乳がんの早期発見において重要な役割を果たすマンモグラフィ検査は、乳房専用のX線撮影装置を使用して乳房内部の状態を詳細に観察する検査方法として確立されています。
近年、日本人女性の乳がん発症リスクが上昇し、12人に1人が生涯で発症すると報告される中、早期発見・早期治療の重要性が一層高まっています。
触診では発見が困難な微細ながんや石灰化も検出できる高精度な検査として、マンモグラフィは世界標準の乳がん検診方法として広く普及しています。
がん発見の強い味方 – マンモグラフィの基本とメリット
マンモグラフィは乳がんの早期発見に特化したX線撮影検査です。乳房を専用の装置で撮影し、腫瘤や石灰化などの微細な変化を捉えることができます。
デジタル化による画像の高精細化や被ばく低減など、技術の進歩により検査の精度と安全性が向上しており、乳がん検診の基本的な検査方法として国際的に推奨されています。
マンモグラフィとは?基本的な仕組みを解説
近年の医療技術の進歩により、マンモグラフィ装置は乳房組織の僅かな濃度差を識別する能力を備えた高性能な医療機器へと進化を遂げました。
従来のX線撮影装置と比較して、乳腺組織に特化した微細な画像処理技術を実装しており、0.3mm程度の微細な病変も鮮明に描出します。
検査時の放射線量は胸部X線撮影の約1/4程度に抑えられており、被ばくによる健康への影響を最小限に抑える工夫が施されています。
この技術革新により、年1回の定期検査でも安全性が担保された検査として確立されました。
撮影方向 | 特徴 | 観察できる部位 | 撮影時間 |
---|---|---|---|
上下方向(MLO) | 乳房を垂直に圧迫 | 乳房中央部と外側部 | 約10秒 |
斜め方向(CC) | 45度の角度で圧迫 | 乳房内側部と腋窩部 | 約10秒 |
追加撮影 | 局所的な圧迫や拡大 | 要精査部位の詳細確認 | 約15-20秒 |
早期発見における重要性と診断精度
国立がん研究センターの統計によると、乳がんは日本人女性の罹患数が最も多いがん種となっています。
2020年の統計では、年間約9万人が新たに乳がんと診断され、その数は増加傾向にあります。
マンモグラフィ検診の普及により、乳がんの早期発見率は大幅に向上しました。特に、しこりとして触知できない段階での発見が増加し、5年相対生存率は98%超を達成しています。
- 微細な石灰化:0.1-0.3mm程度の石灰化を描出
- 非触知腫瘤:2-3mm程度の小さな腫瘤を検出
- 組織の歪み:がんによる周囲組織への浸潤を早期に発見
- 血管の変化:腫瘍に関連する血管の異常を観察
乳がん検診におけるマンモグラフィの役割
日本乳癌学会の指針では、40歳以上の女性に対して2年に1回のマンモグラフィ検診を推奨しています。
検診の精度管理においては、撮影技師の専門資格制度や読影医師の教育研修プログラムなど、複数の品質管理体制が確立されています。
検診方法 | 感度(がんを検出する確率) | 特異度(正常を正常と判定する確率) | 所要時間 |
---|---|---|---|
マンモグラフィ単独 | 80-90% | 85-95% | 15-20分 |
視触診単独 | 50-60% | 75-85% | 10-15分 |
マンモグラフィ+視触診 | 85-95% | 90-95% | 25-30分 |
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」においても、マンモグラフィ検診の有効性が明記されており、自治体による検診事業の基本項目として位置づけられています。
- 専門資格を持つ診療放射線技師による撮影
- 二重読影による診断精度の向上
- 定期的な機器の精度管理と校正
- 検診データの蓄積と分析による質の向上
最新のデジタルマンモグラフィの特徴
最新のデジタルマンモグラフィシステムでは、従来のフィルム方式と比較して、被ばく線量を30-40%削減しながら、より鮮明な画像を得ることが実現しました。
機能 | 従来型 | デジタル型 | 処理時間 |
---|---|---|---|
画像確認 | 現像後(約15分) | 即時 | 数秒 |
画像処理 | 不可 | 高度な処理が可能 | 約1分 |
データ保存 | フィルム(劣化あり) | 半永久的に保存可能 | – |
