首の前面、喉仏の下あたりが腫れている、またはしこりを感じることはありませんか?それは甲状腺の病気のサインかもしれません。

この記事では、首の腫れ(甲状腺腫大)の原因、伴う症状、検査方法、そして治療法について詳しく解説します。

「首が太くなってきた」「首の前側に違和感や腫れを感じる」これらの症状は甲状腺腫(甲状腺の腫れ)の可能性があり、バセドウ病や橋本病などの自己免疫性疾患、ヨード欠乏症、あるいは結節性甲状腺腫などが原因となっていることがあります。

放置すると見た目の問題だけでなく、甲状腺機能の異常による全身症状や、稀に悪性腫瘍のリスクも心配されます。気になる症状がある方は、ぜひお早めにご相談ください。詳しくはこちら

この記事を書いた人

神戸きしだクリニック院長 岸田雄治
岸田 雄治
神戸きしだクリニック院長

医学博士
日本医学放射線学会認定 放射線診断専門医
日本核医学会認定 核医学専門医
【略歴】
神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。神戸大学附属病院 放射線科 助教。甲南医療センター放射線科医長を経て神戸きしだクリニックを開業(2020年6月1日)

もしかして甲状腺のサイン?首の腫れ(甲状腺腫大)とは

首の腫れは、自分では気づきにくいこともありますが、様々な原因で起こりえます。その中でも甲状腺の異常は代表的な原因の一つです。

甲状腺の位置と役割

甲状腺は、首の前面、喉仏のすぐ下に位置する蝶のような形をした小さな臓器です。

重さは通常10~20グラム程度ですが、全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌する、非常に重要な役割を担っています。

甲状腺ホルモンは、私たちが活動的に生活を送る上で欠かせないエネルギー産生や体温調節、子どもの成長や発達にも深く関わっています。

甲状腺ホルモンの主な働き

働き具体的な作用
新陳代謝の促進エネルギー産生、体温調節、タンパク質合成
成長・発達の促進骨や筋肉の成長、知能の発達に関与
心臓・血管系への作用心拍数や血圧の調節

甲状腺腫大とはどんな状態?

甲状腺腫大とは、文字通り甲状腺が何らかの原因で腫れて大きくなった状態を指します。

甲状腺全体が均一に腫れる「びまん性甲状腺腫」と、甲状腺の一部にこぶのようなしこりができる「結節性甲状腺腫」の2つのタイプに大別されます。

腫れ方や大きさ、しこりの性質によって、考えられる病気やその後の対応が異なります。必ずしも全ての甲状腺腫大が危険なわけではありませんが、原因を特定することが重要です。

首の腫れに気づくきっかけ

甲状腺の腫れは、初期には自覚症状がないことも少なくありません。日常生活の中でふとした瞬間に気づくことが多いようです。

首の腫れに気づく主な状況

  • 鏡で自分の顔や首を見たとき
  • 首周りを手で触ったとき
  • 家族や友人など他人から指摘されたとき
  • 健康診断や人間ドックでの触診や頸部超音波検査

甲状腺腫大の種類

甲状腺の腫れ方には、前述の通り「びまん性甲状腺腫」と「結節性甲状腺腫」があります。

びまん性甲状腺腫は、甲状腺全体が滑らかに腫れるのが特徴で、バセドウ病や橋本病などで見られます。

一方、結節性甲状腺腫は、甲状腺の中に一つまたは複数のしこり(結節)ができる状態です。この結節には良性のもの(腺腫様甲状腺腫、のう胞など)と悪性のもの(甲状腺がん)があります。

首の腫れ(甲状腺腫大)の主な原因

首の腫れ、特に甲状腺が腫れる原因は多岐にわたります。甲状腺ホルモンのバランスの乱れ、炎症、あるいは腫瘍などが考えられます。

甲状腺ホルモンの異常によるもの

甲状腺ホルモンの分泌量が多すぎる「甲状腺機能亢進症」や、逆に少なすぎる「甲状腺機能低下症」が原因で甲状腺が腫れることがあります。

これらの状態を引き起こす代表的な病気には、バセドウ病や橋本病(慢性甲状腺炎)があります。これらの病気は自己免疫反応が関与していることが多いです。

甲状腺腫大を引き起こす代表的な病気

病名主な特徴ホルモン状態
バセドウ病甲状腺機能亢進症、びまん性甲状腺腫、眼球突出など過剰
橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺機能低下症が多いが、機能正常や一過性の機能亢進もある。びまん性甲状腺腫。不足または正常
甲状腺腫瘍(良性・悪性)結節性甲状腺腫。甲状腺機能は正常なことが多い。正常なことが多い

