グリニド薬の成分は、ナテグリニド(スターシス・ファスティック)、ミチグリニド(グルファスト)、レパグリニド(シュアポストなど)の3種類です。どれも食事のすぐ前に飲んで速く効き始めますが、飲む時間の決まりや作用の続き方が少しずつ違います。

特にレパグリニドは作用が長めに続くため、食後の数時間は低血糖に気を配ります。ナテグリニドは重い腎機能障害では使えないなど、腎臓の働きによっても使い分けが変わります。薬を比べるときは、販売名より成分名を手がかりにしましょう。

この記事では、グリニド薬の種類と販売名、効果が出るタイミング、飲み方の違い、体の状態や生活に応じた使い分けを解説します。

目次

グリニド薬の種類は3つ、まず成分名で照合

スターシスとファスティックは同じ成分で、グルファストとレパグリニド錠はそれぞれ別の成分です。薬の袋やお薬手帳にある販売名を成分名に置き換えると、何を飲んでいるか整理できます。

スターシスとファスティックはナテグリニド

スターシスとファスティックには、どちらもナテグリニドが入っています。名前が変わっても成分が同じ組み合わせがあるため、薬を受け取ったときは販売名に加えて成分名まで確かめましょう。

成分名主な販売名製造販売の会社
ナテグリニドスターシスアステラス製薬
ナテグリニドファスティックEAファーマ
ナテグリニドナテグリニド錠「日医工」日医工
ミチグリニドカルシウム水和物グルファストキッセイ薬品工業
レパグリニドレパグリニド錠「サワイ」沢井製薬

グリニド薬は、膵臓から血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌を速やかに促し、食後の血糖上昇を抑える薬です。食事で上がる血糖に薬の働きを合わせるため、飲む時刻も治療の一部になります。

グルファストには通常の錠剤とOD錠

グルファストの成分の正式名はミチグリニドカルシウム水和物で、一般にはミチグリニドと呼ばれます。5mgと10mgがあり、通常の錠剤に加えて口の中で崩れるOD錠も用意されています。

後発品では、ミチグリニドCaなどの成分名を含む販売名が使われています。錠剤の形や販売名が違っても、同じ成分が重なる可能性があるので、残っている薬と新しい薬を同時に飲む前には薬袋の指示を照合しましょう。

シュアポストとレパグリニド錠の関係

シュアポストは、レパグリニドの先発品の販売名として知られています。レパグリニド錠「サワイ」は同じ成分の後発品で、0.25mgと0.5mgの規格があります。

「シュアポスト」と聞いた方も、手元の薬がレパグリニド錠であれば、確認する成分はレパグリニドです。販売名と一緒に1錠あたりの量や1回に飲む錠数を見ると、名前だけでは分からない処方内容まで把握できます。

グリニド薬が効く速さと続く時間の読み方

飲んだあと速やかに働く点は共通しています。ただ、血液中の薬の濃さが最高になる時間は、効き始める時刻や効き終わる時刻そのものとは異なります。

最高濃度になるまでの時間は約15分から2時間弱

健康な成人男性が1回飲んだときの数値では、ミチグリニドは約15分、レパグリニドは中央値で30分、ナテグリニドは0.9〜1.8時間で血液中の濃さが最高に達しています。これは血液を採って調べた薬の動きで、効き目を感じる時刻とは別の数字です。

成分名最高濃度までの時間半減期
ナテグリニド0.9〜1.8時間1.1〜1.3時間
ミチグリニド0.23〜0.28時間(約14〜17分)約1.2時間
レパグリニド各投与量の中央値30分各投与量の平均45.4〜66.5分

数値は各薬の電子添文に記載された単回投与の値です。ナテグリニドは20〜60mgを空腹時、ミチグリニドは5〜20mgを食直前、レパグリニドは0.25〜1mgを食直前に飲んだ条件なので、表の早い順に薬を選ぶための数字には使えません。

半減期は血液中の濃さが半分になる時間

半減期とは、血液中の薬の濃さが半分になるまでの時間です。値が約1時間でも、その時間を過ぎたあとも薬の働きや低血糖の心配は残ります。

食後の血糖の動きには、食べた量や食事の進み方に加え、自分の体から出るインスリンも関わるため、血液中の薬の濃さを測った数字だけでは何時間後に効き目が完全に切れるかを決められません。

