縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)とは、胸腔の中央部分にある縦隔という場所に発生する腫瘍の総称です。

縦隔には、心臓、大血管、気管、食道、リンパ節などの重要な器官が存在しているため、この部位に腫瘍ができると様々な症状が現れます。

縦隔腫瘍は、良性のものから悪性のものまで様々な種類があり、発生する部位や腫瘍の種類によって症状や進行の速さが異なります。

代表的な症状としては、胸痛、呼吸困難、咳、発熱などがありますが、初期には無症状のこともあるため注意が必要です。

縦隔腫瘍の病型と特徴

縦隔腫瘍には様々な病型があり、それぞれ特徴が異なります。

胸腺腫瘍

胸腺腫瘍(きょうせんしゅよう)は、胸腺に発生する腫瘍の総称で、胸腺腫と胸腺癌に大別されます。

胸腺腫は、胸腺上皮細胞由来の腫瘍で、比較的予後が良好な低悪性度腫瘍です。一方、胸腺癌は、胸腺上皮細胞由来の高悪性度腫瘍で、予後不良な場合が多いです。

病型特徴
胸腺腫低悪性度、予後良好
胸腺癌高悪性度、予後不良

胚細胞性腫瘍

胚細胞性腫瘍は、生殖細胞由来の腫瘍で、主に若年者に発生します。代表的なものには、奇形腫、精上皮腫、絨毛癌などがあります。

リンパ腫

縦隔に発生するリンパ腫には、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫があります。

ホジキンリンパ腫は、若年者に多く、予後は比較的良好です。非ホジキンリンパ腫は、高齢者に多く、予後は病型によって異なります。

リンパ腫の種類好発年齢予後
ホジキンリンパ腫若年者比較的良好
非ホジキンリンパ腫高齢者病型により異なる

神経原性腫瘍

神経原性腫瘍は、神経細胞や神経鞘細胞に由来する腫瘍で、以下のような種類があります。

  • 神経鞘腫
  • 神経線維腫
  • 傍神経節腫
  • 神経芽腫

多くは良性腫瘍ですが、悪性のものもあります。

間葉系腫瘍

間葉系腫瘍は、間葉系組織由来の腫瘍で、脂肪腫、平滑筋腫、血管腫などがあります。多くは良性腫瘍ですが、まれに悪性のものもあります。

間葉系腫瘍の種類由来組織
脂肪腫脂肪組織
平滑筋腫平滑筋
血管腫血管

その他の腫瘍

上記以外にも、縦隔には様々な腫瘍が発生する可能性があります。転移性腫瘍や、原発不明癌などがその例です。

このように、縦隔腫瘍には多様な病型が存在し、それぞれ特徴が異なります。正確な診断のためには、画像検査や病理検査が必要不可欠です。

主症状と病型別の特徴

縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)の主症状は、腫瘍の大きさ、位置、浸潤の程度によって異なりますが、一般的には呼吸困難、咳、胸痛、発熱などがあります。しかし、症状がない場合もあるため、注意が必要です。

胸腺腫瘍の症状

胸腺腫瘍は、縦隔腫瘍の中で最も頻度が高く、重症筋無力症を合併することがあります。その他の症状としては、呼吸困難、咳、胸痛などがあります。

症状頻度
重症筋無力症30-50%
呼吸困難20-30%
10-20%
胸痛10-20%

胚細胞性腫瘍の症状

胚細胞性腫瘍は、若年者に多く、腫瘍マーカーの上昇を伴うことがあります。症状としては、呼吸困難、咳、胸痛、発熱などがあります。

リンパ腫の症状

リンパ腫は、縦隔に発生するリンパ系腫瘍で、主に若年者に多くみられます。症状としては、呼吸困難、咳、胸痛、発熱、体重減少などがあります。

症状頻度
呼吸困難30-40%
20-30%
胸痛20-30%
発熱10-20%
体重減少10-20%

神経原性腫瘍の症状

神経原性腫瘍は、神経系組織から発生する腫瘍で、良性のことが多いですが、悪性の場合もあります。症状としては、背部痛、脊髄圧迫症状などがあります。

  • 背部痛
  • 脊髄圧迫症状(感覚障害、運動障害など)
  • Horner症候群(片側の眼瞼下垂、縮瞳、発汗減少)

