α-GIを飲んでいる間は、体調がよくても定期的に肝機能の採血を受けます。肝臓の数値が上がることがあり、まれに起こる重い肝障害を早く見つけるためです。

アカルボースでは、飲み始めの6か月は月1回、その後も定期的に検査を続けます。検査票のASTやALTに高値の印がついたときは、前回との差やほかの項目も合わせて、薬の副作用かどうかを含めて原因を調べます。

この記事では、α-GIが肝機能の数値に与える影響、成分ごとの注意点、検査票で見る項目、予約日を待たず受診したい症状を解説します。

目次

α-GIで肝機能の数値が上がることはある

アカルボース、ボグリボース、ミグリトールのいずれにも、肝臓に関わる副作用の記載があります。軽い検査値の変化と、黄疸や意識の低下を伴う重い障害は、区別して受け止めます。

数値の上昇と重い肝障害は分けて受け止める

肝機能検査で測るASTやALTは、体内の化学反応を助ける酵素で、肝臓の細胞が傷むと血液中に増えます。数値が上がったときは、その高さだけでなく、前回からの変化や同時に測った項目を合わせて判断します。

一方、重い肝障害では、肝臓の働きが大きく損なわれ、皮膚や白目が黄色くなる黄疸などが現れます。劇症肝炎は肝臓の働きが急激に低下して意識にも影響する重い病態で、検査値だけが上昇している状態とは区別します。

3つの成分に記載された肝臓への影響

安全上の注意を記した電子添文(添付文書)には、成分ごとの副作用が示されています。アカルボース錠「サワイ」、ベイスン錠、セイブル錠の記載を並べると、次のようになります。

成分・薬の名前肝臓に関わる重大な副作用その他の肝臓の検査値の上昇
アカルボース重篤な肝機能障害・黄疸、劇症肝炎はいずれも0.1%未満AST・ALTなどの上昇は5%未満
ボグリボース(ベイスン)劇症肝炎・重篤な肝機能障害・黄疸は頻度不明AST・ALTなどの上昇は0.1〜5%未満
ミグリトール(セイブル)肝機能障害・黄疸は頻度不明AST・ALTなどの上昇は0.1〜5%未満

いずれの成分でもγ-GTPの上昇が記載されており、薬の名前が違っても、採血で肝臓への影響を見る対象になります。

「頻度不明」は起きないという意味ではない

頻度不明とは、起こる割合を数字で示せる情報がそろっていないという意味です。アカルボースに割合の記載があり、ほかの成分には頻度不明とあっても、どの成分も同じように採血で肝臓への影響を確かめます。

副作用欄の数字は、検査値の上昇と重い病気とで対象が異なります。たとえば、AST上昇の頻度をそのまま劇症肝炎の頻度として受け取ると、危険を実際より大きく見積もってしまいます。比べるときは、薬の名前だけでなく副作用の中身もそろえましょう。

肝臓の副作用は症状より先に採血で見つかる

肝臓への影響は、だるさなどがなくても検査値の変化として見つかります。薬が原因と判断されて中止後に数値が戻る例はありますが、回復するまで採血による経過の確認が続きます。

飲み始めからの変化をたどる

アカルボースによる重い肝障害は、開始後おおむね6か月以内に認められる場合が多いとされています。飲み始めの検査を重ねるのは、この時期の変化を症状だけに頼らず捉えるためです。

  • 自覚症状が乏しく、採血で見つかる肝臓の数値の上昇
  • AST・ALTが大きく上がり、薬との関係を調べる経過
  • 原因と考えられる薬の中止後に数値が改善した報告
  • 黄疸や意識の変化を伴い、急いで治療を要する重い肝障害

この経過は全員が同じ順に進むものではなく、症状や数値の変化に応じて、その時点で必要な対応が決まります。

中止後に戻った報告の受け止め方

アカルボース服用中に肝臓の数値が大きく上がった女性1人で、薬の中止後にASTとALTが正常に戻ったという報告があります1)。

ただし、薬をやめれば必ず自然に戻ると決めつけるのは危険です。黄疸や意識の変化を伴う重い障害では、服用の中止に加えて入院を含む治療が必要となり、数値が下がり始めてからも状態を追って判断します。

薬を中止するか、ほかの治療に替えるかは、肝臓の状態と血糖の両方を踏まえて主治医が判断します。自己判断で一度休み、数値が戻ったから同じ薬を再開するという調整は避けてください。

