性欲の低下は、多くの方が経験する可能性のある悩みですが、その原因は多岐にわたります。単なる一時的なものから、何らかの体の変化や病気が背景にあることもあります。
この記事では、性欲減退の様々な原因、特にホルモンとの関連、そして内分泌内科でどのような相談ができるのかを解説します。
ご自身の状態を理解し、必要であれば医療機関への相談を考えるきっかけとしてください。
「以前に比べて性欲が低下した」「パートナーとの親密な関係に悩みがある」性欲減退は単なる加齢や疲労、ストレスだけでなく、性ホルモン分泌低下や甲状腺機能異常、高プロラクチン血症など、内分泌系の問題が隠れている可能性があります。
放置するとパートナーシップの問題だけでなく、全身の健康状態や生活の質にも影響を及ぼすことがあります。性欲低下でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。詳しくはこちら
この記事を書いた人

神戸きしだクリニック院長
医学博士
日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
日本核医学会認定 核医学専門医
【略歴】
神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。神戸大学附属病院 放射線科 助教。甲南医療センター放射線科医長を経て神戸きしだクリニックを開業(2020年6月1日)
性欲減退とは?基本的な理解
性欲減退は、性的な関心や欲求が以前よりも低下した状態を指します。しかし、その感じ方や程度は人それぞれです。
性欲の個人差について
性欲の強さには元々個人差があります。他人と比較して一喜一憂する必要はありません。大切なのは、ご自身の以前の状態と比較して、明らかな変化を感じるかどうかです。
一時的な低下と持続的な低下
疲労やストレス、環境の変化などによって一時的に性欲が低下することは誰にでも起こりえます。
しかし、その状態が長く続く場合や、原因が思い当たらない場合は、背景に何らかの問題が隠れている可能性を考えます。
性欲減退が生活に与える影響
性欲減退は、単に性生活の問題だけでなく、パートナーとの関係、自信の喪失、気分の落ち込みなど、心理的な側面や日常生活の質にも影響を与えることがあります。
いつ医療機関を受診すべきか
性欲減退が持続し、日常生活に支障を感じる場合や、他の体調不良(倦怠感、気分の落ち込み、体重の変化など)を伴う場合は医療機関への相談を検討しましょう。
受診を検討する目安
状態 | 目安 |
---|---|
持続期間 | 数ヶ月以上、低下した状態が続いている |
生活への影響 | パートナーとの関係に悩んでいる、気分が落ち込む |
他の症状 | 原因不明の倦怠感、睡眠障害、ほてりなどがある |
性欲減退の主な原因【身体的な要因】
体の変化や病気が性欲減退を引き起こすことがあります。特にホルモンバランスの乱れは重要な要因です。
ホルモンバランスの乱れ
性欲には、テストステロン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)などの性ホルモンが深く関わっています。
これらのホルモンの分泌量が低下すると、性欲減退につながることがあります。
加齢による変化(男性更年期・女性更年期)
男女ともに、加齢に伴い性ホルモンの分泌は徐々に減少します。
特に更年期と呼ばれる時期にはホルモンバランスが大きく変動し、性欲減退を含む様々な心身の不調が現れることがあります。
加齢に伴うホルモン変化(一般的な傾向)
性別 | 主なホルモン変化 | 影響 |
---|---|---|
男性 | テストステロンの緩やかな低下 | 性欲減退、ED、筋肉量減少、気力低下など |
女性 | エストロゲンの急激な低下(閉経期) | 性欲減退、膣乾燥、ほてり、気分の波など |
慢性疾患の影響
糖尿病、高血圧、脂質異常症、心臓病、腎臓病、甲状腺機能低下症などの慢性疾患は、血流の悪化や神経障害、全身の倦怠感などを通じて性欲に影響を与える可能性があります。
性欲に影響を与えうる慢性疾患の例
疾患名 | 考えられる影響 |
---|---|
糖尿病 | 神経障害、血流障害、ホルモンバランスへの影響 |
高血圧症 | 動脈硬化による血流障害 |
甲状腺機能低下症 | 全身の代謝低下、倦怠感、抑うつ気分 |
薬の副作用
服用している薬の副作用として性欲減退が現れることもあります。