その他の腫瘍の症状

間葉系腫瘍や、その他の稀な腫瘍の症状は、腫瘍の種類や位置によって様々ですが、呼吸困難、咳、胸痛、発熱などの症状を呈することがあります。

腫瘍の種類主な症状
間葉系腫瘍呼吸困難、咳、胸痛
奇形腫呼吸困難、咳、胸痛、発熱
脂肪腫無症状のことが多い

縦隔腫瘍の症状は、腫瘍の種類や進行度によって異なるため、早期発見と適切な診断が重要です。

原因

縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)の多くは原因不明ですが、一部の腫瘍では遺伝的要因や環境因子との関連が示唆されています。また、免疫システムの異常が関与している可能性もあります。

胸腺腫瘍の原因

胸腺腫瘍の正確な原因は不明ですが、自己免疫疾患との関連が示唆されています。特に、重症筋無力症との関連が強く、胸腺腫瘍患者の約30〜50%に重症筋無力症を合併するとされています。

関連する自己免疫疾患頻度
重症筋無力症30-50%
赤芽球癆5-10%
低ガンマグロブリン血症5-10%

胚細胞性腫瘍の原因

胚細胞性腫瘍は、胎児期の胚細胞が何らかの理由で残存し、悪性化することで発生すると考えられています。リスク因子としては、以下のようなものがあります。

  • Klinefelter症候群などの性染色体異常
  • 停留精巣
  • 精巣腫瘍の既往

リンパ腫の原因

縦隔に発生するリンパ腫の原因は、他の部位のリンパ腫と同様に、多くの場合は不明です。しかし、以下のような因子がリスクを上昇させる可能性があります。

リスク因子詳細
免疫抑制状態HIV感染、臓器移植後、自己免疫疾患治療などによる
ウイルス感染EBウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)など
遺伝的素因家族性リンパ腫、免疫不全症候群など

神経原性腫瘍の原因

神経原性腫瘍は、神経堤細胞から発生すると考えられています。

一部の神経原性腫瘍では、遺伝的要因が関与しているとされています。例えば、神経線維腫症1型(NF1)では、神経原性腫瘍の発生リスクが高くなります。

その他の腫瘍の原因

間葉系腫瘍や奇形腫などのその他の縦隔腫瘍の原因は、多くの場合は不明です。しかし、一部の腫瘍では遺伝的要因や環境因子との関連が示唆されています。

腫瘍の種類関連する因子
脂肪肉腫遺伝的要因、放射線被爆
血管肉腫胸部放射線治療の既往
奇形腫胚細胞の残存と悪性化

縦隔腫瘍の原因やリスク因子は、腫瘍の種類によって異なります。多くの場合は原因不明ですが、遺伝的要因や環境因子、免疫システムの異常などが関与している可能性があります。

縦隔腫瘍の早期発見と予防のためには、定期的な健康診断と、リスク因子を持つ人への適切な管理が重要です。

縦隔腫瘍の診察と診断方法

縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)の診察と診断には、問診、身体診察、画像検査、血液検査、組織診断などを組み合わせて行います。

各検査結果を総合的に評価し、腫瘍の種類や進行度を正確に診断することが、適切な治療方針の決定につながります。

問診と身体診察

縦隔腫瘍の診察では、まず問診で症状や既往歴、家族歴などを確認します。身体診察では、胸部の聴診や触診、リンパ節の腫脹の有無などを確認します。

問診項目身体診察項目
症状(呼吸困難、咳、胸痛など)胸部の聴診・触診
既往歴(自己免疫疾患、悪性腫瘍など)リンパ節腫脹の有無
家族歴(神経線維腫症、悪性腫瘍など)全身状態の評価

画像検査

縦隔腫瘍の診断には、胸部X線、CT、MRI、PET-CTなどの画像検査が重要です。これらの検査により、腫瘍の位置、大きさ、周囲組織への浸潤の有無などを評価します。

  • 胸部X線:腫瘍の存在を示唆する異常陰影の有無を確認
  • 胸部CT:腫瘍の位置、大きさ、周囲組織への浸潤の有無を評価
  • 胸部MRI:腫瘍と周囲組織との関係をより詳細に評価
  • PET-CT:腫瘍の悪性度や転移の有無を評価