上がった時点だけで薬が原因とは決めない

服用開始後に数値が上がっても、脂肪肝や飲酒、ウイルスによる肝炎など、別の原因が重なることがあります。新たに始めた市販薬やサプリメントも含め、使い始めた時期と検査の変化を照らし合わせて原因を調べます。

もともと高かった数値がほぼ変わらない場合と、服用後に急に上がった場合では、薬との関係の評価が変わります。そのため、今回の値だけを切り取らず、薬を始める前の結果も一緒に見直しましょう。

α-GIの肝機能検査は成分と服用期間で決まる

アカルボースには、開始後6か月まで月1回、その後も定期的に肝機能検査を行うという具体的な記載があります。ボグリボースやミグリトールでは、服用前の肝機能や経過に応じて間隔を決めます。

アカルボースは最初の6か月に月1回

アカルボース錠「サワイ」の電子添文と、服用する人に注意点を伝える患者向医薬品ガイドは、飲み始めの検査間隔を示しています。これは具合が悪くなった人だけの検査ではなく、症状がない人も受ける定期検査です。

服用の時期肝機能検査の間隔診察で扱う内容
開始後6か月まで月1回服用後の数値の変化と症状の有無
6か月を過ぎてからその後も定期的に実施それまでの結果を踏まえた次回の採血時期
黄疸や強いだるさが出たとき定期検査を待たず受診症状に応じた検査と服用継続の判断

6か月を過ぎた後の具体的な間隔は、肝臓の病気の有無やそれまでの検査結果に応じて主治医が決めます。

ベイスン・セイブルの間隔は個別に決まる

ボグリボースやミグリトールでも、肝機能障害や黄疸に注意しながら服用します。もともとの肝臓の病気がある人や、開始後に検査値が上がった人は、その経過に合わせて採血の予定を組みます。

アカルボースのような具体的な月数の記載がなくても、必要な検査を受けながら服用を続けます。薬の種類だけでなく、服用前の値とその後の変化を踏まえて、自分の検査予定が組まれます。

体調がよくても次回の採血日を把握する

診察で薬の処方を受ける日と、肝機能を採血で調べる日が別になることもあります。肝臓の状態は体感だけで判断しにくいため、受診を続けているかに加え、必要な項目を測れているかも見ておきます。

採血の日程が分からないときは、今飲んでいる成分名をお薬手帳で確かめ、次回の肝機能検査がいつかを診察で確認しましょう。予定日に来院できないと分かった段階で日程を調整すれば、検査が長く空くのを避けられます。

検査票はAST・ALTだけでなく組み合わせで読む

肝機能の検査では、細胞の傷みを示す数値と、胆汁の流れなどに関わる数値を合わせて見ます。α-GI服用中の高値も、1項目だけで薬の中止を決めるのではなく、変化の仕方も含めて評価します。

AST・ALTは肝臓の細胞の傷みを反映する

ASTとALTが目立って上がっていれば、肝臓の細胞が傷んでいる可能性を調べます。これらは肝臓がどの程度働けるかを直接点数にした値ではなく、細胞の傷みを捉えるための指標です。

ASTは肝臓以外にも含まれるため、ASTだけが高い場合も、ほかの項目や体の状態と合わせて読みます。検査票の基準範囲は測定する施設で確認し、別の施設の結果を比べるときも数値だけを見て判断しないようにします。

γ-GTP・ALP・ビリルビンも合わせて見る

γ-GTPは肝臓や胆汁の通り道などに関係する酵素で、ほかの検査と組み合わせて肝臓への影響を評価します。胆汁は肝臓で作られる消化液で、通り道の流れが悪くなると、ASTやALTとは違う項目が目立って上がることがあります。

項目平易な意味服用中の結果で見る点
AST・ALT肝臓の細胞などに含まれる酵素服用前からの上昇や、上がり続けているか
γ-GTP肝臓や胆汁の通り道などに関係する酵素ほかの項目の変化と合わせた評価
ALP(Al-P)胆汁の流れが悪いときなどに上がる酵素AST・ALTに比べて目立つ上昇があるか
ビリルビン赤血球が分解されて生じ、肝臓で処理される色素高値や、白目・皮膚の黄色さとの関係

ビリルビンが体内にたまると黄疸が現れるため、検査票の変化に白目や皮膚の黄色さが重なった場合は、次回予約を待たず受診してください。

高値の印より前回との差と症状を重視する

検査票の「H」などの印は基準範囲を超えたことを表し、副作用の重さや原因はこれとは別に評価します。薬の開始前から高値が続いている場合と、前回から急に上昇した場合では、再検査や原因を調べる検査の進め方が変わります。

