DPP-4阻害薬のうち、エクアとオングリザ、エクメット配合錠には同じ成分のジェネリックがあり、切り替えると1錠の薬価が先発品より低くなります。ジャヌビアやトラゼンタ、テネリアなどは先発品だけなので、同じ成分のまま安い薬へ替える方法はありません。
薬局で切り替えを勧められて、毎月の支払いがどれだけ変わるのか、名前や見た目が変わっても同じように飲めるのかが気になっている方もいるでしょう。支払額の差は1錠の価格だけでなく、1日に飲む錠数と自己負担の割合で決まります。
この記事では、DPP-4阻害薬のジェネリックの有無、先発品との価格差、窓口での負担と特別の料金、切り替える前後の確認点を解説します。
DPP-4阻害薬でジェネリックを選べる成分
ジェネリックがあるのは、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチンとメトホルミンの配合剤です。
薬袋の販売名から後発品の有無が分かる
先発品は最初に開発された薬、ジェネリックはその後に承認される同じ有効成分の薬で、「後発医薬品」とも呼ばれます。販売名は薬袋やお薬手帳に印字される製品の名前で、有効成分の名前とは異なる場合があります。
医薬品の審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)の販売名一覧と、厚生労働省の薬価基準で、成分と製品の対応をたどれます。服用中の名前を下の表の中央の列で探すと、その成分に後発品があるかを読み取れます。
| 有効成分 | 先発品の販売名 | ジェネリック |
|---|---|---|
| ビルダグリプチン | エクア | あり |
| サキサグリプチン | オングリザ | あり |
| ビルダグリプチン・メトホルミン | エクメット配合錠 | あり(メホビル配合錠) |
| シタグリプチン | ジャヌビア、グラクティブ | なし |
| リナグリプチン | トラゼンタ | なし |
| テネリグリプチン | テネリア、テネリアOD | なし |
| アログリプチン | ネシーナ | なし |
| アナグリプチン | スイニー | なし |
| トレラグリプチン | ザファテック | なし |
| オマリグリプチン | マリゼブ | なし |
後発品がある薬は成分名と規格で対応させる
エクア錠50mgに対応する後発品は、ビルダグリプチン錠50mgです。オングリザ錠には、同じ量の成分を含むサキサグリプチン錠が対応し、名前の末尾に付く「サワイ」などの表示で製造販売会社を区別できます。
規格とは、50mgや2.5mgなど、1錠に入っている有効成分の量を表す表示です。名前が変わっても、同じ規格に対応する後発品なら、有効成分の量は同じです。
先発品だけの薬では同じ成分への置き換えができない
ジャヌビア、グラクティブ、トラゼンタ、テネリアには、同じ成分のジェネリックを選ぶ選択肢がありません。別の成分の後発品へ替えるのは治療薬そのものの変更に当たるため、主治医が判断します。
費用が負担になっている場合は、服用中の販売名を示して、同じ薬を続ける場合の負担と治療の選択肢を主治医に相談しましょう。薬代を抑える方法は、自分で服用回数を減らすのではなく、処方の見直しの中で探していきます。
DPP-4阻害薬の1錠の価格差
国が定める公定価格である薬価は、エクア錠50mgが1錠38.7円、対応するビルダグリプチン錠50mgが16円です。
単剤は同じ成分量で価格を比べる
1つの有効成分を含む薬を単剤と呼びます。価格は、同じ成分、同じ規格、同じ錠数どうしで比べます。別の量の錠剤を横に並べると、同じ処方を後発品に替えた場合の差が分かりにくくなります。
| 先発品と1錠の薬価 | 対応する後発品 | 後発品の1錠の薬価 |
|---|---|---|
| エクア錠50mg 38.7円 | ビルダグリプチン錠50mg「サワイ」など | 16円 |
| オングリザ錠2.5mg 40.5円 | サキサグリプチン錠2.5mg「サワイ」 | 24.4円 |
| オングリザ錠5mg 60.6円 | サキサグリプチン錠5mg「サワイ」 | 36.5円 |
ビルダグリプチン錠50mgの後発品は、薬価基準に載る9製品が同じ16円です。サキサグリプチンでは2.5mgと5mgで価格が違うので、お薬手帳にある数字まで合わせて読みましょう。
配合剤は末尾のLD・HDまでそろえる
