糖尿病があると感染症にかかりやすく、いったんかかると治りが遅くなります。ただしその理由は「免疫力が落ちるから」の一言では説明しきれず、体を守るしくみが何段階かに分かれて少しずつ弱るために起こります。

入院を要する感染症の起こりやすさは糖尿病のない人のおよそ1.7倍と報告されており、足の感染だけを取り出すと差はさらに大きく開きます。

どの守りがどう変わり、どの病気に注意すべきなのかを、研究で確かめられている範囲と、まだ推測にとどまる部分に分けて整理します。

血糖の値そのものが感染の起こりやすさに段階的に効いてくる点も、日々の治療を続ける理由になるはずです。

目次

糖尿病で感染症リスクが高まるのは免疫力ひとつの落ち込みではない

かかりやすくなる理由は一つではありません。血糖の高い状態が続くと、細菌を処理する白血球の働き、血液が組織へ届く量、痛みや熱さを感じ取る神経、皮膚と粘膜の覆いといった複数の守りが同時に薄くなり、その重なりが糖尿病の感染症リスクを押し上げます。

体を守るしくみ血糖が高い状態で起こりやすい変化関わりやすい感染
細菌を処理する白血球の働き反応が遅れ、増えはじめた細菌を抑えきれない肺の感染、皮膚の感染
血液が組織へ届く量細い血管の障害で酸素も薬も届きにくくなる足の傷、皮下に広がる炎症
痛みや熱さを感じ取る神経異変に気づく時期が遅れ、悪化してからの受診になる足の潰瘍、骨の感染
皮膚と粘膜の覆い乾燥やひび割れが増え、細菌の入り口が広がる皮膚の感染、尿の通り道の感染

白血球が細菌を処理する働きは高血糖でどう変わる?

細菌が体に入ると、白血球が現場へ集まって取り囲み、内側へ取り込んで処理します。この一連の動きが鈍ると、ふだんなら数日で収まる炎症が広がり、抗菌薬を使っても引きが悪くなります。

人の体で実際に確かめた研究は多くありませんが、南アフリカで行われた検討では、結核患者と接した人から肺の洗浄液を採り、2型糖尿病のある人とない人で肺の中の免疫細胞を比べています。

糖尿病のある人の細胞に結核菌を加えると、菌の増え方が大きくなりました(p=0.034)。洗浄液に含まれる好中球という白血球も、糖尿病のある人で少なくなっていました(p=0.018)。

好中球が少ない人ほど菌がよく増えるという逆向きの関係も見えており、守りの主力が現場に集まりきらない状態を示しています。ただし著者自身がこれを「この分野で初めての包括的な検討」と位置づけており、すべての感染に当てはめられる結論ではありません。

血のめぐりが細ると、守りも薬も現場に届かない

白血球も抗菌薬も、血液に乗って運ばれます。糖尿病で細い血管が傷んでいると、いちばん遠い足先や皮膚の表層に届く量が落ち、同じ治療をしても効きが鈍く感じられる場面が出てきます。

この考え方は臨床で広く使われていますが、血流の低下がどの程度まで感染の悪化を説明するのかを人で直接測った研究はまだ限られており、数値で示せる段階には至っていません。ただ、後で触れるように足の感染だけが飛び抜けて多いという事実は、この説明とよく符合します。

血のめぐりの問題は、傷が治る速さにも表れます。同じ深さの切り傷でも閉じるまでの日数が延び、その延びた期間そのものが細菌にとって好都合な時間になります。

神経の障害が「気づく力」を削っていく

感染に早く気づけるかどうかは、痛みや熱さを感じ取る神経が働いているかで大きく変わります。しびれや感覚の鈍さが出ている足では、靴ずれや小さな刺し傷が痛みを出さないまま数日が過ぎ、腫れや発熱で初めて分かるという順番になりがちです。

気づきの遅れは治療の遅れに直結します。皮膚の表面だけで収まったはずの炎症が、受診の時点で皮下や骨まで届いていれば、抗菌薬の期間も入院の可能性も変わってきます。

だからこそ、痛みという合図に頼らず、目で見て確かめる習慣のほうが役に立ちます。感覚が鈍い部分ほど、鏡や家族の目を借りて毎日ながめておくと変化に早く気づけます。

どこまでが確かめられ、どこからが推測にとどまるのか

ここまでの4つを一つの言葉でまとめると「免疫力が下がる」になりますが、その言い方では打つ手が見えなくなります。血糖を保つ、足を毎日見る、歯科に通う、熱が出たら早めに連絡する。守りの段階ごとに、できることは別々に存在します。

確かめられているのは、糖尿病のある人で感染症が増え、重くなり、入院や死亡に至る割合も高いという統計上の事実です。細胞のレベルで何がどう変わるかは研究の途中にあり、断定できる段階ではありません。

数字で見た糖尿病の感染症リスクは1.4倍から8倍まで幅がある

大きさの見当をつけるなら、入院を要する感染症でおよそ1.7倍から4倍という幅で考えると実際に近くなります。幅が出るのは、1型か2型か、血糖がどの程度に保たれているか、どの感染を数えるかで結果が大きく動くためです。

入院を要する感染症は糖尿病のない人の約1.7倍

米国の地域住民1万2379人を中央値23.8年追跡した研究では、4229件の感染症による入院が起こりました。年齢や喫煙などを調整したうえで、糖尿病のある人の入院の起こりやすさは1.67倍(95%信頼区間1.52〜1.83)と報告されています。