数字が1つ高いと、薬を続けてよいか不安になるものです。服用前と今回の検査票を並べると、上昇の時期や変化の幅が分かり、主治医と服用を続けるか話し合う際にも役立ちます。

肝臓の病気がある人とα-GIの使い方

脂肪肝がある人のα-GIの使用は、肝臓の状態を踏まえて判断します。肝硬変などで肝臓の働きが大きく落ちている人は、検査値の上昇に加え、血糖の変動や意識の変化にも注意しながら使うかを決めます。

もともとの肝障害の程度を踏まえる

肝臓の病気がある人の糖尿病治療は、肝臓がどの程度働いているかや血糖の状態を踏まえて選びます。α-GIも同様で、重い肝機能障害があると代謝、つまり体内で栄養などを処理する働きが不安定になり、血糖管理の状態が大きく変わるおそれがあります。

肝臓の病気がある人を含む、腎臓の働きが著しく低下した糖尿病の人を対象とした台湾の診療データの観察研究では、アカルボース使用者で肝障害が増えていなかったという報告があります2)3)。服用の可否は、こうした集団の結果だけで決めず、自分の肝臓の状態をもとに主治医が判断します。

重い肝硬変では意識の変化にも注意する

肝硬変は、肝臓の傷んだ部分に硬い組織が増えた状態です。重い肝硬変がある人では、アカルボースやボグリボースの服用中に、便秘などをきっかけとして高アンモニア血症が悪化するおそれがあります。

高アンモニア血症は、通常は肝臓で処理されるアンモニアが血液中に増え、意識や行動に影響しうる状態を指します。肝臓の細胞の傷みを示すASTやALTの上昇だけとは異なる問題で、採血の数値とともに普段の受け答えや排便の様子も手がかりになります。

呼びかけへの反応が鈍い、急に話がかみ合わないなどの変化があれば、本人だけで様子を見ず、家族が付き添って直ちに受診してください。意識が低下しているときは、救急要請が必要です。

脂肪肝の数値の改善と副作用は区別する

脂肪肝炎は、肝臓に脂肪がたまるだけでなく炎症も起きた状態です。脂肪肝炎のある日本の糖尿病の人17人を対象とした比較対象のない研究では、ミグリトールの12か月の服用でALTが下がり、再び肝臓の組織を調べた人では脂肪の蓄積や炎症も改善したと報告されています4)。

α-GIを選ぶ目的は血糖の治療で、この結果は脂肪肝炎のある人での経過として受け止めます。脂肪肝がある人で服用後にALTが変化したときも、数値が下がる経過と、新たな薬の副作用で上がる経過を分け、服用前の状態から評価します。

血糖の検査値には薬による読み違いがある

アカルボース服用中の1,5-AGは、血糖管理の評価に使えないと電子添文に記載されています。肝機能の数値と血糖の指標は目的が異なるため、同じ採血結果に並んでいても、何を示す項目かを分けて読みます。

1,5-AGの低値はアカルボースの影響を踏まえて読む

1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール)は血液検査の項目で、通常は最近の高血糖の程度を知るために用いられます。

ただし、アカルボースを飲んでいると1,5-AGは低い値を示すことがあり、実際の血糖の状態とずれが生じます。そのため、服用後の低値だけで血糖の悪化や薬の増量を決めず、ほかの血糖の指標と合わせて読みます。この注意はアカルボースについてのもので、すべてのα-GIに同じ扱いを広げず、処方されている成分名に照らして判断します。

血糖と肝臓では確認する項目が違う

血糖の評価では、その時点の血糖値や、過去1〜2か月程度の血糖の状態を反映するHbA1cなどを用います。1,5-AGの結果がほかの指標と食い違うときは、アカルボースの服用が検査を受けた医療機関にも伝わっているかを確かめましょう。

ASTやALTが上がった場合は肝臓への影響を調べ、1,5-AGが低い場合は血糖の評価に使える条件かを確かめます。どちらも採血で測る項目ですが、低い値・高い値という見た目だけで同じ意味には扱えません。

