グリニド薬は、食事に合わせて膵臓からインスリンをすばやく出させ、食後の血糖の上がりすぎを抑える飲み薬です。SU薬と同じ場所に働きますが、速く効いて短く終わるため、毎食の直前に飲みます。
朝の空腹時の血糖はそれほど高くないのに、食後の値が高いときなどに使われます。作用が短くても低血糖は起こるため、食事を抜く回は飲まず、食べ始める時刻に服用を合わせましょう。
この記事では、グリニド薬が食後高血糖を抑える仕組み、3つの成分、SU薬との違い、使われる場面を解説します。
グリニド薬は食事に合わせて速く短く働く薬
グリニド薬は、インスリンを出す力が残っている2型糖尿病の患者さんに使う薬です。治療で主にねらうのは、食後に大きく上がる血糖です。食事の時間帯に作用を合わせる点に特徴があります。
インスリンをすばやく出す飲み薬
速効型インスリン分泌促進薬とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンを、膵臓から短時間で出すよう促す薬です。グリニド薬はこの薬のグループの呼び名で、飲んだ薬そのものがインスリンに置き換わるわけではありません。
膵臓は胃の後ろ側にある臓器で、その中のβ細胞という細胞がインスリンを作っています。この細胞を刺激するため、自分の体からインスリンを出せる状態であることが、効果を得る前提になります。
薬袋の成分名でグループを確かめられる
グリニド薬には、ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニドの3つの成分があります。販売名では、スターシス・ファスティックはナテグリニド、グルファストはミチグリニドに当たります。レパグリニドは成分名を含む製品名のほか、シュアポストという名前でも知られる薬です。
薬袋やお薬手帳にある名前と照らし合わせると、自分が飲んでいる薬がこのグループかどうか分かります。同じグループに属していても成分や処方量が異なるので、残った薬を別の製品の代わりにせず、処方どおりの薬を飲みましょう。
SU薬との違いは主に作用する時間帯
SU薬は、スルホニル尿素薬と呼ばれるインスリン分泌を促す飲み薬です。グリニド薬も膵臓の細胞の同じ場所に働きますが、一般に作用の始まりが速く、作用が続く時間は短くなります。
| 比べる点 | グリニド薬 | SU薬 |
|---|---|---|
| 効き始め | 食事に合わせて速く働く | 成分によって異なる |
| 作用の続き方 | 比較的短い | 比較的長い |
| 飲む回数 | 通常1日3回 | 成分や処方によって異なる |
| 飲むタイミング | 毎食直前 | 成分ごとの処方に従う |
つまり、両者はインスリンを増やすという働きが共通でも、血糖のどの時間帯を主に下げたいかで使い方が変わります。SU薬からの変更が合うかどうかは、食後だけでなく空腹時の血糖も含めて判断します。
食後の血糖上昇を抑えるのは最初の分泌を補うから
体は食事の直後に必要なインスリンをすばやく出し、血液に入ってくる糖の増加に対応します。グリニド薬は、2型糖尿病で遅れたり少なくなったりする、この最初の分泌を補います。
食べ始めに出るインスリンが遅れると血糖が上がる
インスリン分泌の初期相とは、食事に伴って最初にすばやくインスリンが出る時期を指します。食べ物から吸収された糖が血液に入るとき、この早い分泌があると、体が糖を取り込む準備を進められます。
2型糖尿病では、早い時期からこの反応が弱くなることがあり、糖が増える速さにインスリンの働きが追いつきにくくなります。インスリンが全く出ていない状態だけでなく、出始める時刻が遅れる状態も、食後の血糖が上がりやすくなる原因です。
膵臓の細胞へインスリンを出す合図を送る
グリニド薬は、β細胞の表面にある受容体という薬の作用を受け取る部分に結びつきます。細胞の膜にあるカリウムの通り道が閉じることをきっかけに、細胞の中へインスリンを出す合図が伝わります。
- 服用後 … 薬が吸収され、膵臓のβ細胞に作用
- 食べ始めの時間帯 … インスリンの分泌をすばやく後押し
- 食後 … 血液中の糖を体が取り込む働きを助け、血糖上昇を抑制
