最近、皮膚が薄くなったように感じたり、些細なことで内出血やあざができやすくなったりしていませんか?

これらの症状は単なる加齢現象だけでなく、生活習慣や何らかの病気が隠れているサインかもしれません。

この記事では、皮膚が薄くなる、内出血やあざが増えるといった症状の原因や、内分泌内科でどのような対応ができるのかを解説します。

ご自身の状態を理解し、適切な対処法を見つけるための一助となれば幸いです。

「ちょっとした刺激であざができやすい」「皮膚が薄くなって血管が透けて見える」こんな症状は単なる加齢や体質だけでなく、クッシング症候群や長期間のステロイド使用による皮膚菲薄化が原因となっている可能性があります。

放置すると皮膚の治癒力低下や感染リスクの増加、さらには骨密度低下などの全身への影響も心配されます。皮膚の薄さや内出血の増加でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。詳しくはこちら

この記事を書いた人

神戸きしだクリニック院長 岸田雄治
岸田 雄治
神戸きしだクリニック院長

医学博士
日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
日本核医学会認定 核医学専門医
【略歴】
神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。神戸大学附属病院 放射線科 助教。甲南医療センター放射線科医長を経て神戸きしだクリニックを開業(2020年6月1日)

皮膚が薄くなる・内出血・あざが増える主な原因

皮膚が薄くなったり、内出血やあざができやすくなったりする背景には、さまざまな要因が考えられます。皮膚の構造や機能の変化、そして内外からの影響が複雑に関わっています。

皮膚の構造と菲薄化(ひはくか)

私たちの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています。

特に真皮層はコラーゲンやエラスチンといった線維成分が豊富で、皮膚の厚みや弾力性を保つ重要な役割を担います。これらの成分が減少したり変性したりすると、皮膚が薄く、弱くなってしまいます。

この状態を皮膚の菲薄化(ひはくか)といいます。

皮膚の主要な層とその役割

皮膚の層主な構成要素主な役割
表皮角化細胞、メラノサイト外的刺激からの保護、保湿
真皮コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、血管皮膚の弾力・ハリの維持、栄養供給
皮下組織脂肪細胞、血管衝撃吸収、保温、エネルギー貯蔵

内出血やあざができやすいメカニズム

内出血やあざ(紫斑)は、皮膚の下にある血管が何らかの原因で破れ、血液が皮下組織に漏れ出すことで生じます。

皮膚が薄くなると血管を保護する力が弱まり、わずかな衝撃でも血管が損傷しやすくなります。

また、血管自体がもろくなっていたり、血液を固める機能が低下していたりする場合も内出血やあざができやすくなります。

外的要因と内的要因

皮膚の菲薄化や血管の脆弱化には、紫外線や物理的な摩擦といった外的要因と、加齢、栄養状態、ホルモンバランスの乱れ、基礎疾患といった内的要因が関与します。

これらの要因が複合的に作用することで、症状が現れると考えられます。

加齢による皮膚の変化は避けられないこと?

年齢を重ねるとともに皮膚に変化が現れるのは自然なことです。しかし、その程度や進行速度には個人差があり、適切なケアによって影響を遅らせることも期待できます。

コラーゲン・エラスチンの減少

真皮の主成分であるコラーゲンやエラスチンは、加齢とともに産生量が減少し質も低下します。これにより、皮膚は弾力性を失い、薄く、たるみやすくなります。

特に閉経後の女性は、女性ホルモンの減少がコラーゲン減少を加速させることが知られています。

皮下脂肪の減少と影響

皮下脂肪は、皮膚のクッションとしての役割やハリを保つ上で重要です。

加齢により皮下脂肪が減少すると皮膚が薄く見えるだけでなく、衝撃に対する緩衝作用も低下し、内出血が起こりやすくなることがあります。

加齢による皮膚の主な変化

変化する要素具体的な変化皮膚への影響
表皮ターンオーバーの遅延、細胞間脂質の減少乾燥、バリア機能低下
真皮コラーゲン・エラスチンの減少・変性菲薄化、弾力低下、シワ、たるみ
血管血管壁の脆弱化内出血・あざができやすくなる

