SU薬で低血糖が起こる主な原因は、食事から入る糖が少ないときにも、薬がインスリンを出させる働きを続けるためです。朝の薬を飲んだあと昼食が遅れ、ふらつきや冷や汗が出てきたら、空腹のせいと片づけずに低血糖を疑いましょう。
防ぐ基本は、処方された服用時刻を食事の予定にそろえ、食事を抜く日や遅れる日の対応を前もって主治医と決めておくことです。運動や飲酒、新しく加わった薬も、低血糖を起こしやすくする条件になります。
この記事では、SU薬で低血糖が起きる理由と、服用時刻や食事・運動での備え、飲み合わせの注意点、受診を急ぐ目安を解説します。
SU薬で低血糖が起きる原因はインスリンの働きにある
SU薬は、血糖が下がったときにもインスリンを出す働きが残るため、必要以上に血糖を下げるおそれがあります。飲み薬だけの治療でも、重い低血糖への備えが必要です。
食事から入る糖と薬の働きが釣り合わなくなる
SU薬はスルホニル尿素薬の略で、胃の後ろにある臓器の膵臓に働きかけ、血液中の糖を細胞へ取り込ませるホルモン、インスリンを出させる薬です。食事で上がった血糖を下げる一方、食べていない時間にも作用が続き、糖の供給が追いつかなくなると低血糖を起こします。
起きやすさは薬の名前だけで決まらず、処方量とその日の食事や活動の組み合わせで変わります。普段と同じ錠数でも注意したいのは、次のような変化です。
- 食事の不足 … 食べる量の減少や食事時刻の遅れ
- 活動量の増加 … 普段より長い歩行や激しい運動
- 飲酒 … とくに食事をとらずに飲む状況
- 飲み合わせの変化 … 血糖を下げる作用を強める薬の追加
複数の変化が重なる日は、普段の服用量でも低血糖が起こりやすくなります。
飲み薬でも重い低血糖は起こりうる
日本の全国調査では、治療に関連した重い低血糖を起こした2型糖尿病の人のうち、33.1%がインスリンを使わずSU薬を服用していました1)。これは重い低血糖を起こした人の側から治療内容を数えた割合で、服用中の人の約3分の1に起こる頻度とは別の数字です。
同じSU薬でも種類や量で起こりやすさが変わるため、自分の危険度は、今の処方と生活の状況を合わせて考えます。過去に起きた低血糖や、食事が不規則になる予定も含めて、自分の生活に合う飲み方を主治医と相談しましょう。
空腹感や冷や汗は我慢せずに受け止める
強い空腹感、冷や汗、手のふるえ、動悸は低血糖の初期のサインで、ふらつきを伴うときも低血糖の可能性を考えます。
SU薬の服用中に低血糖が疑われ、意識がはっきりして安全に飲み込めるなら、ブドウ糖などの糖分をとってください。食後の糖の吸収を遅らせるα-グルコシダーゼ阻害薬を併用している場合は、砂糖ではなくブドウ糖を使います。
低血糖が怖くて薬を飲むのをためらう気持ちは自然ですが、起きた場面を伝えて飲み方を調整する方法もあります。処方の調整は症状が出た状況をもとに主治医が判断するので、低血糖を繰り返すときは次の定期受診を待たずに連絡してください。
食間や夜間は症状がなくても血糖が下がることがある
食事の間隔が長くなると、糖が入ってこない時間と薬が働く時間が重なります。睡眠中は体調の変化にも気づきにくいため、日中の状態とは分けて、夜間の経過にも目を向けます。
昼食前や朝食前は空腹の長さが関係する
朝食から昼食までの間隔が延びたり、夕食を少なく済ませて翌朝を迎えたりすると、薬の働きに対して食事から入る糖が不足しやすくなります。服薬から時間がたった後の不調にも、薬の作用が関係している可能性があります。
たとえば、朝食後に薬を飲んで買い物へ出かけ、昼食が遅れた店内で冷や汗が出たなら、買い物や歩行をいったん中断します。普段教わっている低血糖時の対応を行い、落ち着いた後に朝食と服薬の時刻、昼食が遅れた状況を記録すると、次の診察で生活との関係を伝えやすくなります。
夜間の低血糖に本人が気づかない場合もある
SU薬を服用し血糖管理が良好だった2型糖尿病の30人を48時間調べた研究でも、夜間や本人が気づかない低血糖が確認されています2)。睡眠中の自覚が乏しい場合には、食事や活動が普段と違ったかも判断の材料になります。
夜に食べる量が減った日や夕方に長く体を動かした日には、日中と同じ感覚で安全と決めつけず、夜間の低血糖も考えに入れます。夜間の不調が続くときは、夕食や活動の状況も含め、主治医へ伝えましょう。
いつもの検査値と日々の血糖変動は分けて捉える