併用中も肝臓の値は実際の経過で判断する

メトホルミンは、肝臓で糖が作られるのを抑えるなどして血糖を下げる薬です。メトホルミンで治療中の2型糖尿病の人にアカルボースを24週間追加した海外の試験では、肝臓の酵素が上がった人の割合は、薬効成分のない薬を追加した群と差がありませんでした5)。

この組み合わせを使っている人でも、採血で異常が見つかれば原因を調べます。併用しているという情報に加えて、どちらをいつ始めたか、量がいつ変わったかをたどることで、数値の変化と治療の関係を評価しやすくなります。

黄疸や強いだるさがあれば予約日を待たず受診する

白目や皮膚が黄色い、尿が濃い、強いだるさが続くといった変化は、肝障害を疑って受診するサインです。定期検査を受けていても、新しい症状が出たときは予定日を待たずに対応します。

受診を急ぐ体の変化

アカルボース錠「サワイ」やベイスン錠の患者向医薬品ガイドには、肝機能障害や黄疸に伴う自覚症状が示されています。服用中に次の変化が現れたら、薬との関係も含めて調べます。

  • 白目や皮膚の黄色さ、いつもより濃い尿
  • 強いだるさ、力の入りにくさ、疲れやすさ
  • 吐き気や食欲の低下
  • 急な意識の低下や、普段と違う受け答え

意識の低下は特に緊急性が高く、ほかの症状がそろうのを待たずに対応します。

家で異変に気づいたときの連絡と受診

たとえば、服用中の本人が朝の洗面所で白目の黄色さに気づき、尿もいつもより濃いと感じたら、その日のうちに処方元へ連絡して受診してください。連絡では、α-GIを飲んでいることと、白目や尿の変化がいつからあるかを伝えます。

黄疸などが疑われるときは、次の服用をどうするかも速やかに医療機関の指示を受けます。連絡がつかない場合は受診可能な医療機関を利用し、意識の低下やけいれんがあれば救急車を呼びます。

強いだるさだけでも、食欲低下や吐き気が重なったり、いつもの疲れ方と違ったりするときは、検査日まで我慢せず受診してください。症状だけで肝障害と決めることはできず、採血などで原因を調べます。

結果を聞くときは服用と再検査の予定を具体的にする

検査結果に異常があったら、帰宅後に薬をどう飲むかと、次にいつ採血するかが分かる形で説明を受けましょう。結果の紙、お薬手帳、症状が始まった日の記録があると、診察で経過を伝えやすくなります。

主治医に確かめたい内容その理由
服用前や前回からどの項目が変わったかもともとの肝臓の状態と新しい変化を分けるため
今日からも同じように服用するか続ける・休む・変更する判断を自分だけで行わないため
次の採血日と、それより早く受診する症状数値の経過を追いながら悪化に対応するため

すでに黄疸や意識の変化があるときは、これらを整理するより先に受診してください。

よくある質問

Q
肝機能の数値が少し高いだけでもα-GIをやめますか?
A

少し高いという情報だけでは、中止するかは決まりません。前回との差や服用前の値、ほかの検査項目を踏まえて、主治医が服用の継続と再検査を判断します。

検査結果を受け取ってから説明を受けていないときは、処方元に連絡し、今日からの服用と次の採血日を確認してください。白目の黄色さや強いだるさがあれば、定期の診察を待たずに受診します。

Q
アカルボースを半年飲んで異常がなければ検査を終えられますか?
A

半年を過ぎても、肝機能検査は定期的に続けます。重い肝障害は開始後おおむね6か月以内に認められる場合が多いものの、その期間を過ぎれば検査不要という扱いではありません。

その後の間隔は、それまでの結果や肝臓の病気の有無で決まります。次回の採血日が未定なら、診察時に予定を確認しましょう。

Q
セイブルもベイスンも肝臓の副作用に注意が必要ですか?
A

どちらにも肝機能障害や黄疸の記載があり、肝臓への影響に注意して服用します。重い副作用の頻度が不明という表記は、危険がないという意味ではありません。白目の黄色さや強いだるさが出たら、薬の種類にかかわらず受診してください。

Q
アカルボース服用中に1,5-AGが低いときは薬を増やしますか?
A

1,5-AGが低いという理由だけでは増やしません。アカルボース服用中はこの検査値が低く出ることがあり、血糖管理の参考にならないとされています。

血糖値やHbA1cなどを合わせて評価したうえで、必要な治療調整を受けます。別の医療機関で検査を受けたときも、お薬手帳でアカルボースの服用を伝えると、結果の読み違いを避けやすくなります。

参考にした文献