DPP-4阻害薬は、偽薬と比べて副作用全体が大きく増えにくい糖尿病の飲み薬です。便秘やお腹の張り、鼻やのどの症状、関節の痛みが出たときは、症状の強さと続き方に合わせて、処方元へ伝える早さを決めます。

一方で、舌やのどの腫れ、強い息苦しさは救急要請の対象です。強い腹痛や繰り返す嘔吐、急な顔の腫れ、黄疸があれば、次の予約日を待たず当日中に受診してください。

この記事では、DPP-4阻害薬で起こりうるお腹の不調や鼻・のどの症状、関節の痛み、重大な副作用の初めのサインと、受診を急ぐ目安を解説します。

目次

DPP-4阻害薬の副作用は全体として多いか?

全体としては、薬の成分を含まない偽薬と比べ、副作用が大きく増える薬ではありません。起こる割合と、起きたときの重さは分けて考えます。

副作用全体の頻度と重い症状を分けて捉える

2型糖尿病の人にDPP-4阻害薬を18週以上使った67件の試験をまとめた解析では、副作用全体は偽薬と同じくらいだったと報告されています1)。

副作用全体という数字には、軽い不調も含まれます。全体の頻度が同程度でも、呼吸が苦しくなる症状や臓器の障害など、急いで対応すべき副作用には別に目を向けます。

薬の説明に重い病名が並ぶと、飲み続けるのが心配になるかもしれません。まず覚えておきたいのは、今の症状に合った受診の早さを選ぶという点です。

便秘や鼻の症状と重大な副作用の区分

ジャヌビア錠の電子添文は、薬の使用上の注意をまとめた添付文書で、便秘や鼻咽頭炎などを「その他の副作用」に挙げています。下の頻度はジャヌビア(シタグリプチン)の記載で、ほかのDPP-4阻害薬の頻度とは分けて読みます。

区分主な症状・病名頻度
その他の副作用便秘、お腹の張り、吐き気、鼻咽頭炎0.1~2%未満
その他の副作用発疹、湿疹0.1~2%未満
その他の副作用頭痛、関節痛、血管性浮腫頻度不明
重大な副作用間質性肺炎、イレウス、肝機能障害など頻度不明

「その他の副作用」という分類でも、顔の腫れなどは緊急の対応につながります。分類名だけで軽いと決めず、呼吸への影響を含めて判断します。

「頻度不明」は発生率を数字で示せないという意味

頻度不明とは、副作用が起きる割合を数字で示せるだけの情報がそろっていないという意味です。起こらないという意味でも、多くの人に起こるという意味でもありません。

0.1~2%未満という区分は、記載された各副作用の頻度の範囲です。症状同士が重なる場合もあるため、表の割合は足し算せず、それぞれの症状の頻度として読みます。

便秘やお腹の張りは、強さと続き方で対応を変える

軽い便秘や吐き気でも、続くときは処方元へ伝えましょう。腹痛や嘔吐が重なったときは自宅で様子を見る範囲を超えるので、症状の組み合わせにも目を向けます。

便の出方と食事への影響を記録する

お腹の不調を伝えるときは、排便の回数だけでなく、便の硬さや張りの程度、食事を取れているかも役立ちます。普段から便秘がある人では、服用後にどこが変わったかを具体的に言えると、薬との関係を検討しやすくなります。

記録の中心は、いつから・どれほど・生活への影響。便が出たかだけに注目すると、腹痛が強まっているのに気づきにくくなるため、痛みや吐き気も一緒に残します。

食事量や活動量の変化でも便通は変わるため、便秘の原因を自分で1つに決めて薬を抜くより、経過を伝えて服用や便秘への対応を主治医と決めるほうが安全です。

軽い不調と当日中に受診したい症状

家で経過を見られるかどうかは、痛みの強さに加え、食事や水分を取れるかで変わります。軽くても改善せず続く症状は、次の予約日まで我慢せず、診療時間内に処方元へ連絡する対象です。

症状経過を記録できる目安受診を急ぐ目安
便秘・お腹の張り軽く、食事が取れ、痛みが強まらない強い張り、続く腹痛、嘔吐を伴う
吐き気軽く、水分や食事が取れる繰り返し吐く、水分を保てない
腹部の不快感軽く、悪化せず、日常生活を送れる強い痛みが続く、急に悪化する

強い腹痛や繰り返す嘔吐があれば、便が出ていても受診を優先します。

強い張りや嘔吐があれば便秘薬を増やす前に受診

便秘に強いお腹の張りや続く腹痛、嘔吐が加わると、イレウスが疑われます。イレウスは腸の内容物が先へ進みにくくなる状態で、腸が詰まる腸閉塞も含まれます。

そのため、いつもの便秘と違って苦しいときに、手持ちの便秘薬を増やして待つ対応は避けてください。便秘薬を使っている場合も、名前と使った量を受診先に伝えると、症状の評価に役立ちます。