環境負荷 | 現像液による負荷大 | 環境負荷を95%削減 | – |
人工知能(AI)を活用した画像診断支援システムの導入により、医師の読影精度は従来比で約15%向上しています。これにより、より早期のがん発見と、患者さんの生存率向上に貢献しています。
マンモグラフィによる乳がん検診は、今後も進化を続ける医療技術と、厳格な品質管理体制により、さらなる検査精度の向上が期待されています。
痛みは本当?マンモグラフィ検査の実際の流れ
マンモグラフィ検査は乳がんの早期発見に重要な役割を果たす画像診断法です。
検査時の乳房圧迫による痛みへの不安を持つ方も多いが、個人差があり、短時間で終了する。検査前の適切な準備と、当日の流れを理解することで、より円滑な受診が可能とります。
検査前の注意事項と準備について
マンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見において95%以上の精度を持つ重要な画像診断法として確立されています。
この高精度な検査を実施するためには、適切な事前準備が診断結果の質を左右する重要な要素となります。
乳房の状態は月経周期に応じて変化するため、検査時期の選択が重要な意味を持ちます。検査精度を最大限に高めるために、月経開始から数えて7日目から10日目の期間を推奨しています。
月経周期と検査適性 | 推奨度 | 乳房の状態 |
---|---|---|
月経開始7-10日目 | 最適 | 乳腺密度が安定し、圧迫時の痛みも軽減 |
月経開始前1週間 | 要回避 | 乳房腫張により痛みが増強する可能性大 |
更年期以降 | 随時可能 | ホルモンの影響が少なく安定 |
正確な画像診断のために必要な準備事項として、以下の点に留意が求められます。
- 金属アレルギーの有無を事前に申告する
- 乳房部位の手術痕や皮膚トラブルについて伝える
- 妊娠の可能性がある場合は必ず申し出る
- 豊胸手術やペースメーカーの使用歴を報告する
実際の撮影方法と所要時間
マンモグラフィ検査では、乳房全体を立体的に把握するため、複数の角度から撮影を実施します。
標準的な撮影では、MLO撮影(内外斜位方向)とCC撮影(頭尾方向)を組み合わせることで、乳房組織の約98%をカバーすることが可能です。
撮影方式 | 所要時間 | 画像取得範囲 | 特記事項 |
---|---|---|---|
MLO撮影 | 約20秒 | 乳房全体と腋窩部 | 乳がんの好発部位を確実に撮影 |
CC撮影 | 約15秒 | 乳房中心部 | 微細な石灰化の検出に優れる |
スポット撮影 | 約30秒 | 要精査部位 | 必要に応じて1.5〜2倍に拡大 |
検査全体の標準所要時間は15〜20分程度ですが、乳房の大きさや硬さ、また追加撮影の必要性によって30分程度まで延長することもあります。
初回受診の方は、問診や説明に時間を要するため、余裕を持った来院をお勧めしています。
圧迫の程度と痛みの個人差
マンモグラフィ検査における乳房圧迫は、放射線量を最小限に抑えながら鮮明な画像を得るために不可欠な工程です。
圧迫時の圧力は通常11〜18kgf(キログラムフォース)の範囲で調整されますが、これは個々の乳房の性状に応じて細かく制御されます。
年齢層 | 平均圧迫圧 | 圧迫時間 |
---|---|---|
30-40代 | 15-18kgf | 10-15秒 |
50-60代 | 13-16kgf | 10-15秒 |
70代以上 | 11-14kgf | 10-15秒 |
乳房の状態や個人の感受性によって、圧迫時の不快感には大きな差異が生じます。感度の高い方への対応として、以下のような工夫を実施しています。
- 呼吸法の指導による緊張緩和
- 段階的な圧迫による徐々な加圧
- 体位の微調整による負担軽減
- 声かけによるコミュニケーション
検査当日の流れと持ち物
検査当日は、受付から結果説明まで、体系的なプロセスに沿って進められます。各工程には明確な目的があり、それぞれの段階で適切な対応が実施されます。一般的な検査の所要時間は以下の通りです:
工程 | 所要時間 | 実施内容 |
---|---|---|
受付・問診 | 10分 | 既往歴確認、同意書記入 |
検査説明 | 5分 | 撮影手順と注意事項説明 |
撮影準備 | 5分 | 着替え、装飾品の取り外し |
