SGLT2阻害薬で痩せるのは、腎臓で血液へ戻るはずの糖が尿に出て、その分のエネルギーが体の外へ失われるためです。ただ、実際の減り方は平均で数キロ程度で、尿に出る糖のエネルギーから計算した値より小さくなります。

飲み始めてすぐに体重計の数字が下がると、脂肪が減ったと感じる方もいるでしょう。最初の変化には水分の減少も含まれ、服用中に食べる量が自然に増えることも痩せ方を左右します。

この記事では、SGLT2阻害薬で痩せる仕組み、尿に出る糖のエネルギーと実際の減量の差、水分・脂肪・筋肉の変化、血糖や腎臓の働きによる痩せ方の違いを解説します。

目次

糖を尿へ出すSGLT2阻害薬と体重の変化

SGLT2阻害薬は、腎臓が糖を血液へ戻す働きの一部を抑えます。糖とともにエネルギーが体の外へ出ていくため、血糖値の低下に加えて体重の減少につながります。

腎臓は糖をこしてから血液へ戻す

腎臓は血液をこし、老廃物や余分な水分を尿へ送る臓器です。血液中のブドウ糖もいったんこし出されますが、ふだんは尿ができる途中の細い管で回収され、血液の中へ戻ります。

この細い管を尿細管と呼び、その入り口に近い部分で糖の回収を担う運び手がSGLT2です。糖は体を動かす燃料なので、腎臓には尿へ捨てずに回収する働きが備わっています。

薬が糖の回収を抑えると尿糖が増える

薬を飲むと糖の回収が一部抑えられ、血液へ戻らなかった糖が尿と一緒に外へ出ます。尿に含まれる糖が「尿糖」であり、SGLT2阻害薬を飲んでいる間は薬の作用で増えるものです。

腎臓での動きふだんの状態服用した状態
血液からこし出された糖尿のもとになる液へ移動同じように移動
尿細管での糖の回収多くが血液へ戻る回収の一部が抑えられる
体に残るエネルギー回収した糖を利用尿に出た糖の分だけ減少

糖の回収をすべて止める作用ではなく、腎臓から尿へ流れる糖の一部を増やす仕組みです。食べたものがそのまま全部尿へ出るわけではありません。

体重減少の目安は数キロ程度

2型糖尿病の人86人がエンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)25mgを90週間服用した研究では、体重は平均3.2kg減ったと報告されています1)。体重の目安を捉えるなら、約21か月で数キロという平均の変化です。

この平均値を、体格や食べる量の違いも踏まえて、自分の経過と見比べる参考にしましょう。治療前からの血糖値と体重を一緒に記録し、緩やかな変化として見ていきます。

ジャディアンス錠とフォシーガ錠の電子添文(添付文書)には、糖尿病や条件に応じた慢性心不全・慢性腎臓病の効能、体重減少への注意が記載されています。肥満やダイエットは承認された効能に含まれず、体重がどれだけ減ったかだけで治療の良し悪しは決まりません。

尿に出る糖は体の外へ失われるエネルギー

尿へ出た糖は、体の中で燃料として使えなくなります。糖のエネルギー量から計算した減量と、体重計で実際に確認できる変化の間には大きな差があります。

尿糖のエネルギーは1日分を積み重ねて見る

糖が尿に出る作用が続けば、その分だけ体が食事から得たエネルギーを手放すことになります。尿に出る糖に相当するエネルギーは、前述の86人の服用条件では1日約206kcalと見積もられています。

尿糖の影響を捉えるときは、糖が持つエネルギーに注目します。計算に使うのは、尿の水分を含めた重さではなく、外へ出た糖のエネルギーです。尿量が増えた分を失った脂肪の重さとして数えると、水分の変化まで脂肪の減少に含めてしまいます。

また、1日約206kcalという値は、その研究の対象者と服用条件で得られた目安です。自分の尿糖に相当するエネルギーは、血糖値や腎臓の働きによって日ごとに変わります。

計算上の減量と実測値には開きがある

糖が尿に出て失われるエネルギーだけをもとにすると、前述の研究では90週間で11.3kg減ると数理モデルで予測されました。これは体のエネルギー収支を式で表した計算で、実際の平均3.2kg減とは隔たりがあります。

90週間の評価項目研究での値数字の意味
尿糖によるエネルギー損失1日約206kcal尿に出た糖のエネルギー
数理モデルで予測した体重減少11.3kg食べる量などの仮定を置いた計算
実際に測った体重減少平均3.2kg対象者86人の平均的な変化

