メトホルミンは、ヨード造影剤を使う検査の前に一時中止し、造影剤を投与してから48時間は再開しないと日本の電子添文に記載されています。48時間を過ぎたあとも、腎臓の働きと体調を見てから再開を決めます。
造影CTの予約で「検査前は薬を休むように」とだけ言われ、いつから休み、いつ飲み始めればよいのか迷っている方もいるでしょう。休み始める日時と、検査後に誰の判断で再開するかまで分かっていれば、当日に慌てずに済みます。
この記事では、造影検査の前後でメトホルミンを休む理由、再開までの時間の数え方、腎機能による扱いの違い、飲んでしまったときの対応を解説します。
造影検査でメトホルミンを休むのは腎臓への備え
休薬の理由は、造影剤を使ったあとに腎臓の働きが落ちると、メトホルミンが尿から出にくくなるためです。検査の前後だけ薬を休む指示には、体内に薬がたまる危険を避ける意味があります。
尿へ出る薬が体内に残りやすくなる
メトホルミンは、体内でほとんど分解されず、主に腎臓を通って尿へ排出される薬です。腎臓は血液をこして不要な物質を体外へ出すため、その働きが低下すると、いつもと同じ量を飲んでも血液中の薬の濃度が高くなりえます。
造影剤の使用後に問題になるのは、この排出する力の変化です。普段の診察で処方されている量でも、検査前後は腎臓の状態に合わせて一時的に休みます。
乳酸アシドーシスにつながる危険を避ける
薬が体にたまりやすい状態では、乳酸アシドーシスという、乳酸が増えて血液が酸性に傾く重い状態が起こるおそれが高まります。休薬は、造影剤の使用に伴って腎機能が低下したときに備えて行います。
毎日続けてきた薬を急に休むよう言われると、不安になるものです。検査に合わせた一時中止は、糖尿病の治療を終えるという意味ではなく、再開できる状態を待つための対応と捉えると整理できます。
検査前と検査後で注意する点が変わる
検査前は普段の腎機能を把握し、検査後はそこから変化していないかを見ます。注目するのは、造影剤を使う前後の腎臓の働きの差です。検査が終わった時点では、再開の判断がまだ先になる場合もあります。
| 時期 | 腎臓に関する確認 | メトホルミンの扱い |
|---|---|---|
| 検査前 | 普段の腎機能と最近の体調 | 指示された時点から一時中止 |
| 検査当日 | 造影剤を使う前の状態 | 休薬状況を検査先と共有 |
| 検査後 | 腎機能の変化と体調 | 投与後48時間は再開せず、その後も状態で判断 |
造影剤を使った方全員に腎機能の低下が起こるわけではありません。もともとの働きが低い方では、薬を排出する余裕が少ないため、検査前の数値も重視されます。
メトホルミンの再開は造影剤投与から48時間後以降
再開までの目安は、造影剤を投与してから少なくとも48時間です。この時間を過ぎたうえで、処方元または検査を担当する医師が、腎機能と全身の状態から再開の可否を判断します。
休み始める日時は検査前に指定を受ける
国内での薬の使用上の注意を記したメトグルコ錠の電子添文(添付文書)では、緊急検査を除いて検査前に一時中止し、ヨード造影剤投与後48時間は再開しないよう定めています。検査前の中止について、一律に「何日前から」とする日数の指定はなく、最後に飲む日時は個別の指示で決まります。
そのため、検査日の朝から休むのか、前日までに最後の服用を済ませるのかは、予約時の指示で決まります。「検査前に休む」という説明だけだった場合は、最後に飲む日と時間を検査先に確認しましょう。
| 項目 | 目安 | 個別に決める内容 |
|---|---|---|
| 休み始める時期 | 予定検査の前に一時中止 | 最後に服用する日時 |
| 再開を控える期間 | 造影剤投与後48時間 | 造影剤を使用した日時から数える |
| 再開前の確認 | 48時間経過後も状態に注意 | 腎機能・体調と再開を判断する医師 |
48時間は造影剤を投与した時刻から数える
時間を数える起点は、ヨード造影剤を投与した時刻です。たとえば月曜日の午前10時に投与した場合、48時間が経過するのは水曜日の午前10時で、水曜日の朝ならいつでもよいという意味ではありません。