特に、降圧薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗がん剤、一部の胃薬などで報告があります。自己判断で服薬を中止せず、必ず医師に相談してください。
性欲減退の主な原因【精神的な要因】
心の問題も性欲に大きく影響します。身体的な問題が見当たらない場合、精神的な要因を探ることも大切です。
ストレスや疲労
仕事や家庭内のストレス、慢性的な疲労は、心身のエネルギーを消耗させ、性的な関心を持つ余裕を失わせることがあります。
ストレスはホルモンバランスにも影響を与えます。
うつ病や不安障害
うつ病や不安障害は、意欲や興味の低下を引き起こす代表的な精神疾患であり、性欲減退もその症状の一つとして現れることがよくあります。
治療により改善する可能性があります。
パートナーとの関係性
パートナーとの間にコミュニケーション不足、不満、対立などがあると、心理的な距離が生じ、性的な欲求を感じにくくなることがあります。
自己肯定感の低下
自分の容姿や性的能力に対する自信のなさ、過去の性的なトラウマなどが、性欲にブレーキをかけてしまうこともあります。
性欲減退とホルモンの深い関係
性欲の維持には、様々なホルモンが複雑に関与しています。内分泌内科はこのホルモンの専門家です。
テストステロンの役割
主に男性ホルモンとして知られますが、女性にも少量分泌され、男女ともに性欲や意欲、筋肉量や骨密度の維持に関わる重要なホルモンです。
テストステロンの低下は性欲減退の直接的な原因となりえます。
エストロゲンの役割
主に女性ホルモンとして知られ、女性らしい体つきや生殖機能の維持に働きます。
性欲への直接的な影響はテストステロンほど強くないものの、膣の潤いを保つなど、快適な性行為に必要な役割を担っています。
閉経期に急減することで性交痛や性欲低下を招くことがあります。
プロラクチンや甲状腺ホルモンの影響
プロラクチンは乳汁分泌に関わるホルモンですが、高値になると性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し、性欲低下や月経不順、勃起不全などを引き起こすことがあります(高プロラクチン血症)。
また、甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節しており、低下すると倦怠感や意欲低下とともに性欲も減退することがあります(甲状腺機能低下症)。
性欲に関わる主なホルモン
ホルモン名 | 主な働き | 異常時の影響例 |
---|---|---|
テストステロン | 性欲、意欲、筋肉・骨の維持 | 低下で性欲減退、ED、倦怠感 |
エストロゲン | 女性機能、膣の潤滑 | 低下で性欲減退、性交痛(女性) |
プロラクチン | 乳汁分泌 | 高値で性欲減退、月経不順、ED |
甲状腺ホルモン | 全身の代謝調節 | 低下で性欲減退、倦怠感、抑うつ |
ホルモン検査の重要性
性欲減退の原因を探る上で、血液検査によるホルモン値の測定は非常に重要です。
テストステロン、エストロゲン、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどを測定し、ホルモンバランスの乱れがないかを確認します。
内分泌内科で相談できること
性欲減退の原因がホルモンにあるかもしれないと感じたら、内分泌内科への相談を検討しましょう。
ホルモン異常の診断
問診や診察、血液検査などを通じて、性欲減退の原因となっている可能性のあるホルモン分泌の異常(低下または過剰)を正確に診断します。
関連する内分泌疾患の検査
ホルモン異常が見つかった場合、その原因となる内分泌疾患(下垂体腫瘍、甲状腺疾患、副腎疾患、性腺機能低下症など)がないかを調べるための追加検査を行うことがあります。
生活習慣指導
ホルモンバランスは、食事、運動、睡眠、ストレスなどの生活習慣と密接に関係しています。
検査結果や患者さんの状態に合わせて、具体的な生活習慣の改善点をアドバイスします。
ホルモンバランスを整える生活習慣のポイント
- バランスの取れた食事(タンパク質、ビタミン、ミネラル)
- 適度な有酸素運動と筋力トレーニング
- 十分な睡眠時間の確保と質の向上
- ストレスを溜め込まない工夫
治療方針の相談
ホルモン異常や関連する内分泌疾患が見つかった場合、ホルモン補充療法や原因疾患の治療など、個々の状態に合わせた治療方針を相談し、決定します。
