SU薬は血糖を下げる一方で、体重が増えやすい糖尿病の飲み薬です。インスリンの分泌を促して糖を体に取り込みやすくし、尿へ逃げていた糖も体に残るようになるためです。

増えた体重を抑えるには、食事を抜くより、おかわりや甘い飲み物など余分な分を見直し、今の生活から少しずつ動く時間を増やします。体重が増え続けるときは、自己判断で薬を減らさず、体重と暮らしの記録を持って主治医に相談しましょう。

この記事では、SU薬による体重増加の程度と理由、長く飲んだときの変化、食事や運動の工夫、薬の組み合わせを相談するときの要点を解説します。

目次

SU薬で増える体重は、比較した薬によって数kgの差

SU薬は、体重が変わりにくい薬や減りやすい薬と比べて、体重が増える方向に働きます。研究で示す「数kgの差」は薬を使った集団どうしの平均差で、実際の増え方は人によって違います。

薬の袋で成分名と販売名を照らし合わせる

SU薬はスルホニル尿素薬の略で、成分名のグリメピリドは販売名アマリール、グリクラジドはグリミクロン、グリベンクラミドはオイグルコンなどに当たります。後発品では成分名が薬の名前に入るため、お薬手帳や薬の袋で照らし合わせられます。

アマリール錠の電子添文(添付文書)では、食事療法・運動療法だけで十分な効果が得られない2型糖尿病に使う薬とされています。処方されたときは、血糖を下げる利点と体重への影響を合わせて受け止めましょう。

平均の増加量と、薬どうしの差を分けて読む

2型糖尿病の治療を比べた179試験と25件の観察研究をまとめた解析では、SU薬は体重が増えやすい側に入り、治療のグループ間で最大約5kgの差がみられました1)。この数字は集団の比較であり、本人の増加量は治療前の血糖や食事量などによって変わります。

メトホルミンで血糖が十分に下がらない2型糖尿病の814人に薬を追加した52週の試験では、SU薬のグリピジド群で平均1.2kg増え、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン群で平均3.2kg減りました2)。グリピジドは日本では使われていないSU薬なので、この数字は体重が動く向きをつかむ目安として読みます。

比較した治療体重変化の向き
SU薬を含む治療と、体重が増えにくい薬を含む治療SU薬は増えやすい側
メトホルミンにグリピジドを追加52週で平均1.2kg増加
メトホルミンにダパグリフロジンを追加52週で平均3.2kg減少

増加量を判断する出発点は、薬を始める前の自分の体重です。比較相手の薬で体重が減った分も研究の差に含まれるため、差の全体をSU薬の増加分と読み替えないようにします。

同じSU薬の中で体重への影響に差はある?

グリベンクラミドをほかのインスリン分泌を促す薬などと比べた21試験の解析では、SU薬どうしの比較で試験終了時の体重に明らかな差はみられませんでした3)。同じ種類の中で薬名を変えても、体重増加は避けにくいと考えられます。

体重への影響が似ていても、低血糖の起こりやすさまで同じとは限らず、薬の選択には食事の状況や体の状態も関わります。薬を変えたいときは、体重の記録を持って主治医に相談してください。

SU薬で太りやすくなるのは、糖の使われ方が変わるため

食べる量を増やしていなくても、血糖が改善する過程で体重が戻ったり増えたりします。体内で糖を使う働きが強まり、尿へ逃げていたエネルギーも体に残るためです。

インスリンが増えると糖を体に取り込みやすくなる

SU薬は、胃の後ろにある膵臓の中でインスリンを作る細胞を刺激し、その分泌を促します。インスリンは血液中の糖を筋肉などへ取り込ませ、血糖を下げるホルモンです。

取り込まれた糖は体を動かすために使われ、使い切れないエネルギーは脂肪などとして蓄えられます。食事から入るエネルギーが消費量を上回っていれば、血糖が下がっていても体重が増えやすい状態です。

尿に出ていた糖が減ると体重が戻る

血糖が高い状態では、糖の一部が尿へ出て、体が使えるエネルギーも失われています。治療で血糖が下がると尿に出る糖が減るため、食事量が以前と同じでも体に残るエネルギーは変わります。

とくに治療前の高血糖で体重が落ちていた人では、治療後の増加に、失っていた体重の回復が含まれます。もともと体重が安定していた人が食べる量を増やした場合とは、同じ増加幅でも意味が違います。

