿病の人を対象に複数の試験をつないで比べた解析では、SGLT2阻害薬どうしの血糖を下げる力の差は小さく、体重への効果も同程度とする結果が示されています1)2)。異なる成分を、表示されたmgの数字の大きさだけで比較することはできません。
血糖の経過を見る代表的な検査が、過去1〜2か月ほどの平均的な血糖を反映するHbA1cです。開始前の値が高い人と目標に近い人では下がる余地が違うため、友人や家族の変化はそのまま自分の目安になりません。
この比較には参加者や用量が違う試験の組み合わせも含まれるので、日本での薬選びでは、国内で使われる量と自分の病状をもとに考えます。
日本人の試験でも血糖と体重は低下
日本の2型糖尿病の人が24週間単独で服用した試験では、ルセフィ、デベルザ、カナグルのそれぞれで血糖と体重の低下が報告されています3)4)5)。
これらの結果は、日本の患者さんにも作用が認められるという判断を支えます。それぞれ別々の試験で得られた結果なので、自分の薬の評価では、製品どうしの下がり方よりも開始前からの検査値と生活上の変化を重視しましょう。
腎臓の働きと開始前の値で反応が変わる
SGLT2阻害薬は、腎臓で尿から血液へ糖を戻す働きを抑え、尿に出る糖を増やす薬です。血液中の糖が尿へ出ることで血糖が下がり、糖に含まれるエネルギーも失われるため、体重の低下につながります。
腎臓の働きが低下すると、尿を作る過程でこし出される糖が少なくなり、血糖を下げる作用も弱まります。血糖の変化が小さいときには、製品差だけでなく腎機能や服用状況もあわせて見ます。
また、体重の数字は体内の水分量にも左右されます。体重が大きく減るほど薬が合っているとは判断せず、血糖の目標に近づいているか、食事や活動に支障が出ていないかを合わせて評価します。
心臓と腎臓への効果は病状の違いを踏まえて判断する
心臓や腎臓を守る効果は、研究結果の減少率を並べただけでは比べられません。比較の前提になるのは、参加した人がどの病気を持ち、何が起こるのを減らそうとした試験なのかという違いです。
発症を防ぐ対象と病気のある対象を分ける
心臓や血管の病気をすでに持つ人を中心に調べた試験と、危険因子を持つ人まで含めた試験では、もともとの病状が違います。同じ薬の仲間でも、参加者の背景が違えば、治療中に起こる入院や病気の悪化の数も変わります。
SGLT2阻害薬の心臓・腎臓に関する利点をまとめた解析では、効果の大きさは治療前の危険の高さに左右され、試験間の数字の差にも参加者の違いが関わるとされています6)7)。自分に当てはめるときの焦点は、試験の名前よりも、その対象が自分の病状に近いかどうかです。
入院と腎機能の悪化は別の評価項目
「心臓によい」という表現には、心不全による入院を減らす結果も、心臓や血管の病気による死亡を減らす結果も含まれます。何を減らした結果なのかを区別すると、心筋梗塞や脳卒中にも同じように作用するという思い込みを防げます。
腎臓についても、検査値の悪化と透析が必要になる段階への進行は、同じ出来事ではありません。複数の出来事をまとめて評価した数字を読むときは、そのうちの1つだけが同じ割合で減るとは限らないので、何を数えた数字かまで確かめましょう。
血糖の下がり方と処方目的を切り分ける
腎臓病を理由に処方されているときは、HbA1cの変化に加えて、腎臓の検査でも治療の価値を判断します。血糖を下げる作用と、腎臓病の進行を抑える目的では、効果を見る検査や経過が違うためです。
たとえば、血糖が目標内でも腎臓病の治療として薬が続くことがあります。
処方理由が腎臓病なら、腎臓のろ過する働きを表すeGFRや、尿に漏れるたんぱくの量も治療経過を評価する対象です。
ジャディアンスとフォシーガは適応と用量に違い
両剤には2型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病という共通の適応があります。具体的な違いは、1型糖尿病への承認、糖尿病での開始量、飲む時刻の指定です。