この表の予測値は、服用する人が目標にする体重減少量ではありません。計算と実測の差は、薬が作用している間にも食事から入るエネルギーが変わりうることを示しています。

食べた分を薬で差し引く計算には使えない

食事の適切な量は、尿へ出た糖の量だけでなく、体格や日々の活動量も踏まえて決まります。食べる量が増えれば、尿から失われたエネルギーを補い、体の脂肪が減る幅を小さくするためです。

「糖が尿に出るから、その分は食べてもよい」と受け取ると、薬の働きと逆向きの変化が食事側で起こります。尿糖の数字は追加で食べられる量の目安ではなく、体重が動く理由を説明するための情報です。

計算ほど痩せないのは食べる量が増えるため

体が失ったエネルギーを補うように、服用中は食べる量が自然に増える傾向があります。尿へ糖を出す作用があっても、食事から入る分が増えると減量の幅は小さくなります。

空腹や少しずつの食べ足しが収支を変える

体重は、外へ出るエネルギーだけでなく、食事から入るエネルギーとの釣り合いで変わります。いつもの食事量を大きく変えたつもりがなくても、空腹に合わせて少しずつ食べ足すと、その釣り合いが変化します。

たとえば、ご飯のおかわりが増えたり、夕方のおやつを習慣にしたりすると、尿糖として失う分が食べ物で補われます。体重が減りにくいとき、尿に糖が出ていないと決めつける前に、食べる場面の変化も見直すと理由が見えてきます。

日本人でも気づかない摂取量の増加が見られる

日本の2型糖尿病の人107人がカナグリフロジン(商品名カナグル)100mgを1年間服用した研究でも、食事記録から推定した摂取エネルギーは開始前より増えていました2)。本人が意識して食事を増やさなくても、服用中に食べる量が変わりうることを示す結果です。

体重が思うように減らないと、薬を飲んでいるのにと落胆するかもしれません。体には失ったエネルギーを補う反応もあるため、意志の弱さだけで説明せず、何をどの場面で追加しているかに目を向けましょう。

食べ足しが起きる場面を振り返る

量の変化は、食事の回数よりも、おかわりや飲み物などの小さな追加に表れることがあります。ふだんの食事の見直しを組み合わせると、尿糖で失った分を食べ足しで補いにくくなり、減量につながりやすくなります。

  • 夕食前の空腹 … 帰宅後から夕食までに食べた間食も記録
  • 主食のおかわり … 茶わんや皿に最初に盛る量の変化を確認
  • 甘い飲み物 … 食事以外に飲んだ種類と量の把握

優先するのは、薬を飲み始めてから増えたものを見つけることです。食事全体を急に減らすより、変わった場面を特定すると、必要な栄養まで減らす判断を避けやすくなります。

夕食後、自宅で体重の記録がほとんど変わっていないと気づいたら、その日に追加したおやつや飲み物も一緒にメモして、次の受診で食事の量を相談しましょう。

SGLT2阻害薬を飲み始めた直後は水分も減る

飲み始めに体重が比較的早く下がるときは、脂肪だけでなく体の水分が減った影響も含まれます。体重計は水分と脂肪を区別しないため、減った速さと脂肪の減り方は、分けて見ます。

糖とともに尿へ移る水分が増える

糖が多く含まれる尿には、水分が引き寄せられます。この働きを浸透圧による利尿と呼び、糖を尿へ出す作用に伴って尿量が増える理由の1つです。

SGLT2阻害薬では塩分の一部も尿へ出るため、体にある水分の量が変わります。体重の早い変化には、この水分の出入りも重なり、食べる量が同じでも体重計の数字が動くことがあります。

初期の水分と継続中の脂肪を分けて捉える

飲み始めの体重減少には、脂肪が燃えた分と水分が減った分の両方が含まれます。続けていく中では、尿糖によるエネルギーの損失が積み重なり、体脂肪の減少も体重へ反映されます。

体重を見る時期減少に含まれるもの受け止め方
飲み始め水分の減少も含む早く減っても全量が脂肪とは限らない
服用を続けた期間体脂肪の減少も反映食事や血糖の変化と合わせて評価

実際に測る体重は水分と脂肪の変化を合わせた数字で、両者はある日を境に入れ替わらず、同時に進みます。最初と同じ勢いで下がり続けると想定すると、その後の緩やかな減り方を薬の効き目の低下と取り違えやすくなります。

体重の記録には測定条件と体調を添える

体重の推移を比べるには、測る時刻や衣服などをできるだけそろえると、水分や食事による日々の変動を読み取りやすくなります。1回の数字だけで判断せず、服用前からの記録に食欲や体調の変化も添えると、減り方を評価する材料になります。