この流れを食事に重ねるため、服用する時刻と食べ始める時刻の関係が効果を左右します。
食後の血糖の山を小さくする働き
食後高血糖とは、食事の後に血液中の糖の濃さが必要以上に高くなる状態です。グリニド薬は、食事で血糖が上がる時間帯にインスリンを増やし、その上がり幅を抑えることをねらいます。
ただし、薬を飲めば食事の量にかかわらず同じ血糖になるわけではありません。食事内容や食べる量、もともとのインスリンを出す力によって食後の値は変わるため、食事療法や運動療法を続けながら使います。
食後の値も見ると血糖管理の抜けを見つけやすい
空腹時の血糖だけでは、食後の上がりすぎを捉えきれないことがあります。食後の血糖は、日々の治療の効き方と、合併症につながる高血糖の状態を確認するための情報です。
空腹時の採血だけでは見えにくい変化
食べる前と食べた後では、体が処理する糖の量が違います。食事を取らずに受けた採血の値が落ち着いていても、食事に合わせたインスリンの分泌が足りなければ、食後には高い値を示します。また、HbA1cは一定期間の血糖の状態を反映する検査値で、食事の前後でどれほど血糖が動いたかを直接示すものではありません。
食後の上昇が残っているかは、HbA1cと実際に測った血糖を組み合わせて判断します。
血管への負担を捉える目印の1つ
食後の血糖の上がりすぎは、糖尿病に伴う合併症の危険を示す目印の1つと考えられています。合併症とは、糖尿病に関連して別の臓器などに起こる病気で、血管の障害もその中に含まれます。
そのため、朝の血糖が下がったかだけで治療全体を評価せず、食後の高い状態が続いていないかにも目を向けます。食後の測定が必要かどうかや測る時刻は、現在の治療と採血結果に応じて主治医と決めます。
心臓や血管の病気への効果は血糖と分けて捉える
血糖を下げる作用があることと、その薬で心臓や血管の病気が減ることは、同じ意味ではありません。グリニド薬を使う主なねらいは血糖の改善で、心臓病を防ぐ効果は今後の検証を待つ段階です。
SU薬とグリニド薬を含むインスリン分泌促進薬を52週以上比較した試験の統合解析では、心臓や血管の大きな病気の明確な増加は認められず、全体の死亡はわずかに多かったという結果も報告されています1)。長期的な影響には議論があり、治療では血糖値に加えて心臓や血管の病気の有無も判断材料になります。
グリニド薬の3成分と治療の対象
国内で使われる3成分は、いずれも2型糖尿病の治療に用いられます。効能の書き方には違いがありますが、食事に合わせてインスリンの分泌を促すという基本は共通です。
成分名と効能の記載を並べる
効能又は効果とは、その薬がどの病気や状態に使われるかを示す記載です。スターシス錠、グルファスト錠、レパグリニド錠の電子添文(薬の効能や使用上の注意をまとめた文書)では、次のように示されています。
| 成分名 | 効能又は効果 |
|---|---|
| ナテグリニド | 2型糖尿病における食後血糖推移の改善 |
| ミチグリニド | 2型糖尿病 |
| レパグリニド | 2型糖尿病 |
「食後血糖推移の改善」は、食事の後の血糖の変化を改善するという意味です。効能欄の表現からは、どの成分が強いかや、誰にでも使えるかまでは読み取れません。
食事療法や現在の治療で不足する部分に使う
食後の血糖が高いからといって、すぐにグリニド薬が必要と決まるわけではありません。食事療法や運動療法を行ったうえで血糖の改善が十分か、すでに飲んでいる薬でどの時間帯の血糖が下がっているかを合わせて判断します。
ナテグリニドの効能には、食事療法・運動療法のみ、または特定の飲み薬を加えた治療で十分な効果が得られない場合という条件があります。ミチグリニドにも使用時の血糖値の条件があり、効能に「2型糖尿病」とあっても、処方の前にそれぞれの条件を確かめます。
自分に合う薬は血糖の上がり方と食生活も踏まえて選ぶ
同じグループの中にも効き方の速さなどに違いがあり、処方量や併用できる薬も成分ごとに確認されます。薬の名前が変わったときは、以前と同じ飲み方だと決めつけず、新しい薬袋に書かれた用法を確かめましょう。