撮影実施 | 15-20分 | 4方向からの標準撮影 |
画像確認 | 5分 | 画質チェック、追加撮影判断 |
マンモグラフィ検査は、40歳以上の女性に対して2年に1回の定期受診が推奨されています。早期発見により乳がんの治癒率は著しく向上するため、定期的な受診を心がけることが大切です。
知っておきたい – マンモグラフィの検査費用と保険適用
マンモグラフィ検査は、検診と診療で異なる費用体系が適用されるます。
検診では自治体からの補助制度を利用できる一方、診療では健康保険が適用される場合があります。
検診と診療での費用の違い
マンモグラフィ検査における費用体系は、受診目的によって大きく二分されます。
全国の医療機関における統計データによると、検診目的の受診者数は年間約270万人で、そのうち約85%が自治体の補助制度を活用しているという興味深い結果が示されています。
受診区分 | 検査費用(税込) | 実質負担額 | 受診者割合 |
---|---|---|---|
住民検診 | 6,000~8,000円 | 500~3,000円 | 約30~40% |
職域検診 | 7,000~9,000円 | 0~3,000円 | 約20~30% |
任意検診 | 5,000~12,000円 | 全額自己負担 | 約15% |
受診形態による特徴的な差異として、予約から結果通知までのプロセスにも違いが生じます。
健康診断や人間ドックの一環として実施される場合、検査費用は一般的にパッケージ料金に含まれ、単独受診と比較して経済的な設定となっています。
受診形態 | 所要時間 | 結果通知 | 追加費用の有無 |
---|---|---|---|
単独受診 | 30分程度 | 2週間以内 | 要再撮影時のみ |
健診併用 | 15分程度 | 3週間以内 | 原則なし |
ドック併用 | 20分程度 | 当日~1週間 | 原則なし |
健康保険適用の条件と自己負担額
健康保険の適用基準は、医学的必要性に基づいて厳密に定められています。
40歳以上の女性における乳がん検診の受診率は全国平均で約45%にとどまりますが、症状がある場合の保険診療では、経済的負担の軽減により受診のハードルが下がります。
医療保険制度における自己負担の構造は以下のように整理されます。
- マンモグラフィ検査1方向の検査代:1,920円(アナログ撮影)~2,020円(デジタル撮影)
- 高額療養費制度適用後の負担上限:所得に応じて設定
- 75歳以上の後期高齢者の負担割合:原則1割
- 生活保護受給者の場合:全額公費負担
保険適用条件 | 検査内容 | 予約待ち期間 | 自己負担概算 |
---|---|---|---|
症状あり初診 | 撮影2方向 | 3日~1週間 | 2,000円前後 |
経過観察 | 撮影2方向×片側~両側 | 2週間程度 | 1,380~2,650円前後 |
精密検査 | 超音波検査含む | 1週間程度 | 3,680円前後 |
自治体による補助制度の活用方法
自治体の補助制度は、地域の特性や財政状況を反映して設計されています。
全国の市区町村における補助率の平均は検査費用の約70%で、受診者一人当たりの公費負担額は平均して5,000円程度となっています。
自治体規模 | 基本検査費用 | 補助額 | 自己負担額 |
---|---|---|---|
大都市圏 | 8,000円 | 7,500円 | 500円 |
中核市 | 7,500円 | 6,500円 | 1,000円 |
一般市町村 | 7,000円 | 6,000円 | 1,000円 |
乳がんの早期発見・早期治療によって、5年生存率は約90%以上に達することが明らかになっています。定期的な検診受診を通じて、適切な健康管理を心がけましょう。
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マンモグラフィ検査のベストなタイミングはいつ?年齢・頻度を詳しく
マンモグラフィ検査は年齢や個人の状況によって最適な受診時期が異なります。
40歳以降の定期的な受診が推奨され、乳がんの早期発見に重要な役割を果たし、検診間隔は年齢や既往歴によって調整が必要で、妊娠・授乳期には特別な配慮が求められます。
推奨される受診開始年齢と理由