レパグリニドは飲んだあと数時間も低血糖に注意

レパグリニドは、ほかのグリニド薬より作用が長く続きます。食事を終えたあとも数時間は低血糖が起こりうるため、表の半減期が短いことを安全の根拠にしないでください。

食後しばらくしてからのふらつきや強い空腹感も、薬との関係を考える症状です。次の食事の前に症状が出たときは、前の薬を飲んだ時刻と食事の時刻を合わせて記録すると、作用の続き方を診察で検討しやすくなります。

血糖の下がり幅と低血糖・体重の違い

血糖を下げる力には差が出ることがあり、レパグリニドでより大きく下がった比較もあります。薬を選ぶときは下がり幅に加えて、低血糖や体重の変化も合わせて評価します。

レパグリニドで大きく下がった比較がある

食事・運動だけで治療していた2型糖尿病の150人を海外の用量で16週間比べた試験では、レパグリニドはナテグリニドよりHbA1cの下がり幅が大きく、軽い低血糖や体重増加も多かったと報告されています1)。HbA1cは、過去1〜2か月ほどの血糖の状態を反映する検査値です。

一方、中国の4試験をまとめた12週間の比較では、両薬のHbA1cや空腹時血糖の下がり方に、はっきりした差が出ていません2)。そのため、どれだけ下がるかは、治療前の血糖や使う量も含めて判断します。

短く効く薬でも低血糖は起こる

3成分とも低血糖を起こすおそれがあり、短く効く薬でも注意が必要です。なかでもレパグリニドはほかのグリニド薬より低血糖の発現頻度が高かったため、食後を含めた体調の変化に気を配りましょう。

低血糖では、冷や汗や手のふるえのほか、ふらつき、力が入らない感じが出ることがあります。冷や汗が出ているかだけで判断せず、服用後にこうした症状が出たら低血糖を疑って対応します。

意識がはっきりして飲み込める状態なら、指示されている糖分を補給してください。意識が低下している、飲み込めない状態なら、口から無理に飲食させず救急要請が必要です。補給しても症状が続くときや繰り返すときは、速やかに医療機関へ連絡してください。

体重と食事量も薬の評価に含める

体重増加も、グリニド薬を続けるうえで見る項目です。レパグリニドとナテグリニドの比較では差が出ていますが、自分の体重への影響は、薬名に加えて食事量や体重の経過から判断します。

薬が強いと聞くと、飲み続けてよいか心配になるかもしれません。大切なのは、必要な下がり幅が得られ、低血糖を起こさずに過ごせているかです。量を変えたいときは、体重の記録を持って主治医に相談しましょう。

体重の推移に、低血糖への対処で食べ足した回数や普段の食事量の変化を添えると、薬を見直すときに食生活との関係も整理できます。

グリニド薬を飲むのは食事の5〜10分以内前

毎食直前とは、薬によって食べ始める5分以内前、または10分以内前を指します。食卓に食事がそろってから飲むと、薬だけ飲んで食事を待つ時間を作らずに済みます。

1回の量と食直前の決まりを比べる

スターシスとファスティック、レパグリニド錠は食前10分以内、グルファストは食前5分以内です。以下は成人の通常の用法・用量で、処方される量は年齢や体の状態に合わせて調整されます。

販売名通常の1回量回数と服用時刻
スターシス・ファスティック90mg。効果不十分なら120mgまで増量可能1日3回、毎食前10分以内
グルファスト10mg。状態に応じて増減1日3回、毎食前5分以内
レパグリニド錠「サワイ」0.25mgから開始。通常0.25〜0.5mgで維持、1mgまで増量可能1日3回、毎食前10分以内

量の単位が同じmgでも、成分が違えば対応する効き目は違います。90mgと0.5mgを見比べて前者が強いと判断したり、表の通常量に自分で合わせたりするのは危険です。

食後や早すぎる服用では食事と作用がずれる

食後に飲むと速やかな吸収が得られず、食後の血糖上昇を抑える効果が弱まります。反対に、食事の30分前など早すぎる服用では、食べ始める前に低血糖が起こるおそれがあります。

たとえば、昼食を外でとるとき、自宅を出る前に薬を飲むと店で料理を待つ時間が生じます。料理が届き、食べ始められる状態になった時点で薬袋の食直前の指示に合わせると、移動や待ち時間を服用後に挟まずに済みます。