  • インスリン分泌の増加 … 血液中の糖を体内へ取り込みやすくなる変化
  • 尿へ出る糖の減少 … 失っていたエネルギーが体に残る変化
  • 食べる量と消費量の差 … 余ったエネルギーが蓄えられる状態

治療前にやせていたかも見ると、体重を戻したい人と、増加を抑えたい人を分けて考えられます。

食事以外に口にする量も増加に関わる

低血糖を心配して必要以上に間食を続けると、食事以外のエネルギーが積み重なり、体重が増える一因になります。低血糖とは、血液中の糖が下がりすぎ、ふらつきや冷や汗などが出る状態です。

たとえば、食事の量は変えていなくても、毎日の甘い飲み物や菓子が加われば、1日全体で食べた量は変わります。飲み物まで含めて振り返ると、無理に主食を減らす前に見直せる部分が見つかります。

長く飲んだときも、体重の差が続く例がある

長期の比較では、体重の差が2年後まで続いた例があります。飲み始めだけでなく、血糖が落ち着いたあとも体重の経過を見ていきましょう。

2年後の差は、2年間の増加量とは違う

メトホルミンで血糖が十分に下がらない2型糖尿病の814人を当初の対象とした前述の試験の延長報告では、104週時点でも差が続き、グリピジド群はダパグリフロジン群より平均5.1kg重い結果でした4)。この差にも、比較相手の薬で体重が減った分が含まれます。

長く飲む間に、体重の増え方が変わったり、一定になったりする経過も考えられます。研究の差を年数に応じて足して予測するのではなく、自分の経過は生活の変化と合わせて記録から判断します。

体重計に乗る条件をそろえる

体重は食事や水分、衣服によっても変わるため、測る時刻と服装をできるだけそろえると経過を比べやすくなります。朝の着替えの前など、普段の生活の中に測定を組み込む方法が続けやすいでしょう。

体重のほかに、薬の量が変わった日や食事・活動の変化も残しておくと役立ちます。この体重と暮らしの記録が、診察で話す土台になります。1回の上下より、同じ条件で測った値がどちらへ向かっているかに注目します。

急な増加にむくみが伴うときは別の原因も確認

少しずつ太ってきた経過と、急に体重が増えて足がむくむ経過は、分けて受け止めます。急な変化には体内に水分がたまる原因もあり、すべてをSU薬の影響と決めつけると、必要な診療が遅れます。

むくみや息苦しさを伴って体重が増えたときは、次の定期診察を待たずに医療機関へ連絡してください。強い息苦しさがあるときは、体重の記録をそろえるよりも緊急の受診を優先します。

体重への影響は、血糖を下げる効果と合わせて比べる

同じように血糖を下げる治療でも、体重への影響は薬のグループによって異なります。SU薬を続けるかどうかは、血糖を保てているか、低血糖が起きているかも合わせて判断します。

増えやすい薬と、変わりにくい薬の違い

SU薬との比較では、メトホルミンやDPP-4阻害薬は体重が変わりにくく、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は減る方向に働く薬として整理できます。名称は働き方で分けたグループ名で、処方の説明を聞くときは自分の薬がどれに当たるかを照らし合わせます。

薬のグループ体重への一般的な向き
SU薬増えやすい
メトホルミンおおむね変わりにくい
DPP-4阻害薬おおむね変わりにくい
SGLT2阻害薬減りやすい
GLP-1受容体作動薬減りやすい

この分類から、自分の体重が何kg変わるかまで予測するのは困難です。やせて食事量が少ない人には、体重を減らすことを優先した選び方が合うとは限りません。

DPP-4阻害薬は体重が増えにくい選択肢

DPP-4阻害薬は、SU薬と同程度に血糖を下げながら、体重増加や低血糖を起こしにくい傾向があります。体重の増加に加え、食事が遅れたときの体調変化も気になる人では、治療を検討するときの選択肢になります。

ただし、SU薬と一緒に飲んでいる場合は、DPP-4阻害薬を使っているという理由だけで低血糖への注意を外すのは危険です。薬の名前を1つだけ見ず、現在の処方全体を見て評価する必要があります。

体重を減らす利点と、今の血糖を保つ利点

体重が増えにくい薬への変更は、増加を抑える面や低血糖を減らす面で利点が見込めます。変更の適否は、今の血糖の下がり方や食事量、腎臓の働きなどと合わせて決まります。

一方、体重が増えたからといって、血糖を下げる治療そのものが不要になったわけではありません。飲み忘れを増やして体重を調整しようとすると、血糖が高い状態へ戻るおそれがあるため、処方どおりの服用を基本にします。

