DPP-4阻害薬を飲んでいても血糖が目標に届かないとき、GLP-1製剤へ切り替えると、血糖がさらに下がり、体重の減少も期待できます。働き方の異なる薬へ置き換えるため、今の薬で下がりきらなかった分を補える可能性があります。
一方で、吐き気などのおなかの症状が出たり、薬の使い方が変わったりします。切り替えるかどうか、いつ、どの製剤へ変えるかは、今の血糖や体重、ほかの治療を踏まえて主治医が判断します。
この記事では、DPP-4阻害薬からGLP-1製剤へ切り替えたときの効果の違い、日本人の研究で分かった傾向、変更後の症状と効果を確かめる時期を解説します。
DPP-4阻害薬からの切り替えで期待できる変化
切り替えで期待する中心的な変化は、血糖がさらに下がることと、体重の減少です。検査値の改善に加えて、食事を無理なく取れ、薬を続けられるかも判断に含めます。
血糖が目標に届かないときの選択肢
DPP-4阻害薬を使っていても血糖が十分に下がらない場合、GLP-1受容体作動薬への変更が検討されます。GLP-1受容体作動薬とは、腸から出るホルモンのGLP-1に代わり、体の受け取り口に作用して血糖を下げる薬です。
HbA1cは、採血で調べる過去1〜2か月ほどの血糖状態を反映する検査値です。切り替え前の値が高い人と、すでに目標に近い人とでは、期待する下がり幅も変わります。
単に薬の名前を変えるのではなく、今のHbA1cと自分の目標との差を埋めるための変更です。目標値は年齢や体の状態、血糖が下がりすぎる危険性などを踏まえて設定されます。
体重の変化とおなかの症状を一緒に見る
GLP-1製剤では血糖とともに体重の減少も期待できますが、食べられずに減った体重は、望ましい変化とは区別して評価します。切り替え前後を比べるときは、検査値と体調を組み合わせて見ていきましょう。
| 見る項目 | DPP-4阻害薬を続ける場合 | GLP-1製剤へ切り替える場合 |
|---|---|---|
| 血糖 | 現在の治療効果を基準に評価 | さらに下がる効果を期待 |
| 体重 | 大きな減少を期待する薬ではない | 減少が期待され、食事量も確認 |
| おなかの症状 | 現在の症状を記録 | 吐き気・嘔吐・下痢に注意 |
| 使い方 | 内服を継続 | 飲み薬または注射へ変更 |
体重を減らす必要がある人では利点になり得る変化も、やせている人や食事量が少ない人では、減りすぎていないかを慎重に見ます。
変更前の検査値を比較の基準にする
効果の比較には、切り替える直前のHbA1cと体重が役立ちます。以前の高かった値だけを覚えていると、変更後の改善を大きく見積もったり、逆に見落としたりするためです。
受診時には、目標値と、変更前のどの検査結果を基準にするかを主治医と確認しましょう。体重についても、減量が必要なのか、維持を優先するのかを共有すると、変更後の評価が具体的になります。
DPP-4阻害薬とGLP-1製剤で血糖への働きが違う理由
体内のGLP-1を長持ちさせる薬から、GLP-1に代わって働く薬へ変えるため、同じ系統の働きを利用していても血糖への作用が変わります。飲み薬か注射かという形に加え、薬の働きの違いも血糖への作用に関わります。
体のGLP-1を長持ちさせる働き
インクレチンは、食事に反応して腸から出て、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌を助けるホルモンの総称です。GLP-1はその1つで、体内では分解されやすい性質があります。
DPP-4は、GLP-1などを分解する酵素の名前です。DPP-4阻害薬はその酵素の働きを抑え、自分の体から出たGLP-1が働く時間を延ばします。
GLP-1に代わる作用を薬で補う
GLP-1受容体作動薬は、血糖が高いときにインスリンを出させるGLP-1の働きを、薬として利用します。2型糖尿病でもGLP-1に反応する力が保たれているため、この作用を治療に生かせます。
- DPP-4阻害薬 … 体内で作られたGLP-1の分解を抑える薬
- GLP-1受容体作動薬 … GLP-1の受け取り口に作用する薬
この違いがあるため、DPP-4阻害薬で得られている効果を基準としても、変更後にさらに血糖が下がる余地があります。
切り替えは薬を重ねる治療とは区別する
DPP-4阻害薬からの切り替えでは、今の薬をどう終了し、新しい薬をいつ始めるかを含めた処方の変更が必要です。自宅に薬が残っているという理由で、2種類を自分で重ねて使うことは避けます。