食事を抜く回と飲み忘れた回を区別

食事を抜くときは、その食事に対応するグリニド薬も飲まない使い方が基本です。欠食が繰り返されるときは、薬の回数と食事の回数が合っているかを治療全体で見直します。

食後に飲み忘れに気づいたときは、埋め合わせで追加したり、次の回に2回分をまとめたりせず、あらかじめ受けた飲み忘れ時の指示に従います。予定していた食事がとれなくなった場合は、服用済みかどうかで低血糖への対応が変わります。

すでに飲んだのに食べられないときは、服用時刻と薬名を伝えて医療機関や薬剤師へ連絡してください。まだ症状が出ていなくても、薬だけが先に働くおそれがあります。

腎臓の働きと年齢で変わる処方上の注意

腎臓の働きが落ちている場合は成分ごとの注意が必要で、特にナテグリニドは、透析を必要とするような重い腎機能障害では使わない決まりがあります。

ナテグリニドは重い腎機能障害で使用できない

透析は、腎臓が十分に働けないときに血液中の不要な物質などを取り除く治療です。ナテグリニドは透析を必要とするような重い腎機能障害では低血糖のおそれから使用できず、それ以外の腎機能障害でも低用量から慎重に使います。

成分名腎機能障害がある場合高齢者への配慮
ナテグリニド透析を要するような重い障害では使用しない。それ以外も低用量から慎重に使用低用量から開始。1回60mgなど
ミチグリニド低血糖に注意。慢性腎不全では半減期が延びる状況に応じて1回5mgから開始
レパグリニド重い障害では血中濃度上昇に注意。国内試験では透析が必要な人を除外血糖を定期的に検査し、慎重に使用

同じ「腎臓の数値が悪い」という説明でも、使用できる薬や始める量は異なります。検査結果が変わったときは、お薬手帳と腎臓の検査結果を一緒に主治医へ示しましょう。

ミチグリニドとレパグリニドにも低血糖への配慮

ミチグリニドは、慢性的に腎臓の働きが低下した状態で薬が血液中から減るまでの時間が延びます。通常の量で飲んでいても作用の残り方が変わりうるため、体調と血糖を見ながら使う薬です。

レパグリニドは主に胆汁を通じて体外へ出ますが、重い腎機能障害では血液中の濃さが上がり、低血糖を起こすおそれがあります。胆汁は肝臓で作られて腸へ流れる液体です。排出経路が腎臓中心でなくても、腎臓の働きが落ちた人では低血糖に注意が要ります。

高齢者では少量で始めて血糖の推移を見る

高齢の方では、体の働きの低下に配慮して少量から始めるなどの調整が行われます。表の量は開始量の例で、実際の量は年齢に加えて体の状態を見て決まります。

食事を毎回ほぼ予定どおり食べられる方と、食欲の変動で食べ残す方では、同じ処方でも食事と薬の作用の合い方が変わります。家族が薬を用意する場合も、飲めたかだけでなく実際に食べられたかまで見ると、低血糖が起こる状況を捉えやすくなります。

飲み合わせとグルベス配合錠の扱い

ほかの薬との組み合わせで効き目が変わることがあり、特にレパグリニドは飲み合わせの影響に注意が要ります。グルベスはミチグリニドに別の働きの成分を組み合わせた薬です。

追加された薬や普段の飲食物まで共有

ほかの医療機関で薬が追加されたときは、グリニド薬を使っていることを伝えます。飲み合わせによって効き目が強まるだけでなく、弱まることもあるので、血糖が変わったときは糖尿病の薬以外にも目を向けます。

  • 処方薬の名前と量 … 他の医療機関の薬を含めたお薬手帳
  • 薬を追加・変更した日 … 血糖や体調が変わった時期との照合
  • 市販薬やサプリメント … 商品名や成分が分かる現物・包装
  • 普段の食品や飲料 … 飲食する量と薬を飲む時刻

最初に確認したいのは、症状や血糖の変化の前に増えた薬です。食品や飲料の制限も成分ごとに判断するため、具体名を薬剤師へ伝えて、避ける必要がある組み合わせを確認しましょう。

グルベスはミチグリニドとボグリボースの配合剤

グルベス配合錠・配合OD錠は、キッセイ薬品工業が製造販売する、ミチグリニドとボグリボースの2つの成分をまとめた薬です。そのため、グルファストとは含まれる薬の数が違います。

ボグリボースはα-GIと呼ばれる種類の薬で、小腸で炭水化物が分解されるのを遅らせ、食後の血糖上昇を抑えます。インスリンの分泌を促すミチグリニドと組み合わせることで、食後の血糖をより抑えやすくなります。