増えた脂肪は、血糖を保ちにくくする一因

体脂肪が増えるとインスリンが効きにくい状態へ傾くため、体重管理は、見た目に加えて血糖の良い状態を保つ助けにもなります。

インスリンが効きにくい状態と血糖の関係

インスリン抵抗性とは、インスリンが出ていても、筋肉などが糖を取り込みにくくなる状態です。とくにお腹の内側につく脂肪が増えると、この働きの低下に関わり、同じ量のインスリンでは血糖を下げにくくなります。

そのため、薬でインスリンを増やす治療を受けていても、食べる量と活動量の釣り合いが崩れれば血糖が上がる要因になります。体重と血糖は切り離さず、両方の変化を並べて見ると状況を整理しやすくなります。

体重が増え続けると血糖の維持にも負担がかかる

体重の増加でインスリンが効きにくくなると、せっかく下がった血糖を同じ治療で保つのが難しくなります。体重の増加を抑える工夫には、薬で得られた血糖の改善を支える意味もあります。

ただし、血糖の変化をすべて体重だけで説明するのは適切ではありません。膵臓から出るインスリンの量や食事の変化も関わるため、血糖が上がったときに本人の努力不足と決めつけず、体の状態と治療を合わせて見直します。

体重だけが減ればよいわけではない

体重が減っていても、筋肉が落ちているときや、高血糖で糖を尿へ失っているときは、望ましい変化とはいえません。食事が十分に取れているか、普段どおり動けるか、血糖が保たれているかも評価する対象です。

高齢の人や、もともとやせている人では、減量より食べる量と筋力を保つほうが優先される場合があります。以前より食べられず体重が落ちてきたときは、さらに食事を減らさず、その経過を主治医に伝えましょう。

食べる量と時間を整え、動ける時間を増やす

対策は、余分に食べている部分を見直し、続けられる活動を増やすことから始められます。SU薬の服用中は、急に食事を抜いたり運動を強めたりすると血糖が下がりすぎるため、変化を小さく重ねる方法が基本です。

主食を急に抜くより、1日全体の量を見直す

体重が増えたのを見ると、ご飯を大きく減らしたくなるかもしれません。まずは普段の食事に加わっている菓子や飲み物、何となく増えたおかわりを振り返ると、必要な栄養を削りすぎずに調整しやすくなります。

食事の中身は、主食だけに偏らず、主菜になる魚や肉などのおかずと野菜料理を組み合わせます。特定の食品だけを避ける方法より、1日を通じた量と食べる時間を整えるほうが、生活の中で続けやすい工夫です。

見直す点日常での工夫体重管理へのつながり
食べる量おかわりや菓子、飲み物を振り返る余分なエネルギーを減らす
食べる時間食事の間隔が大きく変わる日を把握食べ方の乱れを見つける
食事の中身主食・主菜・野菜料理を組み合わせる必要な栄養を保ちやすくする
歩く時間普段の移動で歩ける場面を増やす日常の消費エネルギーを増やす

表を使う前に体重を減らす必要があるかを確かめ、やせている人や食欲が落ちている人は、量を減らす欄を当てはめずに今の食事量を保ちます。

体を動かす量は、今の生活から少しずつ広げる

運動は長く歩ける人だけの対策ではなく、座り続ける時間を短くする工夫も出発点になります。買い物や家事など、普段できている活動を振り返り、体調に合う範囲で動く時間を増やします。

食事量が少ない日に、体重を落とそうとして急に運動を増やす組み合わせは避けたいものです。空腹時に無理をするより、食事と活動の予定をそろえたほうが、体調の変化にも気づきやすくなります。

食事や運動を大きく変える予定があるときは、開始前に具体的な変更内容を主治医と相談しましょう。生活が変わると、これまでの薬の量が合わなくなる可能性があります。

間食の扱いは、空腹感と低血糖を分けて決める

間食は、習慣として食べている分と、低血糖への対応として必要な分を区別します。薬を飲むために食べる量を増やしているなら、食事を我慢するより、処方との釣り合いを主治医と見直しましょう。

  • 食事の予定 … 食べる時刻が普段と変わる日の把握
  • 間食の記録 … 食べた量と、空腹感や症状の有無
  • 活動の記録 … 普段より長く動いた日や食事量が少なかった日の記載
  • 対処の準備 … 指示されている低血糖時の対応と補食の携帯