薬を飲んだあとに吐いた場合、吸収された量を自分で判断するのは難しく、追加で飲むかどうかは処方元が判断します。飲んだ時刻と吐いた時刻が分かるようにしておくと、服用について具体的な指示を受けやすくなります。

鼻やのどの症状、頭痛は薬だけが原因とは限らない

鼻やのどの症状、頭痛はDPP-4阻害薬の服用中にもみられます。風邪などでも起こるため、薬の副作用と即断するより、熱や息苦しさを伴うかを先に確かめましょう。

鼻咽頭炎は鼻やのどの風邪に似た症状

鼻咽頭炎は、鼻からのどの奥に炎症が起き、鼻水やのどの痛みなどが出る状態です。鼻炎や風邪と似た症状があるときも、服用中の薬との関係は経過を踏まえて判断されます。

2型糖尿病の人を対象とした短期間の試験をまとめると、DPP-4阻害薬で鼻やのどの風邪症状や頭痛がわずかに増えたとの報告があります2)。服用開始の時期や症状の経過も、原因を検討するときに使います。

頭痛は始まった時刻と生活への影響が大切

頭痛があるときは、いつ始まったか、普段の頭痛と同じか、食事や仕事を続けられる強さかを整理します。痛み止めで一時的に楽になっても、繰り返しているなら、その経過を処方元に伝えておくと診察に役立ちます。

たとえば、服用を始めてから頭痛が続き、市販の痛み止めを使う日が増えた場合は、薬の名前と使用回数をメモして診療時間内に相談しましょう。頭痛そのものに別の治療が必要かも評価されます。

突然の激しい頭痛や、ろれつが回らない症状を伴う頭痛では、薬の副作用かどうかを調べる前に緊急の診察が必要です。

咳に息苦しさや発熱が加わったとき

咳に息苦しさや発熱を伴う場合は、鼻やのどだけの不調として待たず、当日中の受診が必要です。DPP-4阻害薬の重大な副作用には肺の炎症も含まれ、風邪と似た始まり方をするためです。

普段の室内移動でも息が切れる、座っていても呼吸が苦しいといった変化は、電話でも最初に伝える情報です。薬をいつ始めたかが分からなくても、そのまま受診して構いません。

DPP-4阻害薬を単独で飲むと低血糖は起こりにくい

DPP-4阻害薬だけで治療する場合、低血糖は起こりにくいとされています。低血糖とは血液中の糖が下がりすぎた状態です。起こりにくさとは別に、症状が出たときの対応も知っておきます。

低血糖の少なさは薬を比べるときの特徴

2型糖尿病の人を対象にDPP-4阻害薬とSU薬を比べた36件の試験をまとめた解析では、単独で使う場合も低血糖はDPP-4阻害薬のほうが少ないと報告されています3)。SU薬は、体からインスリンという血糖を下げるホルモンを出す働きを促す飲み薬です。

日々の治療では、この特徴を踏まえながら、血糖の経過と体調を見て服用を続けます。単独で飲んでいても、冷汗や強い空腹感などの変化に気づいたら、その時刻と様子を控えておきましょう。

頻度の数字は使い方と合わせて読む

低血糖4.2%というジャヌビア錠の電子添文の数字は、使用条件と併せて読みます。この数字だけで単独服用時の確率を判断せず、ほかに使っている糖尿病薬も含めて捉えます。

SU薬やインスリンと一緒に使うと低血糖が起こりやすくなるため、お薬手帳で併用の有無を確かめましょう。

  • DPP-4阻害薬だけを使用 … 単独の処方か、別の糖尿病薬もあるか
  • SU薬を併用 … 低血糖が起こりやすくなる組み合わせ
  • インスリンを併用 … 注射も含めた処方全体の把握

錠数だけでは単独かどうかを判断できず、注射や別の医療機関からの処方も確認の対象です。

体調の変化がある間の運転は避ける

低血糖が疑われる体調の変化があるときは、そのまま車の運転や高い所での作業を続けないでください。受診先まで自分で運転することも避け、症状を伝えたうえで移動方法を決めます。

「薬を飲む前にも似た不調があった」という情報も、診察では役立ちます。症状が出た時刻に加え、測定できていれば血糖値を伝えると、低血糖を含めて原因を評価しやすくなります。