体調が普段どおりで緩やかに減っているなら次の受診時に記録を見せ、急に体重が下がって立ちくらみや口の渇きも出たときは、減量が進んだと受け取らず当日中に処方元へ連絡してください。

糖が減ると体は脂肪を燃料に使う

尿へ糖を出す作用は、体が使う燃料の配分にも影響します。使える糖が減ると、蓄えていた脂肪を分解し、エネルギーとして利用する方向へ変わります。

使える糖の減少を脂肪で補う

体は食事から得た糖だけでなく、蓄えた脂肪も燃料に使っています。糖が尿に出て体に残る分が少なくなると、必要なエネルギーをまかなうために、脂肪を利用する割合が増える方向へ動きます。

脂肪の分解で取り出される「脂肪酸」は、筋肉などで燃料に使われる脂肪の構成成分です。SGLT2阻害薬による尿糖の増加から脂肪酸の利用へつながる変化が、体脂肪の減少を説明する仕組みの1つになります。

脂肪から作られるケトン体も増える

ケトン体は、脂肪が分解されたあと肝臓で作られ、脳や筋肉などのエネルギー源になる物質です。糖の代わりに脂肪を使う方向へ動くと、このケトン体の産生も増えます。

ジャディアンス錠とフォシーガ錠の電子添文では、血糖の管理が良好でも脂肪の利用が進み、ケトン体が増える状態が生じうるとされています。血糖が落ち着いていることと、脂肪の使われ方に変化がないことは同じ意味ではありません。

ケトン体が過剰に増えて血液が酸性に傾くケトアシドーシスでは、血糖値が高くなくても嘔吐や腹痛、息苦しさなどが出るため、こうした症状があれば直ちに医療機関を受診してください。

脂肪を使う割合と減る重さは同じではない

脂肪を燃料に使いやすくなる変化と、体脂肪が大幅に減る変化は、別のものです。燃料の配分は糖と脂肪のどちらを使うかという話で、実際に蓄えがどれだけ減るかは、食事から補われる量にも左右されます。

判断の中心になるのは、尿糖やケトン体の多さより、治療中の体重と血糖の推移です。ケトン体が増えた値を、痩せる効果の点数のように受け取ると、体調の変化を見落とすおそれがあります。

内臓脂肪や皮下脂肪が減り、筋肉の変化は分かれる

SGLT2阻害薬による体重減少では、体脂肪の減少が大きな部分を占めます。筋肉が保たれた日本人の研究もある一方で、筋肉も減る結果があり、減った重さのすべてを脂肪とみなすことはできません。

日本人の研究では脂肪が減り筋肉が保たれた

日本の2型糖尿病の人50人を対象とした6か月の研究では、ダパグリフロジン(商品名フォシーガ)5mgの服用で体重と体脂肪が減り、体を動かす骨格筋や腰の奥の大腰筋の量は保たれていたと報告されています3)。

この結果は、体重の減少がそのまま筋肉の減少を意味するわけではないと捉える助けになります。対象者の平均BMIは27.1で、身長に対する体重から算出する体格の指標では肥満に当たる集団でした。

内臓脂肪と皮下脂肪はどちらも減る方向

内臓脂肪はおなかの臓器の周囲に蓄えられる脂肪、皮下脂肪は皮膚のすぐ下でつまめる部分にもある脂肪です。SGLT2阻害薬では、どちらの脂肪も減る方向の変化が見られます。

2型糖尿病の人1,430人を含む18件の比較試験をまとめた解析では、内臓脂肪や皮下脂肪が減った一方、骨格筋量の減少も報告されています4)。筋肉への影響は、先ほどの日本人50人の結果と、対象者の異なるこの解析の結果を合わせて考えます。

体の組織ある場所・働き報告されている変化
内臓脂肪おなかの臓器の周囲減少する方向
皮下脂肪皮膚のすぐ下減少する方向
骨格筋腕や脚などを動かす筋肉保たれた研究も、減った研究もある

腹囲が細くなったときも、外から見た変化だけで内臓脂肪と皮下脂肪の減った割合を分けるのは難しく、筋肉の量は、体重とは別に体の組成を調べて評価します。

体脂肪と水分を含めて減った中身を見る

体重という1つの数字の内訳は、脂肪、筋肉、水分などです。日本人での体の組成の変化を踏まえても、減少の多くを脂肪が占めつつ水分も少し減るという捉え方が、薬の作用に沿っています。