HbA1cは、一定期間の血糖の状態を平均的に反映する検査値で、特定の日の食前や夜間にどこまで下がったかを直接示す値ではありません。結果が目標範囲に入っていても、繰り返す空腹時の不調を検査値だけで打ち消さずに受け止めます。
また、低血糖は必ず強い冷や汗を伴うとは限らず、気づきにくいまま進むこともあります。高齢の人は低血糖を起こしやすいので、症状の有無だけに頼らず、食事や服薬の変化も家族と共有しましょう。
SU薬の服用時刻は処方された食前・食後にそろえる
食前と食後のどちらにも用法があるSU薬でも、毎日の服用は処方された時刻と回数にそろえるのが基本です。「食前でも食後でもよい」という薬全体の説明と、自分に指示された飲み方を分けて受け止めます。
アマリール・グリミクロン・オイグルコンの服用時刻
アマリール錠、グリミクロン錠、オイグルコン錠の電子添文(承認された使い方や注意点を記した添付文書)では、朝または朝夕の食前・食後に飲む用法が示されています。次の表は用法上の回数と時刻を示したもので、個別の処方を変えるためのものではありません。
| 薬の名前 | 飲む回数 | 飲むタイミング |
|---|---|---|
| アマリール(グリメピリド) | 1日1〜2回 | 朝または朝夕、食前または食後 |
| グリミクロン(グリクラジド) | 1日1〜2回 | 朝または朝夕、食前または食後 |
| オイグルコン(グリベンクラミド) | 原則1日1回または2回 | 1回なら朝、2回なら朝夕それぞれ食前または食後 |
薬袋の「朝食後」などの指示を毎日の基準にし、回数や錠数は主治医の指示に従います。別の販売名や成分名で受け取っているときも、見た目が似ている薬の飲み方を当てはめず、薬袋に書かれた用法を優先するのが原則です。
時刻をそろえると食事とのずれを把握しやすい
服薬と食事の時刻を日ごとに変えると、不調が起きたときに何が変わったのかを把握しにくくなります。決められた飲み方を続けていれば、昼食が遅れた日や朝食が少なかった日など、普段との違いを振り返りやすくなります。
ただし、時計の時刻だけを守り、食事がとれないのに普段どおり飲むのは危険です。予定した食事がとれるかどうかも、服用時刻と合わせて判断する条件になります。
起床や勤務の時刻が変わり食事をそろえにくい生活なら、実際の食事時刻を示して、続けられる飲み方を主治医と相談しましょう。
飲み忘れを取り戻すためにまとめて飲まない
服用が遅れた分を追加してまとめて飲むと、処方量を超えて血糖を下げるおそれがあります。飲んだか曖昧なときも、念のためもう1回飲むのは控えましょう。
薬を取り出した後に飲み忘れたり、家族が用意した分と自分が出した分が重なったりする混乱には、服用後の記録が役立ちます。飲み忘れに気づいた時刻による扱いは処方時の指示に従います。指示が分からないときは、薬局か処方元へ問い合わせます。
食事を抜く日・遅れる日は服用前の備えが必要
予定が分かっている欠食や食事の遅れには、薬の扱いを事前に決めておく備えが役立ちます。食べる予定で飲んだ後に食事がなくなると、糖の供給と薬の作用がずれてしまいます。
食べない日と少なめの日では困る場面が違う
食事をまったく抜く日だけでなく、普段より少量しか食べられない日も低血糖に気をつけます。薬を飲んだ事実だけを基準にせず、いつ、どの程度の食事がとれる予定かを含めて対応を決めます。
| 食事の変化 | 起こりやすい問題 | 前もって決める内容 |
|---|---|---|
| 食事を抜く | 食事から糖が入らず薬が働く | 欠食時の服用の扱いと連絡先 |
| 食事が遅れる | 空腹のまま過ごす時間が延びる | 遅れると分かった時点での薬と食事の対応 |
| 食事量が少ない | 普段の服用量に対して糖が不足する | 食べられる量が減った日の連絡と服薬方針 |
この3つは同じ対応でよいとは限らず、飲んだ薬と服用時刻、食べられる状況によって判断が変わります。予定が分かった段階で主治医に伝え、食事が変わる日の指示を具体的に決めておきましょう。
外出や検査で食事が遅れる予定を薬と合わせる
移動や行列で食事が遅れる外出では、予定表に食事の時間を入れ、必要な食事をとれる場所も押さえておくと備えやすくなります。持ち歩くブドウ糖は低血糖が起きたときの備えで、持っていても食事を抜いてよい理由にはなりません。