血管壁の脆弱化

加齢は血管壁にも影響を与え、弾力性が失われもろくなることがあります。

血管がもろくなるとわずかな圧力や打撲でも破れやすくなり、内出血やあざの原因となります。

生活習慣と皮膚トラブル:見直すべきポイント

日々の生活習慣も皮膚の状態に大きく影響します。見直せる点がないか確認してみましょう。

栄養バランスの偏りと皮膚

健康な皮膚を維持するためには、バランスの取れた食事が重要です。

特にタンパク質(コラーゲンの材料)、ビタミンC(コラーゲン生成を助ける)、ビタミンA(皮膚のターンオーバーを整える)、亜鉛(皮膚細胞の再生を促す)などが不足すると、皮膚が薄くなったり傷つきやすくなったりすることがあります。

紫外線の影響と対策

長年にわたる紫外線の曝露は、皮膚の老化(光老化)を促進する最大の外的要因です。紫外線は真皮のコラーゲンやエラスチンを破壊し、皮膚の菲薄化、シワ、シミの原因となります。

日頃からの紫外線対策は、皮膚の健康を守る上で非常に大切です。

紫外線の主な皮膚への影響

  • コラーゲン・エラスチンの分解促進
  • メラニン色素の増加(シミ)
  • DNA損傷による皮膚がんリスク増加

誤ったスキンケア

ゴシゴシと強く洗顔したり、洗浄力の強すぎるクレンジング剤を頻繁に使用したりすると、皮膚のバリア機能が損なわれ、乾燥や刺激に弱い状態になります。

保湿ケアが不十分な場合も同様です。適切なスキンケアを心がけることが、皮膚の健康を保つために必要です。

喫煙・過度な飲酒の影響

喫煙は血管を収縮させ、皮膚への血流を悪化させます。

これにより、皮膚細胞への酸素や栄養の供給が滞り、コラーゲンの生成も阻害されます。また、活性酸素を増やし、皮膚の老化を早めます。

過度な飲酒も、脱水や栄養バランスの乱れを通じて皮膚に悪影響を及ぼす可能性があります。

もしかして病気のサイン?内分泌疾患と皮膚症状

皮膚の菲薄化やあざは、内分泌系の病気が原因で起こることもあります。

内分泌疾患はホルモンの異常によって全身にさまざまな影響を及ぼし、皮膚症状はそのサインの一つとして現れることがあります。

クッシング症候群と皮膚

クッシング症候群は、副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰になる病気です。

コルチゾールにはタンパク質の分解を促進する作用があるため、皮膚のコラーゲンが減少し、皮膚が薄く弱くなります。

その結果、些細なことであざができやすくなったり(皮下出血)、皮膚に赤い筋(皮膚線条)が現れたりします。

満月様顔貌や中心性肥満なども特徴的な症状です。

甲状腺機能異常と皮膚

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節する重要なホルモンです。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、皮膚が薄く、温かく、湿った感じになることがあります。

逆に、甲状腺機能低下症(橋本病など)では、皮膚が乾燥し、冷たく、むくんだようになることがあります。

これらの変化が、皮膚の脆弱性につながることも考えられます。

内分泌疾患と関連する皮膚症状の例

疾患名代表的な皮膚症状その他の特徴的な症状
クッシング症候群皮膚菲薄化、皮下出血(あざ)、皮膚線条中心性肥満、満月様顔貌、高血圧、糖尿病
甲状腺機能亢進症皮膚が薄く湿潤、発汗過多、かゆみ動悸、体重減少、眼球突出(バセドウ病)
甲状腺機能低下症皮膚乾燥、蒼白、むくみ、脱毛倦怠感、体重増加、便秘、徐脈

糖尿病と皮膚合併症

糖尿病は、血糖値が高い状態が続く病気で、血管や神経に障害を引き起こします。

このことにより、皮膚の血行が悪くなったり、感覚が鈍くなったりすることで、感染症にかかりやすくなったり傷が治りにくくなったりします。

また、皮膚の乾燥やかゆみ、特定の色素沈着なども見られることがあります。

直接的な皮膚の菲薄化とは異なりますが、皮膚の健康全般に影響します。

その他の内分泌疾患の可能性

上記以外にも、下垂体機能低下症や副腎機能低下症(アジソン病)など、他の内分泌疾患でも皮膚に変化が現れることがあります。

気になる症状がある場合は、専門医に相談することが大切です。

皮膚症状から考えるセルフチェックと受診の目安

皮膚の変化は、時に体からの重要なメッセージです。

ご自身の状態を客観的に把握し、適切なタイミングで医療機関を受診するためにいくつかのポイントを確認してみましょう。

こんな症状は要注意リスト

以下の項目に複数当てはまる場合や、症状が急に現れたり悪化したりする場合は、一度専門医に相談することを推奨します。

セルフチェックポイント

チェック項目はいいいえ
以前より皮膚が薄くなったと感じる
軽くぶつけただけで内出血やあざができる
あざの範囲が広い、または数が多い
あざがなかなか消えない
皮膚以外にも気になる症状がある(体重変化、倦怠感など)
特定の薬を飲み始めてから症状が出た