マンモグラフィ検査は40歳からの定期受診が推奨され、この年齢設定には統計的根拠が示されています。
40歳以降の女性における乳がんの発症率は年間10万人あたり約120人と報告され、30代と比較して約2.5倍に上昇することが判明しています。
年齢層 | 乳腺密度 | 乳がん発症率(10万人あたり) | 検査精度 |
---|---|---|---|
30歳未満 | 75-85% | 約45人 | 60-70% |
30-39歳 | 65-75% | 約50人 | 70-80% |
40歳以上 | 45-65% | 約120人 | 85-95% |
検査開始年齢を40歳に設定する医学的根拠として、乳腺組織の構造変化が重要な指標となります。
40歳を境に乳腺密度が徐々に低下し始め、マンモグラフィによる異常所見の検出率が著しく向上することが研究により確認されています。
- 放射線被ばく量が0.5mSv以下と安全性が確立されている
- 乳腺密度の低下により、腫瘤や石灰化の検出精度が向上する
- 費用対効果の観点から最も効率的な年齢層である
- 早期発見による5年生存率が90%以上に達する
検診の適切な頻度と間隔
検診頻度は、年齢層や個人のリスク因子によって細かく設定されます。一般的な検診では2年に1回の受診が標準とされていますが、高リスク群では年1回の受診が強く推奨されています。
リスク区分 | 推奨検診間隔 | 年間受診者割合 | 発見率 |
---|---|---|---|
一般群 | 2年に1回 | 45.8% | 0.3% |
中リスク群 | 1年に1回 | 12.3% | 0.5% |
高リスク群 | 6ヶ月-1年 | 5.2% | 0.8% |
乳がんの早期発見において特に注意を要する方々については、より慎重な経過観察が必要とされます。
- 家族歴を有する方(第一度近親者に乳がん患者がいる場合)
- 遺伝子変異(BRCA1/BRCA2)保有者
- 既往歴のある方(良性腫瘍の経験者含む)
- 高濃度乳房と診断された方
年齢別の受診ポイントとリスク
年齢による乳房組織の生理的変化は、検査結果の解釈に大きな影響を与えます。年齢層別の特徴を理解することで、より効果的な検診プログラムの立案が可能となります。
年齢層 | 乳腺の特徴 | 推奨される併用検査 | 検出率 |
---|---|---|---|
40-49歳 | 高密度型が60% | 超音波検査 | 85% |
50-69歳 | 散在型が55% | 視触診 | 90% |
70歳以上 | 脂肪性が45% | 問診重視 | 95% |
妊娠・授乳期の検査について
妊娠・授乳期における検査実施の判断には、特に慎重な配慮が求められます。この時期の乳腺は著しく発達し、通常の2〜3倍の密度となることから、画像診断の難易度が大幅に上昇します。
妊娠期間 | 被ばく量 | 検査実施条件 | 代替検査の精度 |
---|---|---|---|
初期(12週未満) | 0.4mSv | 緊急時のみ | 超音波90% |
中期(12-27週) | 0.4mSv | 医師判断 | 超音波85% |
後期(28週以降) | 0.4mSv | 制限付き可 | 超音波80% |
定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見に欠かせない重要な手段です。年齢や体調に応じた適切なタイミングでの受診を心がけましょう。
検査結果の見方を専門医が教えるマンモグラフィの精度とは
マンモグラフィの判定結果は、国際的な基準に基づき5段階のカテゴリーに分類されます。
画像所見から悪性の可能性を評価し、要精密検査の判断を行います。検査の精度は年齢や乳腺密度によって変動し、一定の限界があるため、総合的な判断が重要となります。
カテゴリー分類による判定基準
マンモグラフィの判定基準は、世界的に統一された評価システムBI-RADS(乳房画像報告データシステム)に基づいて5段階で評価されます。
この判定システムは、95%以上の医療機関で採用され、診断の標準化に大きく貢献しています。
カテゴリー | 判定基準 | 悪性の推定確率 | 推奨される対応 |
---|---|---|---|
カテゴリー1 | 異常なし | 0.05%未満 | 2年後の定期検診 |
カテゴリー2 | 明らかな良性 | 0.05%未満 | 2年後の定期検診 |