電子添文(添付文書)は、薬の承認された使い方や注意点を示す文書です。リベルサスやマンジャロなど各製剤の電子添文は、DPP-4阻害薬との併用について臨床試験成績がなく、有効性と安全性は確認されていないとしています。
変更する日の説明をまだ受けていない場合は、DPP-4阻害薬の最終服用日と切り替え先の開始日を、処方元に確認しましょう。
日本人の切り替え後の血糖と体重
日本人の2型糖尿病でも、DPP-4阻害薬から飲むGLP-1製剤へ変更したあと、血糖と体重の改善が期待されます。研究の結果を自分に当てはめるときは、変更前の血糖と、それまで使っていた薬を手がかりにします。
リベルサスへ変更した6か月後の傾向
リベルサスは、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを飲み薬にした製剤です。注射を使わずに、DPP-4阻害薬からGLP-1の働きを利用する治療へ変更する選択肢になります。
日本人の2型糖尿病でDPP-4阻害薬からリベルサスへ切り替えた人を6か月追った観察研究ではHbA1cと体重が低下し、別の6か月の観察研究でも、背景をそろえて比べると、切り替えた人はDPP-4阻害薬を続けた人より血糖と体重が改善したと報告されています1)2)。切り替え前のHbA1cが高い人ほど、下がり方が大きい傾向でした。
観察研究とは、日常の診療で選ばれた治療と経過を調べる研究です。薬の割り当てをくじ引きのように決める試験とは異なり、治療の選ばれ方や生活の違いも結果に関わります。
初めて使う人と切り替える人の違い
切り替え後に期待する改善は、DPP-4阻害薬を使って得られていた効果からの追加分です。糖尿病の治療を始める前の血糖と比べる場合とは、出発点が異なります。
日本人の2型糖尿病を対象に、リベルサスを初めてインクレチン関連薬として使う人とDPP-4阻害薬から切り替える人を比べた観察研究では、切り替えでもHbA1cは下がりましたが、初めて使う人より下がり方は小さいという結果でした3)。
同じ薬を使う人の話を聞いても、それまでの治療が異なれば下がり幅も変わります。自分の切り替え前の検査値から、どれだけ目標へ近づいたかで評価します。
数値の下がり幅と目標までの距離
HbA1cが下がったという変化と、目標に到達したという結果は、分けて見ます。高い値から大きく改善しても治療の調整が必要な人がいる一方、変化が小さくても目標に届く人がいます。
| 結果を見る視点 | 日本の切り替え研究 | 海外の比較試験 |
|---|---|---|
| 血糖の改善 | 変更前からのHbA1cの変化 | 比較する薬とのHbA1cの差 |
| 体重の改善 | 切り替え前後の体重の変化 | 治療ごとの体重の変化 |
| 自分への当てはめ方 | 開始時の血糖との関係 | 切り替えか、新たな追加かの違い |
どちらの結果を読むときも、薬の名前だけで比較せず、それまでの治療と変更前の状態を合わせて見ると、期待する変化を整理できます。
飲み薬と週1回注射の選択
注射を避けたい場合には飲むGLP-1製剤、週単位で治療を管理したい場合には週1回注射が候補になります。生活に合う使い方と、必要な血糖改善の両方から選びます。
リベルサスは内服を続けたい場合の候補
飲み薬への切り替えを希望する人でも、今のDPP-4阻害薬と同じ飲み方をそのまま引き継ぐのではなく、リベルサスの服用方法に合わせます。毎日の生活の中で、決められた方法を続けられるかが選択に関わります。
注射を使わない点だけで選ぶと、実際に始めてから服用の負担に気づく場合もあります。朝の生活やほかの薬を飲む状況まで含めて、続けられる形かを考えましょう。
週1回セマグルチドと飲み薬の比較
週1回の注射にも、DPP-4阻害薬より血糖と体重を下げる効果が期待できます。オゼンピックは、セマグルチドを皮膚の下に注射する製剤です。
メトホルミンなどの飲み薬で治療中の2型糖尿病1,231人を56週比べた試験では、週1回のセマグルチド0.5mg・1.0mgを加えた人は、DPP-4阻害薬のシタグリプチンを加えた人よりHbA1cと体重が大きく下がりました4)。この結果は新しく薬を加える場面での比較なので、DPP-4阻害薬から変更するときは、今の薬からの上乗せ分として読みます。