このチェックリストはあくまで目安です。自己判断せず、不安な場合は医療機関を受診してください。

他の症状との関連性

皮膚の症状だけでなく、体重の急激な変化、異常な喉の渇き、全身の倦怠感、気分の落ち込み、動悸、むくみなど、他に気になる症状はありませんか?

これらの症状は、内分泌疾患の可能性を示唆する手がかりとなることがあります。皮膚症状と合わせて医師に伝えることが重要です。

記録のススメ:症状日記

いつから症状が気になるようになったか、どのような時に悪化するか、他にどんな症状があるかなどを記録しておくと診察の際に役立ちます。写真で記録するのも良い方法です。

記録しておくと良いこと

  • 症状が出始めた時期
  • 症状の変化(良くなった、悪くなった、変わらない)
  • あざの大きさ、色、数、場所
  • 他に気になる体の変化
  • 食事内容や生活習慣の変化

専門医への相談タイミング

症状が軽微であっても、原因が分からず不安な場合や生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

特に、内出血やあざが多発する場合、原因によっては迅速な対応が必要なこともあります。皮膚科または内分泌内科の受診を検討してください。

内分泌内科でできる検査と治療法

内分泌内科では、ホルモンの異常が疑われる場合に、専門的な検査を行い、原因に応じた治療を提案します。

問診と視診・触診

まず、患者さんの症状や既往歴、家族歴、生活習慣などを詳しく伺います。

その後、皮膚の状態(菲薄化の程度、あざの色や形、分布など)を丁寧に観察し、必要に応じて触診を行います。他の身体所見(むくみ、甲状腺の腫れなど)も確認します。

血液検査でわかること

血液検査は、内分泌疾患の診断において非常に重要な情報源です。

各種ホルモン値(副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンなど)や、血糖値、電解質バランスなどを測定し、ホルモン分泌の異常や関連する代謝異常の有無を調べます。

内分泌内科で行う主な血液検査項目(例)

検査項目調べる内容関連する可能性のある疾患
コルチゾール副腎皮質ホルモンの分泌状態クッシング症候群、副腎機能低下症
TSH, FT3, FT4甲状腺ホルモンの分泌状態甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
血糖値, HbA1c糖代謝の状態糖尿病

画像検査の必要性

ホルモン産生臓器(副腎、甲状腺、下垂体など)に腫瘍や形態異常が疑われる場合には、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などの画像検査を行うことがあります。

これらの検査により、病変の正確な位置や大きさを把握します。

原因に応じた治療

検査結果に基づき診断が確定したら、その原因疾患に対する治療を開始します。

例えば、クッシング症候群であれば原因(下垂体腫瘍、副腎腫瘍など)に応じた手術や薬物療法、放射線治療などを行います。

甲状腺機能異常であれば、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン補充療法、アイソトープ治療、手術などを検討します。生活習慣の改善や栄養指導も重要な治療の一部です。

日常生活でできる予防とセルフケア

皮膚を健やかに保ち、内出血やあざを予防するためには、日々の生活習慣やスキンケアが大切です。

皮膚を保護するスキンケア

皮膚の乾燥はバリア機能の低下を招き、外部からの刺激に弱くなります。保湿剤をこまめに使用し、皮膚の潤いを保ちましょう。

洗顔や入浴の際は、ゴシゴシこすらず優しく洗い、熱すぎるお湯は避けます。紫外線対策も年間を通じて行うことが重要です。

皮膚保護のためのスキンケア成分例

成分名期待される効果使用上のポイント
セラミド保湿、バリア機能サポート乾燥が気になる部分に重ね付け
ヒアルロン酸高い保水力化粧水や美容液で補給
ビタミンC誘導体コラーゲン生成サポート、抗酸化作用朝晩のケアに取り入れる