ミチグリニドだけでは食後の血糖が十分に下がらないときなど、働き方の違う薬の組み合わせが選択肢になります。配合剤に替わった場合は、もとのグルファストやボグリボースをそのまま重ねて飲むと成分が重複しうるため、新しい処方の飲み方にそろえます。

配合剤では低血糖時にブドウ糖を使う

グルベスのようにボグリボースを含む薬を使っている場合、低血糖への対処にはブドウ糖を使います。ほかのα-GIをグリニド薬と一緒に飲む場合も同じです。

薬が変わったときには、日常の飲み方だけでなく、低血糖に備えて携帯する糖分の種類も処方内容に合わせます。

SU薬はグリニド薬と働く場所が同じで、併用時の効果と安全性が確認されていないため、一緒には使いません。

生活と血糖の記録から使い分けを決める

薬の使い分けは、必要な血糖の下がり幅、食事の時刻、腎臓の働き、併用薬を組み合わせて決めます。同じ薬を飲んでいる方どうしでも、生活や検査結果が違えば処方量や組み合わせは変わります。

空腹時と食後のどちらが高いかを整理

血糖の記録では、数字だけでなく食事との時間関係も手がかりになります。食事前の測定か食後の測定かで評価する内容が変わるため、測定を指示されている方は食事と測定の時刻を組にして残すと役立ちます。

HbA1cだけでは、その日のどの時間に血糖が高いかまで読み取れません。食後の上昇が残るのか、食事の前にも高いのかに応じて、下げたい時間帯に合う薬の量や組み合わせが調整されます。

食事に薬を合わせられるかが継続の鍵

薬が効く時間だけでなく、毎食直前に飲めるかどうかも選ぶ際の判断材料です。食事時間が日ごとに変わる方では、時計の時刻を固定するより、実際の食事に服用を対応させられるかが問題になります。

  • 血糖の状態 … 食事前後の値、HbA1cの推移、必要な下がり幅
  • 食事と服薬のリズム … 食べ始める時刻、食事を抜く回、飲み忘れ
  • 体の状態 … 腎臓の検査結果、食欲、低血糖の症状
  • 一緒に使う薬 … 成分の重なり、飲み合わせ、配合剤への変更

なかでも低血糖が起きている場合は、さらに血糖を下げることより、起きた場面の確認が先です。数値が高い日があっても、自己判断で追加して飲まず、その日の記録を受診時に伝えます。

変更後は下がり幅と困った症状を合わせて伝える

薬を替えたり量を増やしたりしたあとは、血糖が下がったかに加え、空腹時や食後に困った症状が出ていないかを見ます。効果が出ていても低血糖が繰り返されるなら、量や飲み方を見直します。

受診時には、薬を飲んだ時刻、食べた量、症状が出た時刻を短くまとめて持参しましょう。体重の変化や新しく始まった薬も分かれば、血糖の数字だけでは決められない使い分けを検討できます。

よくある質問

Q
スターシスとファスティックは違う種類の薬ですか?
A

どちらもナテグリニドを成分とする薬です。製造販売の会社や販売名は違いますが、通常の量と食前10分以内に飲む決まりは共通しています。

Q
グルファストを飲む前に昼食を抜くと決まったら、薬はどうしますか?
A

食事を抜く回は、その食事に合わせるグルファストも飲まないのが基本です。次の食事で抜いた分を追加せず、処方された1回量に従います。

昼食を抜く日が繰り返されるなら、食事の回数と薬の指示が合うよう、普段の食事時間を主治医に伝えて調整を受けましょう。

Q
レパグリニド錠の半減期が過ぎれば低血糖の心配はなくなりますか?
A

半減期が過ぎても、低血糖への注意は必要です。半減期は血液中の薬の濃さが半分になる時間で、レパグリニドは服用後数時間に低血糖が起こるおそれがあります。

食後時間がたってからふらつきやふるえが出たときも、低血糖を疑って対応してください。意識が低下したり飲み込めなくなったりした場合は、救急要請が必要です。

Q
グルベスに替わったら、手元のグルファストも飲みますか?
A

新しい指示がないまま、残っているグルファストを重ねて飲むのは避けてください。グルベスにはグルファストと同じミチグリニドが入っているため、成分が重複します。

新旧の薬袋を並べ、どれを終了してどれを続ける指示かを薬剤師に確かめましょう。グルベスにはボグリボースも含まれるので、低血糖時に使う糖分はブドウ糖です。

参考にした文献