食事を抜くよう指示される検査では、検査の説明を受ける時点で、SU薬を飲んでいると伝えましょう。検査のための絶食と普段の服用指示が重なる日は、当日の朝に自己判断で飲むか決めるのではなく、あらかじめ示された服薬の指示に従います。
飲んだ後に食べられなくなったら連絡する
服用後に予定が変わり食事をとれなくなったときは、空腹のまま待ち続けず、処方元か薬局へ連絡してください。連絡時に必要なのは、薬の名前、飲んだ時刻、最後の食事の内容、現在の症状です。
食欲が落ちた日の薬の扱いを、毎回同じ割合だけ減らすという自己流のルールに置き換えるのは危険です。発熱などの病気で食事がとれない日の対応も、元気なうちに主治医と決めておくと安心です。
運動と飲酒は食事との組み合わせに注意する
普段より体を動かす日や飲酒する日は、食事の量と間隔にも気を配ります。運動は糖の消費を増やし、お酒は肝臓から糖を補う働きを妨げるため、SU薬の作用に重なって血糖が下がりやすくなります。
長い歩行や激しい運動で糖の消費が増える
運動中は筋肉が糖を使いますが、SU薬を飲んでいると、血糖が下がっても薬によるインスリン分泌が続くため低血糖を早めるおそれがあります。運動教室に参加するときだけでなく、旅行先で長く歩く日や、庭仕事が長引く日にも普段との活動量の差が生まれます。
注意するのは、動いている最中だけではありません。活動を終えた後も薬の作用と食事の間隔が重なるため、運動後の不調も疲れだけで片づけず、低血糖を疑います。
空腹で飲むお酒は糖を補う働きを妨げる
肝臓は、食事をしていない間にも糖を作ったり蓄えた糖を出したりして血糖を支えます。空腹のままお酒を飲むとこの働きが妨げられ、SU薬で下がった血糖を補いにくくなります。
飲酒が認められている場合も、食事と一緒に、主治医から示された範囲内にとどめるのが基本です。お酒を飲むからとご飯を抜いたり、食事代わりに飲んだりする状況は、低血糖を招く条件になります。
予定に応じて食事と持ち物を整える
運動と飲酒は血糖が下がる理由が異なりますが、どちらも空腹が長引く予定を避ける備えが役立ちます。共通する持ち物は、低血糖に備えるブドウ糖です。加えて、食事をとれる時刻を予定に組み込みます。
| 場面 | 血糖が下がりやすい理由 | 備え |
|---|---|---|
| 長い歩行・激しい運動 | 糖の消費と薬の働きが重なる | ブドウ糖の携帯、食事時刻と活動量の調整 |
| 空腹での飲酒 | 肝臓から糖を補いにくくなる | 空腹の飲酒を避ける準備、食事と飲酒量の管理 |
ブドウ糖を携帯していても、強い不調を押して運動を続けたり、食事を抜いて飲酒したりする危険は残ります。運動量が大きく変わる予定や飲酒の習慣は、診察時に主治医へ伝えましょう。
SU薬と一緒に使う薬で低血糖が起きやすくなる
食事や服用量が変わっていなくても、新しい薬が加わると低血糖が起こりやすくなる場合があります。短期間だけ飲む抗菌薬や市販の痛み止めも、飲み合わせを判断する対象です。
抗菌薬や痛み止めにも併用注意がある
アマリール錠の電子添文には、血糖を下げる作用を強める併用注意薬として、次のような薬が挙げられています。抗菌薬は細菌による感染症に使う薬で、同じ目的の薬でも飲み合わせへの影響は一律ではありません。
| 薬の種類 | 代表的な名前 | 服用前に伝える内容 |
|---|---|---|
| 抗菌薬 | クラリスロマイシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン | SU薬の名前と服用量 |
| 血液を固まりにくくする薬 | ワルファリンカリウム | 新たに開始した時期 |
| β遮断薬 | プロプラノロール、アテノロール、ピンドロール | 血圧や心臓の治療内容 |
| 痛みや炎症に使う薬 | アスピリン、ナプロキセン、ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 市販薬を含む製品名と服用状況 |
掲載した名前だけで、ほかの薬には注意がいらないと判断するのは危険です。一緒に使えるかどうかは、SU薬の種類と量、食事の状態も踏まえて判断されます。
血圧や心臓の薬を自己判断でやめない
β遮断薬は、心拍数や血圧などを調整し、血圧や心臓の病気に使われる薬です。SU薬との併用では重い低血糖が増える場合があるため、症状が出たときは、糖尿病の薬と心臓の薬を合わせて処方が見直されます。