血液検査

縦隔腫瘍の診断に有用な血液検査として、腫瘍マーカーや自己抗体の測定があります。腫瘍の種類によって、特徴的な腫瘍マーカーが上昇することがあります。

腫瘍の種類関連する腫瘍マーカー
胚細胞性腫瘍AFP、β-hCG、LDH
胸腺腫瘍抗アセチルコリン受容体抗体(重症筋無力症合併時)
リンパ腫可溶性IL-2受容体

組織診断

確定診断のためには、腫瘍組織の採取と病理学的診断が必要です。組織採取には、経皮的針生検、縦隔鏡下生検、開胸生検などの方法があります。

生検方法適応
経皮的針生検比較的小さく、周囲組織への浸潤がない腫瘍
縦隔鏡下生検リンパ節腫脹を伴う腫瘍、浸潤が疑われる腫瘍
開胸生検他の方法で診断が困難な場合

採取した組織は、病理医による詳細な検査を行い、腫瘍の種類や悪性度を判定します。また、免疫組織化学染色などの特殊染色により、腫瘍の起源や特徴を明らかにします。

縦隔腫瘍の画像所見と特徴

縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)の画像診断には、主に胸部X線、CT、MRIが用いられ、腫瘍の位置、大きさ、周囲組織への浸潤の有無などを評価します。

腫瘍の種類によって特徴的な画像所見があり、これらを理解することが正確な診断につながります。

胸部X線所見

胸部X線は、縦隔腫瘍の初期評価に用いられます。腫瘍が大きい場合は、縦隔の拡大や腫瘤影として認められます。

腫瘍の種類胸部X線所見
胸腺腫前縦隔の腫瘤影、石灰化を伴うことがある
奇形腫前縦隔の腫瘤影、石灰化や脂肪成分を含むことがある
神経原性腫瘍後縦隔の腫瘤影、椎間孔の拡大を伴うことがある
Case courtesy of Paresh K Desai, Radiopaedia.org. From the case rID: 13837

所見:右第2弓・横隔膜にシルエットサイン陰影の腫瘤影を認め、後縦隔腫瘍が疑われる。

CT所見

胸部CTは、縦隔腫瘍の詳細な評価に有用です。腫瘍の位置、大きさ、内部構造、周囲組織への浸潤の有無などを評価できます。

  • 胸腺腫:前縦隔に位置する境界明瞭な腫瘤、造影効果を示すことが多い
  • 胚細胞性腫瘍:嚢胞性成分と充実性成分が混在する腫瘤、石灰化を伴うことがある
  • リンパ腫:境界不明瞭な腫瘤、周囲リンパ節腫脹を伴うことが多い
腫瘍の種類CT所見
胸腺癌不整形な腫瘤、周囲組織への浸潤を伴うことが多い
脂肪肉腫脂肪成分を含む不均一な腫瘤
血管肉腫血管に沿って進展する腫瘤、造影効果を示す
Juanpere, Sergi et al. “A diagnostic approach to the mediastinal masses.” Insights into imaging vol. 4,1 (2013): 29-52.

所見:47歳の胸腺脂肪腫。前縦隔右側に脂肪濃度主体だが、少量の薄い線維性隔壁を含む大きく境界明瞭な腫瘤(矢印)を認める。

MRI所見

胸部MRIは、腫瘍と周囲組織との関係をより詳細に評価できます。神経原性腫瘍や血管肉腫などの評価に有用です。

腫瘍の種類MRI所見
神経原性腫瘍T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す腫瘤
血管肉腫血管に沿って進展する腫瘤、T2強調像で高信号を示す
奇形腫脂肪成分や嚢胞成分を含む不均一な腫瘤
Nakazono, Takahiko et al. “MRI Findings and Differential Diagnosis of Anterior Mediastinal Solid Tumors.” Magnetic resonance in medical sciences : MRMS : an official journal of Japan Society of Magnetic Resonance in Medicine vol. 22,4 (2023): 415-433.

所見:高リスク(B3型)胸腺腫(正岡病期III) a) T2強調像で、前縦隔に不整形腫瘤(矢印)を認める。周囲被膜と内部隔壁は認められない。b)拡散強調像(b = 1000 s/mm2)では腫瘤(矢印)の高信号を示す。 c)腫瘤(矢印)内の平均ADC値はADCマップ上で1.14×10-3 mm2/sであった。d~f)造影剤注入開始180秒後では腫瘤の不均一で持続的な増強パターンを示す(矢印)。

PET-CT所見

PET-CTは、腫瘍の悪性度や転移の有無を評価できます。悪性腫瘍では、腫瘍部位にFDGの集積亢進を認めます。

胸腺癌腫瘤部位にFDGの強い集積を認める
悪性リンパ腫腫瘤部位と周囲リンパ節にFDGの集積を認める
転移性腫瘍原発巣と転移巣にFDGの集積を認める
Morita, Takahiro et al. “Assessment of Mediastinal Tumors Using SUVmax and Volumetric Parameters on FDG-PET/CT.” Asia Oceania journal of nuclear medicine & biology vol. 5,1 (2017): 22-29.