甲状腺の炎症によるもの

ウイルス感染などが原因で甲状腺に急性の炎症が起こり、腫れや痛みを伴うことがあります。代表的なものに「亜急性甲状腺炎」があります。

発熱や首の痛みが特徴で、多くは一時的なもので自然に、あるいは薬物治療で軽快します。また、橋本病も慢性的な炎症の一種です。

甲状腺腫瘍(良性・悪性)

甲状腺にしこりができる甲状腺腫瘍も、首の腫れの原因となります。腫瘍には良性と悪性(甲状腺がん)があり、その鑑別が非常に重要です。

甲状腺のしこりのうち、悪性である甲状腺がんの頻度は数パーセント程度とされていますが、油断はできません。多くは良性の腺腫様甲状腺腫や濾胞腺腫、のう胞などです。

甲状腺以外の首の腫れの原因

首の腫れは必ずしも甲状腺が原因とは限りません。他の原因も念頭に置く必要があります。

甲状腺以外で考えられる首の腫れ

  • リンパ節の腫れ(風邪などの感染症、悪性リンパ腫、がんの転移など)
  • 唾液腺の腫れ(流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、唾石症、シェーグレン症候群など)
  • 生まれつきの袋状のできもの(正中頸嚢胞、側頸嚢胞など)
  • 脂肪腫や粉瘤などの皮膚・皮下腫瘍

これらの鑑別のためにも、専門医の診察が重要です。

こんな症状に注意 首の腫れ(甲状腺腫大)に伴うサイン

首の腫れに加えて、以下のような症状がある場合は、甲状腺の機能異常やその他の病気が隠れている可能性があります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)のサイン

甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が異常に活発になり、様々な症状が現れます。まるで常に全力疾走しているような状態です。

甲状腺機能亢進症で見られる主な症状

症状の系統具体的な症状例
全身症状暑がり、多汗、体重減少(食欲は亢進)、微熱、倦怠感
循環器症状動悸、頻脈、息切れ、不整脈
精神・神経症状イライラ感、落ち着きのなさ、集中力低下、手の震え

バセドウ病の場合は、これらに加えて眼球突出や複視などの眼の症状が出ることがあります。

甲状腺機能低下症(橋本病など)のサイン

甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、心身の活動性が鈍くなります。エネルギーが不足しているような状態です。

甲状腺機能低下症で見られる主な症状

症状の系統具体的な症状例
全身症状寒がり、皮膚の乾燥、体重増加(食欲不振なのに)、むくみ、倦怠感、眠気
消化器症状便秘、食欲不振
精神・神経症状無気力、物忘れ、抑うつ気分、動作緩慢

その他、声のかすれや脱毛、月経異常なども見られることがあります。

甲状腺腫瘍や炎症による症状

甲状腺腫瘍や亜急性甲状腺炎などの炎症の場合、甲状腺ホルモンの異常に伴う症状は出ないことも多いです。しかし、腫れやしこりが大きくなることで以下のような局所的な症状が出ることがあります。

  • 首の圧迫感、異物感
  • 飲み込みにくさ(嚥下困難)
  • 声のかすれ(嗄声)
  • 痛み(特に亜急性甲状腺炎の場合)
  • しこりの急な増大(悪性腫瘍や出血を伴う良性結節の可能性)

首の腫れ(甲状腺腫大)放置するリスクとは?

首の腫れに気づいても、「たいしたことはないだろう」と自己判断で放置してしまうのは危険です。原因となる病気によっては、放置することで様々なリスクが生じます。

病状の進行と悪化

例えば、バセドウ病を未治療のまま放置すると、甲状腺ホルモンの過剰な作用により心臓に大きな負担がかかり、不整脈や心不全(甲状腺クリーゼという生命に関わる状態に至ることもあります)を引き起こす可能性があります。

また、橋本病による甲状腺機能低下症を放置すると、脂質異常症や動脈硬化が進行しやすくなったり、認知機能の低下、重篤な場合には粘液水腫性昏睡という意識障害に至ることもあります。

甲状腺がんの見逃し

首の腫れが甲状腺がんのサインである可能性も否定できません。

甲状腺がんの多くは進行が比較的ゆっくりで、「おとなしいがん」と言われることもありますが、中には進行が速いタイプや転移しやすいタイプも存在します。

早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、放置は禁物です。

甲状腺腫大の良性・悪性の見分け方の目安(自己判断は禁物)