関節の痛みと顔の腫れでは受診の早さが違う

新しい関節の痛みは処方元へ相談し、急に顔や唇が腫れた場合はさらに急いで対応します。どちらも注意したい症状ですが、呼吸への影響の有無が緊急性を大きく変えます。

関節痛は痛む場所と生活の支障を伝える

2型糖尿病の79,110人を対象とした67件の試験の解析ではDPP-4阻害薬で関節痛がわずかに増え、症例報告をまとめた総説では薬の中止後に改善した例が記載されています4)5)。

関節の痛みが出たときは、膝や指など痛む場所に加え、歩く、物を持つといった動作への影響を記録します。薬との関係は主治医が判断し、必要に応じて中止や変更が検討されます。

一方、関節痛には薬以外の原因もあり、赤く腫れて熱を持つ、発熱を伴う、動かせないほど痛む場合は当日中の診察が必要です。自分で服用を止めたり再開したりして反応を試す方法は避けます。

血管性浮腫は唇やまぶたなどの急な腫れ

血管性浮腫は、皮膚や粘膜の深い部分が腫れ、唇やまぶた、舌などが急に膨らむ状態です。のどまで腫れると空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなるおそれがあります。

舌やのどの腫れ、息苦しさがある場合は、すぐに救急要請してください。かゆみの強さだけで軽いアレルギーと判断せず、声の出しにくさや飲み込みにくさも受診先に伝えます。

症状出方・注意する状況受診の目安
関節の痛み新しい痛み、歩行や手の動作への支障続く場合は処方元へ連絡、強い痛みや発熱は当日受診
顔や唇の腫れ急な腫れ、ACE阻害薬の併用呼吸症状がなくても当日受診、舌やのどの腫れは救急要請

顔の腫れが先に出て、あとから呼吸に影響することもあるため、息ができているうちに受診へつなげます。

ACE阻害薬を使っている人は飲み合わせに注意

ACE阻害薬は、血圧を下げる薬の一群です。エクア(ビルダグリプチン)の試験では、ACE阻害薬を併用している人で血管性浮腫が増える可能性が示されていますが、発生はまれでした6)。

エクア錠の電子添文にも、この組み合わせへの注意が記載されています。血圧の薬を使っている人は、お薬手帳を見せて「ACE阻害薬が含まれているか」を主治医や薬剤師に確認しましょう。

症状がなければ自己判断で血圧の薬を抜かず、現在の処方で注意する症状を共有しておきます。薬の組み合わせに注意が必要でも、そのまま中止すべきかは個別に判断されます。

DPP-4阻害薬で見逃したくない重大な症状

重大な副作用については、頻度の数字に加えて、初めに現れる症状を知っておきましょう。頻度不明の項目も多く、一律に何人に1人と示すより、症状が出たときに受診へつなぐ備えが役立ちます。

強い腹痛や水ぶくれなど、初めのサイン

次の一覧は、ジャヌビア錠などの電子添文に記載された重大な副作用と、受診につなげたい症状です。症状が似ていても原因は複数あるため、一覧だけで病名が決まるわけではありません。

重大な副作用最初に気づきたい症状
急性膵炎膵臓の急な炎症で、持続する激しい腹痛や嘔吐が現れます。
類天疱瘡皮膚に水ぶくれや、皮膚がむけたただれが現れる病気です。
イレウス強い便秘、お腹の張り、続く腹痛、嘔吐
間質性肺炎咳、息苦しさ、発熱
肝機能障害・黄疸強いだるさや、白目・皮膚が黄色くなる変化
横紋筋融解症筋肉が傷む病気で、筋肉痛や力の入りにくさ

強い症状や普段と明らかに違う変化があれば、症状がすべてそろう前でも受診しましょう。

息苦しさや黄疸は当日中に受診する

間質性肺炎は、肺で酸素を取り込む部分の周囲に炎症が起きる病気です。咳や発熱に息切れが加わったときは、薬を服用中であることも含めて受診先へ伝えます。

肝機能障害は肝臓の働きが損なわれる状態で、血液検査で異常が分かる場合もあります。白目や皮膚が黄色くなる黄疸に気づいた場合は、次の採血日を待たず当日中に受診してください。

エクア(ビルダグリプチン)の服用中に黄疸など肝臓の障害が疑われた場合は、中止を含めた対応が必要です。回復後の再使用を避ける注意もあるため、残薬を自分で再開することは避けます。

発疹やかゆみも範囲と変化を残す

皮膚の副作用には、発疹や湿疹、かゆみなどがあります。ジャヌビア錠では発疹と湿疹は0.1~2%未満、かゆみやじんましんは頻度不明とされ、皮膚の症状も種類ごとに頻度を読み分けます。