たとえば、血糖が食後に集中して高くなる人と、空腹時から高い状態が続く人では、必要な治療が変わります。処方は成分名だけで決まらず、自分の血糖の上がり方と食生活に合わせて選ばれます。
食直前の服用は食事開始の時刻に合わせる
グリニド薬は通常、1日3回、毎食直前に飲みます。食事を抜く回は服用せず、食べ始める時刻に薬の作用を合わせるのが基本です。
早すぎても食後でも効果と安全性が変わる
食事より早く飲みすぎると、食べ物から糖が入る前にインスリンが増えて、食事開始前に低血糖を起こすおそれがあります。
一方で食後の服用は吸収が遅れ、食後の血糖上昇を抑える効果が弱まります。電子添文での食直前は、ナテグリニドとレパグリニドが食前10分以内、ミチグリニドが5分以内です。
この数字は効き始めを待つ時間ではなく、服用から食べ始めるまでの範囲なので、食事の用意ができてから飲むと合わせやすくなります。
食事を抜く回はその回の薬も飲まない
食事を取らないのに薬だけ飲むと、食後の糖の増加がない状態でインスリンの分泌が促されます。血糖を下げすぎるのを避けるため、食事とその回の服用を1組として扱うのが原則です。
- 食事の直前 … 食べ始めにインスリンの作用を合わせる時間帯
- 食事を抜く回 … その回のグリニド薬も服用しない扱い
- 食事より早すぎる服用 … 糖が吸収される前に低血糖を招くおそれ
- 食後の服用 … 吸収が遅れ、食後血糖への効果が弱まるおそれ
欠食が続くときや食べられる量が落ちているときは、いつもの処方を続ける条件自体が変わるため、服用の扱いを主治医に相談してください。
食事が届いてから飲む場面を思い浮かべる
たとえば、昼に外食する患者さんが、注文後も料理が届かない状況です。時計が普段の昼食時刻になったことだけで飲まず、料理が届いて食べ始められる状態になってから、処方された食直前の範囲で服用します。
食事の時間がずれる日は、薬の時刻も食事の開始に合わせましょう。毎日の時刻だけを頼りに飲むよりも、薬袋の用法と実際の食事を結びつけておくほうが、速く作用する薬の性質に合っています。
血糖を下げる効果と低血糖・体重への影響
グリニド薬は食後血糖やHbA1cを下げる一方、低血糖や体重増加を起こしうる薬です。作用が短い薬でも、低血糖と体重の変化には気を配りましょう。
HbA1cの下がり幅には薬や試験による幅がある
15試験、2型糖尿病の患者さん3,781人を含むレビューでは、有効成分を含まない偽薬との比較で、HbA1cの低下幅はレパグリニドで0.1〜2.1ポイント、ナテグリニドで0.2〜0.6ポイントと報告されています2)。下がり幅の数字は、使う薬や研究条件によって変わります。
この数値を自分のHbA1cからそのまま引いて、次の検査値を予測する使い方はできません。服用開始時の血糖の状態や一緒に使う薬が異なるため、処方後の食後血糖とHbA1cの変化で、自分に得られた効果を判断します。
SU薬より作用は短くても低血糖は起こる
長く効くSU薬と比べると、グリニド薬は作用が早く終わるため低血糖を起こしにくいという利点があります。低血糖とは血糖が下がりすぎた状態で、冷や汗、ふるえ、動悸、ふらつきなどが主な症状です。
ただし、冷や汗がなくても、急な脱力や反応の鈍さなどで気づくことがあります。意識がはっきりして飲み込めるときはブドウ糖などで速やかに対処し、呼びかけへの反応が悪い、飲み込めないときは口から飲食物を与えず、救急要請してください。
低血糖が改善した場合も、起きた時刻と食事・服薬の状況の記録は、処方を見直す際に役立ちます。症状が改善しないときや繰り返すときは、そのまま様子を見続けず医療機関へ連絡してください。
体重を減らす薬ではない
インスリンの分泌を増やす薬では、血糖の改善とともに体重が増えることもあります。作用がSU薬より短いグリニド薬でも、体重が増える場合があります。
| 比べる点 | グリニド薬 | SU薬 |
|---|---|---|
| 血糖への働き | 主に食後の上昇を抑える | 食後を含め血糖を下げる |
| 低血糖 | 起こりうるが、長く効くSU薬より起こしにくい | 作用の長い成分では長引く点に注意 |