特徴良性の可能性が高い傾向悪性の可能性を考慮する傾向
しこりの硬さ比較的柔らかい、弾力がある硬い、石のように感じる
しこりの動き嚥下(飲み込み)時に上下によく動く周囲組織と癒着し、動きが悪い、または固定されている
成長速度ゆっくり、または長期間変化なし数ヶ月単位で急に大きくなる

※これはあくまで一般的な傾向であり、自己判断は非常に危険です。確定診断には専門医による詳しい検査が必ず必要です。

生活の質(QOL)の低下

甲状腺ホルモンの異常は、身体的な症状だけでなく、イライラ感、不安感、抑うつ気分、集中力の低下といった精神的な不調も引き起こし、日常生活の質(QOL)を著しく低下させることがあります。

疲れやすさや気力の減退が続くことで、仕事や学業、家事などに支障をきたし、社会生活にも影響を与えることがあります。

「首の腫れくらい」と思わないで

「首が少し腫れているだけ」「疲れているせいだろう」そう思って、医療機関への受診をためらっていませんか。その小さなサインの裏には、治療が必要な甲状腺の病気が隠れているかもしれません。

「気のせい」「疲れのせい」で片付けていませんか?

首の腫れや、それに伴うかもしれない動悸、倦怠感、気分の落ち込みなどの症状。「最近忙しいから」「年のせいかな」と、つい見過ごしてしまいがちです。

しかし、その不調は甲状腺からのSOSかもしれません。特に女性は甲状腺の病気にかかりやすく、一生のうちに何らかの甲状腺疾患を経験する割合が高いと言われています。

妊娠・出産や更年期など、ライフステージの変化に伴う体調不良と症状が混同され、診断が遅れることも少なくありません。

検査結果だけでは分からない「つらさ」

血液検査の数値が基準値の範囲内であっても、患者さん自身が感じる「つらさ」や「生活のしづらさ」は確かに存在します。

例えば、甲状腺機能が正常範囲の下限に近い場合や、自己抗体は陽性でもホルモン値はまだ正常な場合など、微妙なバランスの乱れが体調に影響することもあります。

当クリニックでは、検査データという客観的な情報だけでなく、患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、症状の背景にある生活習慣やストレス、ご本人が何に困っているのかを総合的に把握することを大切にしています。

数値だけでは測れない「なんとなく不調」にも、甲状腺疾患の可能性を考慮し丁寧な診察を心がけています。

専門医だからこそできる多角的なアプローチ

甲状腺疾患は、その種類も症状の出方も実に多様です。また、治療の反応も患者さんによって異なります。

内分泌・甲状腺の専門医は、甲状腺ホルモンの複雑な調節や、他の内分泌器官との関連性、全身への影響について深い知識と豊富な診療経験を持っています。

そのため、個々の患者さんの状態を多角的に評価し、きめ細やかな診療を提供できます。

他の病気との関連性や、現在服用中のお薬との相互作用なども考慮し、一人ひとりに合った治療方針を一緒に考えていきます。

不安なこと、疑問に思うことは何でも遠慮なくご相談ください。

長く付き合う病気だからこそ信頼関係を

甲状腺の病気の中には、橋本病やバセドウ病のように、症状が落ち着いた後も定期的な検査や治療の継続が必要で、長く付き合っていく必要があるものも少なくありません。

だからこそ、医師と患者さんとの間にしっかりとした信頼関係を築くことが何よりも重要だと考えています。

私たちは患者さんが安心して治療を続けられるよう、病状や治療法について分かりやすく丁寧な説明を心がけ、精神的なサポートも提供します。

内分泌内科で行う甲状腺の検査と診断の流れ

首の腫れや関連する症状で内分泌内科を受診した場合、以下のような流れで検査と診断を進めます。

問診と視診・触診

まず、どのような症状がいつからあるのか、既往歴、家族歴、服用中の薬、生活習慣などを詳しく伺います(問診)。

その後、医師が首の腫れの程度、硬さ、動き、圧痛の有無などを目で見て確認し(視診)、丁寧に触ってしこりの大きさや性状などを調べます(触診)。

この段階で、甲状腺の病気がどの程度疑われるか、ある程度の見当をつけることができます。

血液検査

甲状腺の機能を調べるためには、血液検査が非常に重要です。主に以下の項目を測定します。

  • 甲状腺ホルモン(FT3, FT4):甲状腺から分泌されるホルモンで、実際の甲状腺の働き具合を示します。
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH):脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を調節するホルモンです。甲状腺機能の異常を鋭敏に反映します。
  • 自己抗体(TRAb, TPOAb, TgAbなど):バセドウ病や橋本病といった自己免疫性の甲状腺疾患の診断に役立ちます。