皮膚の変化は目に見えるので、広がった範囲や始まった日を写真に残しておきましょう。発熱を伴って皮膚が広く赤くなる、皮膚がむける、目や口の中にもただれがある場合は、重い皮膚障害を疑って当日中の受診が必要です。

トラゼンタ(リナグリプチン)やテネリア(テネリグリプチン)を飲んでいる人も、新しい皮膚の変化は受診時に伝える対象です。薬名が違うから大丈夫と決めず、出ている症状に応じて対応します。

副作用かもしれないときの連絡と受診

受診の早さは、呼吸や意識への影響を最優先に決めます。薬が原因かどうか分からない段階でも、症状の強さや変化をそのまま伝えれば診察につながります。

呼吸が苦しい、反応が悪いときは救急要請

急な強い息苦しさや意識の異常がある場合は、予約や通常の診療時間を待たず119番で救急要請してください。家族がそばにいる場合は、本人の呼吸や反応の変化を最初に伝えます。

  • すぐに救急要請 … 舌やのどの腫れ、強い息苦しさ
  • すぐに救急要請 … 呼びかけへの反応が悪い、意識を失う
  • 当日中に受診 … 強い腹痛、繰り返す嘔吐、急な顔の腫れ
  • 当日中に受診 … 咳と息切れ・発熱、黄疸、広い範囲の皮膚のただれ

症状が急速に悪化している場合や、自力で移動できない場合は、「当日中」の症状でも救急要請を優先します。

次の予約を待たず処方元に連絡する目安

便秘や頭痛などが軽くても、続いている、悪化している、食事や日常生活に支障が出ている場合は、診療時間内に処方元へ連絡します。何日待てるかという区切りより、普段の生活が保てているかで判断します。

たとえば、自宅で朝の薬を飲んだあと、家族が普段と違う唇の腫れに気づいた場面なら、その日のうちに受診先へ連絡します。声が変わったり呼吸が苦しくなったりしていれば、薬袋を探すより先に救急要請へ切り替えます。

次の服用時刻が近い場合は、症状と薬名を伝えて、次の1回をどうするか指示を受けてください。重大な副作用が疑われる場面では中止を含めた判断が必要で、服用を続けながら予約日まで待つ対応は避けます。

薬の名前と症状の経過を受診先へ伝える

連絡時には、お薬手帳や薬袋にある販売名、最後に飲んだ時刻、症状が始まった時刻を伝えると話が進みやすくなります。電話で薬名を読み上げにくければ、受診時に現物を持参する方法もあります。

  • 薬の情報 … 販売名、1回の量、開始時期、最後に飲んだ時刻
  • 症状の経過 … 始まった時刻、強くなったか、繰り返すか
  • 生活への影響 … 食事や水分、呼吸、歩行に困っている点
  • ほかの薬 … 血圧の薬、市販薬を含む使用中の薬

急いでいるときは、まず今ある症状を伝え、分かる情報はあとから足していけば十分です。

よくある質問

Q
DPP-4阻害薬を飲み始めて便秘になったら、中止したほうがよいですか?
A

軽い便秘だけで自己判断の中止をせず、普段との違いや腹痛の有無を処方元へ伝えて、服用を続けるか判断を受けます。便が出た日や食事の量も、便秘への対応を検討する際に役立ちます。

強い張りや続く腹痛、嘔吐がある場合は、次の予約を待たず当日中に受診してください。便秘薬を増やして様子を見る対応は避けます。

Q
鼻水が出たら、DPP-4阻害薬の副作用でしょうか?
A

鼻水だけでは、薬の副作用か風邪などかは判断できません。服用を始めた時期と症状が出た時期を記録し、長引く場合は診療時間内に処方元へ伝えます。

咳に息苦しさや発熱を伴う場合は、鼻だけの不調と考えず当日中の受診が必要です。薬との関係を自分で確かめるために、飲んだり抜いたりする対応は避けます。

Q
関節の痛みは、薬をやめれば必ず改善しますか?
A

薬が原因なら中止後に改善する例がありますが、関節そのものの病気が原因なら別の治療が必要です。痛む場所と生活への影響を処方元に伝え、中止や変更は主治医と相談して決めます。

Q
顔が腫れても、息苦しくなければ次の診察まで待てますか?
A

急に顔や唇が腫れた場合は、息苦しさがなくても次の予約を待たず、当日中に受診してください。受診先にはDPP-4阻害薬と血圧の薬の使用状況を伝えます。

舌やのどの腫れ、声の出しにくさ、呼吸の苦しさが加わった場合は救急要請が必要です。自分で運転して受診することは避けます。

参考にした文献