バランスの取れた食事

皮膚の材料となるタンパク質、コラーゲンの生成を助けるビタミンC、皮膚の新陳代謝を促すビタミンAや亜鉛などをバランス良く摂取することが大切です。

特定の食品に偏らず、多様な食材から栄養を摂ることを心がけましょう。

皮膚の健康維持に役立つ栄養素

  • タンパク質(肉、魚、大豆製品、卵)
  • ビタミンC(果物、野菜)
  • ビタミンA(緑黄色野菜、レバー)
  • 亜鉛(牡蠣、肉類、ナッツ類)

物理的な刺激を避ける工夫

家具の角に体をぶつけないように注意したり、きつすぎる衣服やアクセサリーを避けたりするなど、日常生活での物理的な刺激を減らす工夫も有効です。

就寝時や作業時には、肌触りの良い素材の衣類を選ぶと良いでしょう。

物理的刺激を避ける工夫の例

場面具体的な工夫ポイント
室内移動時通路を広く確保、角にクッション材つまずきや衝突を予防
衣類選択柔らかい素材、ゆとりのあるデザイン摩擦や圧迫を軽減
作業時必要に応じて手袋やサポーター着用直接的な衝撃から保護

適度な運動と血行促進

適度な運動は血行を促進し、皮膚細胞への栄養供給をスムーズにします。また、ストレス解消にもつながり、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。

ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で続けられる運動を取り入れましょう。

よくある質問

皮膚の菲薄化や内出血、あざに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
皮膚科と内分泌内科、どちらを受診すべきですか?
A

皮膚の症状が主で、明らかな内科的症状がない場合は、まず皮膚科を受診して相談するのが一般的です。

皮膚科医が内分泌疾患の可能性を考えた場合や、ご自身でホルモンバランスの乱れなどを疑う場合は、内分泌内科の受診を検討するとよいでしょう。

どちらを受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医に相談するのも一つの方法です。

Q
症状は改善しますか?期間はどれくらいかかりますか?
A

原因によって異なります。加齢や体質によるものであれば、進行を遅らせたり、症状を和らげたりすることが目標になります。

内分泌疾患が原因の場合は、その病気の治療を行うことで皮膚症状の改善が期待できます。

治療期間も原因や重症度、治療への反応によって個人差がありますので、担当医とよく相談してください。

症状改善に関する一般的な考え方

原因改善の見込みアプローチ
加齢・体質進行抑制・症状緩和スキンケア、生活習慣改善
内分泌疾患原因疾患の治療により改善期待ホルモン療法、薬物療法、手術等
薬剤性原因薬剤の中止・変更で改善期待医師と相談の上で調整
Q
薬の副作用で皮膚が薄くなることはありますか?
A

はい、あります。特にステロイド薬の長期内服や強力なステロイド外用薬の不適切な長期使用は、皮膚の菲薄化や毛細血管拡張、皮下出血などを引き起こす可能性があります。

ステロイド薬は多くの疾患治療に重要な薬剤ですが、医師の指示通りに正しく使用することが大切です。気になる場合は自己判断で中止せず、必ず処方医に相談してください。

Q
サプリメントは効果がありますか?
A

皮膚の健康維持に役立つとされるビタミンやミネラルなどのサプリメントはありますが、効果には個人差があり、特定の病気を治療するものではありません。

基本はバランスの取れた食事から栄養を摂取することです。サプリメントを利用する場合は、過剰摂取に注意し、医師や薬剤師に相談の上で適切に活用しましょう。

特に内服治療中の方は、薬との飲み合わせにも注意が必要です。

当院(神戸きしだクリニック)への受診について

神戸きしだクリニックの内分泌内科では、皮膚の菲薄化や内出血傾向に関わるホルモンバランスの異常について専門的な診察を行っております。

皮膚が薄くなる、あざができやすい、傷が治りにくいといった症状は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌や長期ステロイド治療の影響が背景にある可能性があります。

皮膚の変化や内出血の増加にお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

内分泌内科

診療時間日祝
9:00 – 12:00
隔週
13:30 – 16:30
09:00~12:0013:30~16:30

隔週

検査体制

  • 副腎皮質ホルモン検査(コルチゾールなど)
  • ACTH測定
  • デキサメタゾン抑制試験
  • 血液検査(血小板・凝固機能など)
  • 血管脆弱性検査
  • 骨密度検査(必要に応じて)

など、症状に応じた適切な検査を実施いたします。専門的な精査や詳細検査が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院など高度医療機関と連携して対応いたします。

予約・受診方法

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