体重を気にして、低血糖への対処に必要な糖分まで控えるのは危険です。症状が出たときは、あらかじめ指示された対処を優先してください。

たとえば朝に自宅で測った体重が徐々に増え、夕方の間食も増えていると気づいたら、食べた量と理由をメモに残します。ふらつきを抑えるために食べているなら、単なる食べすぎとして我慢せず、症状と時間帯を医療機関へ伝えて薬との釣り合いを確認します。

SU薬の組み合わせは、体重の記録をもとに調整する

生活を整えても増加が続くときは、薬の組み合わせも見直します。自己判断で服用を減らさず、体重に加え、血糖や食事量の記録を材料にして調整します。

処方全体を見て、体重への影響を判断する

複数の薬を飲んでいる人では、SU薬だけでなく、一緒に使っている薬も含めて体重への影響を評価します。今の組み合わせで血糖がどの程度下がり、体重がどの方向へ動いたかが、治療を続けるか調整するかの判断に関わります。

体重への影響は薬の数よりも、それぞれの働きと量に関わります。薬の開始や中止、量の変更は、現在の処方と体の状態を把握した主治医の判断で行います。

診察では、増え始めた時期と暮らしの変化を伝える

診察に持参する記録には、体重の値に加えて、増え始めた時期も残しましょう。そこに薬を増やした時期と、食事や活動が変わった時期を並べます。体重が増えた頃の変化を照らし合わせると、調整する対象を絞りやすくなります。

伝える内容診察で役立つ理由
薬を始める前と現在の体重、増え始めた時期体重の回復か、その後の増加かを分けるため
薬の名前・量と、処方が変わった時期体重変化との時間的な関係を見るため
食事や間食の量、活動の変化生活で調整できる部分を見つけるため
血糖の記録と、ふらつきなどが出た時間血糖を下げすぎずに治療を組み立てるため

自己測定を行っている人は、その血糖の記録も持参しましょう。測定していない人も、体重と食事の変化が分かれば、診察時の検査値と合わせて話し合えます。

次に比べるのは、体重・血糖・食べられる量

治療を調整したあとは、体重が増えにくくなったかに加え、血糖を保てているか、必要な食事を取れているかを見ます。体重だけが減っても、食欲が落ちて力が入りにくくなっているなら、望んだ変化かどうかを主治医と確かめます。

また、ふらつきやぼんやりした様子が新たに出たときは、冷や汗がなくても血糖の下がりすぎを疑います。症状が繰り返す場合は定期診察を待たずに連絡し、普段どおり応答できない状態なら救急対応を求めてください。

よくある質問

Q
SU薬で太ったと感じたら、薬をやめてもよいですか?
A

体重が増えたという理由だけで、自己判断でSU薬をやめるのは避けてください。中止すると血糖が上がるおそれがあるため、今の治療で得られている効果と合わせて主治医と判断します。

まず、増え始めた時期と薬の変更時期、食事や活動の変化を記録します。増加が続く場合は、その記録を持って処方の調整を相談しましょう。

Q
SU薬を飲んでいても、食事と運動で体重を減らせますか?
A

体重が多めの人では、食事の量を見直し、体を動かす習慣を続けることが減量に役立ちます。服用中でも、食べる量と消費量の釣り合いを整える工夫には意味があります。

一方、急に食事を減らす方法は低血糖につながるため、大きく生活を変える前に薬の量も含めて相談しましょう。余分な飲み物やおかわりなど、普段の習慣を振り返るところから始められます。

Q
DPP-4阻害薬を一緒に飲めば、SU薬による体重増加を打ち消せますか?
A

DPP-4阻害薬の併用で、SU薬による体重増加を必ず打ち消せるわけではありません。DPP-4阻害薬自体は体重が増えにくい薬ですが、併用中の体重はSU薬の量や食事、活動量などにも左右されます。

Q
高齢でやせ気味でも、SU薬で増えた体重を減らすべきですか?
A

やせ気味の高齢の人では、増えた体重を一律に減らす必要はなく、食事と筋力を保つほうが優先される場合があります。高血糖で失っていた体重が戻った場合も、単純な太りすぎとは区別が必要です。

食事が取れているか、普段どおり歩けるかを合わせて見て、目標の体重を主治医と相談しましょう。むくみや息苦しさを伴う急な増加は、通常の体重回復として様子を見ず、医療機関への連絡が必要です。

参考にした文献