2剤の処方内容を並べる
ジャディアンス錠とフォシーガ錠の電子添文では、成人の用量と飲み方は次のように定められています。糖尿病の量と心不全・腎臓病の量を分けると、同じ薬でも錠剤の量が違う理由が読み取れます。
| 比較する項目 | ジャディアンス | フォシーガ |
|---|---|---|
| 2型糖尿病の通常量 | 1日10mg | 1日5mg |
| 2型糖尿病で効果不十分な場合 | 1日25mgまで増量可能 | 1日10mgに増量可能 |
| 1型糖尿病 | 適応なし | インスリン併用で1日5mg、効果不十分なら10mg |
| 慢性心不全・慢性腎臓病 | 1日10mg | 1日10mg |
| 回数と時刻 | 1日1回、朝食前または朝食後 | 1日1回、食事との前後の指定なし |
増量は、血糖の経過や体調を見ながら主治医が判断します。表の最大量を目指して自分で錠数を増やす使い方は避けてください。
25mgが心臓や腎臓により効くとはいえない
ジャディアンス25mgは、2型糖尿病で効果が不十分なときの増量に用いる量です。慢性心不全・慢性腎臓病の用量は10mgで、25mgへ増やすことがこれらの病気の標準的な使い方というわけではありません。
フォシーガも、糖尿病の通常量は5mg、心不全や腎臓病では10mgです。同じ10mgでも別成分の薬どうしで強さが等しいという意味はなく、数値はその成分の量を示しています。
2剤の選択は処方目的と生活に合わせる
糖尿病に心不全や腎臓病を合併しているなら、両剤が選択肢になり得ます。適応の重なる患者さんで検討するのは、腎機能やほかの薬に加えて、服用を生活に組み込みやすいかという点です。
処方された理由は、薬名の知名度や錠剤の数字より、治療する病気から読み取れます。すでに服用している場合は、目標とする検査値や体調が保たれているかをもとに、継続や変更が判断されます。
SGLT2阻害薬は1日1回でも量と時刻が異なる
7つの商品名に対応する成分はいずれも1日1回の服用ですが、通常量や増量できる範囲は共通ではありません。フォシーガ以外の現行製品は、朝食前または朝食後という指定があります。
成人の2型糖尿病で使う量の一覧
次の表は、各製品の錠剤の電子添文に記された成人の用法・用量です。病気ごとの用量と混同しないよう、2型糖尿病の処方に絞って示します。
| 製品 | 通常の1日量/増量の範囲 | 飲む時刻 |
|---|---|---|
| スーグラ | 50mg/100mgまで | 朝食前または朝食後 |
| フォシーガ | 5mg/10mgへ | 食事との前後の指定なし |
| ルセフィ | 2.5mg/5mgへ | 朝食前または朝食後 |
| デベルザ | 20mg/増量の規定なし | 朝食前または朝食後 |
| アプルウェイ | 旧販売名。現行デベルザは20mg | 現行デベルザは朝食前または朝食後 |
| カナグル | 100mg/増量の規定なし | 朝食前または朝食後 |
| ジャディアンス | 10mg/25mgまで | 朝食前または朝食後 |
増量の範囲を示した製品も、通常量で効果が不十分な場合に、経過を観察しながら増やすという条件つきです。カナグルの100mgとルセフィの2.5mgのような数字の開きは、成分ごとに定められた用量の違いを示しています。
錠剤の規格と1日に飲む量を区別する
「1錠の量」と「1日の量」は分けて読みます。照合する項目は、薬の名前・1錠の含有量・1回の錠数・服用回数。規格の違う錠剤へ変更されたときは、以前と同じ錠数でも成分の総量が変わり得ます。
たとえば、受診後に自宅で薬袋を見て、以前と錠剤の量や錠数が違うと気づいたら、飲む前に薬局へ処方内容を確かめましょう。変更の意図が分かれば、古い薬を足して飲むといった重複を避けやすくなります。
年齢や剤形の違いも処方に関わる
ルセフィ錠の電子添文では、2型糖尿病に対して成人に加え10歳以上の小児の用量も定められています。この年齢条件はルセフィの記載で、ほかの成分には一律に当てはまりません。