これらの結果を総合的に評価し、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、あるいは甲状腺炎などの診断を行います。

甲状腺検査の主な血液検査項目

検査項目何がわかるか一般的な基準値の目安(施設により異なる)
TSH (甲状腺刺激ホルモン)甲状腺機能を調節する脳下垂体ホルモン。甲状腺機能低下で高値、機能亢進で低値。0.5~5.0 μIU/mL 程度
FT4 (遊離サイロキシン)主要な甲状腺ホルモン。甲状腺機能亢進で高値、機能低下で低値。0.9~1.7 ng/dL 程度
FT3 (遊離トリヨードサイロニン)作用の強い甲状腺ホルモン。FT4と同様の動きを示すことが多い。2.3~4.0 pg/mL 程度

※上記は一般的な目安であり、検査機関や測定法によって基準値は異なります。結果は必ず医師の説明を受けてください。

超音波(エコー)検査

超音波検査は、甲状腺の大きさや形、内部の構造、しこり(結節)の有無、性状(嚢胞性か充実性か、石灰化の有無、血流の状態など)を詳細に観察できる非常に有用な検査です。

痛みもなく、放射線被曝の心配もないため、繰り返し行うことができます。甲状腺がんが疑われる特徴的な所見(微細な石灰化、不整な境界、縦長の形状など)がないかなどを評価します。

必要に応じて行うその他の検査

上記の検査で診断が難しい場合や、より詳細な情報が必要な場合には、以下のような検査を追加で行うことがあります。

穿刺吸引細胞診

超音波音波ガイド下に、しこりに細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。甲状腺腫瘍の診断において非常に重要な検査です。

CT・MRI検査

甲状腺の腫れが大きい場合や、周囲の臓器への広がり(浸潤)やリンパ節転移などを評価するために行います。

甲状腺シンチグラフィ

放射性同位元素(アイソトープ)を用いて、甲状腺全体の機能状態や、結節がホルモンを産生しているか(機能性結節かどうか)などを調べる検査です。

首の腫れ(甲状腺腫大)に対する治療法

首の腫れ(甲状腺腫大)の治療は、その原因となっている病気の種類、甲状腺機能の状態、腫れの程度、患者さんの年齢や全身状態、希望などを総合的に考慮して決定します。

原因疾患に応じた治療の選択

治療の基本は、原因となっている甲状腺疾患を正確に診断し、それに応じた治療を行うことです。内分泌専門医が、検査結果に基づいて最適な治療方針を提案します。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の治療

バセドウ病などによる甲状腺機能亢進症の治療には、主に以下の3つの方法があります。

薬物療法(抗甲状腺薬)

甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)を内服します。多くの患者さんでまず選択される治療法です。

アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)

放射性ヨウ素を内服し、甲状腺に取り込ませて甲状腺細胞を破壊し、ホルモン産生を抑える治療法です。

手術療法

甲状腺の一部または全部を摘出する治療法です。薬物療法で効果がない場合や副作用で続けられない場合、甲状腺腫が大きい場合、早期の寛解を希望する場合などに検討します。

それぞれの治療法にはメリット・デメリットがあるため、医師とよく相談して決定します。

甲状腺疾患の主な治療法の比較(バセドウ病を例に)

治療法主な特徴・メリット主なデメリット・注意点
抗甲状腺薬外来で手軽に開始できる。甲状腺機能を温存できる可能性がある。効果発現に時間がかかる。副作用(皮疹、肝機能障害、無顆粒球症など)の可能性。長期間の服用が必要な場合がある。
アイソトープ治療1回の内服で済むことが多い。根治性が高い。手術が不要。効果発現まで数ヶ月かかる。将来的に甲状腺機能低下症になる可能性が高い。妊娠中・授乳中、近い将来妊娠希望の場合は不可。一部施設でのみ実施。
手術療法確実な効果が期待できる。短期間で寛解する可能性がある。大きな甲状腺腫にも対応可能。入院が必要。首に傷が残る。合併症(反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)のリスク。術後甲状腺機能低下症になる。

甲状腺機能低下症(橋本病など)の治療

橋本病などによる甲状腺機能低下症で、甲状腺ホルモンが不足している場合は、合成甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンナトリウム:商品名 チラージンSなど)を内服して不足しているホルモンを補います。

適切な量を服用すれば、副作用はほとんどなく、体調も改善します。血液検査でホルモン値を定期的に確認しながら、薬の量を調整していきます。

多くの場合、生涯にわたる服用が必要となります。

甲状腺腫瘍(良性・悪性)の治療

良性の甲状腺腫瘍で、症状がなく、美容上の問題もなければ、基本的には定期的な経過観察となります。

ただし、腫瘍が大きいことによる圧迫症状(飲み込みにくさ、息苦しさなど)がある場合や、美容的に気になる場合、悪性の可能性が否定しきれない場合には手術を検討することがあります。