切り替え先として注射を検討するときも、追加で期待できる改善は、現在使っている薬と検査値を踏まえて判断されます。
注射への不安も選択に含める
注射と聞くと、治療の負担が急に増えるように感じるかもしれません。使う頻度や器具の扱い方を具体的に確かめると、何が心配なのかを分けて考えやすくなります。
同じ週1回製剤でも薬の成分は異なり、トルリシティの成分はデュラグルチド、マンジャロの成分はチルゼパチドです。GIPはGLP-1と同じく腸から出るインクレチンの1つで、マンジャロはGIPとGLP-1の両方の受け取り口に作用する薬に分類されます。
自分で注射を扱うことへの不安があれば、切り替える前の受診で、器具の操作と週1回の予定を管理できそうかを相談しましょう。
変更前に決めておく薬の量と予定
切り替え先の薬は、製剤ごとに定められた量から始めます。DPP-4阻害薬の服用量を、新しい薬の量へ単純に換算する方法ではありません。
開始量と増量の間隔は製剤ごとに異なる
リベルサス、オゼンピック、トルリシティ、マンジャロの電子添文に記載された開始量と増量の扱いは、次のとおりです。増量するかどうかは、血糖への効果や体調を見て決まります。
| 切り替え先 | 開始時の量 | その後の量の調整 |
|---|---|---|
| リベルサス | 1日1回3mg | 4週間以上の後に7mg。7mgを4週間以上使って効果不十分なら14mgへ増量可能 |
| オゼンピック | 週1回0.25mg | 4週間後に0.5mg。0.5mgを4週間以上使って効果不十分なら1.0mgまで増量可能 |
| トルリシティ | 週1回0.75mg | 状態に応じて週1回1.5mgへ増量可能 |
| マンジャロ | 週1回2.5mg | 4週間後に週1回5mgへ増量 |
トルリシティを含め、すべての製剤に同じ増量間隔が当てはまるわけではありません。開始時の量と次の処方量は、薬の名称と合わせて把握しておくと取り違えを防ぎやすくなります。
開始直後の数値だけで量を増やさない
少ない量から始める製剤では、開始直後の量と、治療を続けるための量が異なります。早く血糖を下げたいと感じても、量は処方された間隔に沿って増やします。
特に吐き気や食事量の低下があるときは、血糖だけを理由に予定どおり増やせるとは限りません。マンジャロでは、おなかの症状などで続けにくい場合に、減量や増量の延期を検討する扱いとなっています。
次の受診までの予定を明確にする
受診時には、薬の名前と用量に加えて、治療の予定も把握しておくと安心です。押さえておきたいのは、変更する日、次に量を見直す時期、次回の採血予定です。その予定が明確なら、どの期間の体調を記録すればよいかも分かります。
処方された量や変更日が曖昧なままなら、手持ちの薬を自己判断で調整せず、処方元へ確認しましょう。オゼンピックの電子添文にもあるとおり、インスリンが必要な状態の人ではGLP-1製剤はインスリンの代わりになりません。
切り替え後のおなかの症状と連絡の目安
変更後は、吐き気、嘔吐、下痢などのおなかの症状に気を配りましょう。症状の有無だけでなく、食事や水分が取れるか、日常生活を続けられるかで、連絡を急ぐ程度が変わります。
吐き気と食事量の変化を記録する
薬を始めたあとや量を増やしたあとに気持ち悪さが出たら、いつから続いているかと、食べられる量の変化を記録します。症状と用量変更の前後関係が分かると、そのまま続けるか、処方の調整が必要かを検討しやすくなります。
- 吐き気 … 始まった日、続く時間、食事への影響
- 嘔吐・下痢 … 繰り返しの有無、水分を取れるか
- 食事量の減少 … 普段と比べた量、体重や体力の変化
水分が取れない状態は、軽い気持ち悪さだけの状態より優先して連絡してください。
食べられずに減った体重は処方の見直しへ
体重が減っていても、食事がほとんど取れず、普段の活動がつらいなら、薬の効果だけを喜んでよい状態とはいえません。血糖や体重の改善と、十分に食べて生活できる状態を両立させるため、用量の調整が検討されます。
たとえば、リベルサスへ変更した人が自宅の朝食で吐き気を感じ、食べられる量が減ったときは、その日の服用量と食事量を記録し、続くようなら次の増量前に処方元へ連絡します。飲み薬だから軽く済むと決めつけず、生活への影響も合わせて伝えます。
次回の予約を待たずに連絡する症状
嘔吐を繰り返して水分が取れない、強い腹痛がある、ぐったりして普段どおりに動けないときは、次回予約を待たずに医療機関へ連絡してください。症状が強く連絡も難しい状態なら、救急受診が必要です。