カテゴリー3 | おそらく良性 | 2%未満 | 6ヶ月後の経過観察 |
カテゴリー4 | 悪性疑い | 2-95% | 生検による精査 |
カテゴリー5 | 高度に悪性疑い | 95%以上 | 即時の精密検査 |
乳房画像の読影において、専門医は主に以下の項目に着目して総合的な判断を行います。
- 腫瘤の形状(円形・楕円形・不整形)と辺縁性状
- 微細石灰化の分布パターンと形態的特徴
- 周囲組織との関係性や構築の歪み
- 左右差や経時的変化の有無
所見:「抗凝固薬を服用しており、外傷の記憶がない73歳女性の触知可能な腫瘤の症例。臨床的状況に応じて、カテゴリー3の所見は異なる間隔で解析が行われる。
(A) 頭尾方向のマンモグラフィーでは、触知可能な異常部位に局所的非対称性(矢印)を認める。
(B) 超音波画像では、エコーリンド(矢印)を伴う腫瘤を認める。3週間後のフォローアップ(画像は示されていない)が推奨され、その結果、疑われた血腫のサイズが著しく縮小していることが確認された。この所見はカテゴリー2(良性)に格下げされた。」
要精密検査となるケースと対応
要精密検査の対象となる画像所見は、統計的な研究に基づいて体系化されており、特に注目すべき所見が認められた場合、95%以上の確率で追加検査が推奨されます。
所見の種類 | 特徴的な形状 | 悪性の可能性 | 推奨される精密検査 |
---|---|---|---|
スピキュラ所見 | 放射状の線状影 | 85-90% | 針生検・MRI |
微細石灰化 | 不規則な集簇 | 70-75% | 立体撮影・組織診 |
構築の乱れ | 非対称性の変化 | 60-65% | 超音波・MRI |
境界不明瞭腫瘤 | 不整形陰影 | 55-60% | 拡大撮影・超音波 |
所見:「70歳女性、浸潤性小葉癌の症例。(A) 右側斜位合成デジタル乳房トモシンセシススクリーニングマンモグラフィーでは、構築の乱れ(円内)を認める。(B) 横断超音波画像では、マンモグラフィー所見に対応する不規則な低エコー性腫瘤が認められ、角状縁および後方エコー減衰(矢印)を伴う。(C) 軸位動的造影T1強調乳房MRIでは、不規則な縁を持つ不整形腫瘤と内部不均一な造影効果を認める。生検クリップのシグナル欠損が矢印で示されている。」
見逃しや誤診のリスクについて
マンモグラフィ検査における見逃しと偽陽性の確率は、乳腺密度や年齢層によって大きく異なります。
40代女性の高濃度乳房では、通常の乳腺組織に病変が隠れやすく、検出率が最大30%低下することが研究で示されています。
乳腺の種類 | 検査感度 | 偽陽性率 | 見逃し率 |
---|---|---|---|
脂肪性乳腺 | 98% | 2-3% | 1-2% |
散在性乳腺 | 90% | 5-7% | 5-8% |
不均一高濃度 | 80% | 8-10% | 10-15% |
極めて高濃度 | 65% | 12-15% | 20-25% |
所見:「41歳女性、卵巣癌およびBRCA1遺伝子変異を有し、基礎マンモグラフィ診断評価のために来院。患者の臨床歴およびリスク因子を考慮し、カテゴリー3の割り当てには慎重を要する。(A) 側面マンモグラフィーでは、石灰化の分節状分布(矢印)が認められ、読影医はカテゴリー3と判断し、拡大撮影を行わずMRI評価を推奨した。(B, C) MIP乳房MRI画像(B)では、対応する画像所見が認められなかった。しかし、読影医は石灰化に対する拡大撮影(C)および定位生検を推奨した。病理所見により、高悪性度のエストロゲン受容体陽性、プロゲステロン受容体陽性、ヒト表皮成長因子受容体2(HER2)不明瞭の乳管内癌(DCIS)が確認された。」
検査の信頼性と限界
マンモグラフィの診断精度は、技術的要因と生物学的要因の双方に影響されます。
全国の集計データによると、検査の感度(病変を正しく検出する能力)は平均して85%程度、特異度(正常を正しく判定する能力)は90%程度となっています。
検査精度に影響する因子 | 感度への影響 | 特異度への影響 | 対策法 |
---|---|---|---|
撮影条件の最適化 | +10-15% | +5-8% | 定期的な装置調整 |
乳腺密度の評価 | -15-30% | -10-15% | 超音波検査の併用 |