所見:(A)造影CTでは、境界明瞭でやや不均一な造影効果呈する前縦隔腫瘍(矢印)を認め、(B)PET/CTでは、FDGの強い集積亢進を認め、胸腺癌を疑う所見である。

治療方法と薬、治癒までの期間

縦隔腫瘍の治療は、腫瘍の種類、進行度、全身状態などを考慮して、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて行われます。

治癒までの期間は、腫瘍の種類や進行度によって異なりますが、早期発見と適切な治療が重要です。

胸腺腫瘍の治療

胸腺腫の治療は、手術が第一選択となります。完全切除が可能な場合は、予後が良好です。

病期治療方法5年生存率
I-II期手術90-95%
III期手術+放射線療法または化学療法70-80%
IV期化学療法+放射線療法50-60%

胸腺癌の治療は、手術に加えて、化学療法や放射線療法を組み合わせることが多いです。化学療法には、シスプラチンやドキソルビシンなどが用いられます。

胚細胞性腫瘍の治療

胚細胞性腫瘍の治療は、腫瘍マーカーの推移を見ながら、化学療法と手術を組み合わせて行います。化学療法には、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンなどが用いられます。

病期治療方法治癒率
I-II期手術+化学療法90%以上
III-IV期化学療法+手術70-80%

リンパ腫の治療

縦隔に発生するリンパ腫の治療は、化学療法が中心となります。

ホジキンリンパ腫では、ABVD療法(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)が標準的です。

非ホジキンリンパ腫では、R-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)が広く用いられています。

病期治療方法5年生存率
I-II期化学療法+放射線療法80-90%
III-IV期化学療法60-70%

神経原性腫瘍の治療

神経原性腫瘍の治療は、手術が第一選択となります。良性腫瘍では、完全切除により治癒が期待できます。

悪性腫瘍では、手術に加えて、化学療法や放射線療法を行うことがあります。

  • 神経鞘腫:手術による完全切除が可能なことが多い
  • 神経節細胞腫:手術+化学療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシドなど)
  • 悪性リンパ腫:化学療法+放射線療法

その他の腫瘍の治療

間葉系腫瘍や奇形腫などのその他の縦隔腫瘍の治療は、腫瘍の種類や進行度によって異なります。

良性腫瘍では、手術による完全切除が可能なことが多いです。悪性腫瘍では、手術に加えて、化学療法や放射線療法を組み合わせることがあります。

治療の副作用やデメリット(リスク)

縦隔腫瘍の治療では、手術、化学療法、放射線療法などが行われますが、それぞれに副作用やリスクが伴います。

治療による利益と副作用・リスクを十分に理解した上で、適切な治療方針を選択することが重要です。

手術の副作用とリスク

縦隔腫瘍の手術では、出血、感染、神経損傷などの合併症が起こる可能性があります。また、手術侵襲による全身状態の悪化や、術後の呼吸機能低下なども懸念されます。

合併症頻度
出血1-5%
感染1-3%
神経損傷1-2%
呼吸機能低下5-10%

化学療法の副作用とリスク

縦隔腫瘍に対する化学療法では、骨髄抑制、悪心・嘔吐、脱毛、末梢神経障害などの副作用が生じることがあります。また、化学療法による免疫力の低下に伴う感染症のリスクも増加します。

  • 骨髄抑制:白血球減少、貧血、血小板減少など
  • 消化器症状:悪心、嘔吐、下痢、口内炎など
  • 脱毛:一時的な脱毛が生じることがある
  • 末梢神経障害:手足のしびれ、感覚異常など
副作用頻度
骨髄抑制30-50%
悪心・嘔吐50-80%
脱毛10-20%
末梢神経障害10-30%

放射線療法の副作用とリスク

縦隔腫瘍に対する放射線療法では、放射線肺臓炎、食道炎、心臓障害などの副作用が生じる可能性があります。また、放射線による二次がんの発生リスクも長期的な懸念事項です。