配合剤は、2つ以上の有効成分が1錠に入った薬です。ビルダグリプチンとメトホルミンの配合剤では、LD・HDの表示でメトホルミンの量が異なり、同じ表示どうしが価格比較の相手になります。
| 先発品と1錠の薬価 | 後発品の販売名・規格 | 後発品の1錠の薬価 |
|---|---|---|
| エクメット配合錠LD 42円/HD 41.2円 | メホビル配合錠LD/HD「トーワ」 | LD 22.6円/HD 22.4円 |
| 同上 | メホビル配合錠LD/HD「日新」 | LD 22.7円/HD 22.5円 |
配合剤の中のビルダグリプチンはLD・HDとも50mgで、メトホルミンはLDが250mg、HDが500mgです。ビルダグリプチンだけを含む錠剤に替えると薬の中身が変わるため、単剤と取り違えないよう薬袋の販売名を見比べましょう。
1錠の安さと1日の薬代を分けて読む
1日の薬代は、1錠の薬価に実際に飲む錠数を掛けて求めます。エクア錠の電子添文(添付文書)では通常は朝夕の1日2回、オングリザ錠では通常は1日1回なので、1錠の値段だけから1日分の支払いを判断するとずれが生じます。
ただし、エクア錠50mgには状態に応じて1日1回とする用法もあり、オングリザ錠には2.5mgを1日1回とする用法もあります。自分の計算には薬袋に書かれた用量を使い、量や回数は処方どおりに保ちましょう。
30日分の自己負担は飲む錠数と負担割合で変わる
エクア錠50mgを1日2錠、30日分で後発品と比べると、3割負担での薬代の差は計算上408.6円です。
計算には処方された1日の錠数を使う
30日分の薬価の合計は「1錠の薬価×1日の錠数×30日」、自己負担の目安は、その合計に1割・2割・3割の割合を掛けた額です。下の表は各製品の電子添文に記載された用法を前提とし、先発品と後発品で同じ量を服用した場合を比べています。
薬価には診察や調剤の費用が含まれず、次の試算でも対象外です。特別の料金は加えず、窓口での端数処理を行う前の計算値を示しています。
1割・2割・3割での支払額の目安
各欄の矢印は「先発品から後発品へ替えた場合」を表します。ビルダグリプチンはエクア錠から同成分の後発品へ、サキサグリプチンはオングリザ錠から「サワイ」製品へ替える前提です。
| 薬の対応・規格と1日の錠数 | 30日分の薬価合計 | 30日分の自己負担の目安 |
|---|---|---|
| エクア→ビルダグリプチン50mg・1日2錠 | 2,322円→960円 | 1割 232.2円→96円/2割 464.4円→192円/3割 696.6円→288円 |
| エクア→ビルダグリプチン50mg・1日1錠 | 1,161円→480円 | 1割 116.1円→48円/2割 232.2円→96円/3割 348.3円→144円 |
| オングリザ→サキサグリプチン2.5mg・1日1錠 | 1,215円→732円 | 1割 121.5円→73.2円/2割 243円→146.4円/3割 364.5円→219.6円 |
| オングリザ→サキサグリプチン5mg・1日1錠 | 1,818円→1,095円 | 1割 181.8円→109.5円/2割 363.6円→219円/3割 545.4円→328.5円 |
同じ1日2錠のビルダグリプチンでも、1割負担での差は136.2円、2割負担での差は272.4円となります。処方日数が30日と違う場合は、受け取る日数に置き換えて計算するため、毎回の領収額は表の額から変わります。
負担を減らす相談は薬を減らす前に
薬代が気になって服用を控えているなら、その事情を主治医や薬剤師に伝えましょう。処方日数をそろえた後の支払額を聞くと、続けられる負担かどうかを判断しやすくなります。
米国の糖尿病のある成人20,326人を調べた調査では、費用を理由に薬を減らしたり飲まなかったりした人が、65歳未満で6人に1人、65歳以上で14人に1人いました1)。負担を早めに相談しておくと、血糖の治療を途切れさせずに続けやすくなります。
また、コレステロールを下げるスタチンという薬を使い始めた90,111人の観察研究では、ジェネリックで始めた人のほうが、先発品で始めた人より服用を続けやすかったと報告されています2)。費用に加え、飲みやすさや受け取りやすさも、服薬が続くかどうかに関わります。
先発品を希望すると特別の料金が加わる場合がある
ジェネリックがある先発品を希望して選ぶと、対象となる薬では通常の自己負担に加えて「特別の料金」がかかります。