この例は、休薬期間の数え方を示したものです。実際に飲み始めるのは、指示された再開条件を満たしたあとの服用時刻です。予定表には日付だけでなく時刻も書いておくと、取り違えを減らせます。
腎機能や体調が戻らなければ再開を待つ
48時間を過ぎても、検査後に腎機能が悪化している方や、脱水が疑われる方は、再開を先に延ばします。再開が延びる長さは、検査前の状態へ戻る経過などで決まり、全員に共通する追加の日数は決められないためです。
検査後の採血が指示された場合は、採血を受けるだけでなく、その結果を踏まえた再開の指示を受けてから飲み始めます。処方元へ連絡がつかず再開の可否が不明な間は、自己判断で飲み始めず、休薬を続けて検査先へ連絡してください。
休薬の対象は血管にヨード造影剤を入れる検査
造影CTや血管のカテーテル検査など、血管内にヨード造影剤を入れる検査が、休薬を検討する主な場面です。「CTを受ける」という予約名だけでは、造影剤を使うかどうかまでは分かりません。
造影CTでは静脈から薬剤を入れる
造影CTは、画像に血管や臓器の違いを映し出しやすくするために、通常は腕などの静脈からヨード造影剤を入れる検査です。同じCTでも、造影剤を使わずに撮影する単純CTとは薬の扱いを分けて捉えます。
予約票に「造影」と書かれている、あるいは注射で画像を見やすくすると説明された場合は、メトホルミンの服用が検査先へ伝わっているかを確かめます。処方を受けている医療機関と検査先が違うときは、予約時に薬の名前を伝えましょう。
カテーテル検査では動脈から入れることもある
カテーテル検査は、細い管を血管の中に進め、血管の状態を調べる検査です。動脈へヨード造影剤を入れる検査では、静脈から入れる検査よりも腎臓への負担に注意が必要になります。
検査名が違うと、造影剤の入れ方や検査を受ける時点の全身状態も変わります。以前の造影CTで受けた説明をそのまま使わず、今回のカテーテル検査の説明をあらためて聞きましょう。
検査名と造影剤の使用を組み合わせて見る
休薬の指示を読み取る際は、撮影する装置の名前と、ヨード造影剤を使う予定の両方を見ます。検査の種類を整理すると、単に「造影剤」とだけ伝えられたときの取り違えを防ぎやすくなります。
| 検査の例 | ヨード造影剤 | 休薬との関係 |
|---|---|---|
| 造影CT | 通常は静脈内に使用 | 検査前後の一時中止を検討 |
| 血管のカテーテル検査 | 動脈内などに使用 | 投与経路と腎機能を踏まえて対応 |
| 単純CT | 使用しない | ヨード造影剤に伴う休薬規定の対象外 |
ヨード造影剤を使わない造影MRIなどは、このヨード造影剤に伴う休薬規定の対象外ですが、実際の薬の扱いは検査先の説明で確かめます。
腎臓の働きに応じてメトホルミンの扱いを決める
腎臓の働きが低い方ほど、検査前後の休薬と再開を慎重に判断します。海外では腎機能の数値によって休薬の対象が異なる場合もありますが、日本で受けた中止の指示があれば、その指示に沿って休みましょう。
採血結果のeGFRは血液をこす力の目安
eGFRは、腎臓が血液をこす力を推定した数値で、採血結果の用紙に記載されています。数値が低いほど腎臓の働きが低下していると捉えますが、今回も同じ状態かどうかは、以前の検査結果だけでは分かりません。
普段から低い数値で安定している方と、最近急に数値が下がった方では、同じ値でも検査前後に注意する点が変わります。数値に加えて採血日と最近の体調も控えておくと、いつの状態を表す結果かを検査先へ示せます。
海外の基準には30や45などの違いがある
休薬の要否は、比較表の腎機能の数値を見て自分で選ぶものではありません。次の表は、発表した組織や版によって異なる腎機能の区切りを整理したもので、ご自身に当てはまる基準を示すものではないためです。
| 指針・比較の対象 | 腎機能の区分 | 記載された扱い |
|---|---|---|
| 日本のメトグルコ錠電子添文 | ヨード造影剤を用いる予定検査 | 検査前に一時中止、投与後48時間は再開しない |
| スウェーデンの指針と欧州の指針の比較(2018年) | 前者はGFR45未満、後者はeGFR30未満 | 休薬を求める腎機能の区切りが異なる |
| 欧州の指針(2011年版) | eGFR60以上 | 通常どおり継続できる扱い |