副作用頻度
放射線肺臓炎5-10%
食道炎10-20%
心臓障害1-5%

治療後の長期的リスク

縦隔腫瘍の治療後は、再発や転移のリスクがあるため、定期的な経過観察が必要です。治療による晩期合併症にも注意が必要です。

  • 二次がんの発生リスク
  • 内分泌機能障害(甲状腺機能低下症、性腺機能低下症など)
  • 心血管疾患のリスク増加
  • 呼吸機能障害の遷延化

再発の可能性と予防の仕方

縦隔腫瘍は、治療後も再発のリスクがあるため、定期的な経過観察と再発予防のための生活習慣の改善が重要です。

再発リスクは腫瘍の種類や進行度によって異なりますが、早期発見と適切な対応により、再発による影響を最小限に抑えることが可能です。

腫瘍別の再発リスク

胸腺腫瘍の再発リスクは、病期や切除縁の状態によって異なります。完全切除が行われた場合、再発率は10-20%程度です。

病期5年再発率
I-II期5-10%
III期20-30%
IV期40-50%

胚細胞性腫瘍の再発リスクは、腫瘍マーカーの推移と密接に関連します。適切な治療により、再発率は10-20%程度に抑えられます。

リンパ腫の再発リスクは、病期や組織型によって異なります。ホジキンリンパ腫の再発率は10-20%程度、非ホジキンリンパ腫では20-30%程度です。

病期ホジキンリンパ腫の5年再発率非ホジキンリンパ腫の5年再発率
I-II期5-10%10-20%
III-IV期20-30%30-40%

神経原性腫瘍の再発リスクは、腫瘍の悪性度によって大きく異なります。良性腫瘍では再発は稀ですが、悪性腫瘍では再発率が高くなります。

再発予防のための生活習慣

縦隔腫瘍の再発予防には、以下のような生活習慣の改善が推奨されます。

禁煙喫煙は腫瘍の発生や再発のリスクを高めるため、禁煙が重要です。
バランスの取れた食事適切な栄養バランスを保ち、免疫力を維持することが大切です。
適度な運動体力の維持・向上のために、医師と相談の上で適度な運動を行います。
ストレス管理ストレスは免疫力を低下させるため、上手にストレスを管理することが重要です。

再発の早期発見のための経過観察

縦隔腫瘍の治療後は、定期的な経過観察により再発の早期発見に努めることが大切です。一般的な経過観察の間隔は以下の通りですが、腫瘍の種類や進行度によって個別に調整されます。

  • 治療終了後1-2年:3-6ヶ月ごと
  • 治療終了後3-5年:6-12ヶ月ごと
  • 治療終了後5年以降:1-2年ごと

経過観察では、以下のような検査が行われます。

検査項目目的
胸部X線・CT局所再発や転移の評価
腫瘍マーカー再発や治療効果の評価
身体診察全身状態の評価

治療費

検査費

縦隔腫瘍の診断には、胸部X線、CT、MRI、PET-CTなどの画像検査が必要です。これらの検査費用は、それぞれ数千円から10万円近くと高額になることがあります。

また、病理診断のための生検も行われ、数万円から10万円程度の費用がかかります。

検査項目費用目安
胸部X線32,100円~5,620円
胸部CT14,700円~20,700円
胸部MRI19,000円~30,200円
PET-CT186,250円

治療費

縦隔腫瘍の治療費は、手術、化学療法、放射線療法など、選択される治療方法によって大きく異なります。手術費用は、腫瘍の部位や切除範囲によって変動しますが、100万円から500万円以上になることもあります。

化学療法や放射線療法も、使用する薬剤や照射回数によって費用が変動しますが、それぞれ数十万円から100万円以上かかる場合があります。

治療方法費用目安
手術(縦隔腫瘍・胸腺摘出術)388,500円~(縦隔悪性腫瘍手術 広汎摘出)560,200円
化学療法(胸腺癌)(カルボプラチン27,102円+パクリタキセル26,316円)×5=267,090円+諸経費や加算
放射線療法十数万円~,883,000円(陽子線治療)

入院費

縦隔腫瘍の治療のために入院が必要な場合、入院費も治療費の一部となります。入院費は、1日あたり1万円から3万円程度が目安となりますが、入院期間によって総額は大きく変動します。

正確には、現在基本的に日本の入院費は「包括評価(DPC)」にて計算されます。
各診療行為ごとに計算する今までの「出来高」計算方式とは異なり、病名・症状をもとに手術や処置などの診療内容に応じて厚生労働省が定めた『診断群分類点数表』(約1,400分類)に当てはめ、1日あたりの金額を基に入院医療費を計算する方式です。
1日あたりの金額に含まれるものは、投薬、注射、検査、画像診断、入院基本料等です。
手術、リハビリなどは、従来どおりの出来高計算となります。
(投薬、検査、画像診断、処置等でも、一部出来高計算されるものがあります。)

計算式は下記の通りです。
「1日あたりの金額」×「入院日数」×「医療機関別係数※」+「出来高計算分」

例えば、14日間入院するとした場合は下記の通りとなります。

DPC名: 胸壁腫瘍、胸膜腫瘍 その他の手術あり 手術処置等2なし
日数: 14
医療機関別係数: 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
入院費: ¥365,760 +出来高計算分

以上

以上

参考にした論文