| 体重 | 増えることがある | 増えることがある |
血糖だけに目を向けず、服用前後の体重の変化も治療の評価に含めます。体重が増えたからと自己判断で薬を減らすより、食事の変化や低血糖に対する飲食の有無を整理するほうが、原因に合った調整につながります。
グリニド薬が使われるのは食後の改善が必要なとき
食後に目立って血糖が上がり、膵臓からインスリンを出す力が残っている人が、使用を検討する対象になります。ほかの薬だけでは食後の高い値が残るときに、追加されることもあります。
血糖の上がる時間帯に合わせて治療を補う
薬を追加するかどうかは、HbA1cの数値だけでなく、1日のどの時間帯で血糖が高いかによって変わります。食事に合わせた短い作用を生かせるか、毎食前の服用を生活の中で続けられるかも判断に含めます。
| 使われる場面 | 検討する理由 |
|---|---|
| 空腹時より食後の高血糖が目立つ | 食事に伴う早いインスリン分泌を補うため |
| 現在の飲み薬で食後の改善が足りない | 異なる働きの薬に食後への作用を加えるため |
| 食事に合わせた治療が必要 | 食べ始めの時間帯に作用を合わせるため |
食前から高い血糖が続いている場合は、短時間の作用だけで治療全体を補えるかも含めて検討します。
ほかの飲み薬への追加で食後血糖を改善する
インスリンの働きを助ける薬など、異なる働きの飲み薬と組み合わせて使う方法があります。追加できる組み合わせは成分ごとの条件に沿って決まり、薬の数よりも、不足している作用を補えるかを重く見ます。
血糖に応じたインスリン分泌を助けるDPP-4阻害薬か、インスリンの働きなどを改善するメトホルミンを単独で使っていた日本人の2型糖尿病の患者さん136人では、ミチグリニド追加後52週で食後血糖が改善し、低血糖は約3%でいずれも軽度だったと報告されています3)。追加前にどの薬を使っていたかを含めて、組み合わせを判断する際の参考になります。
SU薬と重ねず食事と服薬を一緒に見直す
グリニド薬とSU薬は併用しません。作用する場所が同じで、併用した場合の追加効果と安全性が確認されていないためです。
食事のたびに薬を飲む負担が気になるのは自然なことです。飲み忘れが続くなら、できていない点だけを気にするよりも、朝は飲めるが外出先の昼食前は難しい、といった具体的な場面を整理すると調整しやすくなります。
受診時には、お薬手帳とともに、食事の時刻、服用できた回、血糖を測った時刻を主治医に伝えましょう。低血糖の症状があった日には食べた量も添えると、食後への効果と下がりすぎの両方を評価できます。
よくある質問
- Qグリニド薬はインスリン注射と同じ薬ですか?
- A
グリニド薬とインスリン注射は、異なる薬です。グリニド薬は、自分の膵臓にインスリンを出すよう促す飲み薬で、注射はインスリンそのものを体に補います。飲み薬で効果を得るには、膵臓にインスリンを出す力が残っている必要があります。
- Qグリニド薬は食事を抜く日も飲みますか?
- A
食事を抜く回のグリニド薬は服用せずにおきます。食べ物から糖が入らないままインスリンの分泌を促すと、血糖が下がりすぎるおそれがあるためです。
食べられない状態が続く場合は、服薬の扱いを主治医に相談してください。ほかの薬も使っている場合は、その薬の扱いも薬ごとに確かめます。
- Qグリニド薬を飲めば食後の血糖は毎回同じになりますか?
- A
毎回同じ値になるとは限りません。食事の量や内容、体からインスリンを出す力によっても食後の血糖は変わります。
食後の高い値が続くなら、測定した時刻と食事の内容を記録し、受診時に処方の評価に使いましょう。1回の高い値だけで薬を増やすと、別の食事の後に血糖が下がりすぎるおそれがあります。
- Qグリニド薬をSU薬に追加してもよいですか?
- A
SU薬へのグリニド薬の追加は避けます。膵臓の同じ場所に働く薬であり、重ねた場合の追加効果と安全性が確認されていないためです。
切り替えの際に以前のSU薬が手元に残っていても、自己判断で一緒に飲まないでください。薬袋やお薬手帳に両方が記載され、どちらを飲むか分からないときは、服用前に処方元か薬剤師へ確かめます。