価格差の2分の1相当が計算の基準
長期収載品とは、後発品が登場した後も使われている先発品などを指します。そのうち対象となる薬を希望して使うときの支払いが、長期収載品の選定療養という仕組みです。
- 特別の料金 … 先発品と後発品の価格差の2分の1相当
- 支払い … 通常の自己負担とは別に発生し、消費税を加算
- 比較する後発品 … 複数ある場合は薬価が最も高い製品
- 端数の扱い … 計算上の2分の1と実際の額にずれが出る場合あり
厚生労働省の説明では、この計算方法が示されていますが、個々の薬が対象かどうかは処方・調剤の場面で判断されます。
説明用の価格で追加分を計算すると
先発品が1錠100円、後発品が1錠60円という説明用の例では、価格差40円の2分の1に当たる20円が特別の料金の税抜き額です。この数字は追加分の計算を示すための例で、実際のDPP-4阻害薬の価格とは別です。
先発品の薬価全体の半額を払う仕組みではなく、後発品との価格差が計算の基準になります。通常の負担、特別の料金、消費税を含む支払額は、前章の薬価だけの試算とは計算条件が異なります。
後発品で困った経験を伝え、薬局で支払総額を確認する
医療上の必要があると認められる場合や、在庫状況などから後発品の提供が難しい場合は、特別の料金の扱いが変わります。単に先発品が好みという希望と、薬を使ううえで具体的な支障がある状況は、分けて伝えます。
後発品で困った経験や飲みづらさがある方は、薬の名前と何が困ったかを伝え、対象の薬かどうかと支払総額を薬局で確認しましょう。具体的な状況は、医療上の必要性を判断する際にも役立ちます。
同じ効き目が期待される理由と製品ごとの違い
承認されたジェネリックは、有効成分とその量が同じで、先発品と同じように効くことが期待される薬です。
体への吸収を比べて承認される
日本のジェネリックは、先発品と体への吸収が同等であることを確かめる審査を経て承認されます。この確認を生物学的同等性といい、飲んだ成分がどのように体に取り込まれるかを比べます。
「同じ量を含む」と「体の中へ同じように吸収される」の両方が、同じ効き目を期待する根拠になります。
錠剤の見た目や添加物は異なることがある
有効成分が同じでも、錠剤の色や形まで一致するとは限りません。添加物は錠剤の形を保つなどのために使われる成分で、先発品と後発品で異なる製品があります。
| 比べる点 | 先発品と後発品の関係 | 服用時に見る表示 |
|---|---|---|
| 有効成分と量 | 同じ成分・規格が対応 | 成分名、50mgなどの数字 |
| 体への吸収 | 同等性を確かめて承認 | 外見だけでは判断できない |
| 販売名と会社名 | 製品により異なる | 薬袋とお薬手帳の製品名 |
| 見た目・添加物 | 異なる場合がある | 錠剤の色や形、成分の説明 |
添加物への反応が心配な経験があれば、以前の製品名と起きた症状を薬剤師に伝えましょう。見た目の違いと、飲みやすさや体調への影響を分けて話すと、確認すべき製品の情報を絞れます。
ほかの病気の薬でも効き目と安全性が比較されている
心臓や血管の病気の薬を対象に、先発品とジェネリックを比較した74件の試験をまとめた解析では、効き目、軽い副作用、重い副作用に差は認められませんでした3)。こうした比較結果も、価格が低い薬への漠然とした不安を整理する材料になります。
切り替えた後も、処方された飲み方を守り、治療の効果は診察時の検査で追っていきます。
切り替え後の「効きが違う」という感覚への対応
切り替えて違和感があるときは、感じた変化と実際の服薬状況、検査値を分けて整理します。
慣れた薬の名前や見た目が変わる戸惑い
長く飲んだ薬が違う名前や色になると、同じように効くのか不安になるのは自然なことです。何が同じで何が変わったのかが分かると、次の服用から何に気をつければよいかを具体的に整理できます。
ニュージーランドで抗うつ薬が別のジェネリックへ切り替わった人を調べた調査では、副作用や効き目の感じ方と、薬に対する期待や信頼との関連が報告されています4)。説明を受けて不安が小さくなると、服用中の変化を落ち着いて受け止めやすくなります。
飲み間違いと検査値を別々に振り返る
薬が替わった後の血糖の変化を振り返るときは、薬袋にある用量と実際に飲んだ回数を比べます。新しい名前を別の薬だと思って旧製品と重ねて飲んだ、形が違って飲み忘れたといった服用上のずれがなかったかも、先に振り返りましょう。