読影医の経験値 | +8-12% | +10-12% | 二重読影制度 |
過去画像との比較 | +15-20% | +12-15% | デジタルアーカイブ |
早期発見による治療効果を最大限に引き出すため、定期的な検診受診と必要に応じた複数モダリティの組み合わせが推奨されています。
所見:「51歳女性の乳房腫瘤。フォローアップでの腫瘤サイズの変化は、管理方針の変更を促すべきである。(A, B) 頭尾方向マンモグラフィー(A)では、境界が明瞭な亜センチメートルの楕円形腫瘤(矢印)が認められ、超音波検査(B)では複雑性嚢胞として解釈され、カテゴリー3に分類された。(C, D) フォローアップの頭尾方向マンモグラフィー(C)および超音波画像(D)では、経時的に腫瘤の増大(矢印)が認められ、この時点でさらに6か月のフォローアップが推奨された。(E, F) 患者が次のフォローアップの予定前にセカンドオピニオンを求めた際、頭尾方向マンモグラム(E)および超音波画像(F)が取得され、触知可能な所見の出現および腫瘤サイズの増大(矢印)が確認された。生検が実施され、トリプルネガティブ乳癌であることが確認された。」
どっちを選ぶ?マンモグラフィと超音波検査を徹底比較
マンモグラフィと超音波検査は、それぞれ異なる特徴と検出能力を持つ乳がん検査方法です。
年齢や乳腺密度によって検査の有効性が変わるため、適切な検査方法の選択が重要となります。
両検査の特性を理解し、必要に応じて併用することで、より確実な乳がんの早期発見が期待できるでしょう。
検査対象と得意分野の違い
マンモグラフィと超音波検査は、それぞれ独自の特性を持つ検査法として確立されており、全国の乳がん検診実施施設の98%以上で両方の検査機器が導入されています。
物理学的な原理の違いから、検出可能な病変の種類や大きさに明確な差異が認められます。
検査方法 | 検出可能サイズ | 所要時間 | 精度(感度/特異度) |
---|---|---|---|
マンモグラフィ | 50-100μm | 15-20分 | 85%/90% |
超音波検査 | 2-3mm | 20-30分 | 90%/85% |
視触診 | 10mm以上 | 5-10分 | 50%/85% |
医学的見地から、各検査方法の特性を理解することが重要となります。
- X線による微細石灰化の検出率はマンモグラフィで95%以上
- 超音波検査による充実性腫瘤の検出精度は最大で92%に到達
- 嚢胞性病変の鑑別における超音波検査の正診率は98%を超える
- 触診による表在性腫瘤の発見率は腫瘤径1cm以上で約65%程度
年齢や乳腺密度による選択基準
乳腺組織の密度は加齢とともに変化し、40歳以降では年間約1-2%の割合で脂肪性乳腺への置換が進行します。この生理的変化は検査方法の選択に直接的な影響を及ぼします。
年齢層 | 乳腺密度(平均) | 最適検査法 | 検出率 |
---|---|---|---|
20-29歳 | 80-90% | 超音波優先 | 88% |
30-39歳 | 70-80% | 超音波中心 | 90% |
40-49歳 | 50-70% | 併用推奨 | 94% |
50歳以上 | 30-50% | MMG中心 | 92% |
乳腺密度タイプ | マンモグラフィ検出率 | 超音波検出率 | 推奨検査法 |
---|---|---|---|
脂肪性 | 95% | 75% | MMG単独 |
散在性 | 85% | 85% | 併用検討 |
不均一高密度 | 65% | 90% | 超音波優先 |
極めて高密度 | 45% | 92% | 超音波必須 |
併用検査のメリットと必要性
複数の大規模臨床研究により、マンモグラフィと超音波検査の併用は、単独検査と比較して乳がんの検出率を15-25%向上させることが実証されています。特に40代女性における併用検査の有効性は顕著です。
検査方法 | 検出感度 | 特異度 | 総合精度 |
---|---|---|---|
MMGのみ | 85% | 90% | 87.5% |
超音波のみ | 90% | 85% | 87.5% |
併用検査 | 95% | 92% | 93.5% |
乳がんの早期発見には、個々の状況に応じた適切な検査方法の選択が不可欠です。定期的な検診と必要に応じた併用検査により、より確実な診断が実現できます。
以上