連絡時には、薬の名前と使った量、最後に使った時刻、症状が始まった時期を伝えると、受診や次の服薬について判断を受けやすくなります。強い症状は、薬に体を慣らすためだと思って我慢せず、早めに伝えます。
DPP-4阻害薬から変更したあとの効果判定
切り替えの評価は、初期の体調を確認しながら、検査値の変化を一定の期間追って行います。HbA1cの改善と、長く続けられるかの両方が、治療を継続する判断につながります。
3〜4か月を効果の見直しの目安にする
リベルサスの電子添文では、血糖や尿に出る糖を定期的に調べ、3〜4か月使っても効果が不十分なら治療の変更を検討するとしています。この期間は、体調が悪くても待ち続けるという意味ではありません。
HbA1cはそれまでの血糖を反映するため、変更直後の採血では、新しい治療で過ごした期間がまだ十分に反映されていない場合があります。少量で始めた期間も含めて、どの量をどれだけ使ってから採血したかが解釈に関わります。
目標への到達と長期の継続を分けて評価する
長く続ける価値を判断するときは、値が下がったかに加え、目標を保てるかを見ます。薬を続けられるか、食事や生活に支障がないかも同時に評価します。
シタグリプチンを52週使った2型糖尿病の人を、その後の52週にリベルサスへ切り替えるか継続するかで比べた海外中心の試験では、切り替えた人のほうがHbA1c 7%未満に届く割合が高いという結果でした5)。また、メトホルミンで治療中の2型糖尿病にトルリシティの成分であるデュラグルチドかシタグリプチンを加えて2年間比較した海外の試験では、デュラグルチドで血糖を下げる効果が続き、シタグリプチンより低下が大きい一方、おなかの症状は多くなりました6)。
HbA1c 7%未満は上記の試験で用いられた評価の基準で、自分の目標値は体の状態に合わせて設定されます。長期の成績を参考にしながらも、継続中の採血と体調によって、その都度治療が見直されます。
診察で照らし合わせたい3つの記録
診察時には、検査値だけでなく体重と使い続けた状況がそろうと、切り替えの利点と負担を判断しやすくなります。飲み忘れや注射を使えなかった日も、実際の効果を評価するための情報です。
- HbA1c … 変更前の値、変更後の採血日、主治医と決めた目標
- 体重 … 切り替え前後の変化、食事量との関係
- 続けやすさ … 使用できた状況、吐き気などで生活に困った場面
効果が足りないと感じるときも、まず実際に使えた量と期間が評価されるため、薬の変更だけを急ぐよりも、この記録を受診時に共有しましょう。
よくある質問
- QDPP-4阻害薬から切り替えれば、必ず血糖が下がりますか?
- A
必ず下がるとはいえず、結果を左右するのは切り替え前のHbA1cや、薬を使い続けられるかどうかです。すでに目標に近い人では、高い値から変更する人より下がり幅が小さくても、目標を保てていれば治療上の意味があります。
期待した変化が得られないときは、自分で増量せず、実際に使った量と期間を次の診察で伝え、検査値と合わせて評価を受けます。
- Qリベルサスへ切り替えた直後に効果を判断できますか?
- A
切り替え直後の検査だけで、最終的な効果を判断するのは早すぎます。リベルサスは3mgから始め、4週間以上の後に7mgへ増やすため、開始時の量と治療を続ける量を分けて見ます。
次回の採血日が決まっている場合は処方どおりに続け、その時点でHbA1cや体調を評価します。予定が不明なら、開始した日と今の量を処方元に伝え、受診時期を確認しましょう。
- Q切り替え後の吐き気は、次の診察まで我慢してよいですか?
- A
食事や水分が取れないほどの吐き気や、繰り返す嘔吐は、次の診察を待たずに連絡してください。強い腹痛やぐったりする状態を伴う場合も、速やかな受診が必要になります。
食事や水分が取れていても、吐き気が続いて生活に支障があるなら、増量前に処方元へ伝えてください。症状が始まった日と現在の薬の量を記録しておくと、処方を調整する判断に役立ちます。
- Q週1回の注射へ変えると、リベルサスより血糖が下がりますか?
- A
週1回という回数や、注射という形だけで、リベルサスより血糖が下がるとは決められません。薬の成分や用量、変更前の治療によって期待する効果が変わるため、現在の検査値と続けやすさを踏まえて切り替え先が選ばれます。