治療のメリット・デメリットについても丁寧に説明します。
性欲減退は「体のサイン」見逃さないで
性欲減退を単なる「気持ちの問題」や「年齢のせい」と片付けてしまうのは早計かもしれません。それは、体全体からの重要なメッセージである可能性があります。
単なる「年齢のせい」ではない可能性
確かに加齢は性欲に影響しますが、同年代でも性欲のレベルは様々です。
急激な低下や他の不調を伴う場合は、年齢以外の要因、例えばホルモンバランスの大きな乱れや、何らかの疾患が隠れている可能性を考える必要があります。
他の病気が隠れているサインかも
性欲は、全身の健康状態を反映するバロメーターのような側面も持っています。
例えば、甲状腺機能低下症や糖尿病、うつ病などの初期症状として性欲減退が現れることもあります。
性欲の変化を、体からの早期警告と捉える視点も大切です。
性欲減退が初期症状となりうる疾患例
疾患分類 | 疾患例 |
---|---|
内分泌疾患 | 甲状腺機能低下症、高プロラクチン血症、性腺機能低下症 |
代謝性疾患 | 糖尿病 |
精神疾患 | うつ病、不安障害 |
心と体のバランスを見直す機会
性欲は、身体的な健康だけでなく、精神的な充足感やパートナーとの良好な関係性など様々な要素が絡み合って成り立っています。
性欲減退をきっかけに、ご自身の心と体の状態、生活習慣、人間関係などを総合的に見つめ直し、バランスを整える良い機会と捉えることもできます。
早期対応のメリット
もし性欲減退の背景に治療可能な病気が隠れている場合、早期に発見し対応することでその病気の進行を防いだり、より効果的な治療を行えたりする可能性があります。
また、原因に応じた適切な対処により、性欲の回復だけでなく、全身の健康状態や生活の質の向上も期待できます。
日常生活でできるセルフケア
医療機関での治療と並行して、あるいは軽度な性欲減退の場合、日常生活を見直すことで改善が期待できることもあります。
バランスの取れた食事
特定の食品だけで性欲が高まるわけではありませんが、全身の健康維持がホルモンバランスにも良い影響を与えます。
タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取しましょう。
ホルモン生成や血流に関わる栄養素
栄養素 | 期待される役割 | 多く含む食品例 |
---|---|---|
亜鉛 | テストステロン生成に関与 | 牡蠣、赤身肉、ナッツ類 |
ビタミンE | 血行促進、ホルモンバランス調整 | アーモンド、植物油、アボカド |
タンパク質 | ホルモンや筋肉の材料 | 肉、魚、大豆製品、卵 |
適度な運動習慣
運動は血行を促進し、ストレス解消にもつながります。また、筋力トレーニングはテストステロンの分泌を促す効果も期待できます。
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動と、軽い筋トレを組み合わせるのがおすすめです。
質の高い睡眠
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、疲労感を増大させます。
毎日同じ時間に寝起きする、寝る前のカフェインやアルコールを控える、寝室の環境を整えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
睡眠の質を高めるヒント
- 就寝・起床時間を一定にする
- 寝る前のスマホ・PC操作を控える
- 寝室を暗く静かに保つ
ストレス管理法
自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴く、軽い運動をする、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
医療機関での検査と治療の流れ
実際に医療機関を受診した場合の、一般的な流れを説明します。
問診と診察
まず、いつから性欲が低下したか、他にどのような症状があるか、既往歴、服用中の薬、生活習慣などについて詳しく話を伺います。
その後、必要に応じて身体的な診察を行います。
血液検査(ホルモン値など)
性欲減退の原因を探るために、血液検査は非常に重要です。
テストステロン、エストロゲン、プロラクチン、甲状腺ホルモン(TSH, FT4)、血糖値、肝機能、腎機能などを測定し、ホルモンバランスや全身状態を確認します。
主な血液検査項目
検査項目 | 調べる内容 |