甲状腺がんの場合は、がんの種類(乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなど)や進行度(ステージ)、患者さんの状態に応じて治療法を決定します。

手術療法が治療の基本となり、必要に応じてアイソトープ治療、放射線外照射療法、分子標的薬などの薬物療法を組み合わせます。

首の腫れ(甲状腺腫大)に関するよくある質問

Q
首が腫れている気がしますが、何科を受診すればよいですか?
A

首の腫れ、特に甲状腺の病気が疑われる場合は、まず「内分泌内科」または「甲状腺専門医」のいる医療機関を受診することをお勧めします。これらの診療科では、甲状腺ホルモンの検査や超音波検査など、専門的な診断が可能です。

かかりつけ医がいる場合は、まず相談して紹介状を書いてもらうのも良いでしょう。耳鼻咽喉科でも首の腫れを診察しますが、甲状腺疾患の診断・治療が専門ではない場合もあります。

Q
甲状腺の病気は遺伝しますか?
A

甲状腺の病気の中には、家族内で発症しやすい傾向があるものがあります。例えば、バセドウ病や橋本病は自己免疫疾患であり、特定の遺伝的素因を持つ人が何らかの環境因子(ストレス、感染、ヨウ素摂取など)にさらされることで発症すると考えられています。

そのため、血縁者にこれらの病気の方がいる場合は、ご自身も体質的にかかりやすい可能性があります。心配な場合は、一度甲状腺の検査を受けてみることをお勧めします。

Q
甲状腺の病気と食事で気をつけることはありますか?
A

基本的にはバランスの取れた食事が大切です。特定の食品を極端に避けたり、過剰に摂取したりする必要はありません。ただし、病気の種類や状態、治療内容によっては注意が必要な場合があります。

甲状腺機能とヨウ素摂取に関する注意点

状態ヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめ等)の摂取理由・補足
バセドウ病(治療中)過剰摂取は控える(医師の指示に従う)ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となるため、大量に摂取すると薬の効果に影響したり、病状を不安定にしたりする可能性があります。
橋本病(機能低下症)適度な摂取は問題ないが、過剰摂取は避ける日本ではヨウ素欠乏による甲状腺機能低下症は稀です。むしろ過剰摂取が橋本病の誘因や悪化に関与する可能性も指摘されています。
アイソトープ治療前後ヨウ素制限が必要治療効果を高めるため、一定期間ヨウ素を多く含む食品を制限します。

※食事療法については、自己判断せず、必ず主治医や管理栄養士の指示に従ってください。

Q
妊娠中でも甲状腺の治療は続けられますか?安全ですか?
A

妊娠中の甲状腺ホルモンのコントロールは、お母さんと赤ちゃんの両方の健康にとって非常に重要です。甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や甲状腺機能低下症(橋本病など)と診断されている方は、妊娠中も原則として治療を継続する必要があります。

ただし、使用する薬剤の種類や量を、妊娠の時期に合わせて慎重に調整する必要があります。

例えば、バセドウ病の治療薬であるメルカゾールは妊娠初期には胎児への影響を考慮し、プロパジール(チウラジール)に変更したり、より安全な治療法を選択したりします。

妊娠を希望する場合や妊娠が判明した場合は、速やかに甲状腺の主治医に相談してください。産婦人科医とも連携を取りながら、安全な治療計画を立てます。

当院(神戸きしだクリニック)への受診について

神戸きしだクリニックの内分泌内科では、首の腫れや甲状腺腫大に関する専門的な診察を行っております。

首の前部の腫れや違和感、飲み込みにくさなどの症状は、甲状腺の腫大によるものかもしれません。バセドウ病や橋本病といった自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺結節や腺腫などが背景にある可能性があります。

首の腫れや違和感にお気づきの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

内分泌内科

診療時間日祝
9:00 – 12:00
隔週
13:30 – 16:30
09:00~12:0013:30~16:30

隔週

検査体制

  • 甲状腺機能検査(TSH・FT3・FT4)
  • 甲状腺自己抗体検査
  • 甲状腺エコー検査
  • 甲状腺シンチグラフィ(必要に応じて)
  • 穿刺吸引細胞診(必要に応じて)
  • 血液検査(炎症反応・ヨード濃度など)

など、症状に応じた適切な検査を実施いたします。専門的な精査や詳細検査が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院など高度医療機関と連携して対応いたします。

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