GFRも腎臓が血液をこす力を表す指標で、表の数値の単位はmL/min/1.73m²です。2011年版の欧州の指針はその後更新されているため、今の検査予定は、いま受けている指示に沿って進めましょう。
検査前の値と検査後の変化を合わせて判断する
再開の判断では、検査前の腎機能が保たれていたかに加え、検査後に低下していないかが問題になります。普段の数値が良好でも検査後に体調が崩れた場合は、予定していた再開日でよいかをあらためて判断します。
予定表に再開日が書かれていても、下痢や嘔吐で水分がとれない状態になった場合は、再開前に処方元または検査先へ連絡してください。体調の変化を添えて伝えると、検査前の情報だけで判断が進むのを防げます。
造影CT後の腎機能低下は全員に起こるわけではない
造影CTのあとに腎臓の働きが落ちる危険は、もともとの腎機能などによって変わります。腎機能が低い方への注意と、検査を受ける方全体の研究結果は、分けて読みます。
造影剤を使わないCTとの比較で分かる範囲
造影CTまたは単純CTを受け、背景をそろえた169,455人を含む21件の研究で、各研究の検査後の観察期間に生じた急性腎障害をまとめると、全体では起こりやすさに差が見られなかったという報告があります1)。
急性腎障害は、短い間に腎臓の働きが低下する状態です。造影剤の使用後という時間的な前後関係だけでは、造影剤が低下の原因だったかまでは区別できないため、造影剤を使わなかった方との比較にも意味があります。
もともとの腎機能が低い方には注意が残る
全体として危険の増加が目立たないという結果も、自分の腎機能に当てはめて受け止めます。腎臓の働きが低下している方では、造影剤を使う前の評価や、使ったあとの経過の確認を重視します。
また、この結果は造影CTを受けた方のもので、動脈から造影剤を入れる検査は別に考えます。検査の方法と腎機能の両方をそろえて読むと、同じ「造影検査」の説明でも注意の強さが違う理由が分かります。
検査を避ける判断と休薬の判断を分ける
休薬の指示は、必要な造影検査を受けるための対応の1つです。必要な画像を得る利益と腎臓への負担を踏まえて、検査の実施と薬の一時中止を組み合わせて判断します。
腎機能への心配がある場合は、検査を自己判断で取りやめる前に、最近の採血結果をもとに、どのような備えが必要か検査を担当する医師に相談しましょう。休薬期間も、自分で延ばすのではなく、検査予定と体調に合わせて相談しながら決めます。
飲んでしまったときは検査前に服用時刻を伝える
休薬の指示があったのに飲んでしまった場合は、検査を受ける前に検査先へ連絡してください。服用した事実だけで重大な問題が起こると決まるわけではなく、検査の緊急性や腎機能を踏まえて対応が決まります。
飲んだ事実を伝えれば検査方法を判断できる
予約された検査の朝、いつもの流れで薬を飲み、出発前に休薬の指示書に気づいたとします。そのときは検査先に電話し、薬の名前と飲んだ量、服用時刻を伝えると、予定どおり来院してよいかを含めた判断につながります。
造影剤を使う糖尿病の方1,459人を含む6件の研究で、検査後に評価された腎機能を比較した解析では、メトホルミンの継続によって腎障害が増えたという証拠は乏しいと報告されています2)。予定検査では日本の電子添文に沿って休薬するため、この結果があっても、追加の服用や休薬指示の変更は検査先に相談して決めます。
緊急の検査では事前に休めない状況もある
緊急に検査を行う必要がある場合は、電子添文でも事前中止の例外とされています。休薬できていないことを理由に受診を遅らせず、服用状況を救急の担当者へ伝えて検査や治療を受ける対応が基本です。
急性心筋梗塞で緊急のカテーテル治療を受けた2型糖尿病の372人を調べた研究では、事前に休薬できなかった方も含め、入院中に乳酸アシドーシスは認められなかったと報告されています3)。治療後には多くの方が休薬しており、緊急治療のあと入院中の観察を受けた方での結果です。
検査後に気づいたら次の服用前に連絡する
検査後の休薬期間中に飲んでしまった場合は、次の服用を控えて処方元または検査先へ連絡してください。何を、いつ、どれだけ飲んだかが分かると、その後の休薬や腎機能の確認を判断しやすくなります。