また、ワルファリンを一緒に使う時期には重い低血糖との関連があり、とくに開始時は注意が必要です。どちらも治療上の目的がある薬なので、低血糖が心配だからと自己判断で中止せず、処方元へ連絡して判断を受けます。
薬が追加された日をお薬手帳に残す
別の診療科で処方された薬や市販薬は、糖尿病の診察で把握されていない可能性があります。お薬手帳には継続中の薬だけでなく、短期間の処方薬や市販薬の名前も残すと、飲み合わせを検討しやすくなります。
新しい薬を受け取るときは、SU薬の名前と飲み方が分かるお薬手帳を医師や薬剤師に示しましょう。飲み始めた日と不調が起きた日が分かれば、食事の変化と薬の追加のどちらが重なっていたかを診察で振り返れます。
低血糖が長引く・繰り返すときは受診を急ぐ
いったん症状が治まっても、SU薬の働きが続いて再び低血糖になるおそれがあります。繰り返す低血糖や飲み過ぎが疑われる状況は、自宅で糖分を補うだけで済ませず、医療機関への連絡が必要です。
回復した後も薬の作用が残ることがある
SU薬の低血糖には、重くなるだけでなく長く続く危険もあり、アマリール錠、グリミクロン錠、オイグルコン錠の警告では「遷延性」と表現されています。遷延性とは、低血糖が長く続くという意味です。
いったん回復したように見えても、服用を中止した後に数日間は低血糖が再発する場合があります(アマリール錠・オイグルコン錠の電子添文)。糖分で血糖が上がることと、体に残った薬の働きが終わることは同じではなく、再発する状況では医療機関での観察や処置が必要になります。
同じ日の再発や誤った追加服用はすぐ連絡する
低血糖が改善しないときや、いったん落ち着いても再び症状が出たときは、次の定期受診を待たず処方元への連絡が必要です。
- 改善が不十分 … 教わった対応を行っても不調が続く状況
- 低血糖の再発 … 回復した後に同じような不調が戻る状況
- 追加服用の疑い … 飲み忘れと思って重ねて飲んだ、錠数を間違えた状況
- 食事の確保が困難 … 服用後に食べられず空腹が続く状況
意識がぼんやりする、安全に飲み込めない、けいれんするといった状態は救急対応が必要で、119番への連絡を急いでください。強い不調がある本人が車を運転して受診するのは危険です。
受診では食事・服薬・活動の順に状況を伝える
連絡するときは、SU薬の名前と服用した量・時刻に続けて、最後に食べた食事、普段と違った活動、新しく加わった薬を伝えると状況が整理されます。優先するのは受診や連絡で、記録は分かる範囲の内容で十分です。
繰り返した低血糖を、次から多めに食べるだけで調整しようとすると、食事が変わるたびに危険が残ります。主治医の判断で処方量や飲み方を見直し、次に食事が遅れるときや不調が戻ったときの連絡先まで決めておくと、日常の対応をそろえられます。
よくある質問
- QSU薬は食後に変えれば低血糖を避けられますか?
- A
食後に変えるだけで低血糖を避けられるとは限りません。食後に飲んでも、その後の欠食や運動、併用薬の影響で血糖が下がるおそれがあります。
処方された時刻は自己判断で変えず、低血糖が疑われた日の食事と服薬の時刻を主治医に伝え、飲み方の指示を受けてください。
- Q昼食を抜く予定の日は、朝のSU薬をどうすればよいですか?
- A
昼食を抜く予定があるなら、朝の薬を飲む前に、その日の服用の扱いを処方元に確かめておきます。朝食を食べる予定でも、その後の空腹が長くなる影響を含めた判断が必要です。
自分で一律に半量へ減らすのではなく、あらかじめ決めた欠食時の指示に従います。すでに服用して食事をとれなくなった場合は、そのまま待たず処方元か薬局へ連絡してください。
- QSU薬を同じ量で飲んでいても急に低血糖になりますか?
- A
同じ量でも、食事の減少や活動量の増加、飲酒、新しい薬の追加が重なると低血糖は起こりえます。普段との違いを振り返り、症状が繰り返すときは定期受診を待たず処方元へ連絡してください。
- Q低血糖がいったん治まっても受診が必要ですか?
- A
低血糖が繰り返すときや誤って多く飲んだ可能性があるときは、いったん治まってもすぐに医療機関への連絡が必要です。薬の働きが残り、再び血糖が下がるおそれがあります。
連絡時には、飲んだ薬と量、時刻に加え、症状が戻ったかどうかを伝えます。意識がおかしいなどの強い異常がある場合は、救急要請が必要です。