体重が減った量と体脂肪が減った量に差があるときは、筋肉だけでなく水分が変わった影響も考慮します。水分の変化を含む重さと、脂肪という組織の量を分けて見ると、検査結果や体重の記録を読み違えにくくなります。

血糖と腎臓の働きでSGLT2阻害薬の痩せ方は変わる

同じ薬を飲んでも、尿に出る糖の量は血糖の高さと腎臓の働きによって変わります。腎臓でこし出される糖が少なければ、回収を抑えたときに尿へ出せる糖も少なくなるためです。

血糖が高いほど尿へ出る糖が多くなりやすい

血糖値は、血液中に含まれる糖の濃さを表す数値です。腎臓の働きが同程度なら、血糖が高い人ほど腎臓へ運ばれてこし出される糖が多くなり、SGLT2阻害薬によって尿へ出る量も増えやすくなります。

一方、治療で血糖が下がってくると、腎臓でこし出される糖も少なくなり、尿に出る量も開始時より減る方向へ変わります。体重が減る幅の違いは、薬そのものの違いだけでなく、服用する人の血糖の状態からも生まれます。

腎臓がこし出す量が少ないと尿糖も減る

腎臓のろ過能力が低下した人では、同じ血糖値でも尿のもとになる液へ移る糖の量が少なくなります。尿へ出る糖が少なければ、そこから失われるエネルギーも少なくなり、体重の減り方は小さくなりやすいという関係です。

腎臓の働きを見る検査値の1つがeGFRで、血液をこす力を推定した値を指します。この値と血糖の状態を合わせると、同じ量の薬を飲んでいても、ほかの人と痩せ方が違う理由を捉えやすくなります。

減り方が小さいときは血糖と腎機能も合わせて見る

体重があまり変わらないときは、血糖と腎臓の働きも合わせて薬の作用を見ましょう。尿へ出る糖が少なくなりやすい条件には、次のような違いがあります。

  • 治療前から血糖が比較的低い状態 … 腎臓へ運ばれる糖が少なめ
  • 治療に伴って血糖が改善した状態 … 開始時よりこし出される糖が減少
  • 腎臓のろ過能力が低下した状態 … 尿のもとになる液へ移る糖が減少

これらの条件がある人は、尿糖によるエネルギー損失が小さくなる点を踏まえ、処方の目的に沿った検査や症状から治療の経過を評価します。心不全や慢性腎臓病の治療として飲んでいる人は、その病気の経過を見ることが服用の目的の中心です。

体重が減らず気になるときは、服用前後の体重と血糖の記録を持参し、腎臓の検査値と処方の目的を次の受診で確認しましょう。

よくある質問

Q
SGLT2阻害薬を飲んで尿糖が陽性でも、血糖が悪化したとは限らないのですか?
A

はい、服用中の尿糖陽性は薬の作用によっても生じるため、その結果だけで血糖の悪化とは判断できません。陽性とは検査で糖が検出されたという意味で、糖を血液から尿へ出す働きと合っています。

血糖の状態は血液検査の血糖値などで評価するので、健診や別の医療機関で尿検査を受けるときも、服用している薬の名前を伝えましょう。

Q
SGLT2阻害薬では、脂肪そのものが尿に出るのですか?
A

いいえ、主に尿へ出るのは糖で、脂肪がそのまま流れ出る仕組みではありません。糖とともにエネルギーを失うと体が脂肪を燃料に使う割合が増え、その積み重ねが体脂肪の減少につながります。

Q
SGLT2阻害薬で体重が減らないときは、薬を増やしたほうがよいですか?
A

いいえ、体重が減らないことだけを理由に自分で薬の量を増やさず、処方どおりに飲みます。尿へ出る糖は血糖や腎臓の働きでも変わり、食べる量の増加が減量を小さくしていることもあります。

処方された量での経過を記録し、食事の変化と検査値を次の受診で相談しましょう。薬の量の変更は、体重だけでなく処方の目的や体調も踏まえて判断されます。

Q
糖尿病がなく、痩せるためにSGLT2阻害薬を希望する場合はどうすればよいですか?
A

まず内科で、体重と健康状態を踏まえた減量の相談をしましょう。肥満やダイエットはこの薬の承認された効能に含まれていないため、糖を尿に出す仕組みだけを理由に服用を決めないようにします。

糖尿病がなくても心不全や慢性腎臓病に対して処方されることはあるので、すでに服用している場合は処方の目的を確認しましょう。開始や中止は、体重を理由に自己判断せず、処方元と相談して決めます。

参考にした文献