---|---|
性ホルモン(テストステロン、エストロゲン等) | 性腺機能の状態 |
プロラクチン | 高プロラクチン血症の有無 |
甲状腺ホルモン | 甲状腺機能の状態 |
血糖値、HbA1c | 糖尿病の有無 |
必要に応じた追加検査
血液検査の結果や症状に応じて、超音波検査(甲状腺、精巣、卵巣など)、画像検査(下垂体のMRIなど)、その他の専門的な検査を追加で行うことがあります。
治療法の選択肢
検査結果に基づき、原因に応じた治療法を検討します。
ホルモン補充療法(テストステロン補充、エストロゲン補充など)、原因疾患(甲状腺疾患、高プロラクチン血症など)の治療、生活習慣の改善指導、心理的なサポート、薬の見直しなど、様々な選択肢の中から患者さんと相談しながら適した方針を決定します。
よくある質問
性欲減退に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
- Qどの診療科を受診すればよいですか?
- A
原因によって関わる診療科は異なりますが、ホルモンバランスの乱れが疑われる場合や、原因がはっきりしない場合は、まず内分泌内科への相談を検討するのが良いでしょう。
かかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらう方法もあります。精神的な要因が強いと考えられる場合は、精神科や心療内科が適していることもあります。
- Q治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
- A
原因や治療法によって大きく異なります。ホルモン補充療法の場合、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月かかることがあります。
原因疾患の治療の場合は、その疾患の治療期間に準じます。生活習慣の改善は、継続することが大切です。
- Q保険は適用されますか?
- A
原因疾患の診断や治療(ホルモン異常、甲状腺疾患、糖尿病など)に関しては、基本的に健康保険が適用されます。
ただし、ホルモン補充療法など一部の治療については、条件によって保険適用外となる場合もありますので、事前に医療機関にご確認ください。
- Qパートナーと一緒に受診できますか?
- A
はい、可能です。パートナーとの関係性が影響している場合や、治療について一緒に理解を深めたい場合など、同伴での受診を歓迎します。ご希望の場合は、予約時などにお伝えください。
当院(神戸きしだクリニック)への受診について
神戸きしだクリニックの内分泌内科では、性欲減退に関わるホルモンバランスの異常について専門的な診察を行っております。
性欲低下や性機能の問題は、テストステロン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下、甲状腺機能異常、プロラクチン過剰など、内分泌系の不調が原因となっていることがあります。
性欲減退や関連する症状にお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。プライバシーに配慮した診療環境を整えております。
内分泌内科
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00 – 12:00 | – | ○ | – | ○ | – | ○ 隔週 | 休 |
13:30 – 16:30 | ○ | ○ | ○ | – | ○ | 休 | 休 |
09:00~12:00 | 13:30~16:30 | |
月 | – | 〇 |
火 | 〇 | 〇 |
水 | – | 〇 |
木 | 〇 | – |
金 | – | 〇 |
土 | 〇 隔週 | - |
日 | - | - |
祝 | - | - |
検査体制
- 性ホルモン検査(テストステロン・エストロゲンなど)
- 甲状腺機能検査
- プロラクチン測定
- 下垂体ホルモン検査
- 副腎皮質ホルモン検査
- 血液検査(貧血・糖尿病・脂質異常症など)
など、症状に応じた適切な検査を実施いたします。専門的な精査や詳細検査が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院など高度医療機関と連携して対応いたします。
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