同じ成分でも錠剤以外の剤形や口の中で崩れる製品があり、飲み込みやすさも処方を続ける際の判断材料になります。DPP-4阻害薬という別の血糖を下げる薬と組み合わせた配合剤もあります。
副作用の共通点を踏まえて自分に合う薬を選ぶ
副作用は製品名だけで分けるより、SGLT2阻害薬に共通する作用と、年齢や併用薬による違いで捉えると整理できます。薬選びでは、期待する効果を得られる条件と、体調を崩しやすい条件の両方を見ます。
共通して注意する体調の変化
尿に糖を出す作用を持つため、性器の感染や体内の水分不足などは、いずれの成分でも注意する点です。別の製品へ替えても同じ作用はあるので、いつから何が起きたかを処方元へ伝えましょう。
- 性器の感染 … 陰部のかゆみや赤みなど
- 脱水 … 体内の水分が不足する状態
- 低血糖 … 血糖が下がりすぎる状態。併用薬によって危険が変化
症状があるときは、薬の優劣を調べ続けるより、症状に応じた対応が優先です。
症状が出たときは急ぎ具合を分ける
軽い陰部のかゆみや赤みが出たときは、当日中に処方元へ連絡してください。吐き気や腹痛に息苦しさが重なる、意識がぼんやりするなどの症状では、直ちに受診が必要です。
副作用が気になると、今の薬を続けてよいか不安になりますね。連絡時には薬名と服用量、症状が始まった時刻を伝えると、中止や変更が必要かを判断する情報になります。
併用薬と体調で注意点が変わる
尿を増やす利尿薬を併用している人や、水分を十分に取れない高齢の人では、脱水に一層気をつけます。インスリンなど血糖を下げる薬を一緒に使う人では、低血糖の危険も踏まえて用量が調整されます。
発熱や嘔吐で食事・水分を十分に取れない日は、SGLT2阻害薬の服用をいったん見合わせ、当日中に処方元へ連絡してください。再開の時期は、食事や水分が取れる状態と病状を踏まえて判断されます。
選択を左右する4つの確認点
自分に合う薬は、治療する病気と生活条件の組み合わせで選ばれます。比較の軸を持つと、同じ2型糖尿病でも処方が違う理由を整理しやすくなります。
- 治療の目的 … 血糖の改善、心不全や腎臓病の治療
- 腎臓の働き … 現在の検査値とこれまでの変化
- 併用薬と体調 … 低血糖や水分不足に関わる条件
- 続けやすさ … 飲む時刻や剤形、服用の負担
この中でも最初に照合するのは、治療目的が薬の適応に合うかです。体調が安定している方は、次の受診で「何を改善する目的でこの薬を飲んでいるか」を主治医と確かめましょう。
よくある質問
- Qデベルザとアプルウェイは違う成分ですか?
- A
同じトホグリフロジンを含む商品です。販売体制の変更があるため、以前のアプルウェイという名前と、現行のデベルザという名前を区別して読みましょう。
- Qジャディアンスからフォシーガへ替えると、もっと血糖が下がりますか?
- A
血糖の下がり方には開始前の値や腎機能、用量などが関係し、薬を替えただけでさらに下がるとは限りません。
血糖が目標より高いなら、服用できた日や体調の変化を受診時に伝え、増量や変更が必要かを主治医と相談しましょう。
- Qフォシーガ10mgは5mgより心臓や腎臓の病気が重いという意味ですか?
- A
10mgという量だけで病気の重さは判断できず、慢性心不全・慢性腎臓病では通常の用量です。
糖尿病だけを目的とする処方では、5mgから効果を見て10mgへ増量する使い方があります。薬袋だけで処方理由が分からなければ、次の受診時に治療目的を確かめましょう。
- Q血糖がよくなったらSGLT2阻害薬をやめてもよいですか?
- A
血糖がよくなったという理由だけで、自分で中止するのは避けてください。服用中の効果で値が保たれていたり、心不全や腎臓病の治療目的があったりします。
継続は、検査値の推移と処方理由をもとに判断します。体調が安定していれば処方どおり続け、次の受診で減量や中止を希望する理由を伝えましょう。