- 予約時の共有事項 … メトホルミンの服用と処方元
- 検査前の服用記録 … 最後に飲んだ日時と量
- 検査後の経過 … 造影剤を使った日時と体調の変化
- 再開前の確認事項 … 採血の予定と再開を判断する医師
連絡の優先度が高いのは検査後の体調悪化で、強いだるさや息苦しさ、意識がぼんやりする状態があれば、乳酸アシドーシスなどの重い異常も疑い、処方元の診療再開を待たず救急で受診してください。
病院ごとに休薬の説明が違うときの整理
説明の違いには、参考にする指針の違いや、検査方法、腎機能の条件の違いが関わります。処方元と検査先の指示が食い違う場合は、患者さんがどちらかを選ぶのではなく、両者に再開までの予定をそろえてもらいます。
根拠の蓄積と慎重さの違いが説明に表れる
造影剤とメトホルミンを組み合わせるときの扱いは、国や組織ごとに慎重さの度合いが異なり、どの腎機能の値から休薬するかなどに違いがあります。海外の情報を読むときには、どの国や組織のものかに加えて、発表された年も見ておきましょう。
一方、日本の電子添文に沿った説明は、海外の腎機能別の基準と一致するとは限りません。インターネットに「休薬不要」と書かれていても、自分に届いた指示と同じ条件について述べているかを見比べて読みます。
処方元と検査先で再開の予定をそろえる
休薬の開始だけでなく、検査後の結果を誰が受け取り、誰が再開を判断するかまで決まると、指示の行き違いを減らせます。検査先で腎機能を調べても、その結果が処方元にまだ伝わっていなければ、再開の判断が保留になることもあります。
- 休薬開始 … 最後の服用日時と、どの薬を休む指示か
- 再開条件 … 造影剤投与後48時間の経過に加えて必要な評価
- 採血結果の扱い … 結果を確認する担当と患者さんへの連絡方法
- 連絡先 … 再開予定日が休診日だった場合の問い合わせ先
指示が食い違ったまま検査日が近づいた場合は、両方の説明の内容を検査先へ伝え、処方元と調整してもらいましょう。
休薬中から再開後まで服用予定を残す
最後に飲んだ日時と、再開を許可された日時を同じ記録に残しておくと、休薬を続ける日と飲み始める日を区別できます。家族が薬を管理している場合も、最初の予定と変更後の指示が混ざらないよう、変更された部分が分かる記録が役立ちます。
休薬中の血糖の扱いや食事、SU薬・SGLT2阻害薬・インスリンなどの治療については、主治医の個別の指示に従います。再開時も休んだ分をまとめて飲むのではなく、指示された服用予定に戻すのが基本です。
よくある質問
- Q造影CTの前に、メトホルミンは何日前から休むのですか?
- A
日本の電子添文には、検査前の一時中止が記載されており、最後に飲む日時は検査先の個別の指示で決まります。一律に「何日前から」とは決められていないため、指定された日時を予約票などで確かめておきます。
中止の開始日が分からない場合は、予約票の連絡先へ検査前に問い合わせてください。過去の検査での指示ではなく、今回の検査予定に合わせた指示に沿って休みます。
- Q検査から2日たてば、メトホルミンを再開してもよいですか?
- A
再開の目安は造影剤を投与してから48時間後以降ですが、時間の経過だけでは決まりません。腎機能や体調を踏まえて、処方元または検査を担当する医師の判断で再開します。
再開の指示が不明なまま連絡がつかない場合は、自己判断で再開せず、休薬を続けて検査先に連絡してください。採血の予定がある方は、結果に基づく判断を受けてから飲み始めます。
- Q検査当日の朝に飲んでしまうと、検査は中止になりますか?
- A
必ず中止になるわけではなく、検査の緊急性や腎機能、最後の服用状況によって対応が変わります。薬の名前と飲んだ量、服用時刻を検査前に検査先へ伝えてください。
緊急検査では事前に休めない場合も想定されています。検査を受けるかどうかは患者さん自身で決めず、検査担当者に判断してもらいましょう。
- Q腎機能の数値が良ければ、休薬の指示を守らなくてもよいですか?
- A
腎機能が良好でも、日本で受けた休薬の指示は自己判断で変更しないでください。海外の指針には継続を認める条件がありますが、日本の電子添文とは扱いが違うため、指示に疑問があれば検査前に処方元と検査先で予定をそろえます。