効き目は体感だけで決めず、血糖値やHbA1cという一定期間の血糖の状態を反映する検査値で評価します。食事や体調の変化も一緒に記録しておくと、切り替えの前後に何が違ったかを診察で伝えやすくなります。
気になる変化は日付と製品名を残す
変化を伝えるときは、切り替えた日、製品名、実際に飲んだ量、感じた変化をそろえます。「後発品に替えてから」という情報に加えて、いつから何が変わったかが分かると、服用との関係を判断しやすくなります。
気になる変化が続くときは、自己判断で元の薬へ戻したり服用量を変えたりせず、記録を持って主治医や薬剤師に相談しましょう。ジェネリックという分類だけを理由にせず、症状と使用した製品に沿って、続け方や変更の要否が判断されます。
切り替える日に照合する薬袋とお薬手帳
切り替えを決めたら、旧製品と新製品の名前、成分量、飲み方を対応させておくと、家でも迷わず服用しやすくなります。
新旧の薬を対応させる確認項目
薬局では、薬袋とお薬手帳を並べ、以前のどの薬が新しいどの薬に対応するかを見ると、名前の変更を追えます。薬の開始、中止、成分や量の変更には主治医の判断が必要で、後発品への変更も処方内容に沿って行われます。
- 製品名 … 以前の名前と今回受け取る名前の対応
- 規格と飲み方 … mgの数字、1回の錠数、1日の回数
- 単剤か配合剤か … 含まれる成分とLD・HDなどの表示
- 困った経験 … 飲みにくさ、体調変化、薬代の負担
最初に優先するのは、価格よりも同じ成分量と飲み方が対応しているかです。薬袋と説明が食い違って見えるときは、そのまま自分で解釈して飲み分けず、薬剤師に確認しましょう。
家に残った先発品との重複を防ぐ
たとえば、家族が夕食後の薬を準備していて、新しい薬袋のビルダグリプチンという名前を見つけた場面です。お薬手帳にある以前のエクアと対応する薬だと分かれば、両方をその日の分として並べず、薬局で説明された切り替え日から新しい製品を使えます。
家に残った薬がある場合は、受け取り時に残数を伝えると、いつから新しい製品を使うかの説明を受けられます。新旧の錠剤を同じ容器に混ぜず、薬袋の表示を残しておくと、本人以外が準備するときも重複を避けやすくなります。
受け取る製品が変わるときも名前を残す
後発品どうしでも製造販売会社が替われば、錠剤の見た目や包装が変わることがあります。お薬手帳には会社名を含む製品名が残るため、次に受け取った薬との違いを追えます。
日本では、ジェネリックの供給が不安定になった時期がありました。希望する製品の用意が難しいときも、次に受け取る製品名と処方された飲み方を確かめて、服用を続けましょう。
よくある質問
- Qジャヌビアの薬代を抑えるために、同じ成分のジェネリックへ替えられますか?
- A
ジャヌビアには同じ成分のジェネリックがないため、そのまま後発品に置き換える選択肢はありません。別成分への変更は、主治医が治療内容を判断したうえで行います。
薬代が負担なら、ジャヌビアの規格と処方日数を示して主治医に相談しましょう。自己判断で間引いて飲むと、処方された治療量が保てなくなります。
- Qエクアをジェネリックにすると、毎月いくら安くなりますか?
- A
50mgを1日2錠、30日分で比べると、薬価から計算した差は1割負担で136.2円、2割負担で272.4円、3割負担で408.6円です。特別の料金を加えず端数処理を行う前の値なので、実際の領収額とはずれが生じます。
- Q先発品を希望すると、必ず特別の料金がかかりますか?
- A
対象となる薬を希望して選ぶ場合にかかりますが、医療上の必要性や後発品を用意できるかどうかも判断に含まれます。先発品と後発品の価格差の2分の1相当が計算の基準です。
先発品を希望する理由を伝え、処方された薬が対象か、追加分を含む支払いがいくらになるかを薬局で確認しましょう。以前の薬で困った経験があるなら、製品名と具体的な内容が判断に役立ちます。
- Q切り替えた後に効き目が違うと感じたら、元の薬に戻してよいですか?
- A
元の薬へ戻す前に、主治医や薬剤師に相談してください。名前の違う薬を重ねて飲んでいないかも含め、切り替え日と実際の服用状況を整理します。
気になる変化が続くときは、製品名と変化の記録を伝えてください。検査値や体調を合わせて、薬を続けるか変更するかが判断されます。