感染が原因の死亡は全体で362件と多くありませんでしたが、こちらも1.72倍(1.28〜2.31)と高くなっていました。若い世代のほうが差が大きい傾向も示されており、年齢を重ねてから気をつければよい話ではありません。

1型と2型で開きが出る糖尿病の感染症リスク

英国の診療記録を使った研究では、糖尿病のある40〜89歳の10万2493人と、年齢・性別・診療所を合わせた20万3518人を比べています。1型が5863人、2型が9万6630人で、19種類の感染を数えたところ、どの種類でも発生率が高くなりました。

感染による入院に限ると、1型で3.71倍(95%信頼区間3.27〜4.21)、2型で1.88倍(1.83〜1.92)でした。差がとくに大きかったのは骨と関節の感染、敗血症、そして蜂窩織炎と呼ばれる皮下の炎症です。

この研究では、感染による入院の6%、感染による死亡の12%が糖尿病に起因すると見積もられました。1型と2型を直接比べると、感染による死亡は1型で2.19倍(1.75〜2.74)と報告されています。

HbA1cが高いほど段階的に上がっていく

同じ英国のデータで8万5312人のHbA1cを並べ直すと、値が高いほど感染が増える段階的な関係が見えてきます。糖尿病のない人と比べると、6〜7%に保たれていても感染による入院は1.41倍(1.36〜1.47)で、差はゼロになりませんでした。

一方、11%以上の群では4.70倍(4.24〜5.21)まで上がり、1型で11%以上ならば8.47倍(5.86〜12.24)に達しています。糖尿病のある人どうしで比べても、罹病期間などを調整したうえで2.70倍(2.43〜3.00)の開きが残りました。

HbA1cの区分感染症での入院の起こりやすさ内訳と補足
6〜7%(42〜53 mmol/mol)1.41倍(95%信頼区間1.36〜1.47)血糖が保たれていても差は残る
11%以上(97 mmol/mol以上)4.70倍(4.24〜5.21)1型では8.47倍(5.86〜12.24)
糖尿病のある人どうしの比較2.70倍(2.43〜3.00)罹病期間などを調整した値

いずれも観察研究であり、血糖を下げれば同じだけ感染が減ると言い切れる設計ではありません。それでも、値の高さと重い感染の起こりやすさが並んで動く点は、複数の集団で繰り返し確認されています。

糖尿病で注意すべき感染症は尿路・皮膚・肺に集まりやすい

珍しい病気を心配する必要はありません。実際に増えるのは膀胱炎、皮膚の炎症、肺炎といったありふれた感染で、同じ病名でも治りが遅く、入院に至る割合が高くなる点が問題になります。

膀胱炎や腎盂腎炎など尿の通り道の感染

頻度の高さを実感しにくい領域ですが、デンマークで行われた研究の数字が目安になります。メトホルミンを使う2型糖尿病の人が新たに別の薬を始めた場面を追ったところ、開始から1年以内に尿路感染の治療を受けた割合は、薬の種類にかかわらずおよそ10%でした。

治療を受けている10人に1人が1年のうちに尿路感染で受診している計算になり、けっして例外的な出来事ではありません。排尿時の痛み、濁り、回数の増加に加え、背中側の鈍い痛みや発熱が出たときは、腎臓まで及んでいる可能性を考えて早めに相談するほうが安全です。

蜂窩織炎など皮膚と皮下に広がる感染

英国の研究で差が大きかった上位に、骨と関節の感染、敗血症、蜂窩織炎が並んでいました。蜂窩織炎は皮膚の下の脂肪の層で細菌が横へ広がるもので、虫刺されや小さな傷から始まって半日ほどで赤みの範囲が変わることもあります。

赤くなった部分をペンで囲んでおくと、広がりの速さが翌日に一目で分かります。判断に迷う段階で連絡してもらったほうが、抗菌薬の内服で済むか点滴が要るかの分かれ目を逃さずに済みます。

  • 赤みが半日から1日で目に見えて広がる
  • 触れると熱く、押すと強い痛みがある
  • 38度以上の発熱や寒気をともなう
  • 表面に水ぶくれや黒ずみが出てくる
  • 足の場合、においや浸出液の量が変わる

いずれも自分で処置して様子を見る場面ではなく、そのまま見せに来てもらう合図です。市販の消毒薬やテープで覆ってしまうと、進み具合が見えなくなる点も困ります。

肺炎とインフルエンザは糖尿病でどれくらい重くなる?

英国の診療記録を使った解析には、インフルエンザと肺炎について2型糖尿病58万5289人、1型4万2488人が含まれます。2型では、HbA1cの高さと高度の肥満が、肺炎、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症のいずれでも入院の起こりやすさと結びついていました。

興味深いのは、HbA1cや体格による相対的な危険度の上昇が70歳未満で最も大きかった点です。高齢者ほど注意が必要という一般論とは向きが違い、働き盛りの世代こそ血糖と体重の管理が重い肺炎を遠ざける手立てになると読み取れます。

なお予防接種をどう組み立てるかは、年齢や併存する病気、これまでの接種歴で変わります。糖尿病があるからこの接種を、という一律の話にはならないため、主治医と相談する領域と考えてください。

足と歯ぐきは糖尿病の感染症リスクがとりわけ際立つ場所

最も差が開くのは足です。感染症全体の入院で1.67倍だった同じ研究でも、足の感染だけを取り出すと5.99倍まで跳ね上がりました。歯ぐきの炎症についても、血糖との間で互いに影響しあう関係が示唆されています。

足の感染だけが約6倍まで跳ね上がる

先ほどの米国の追跡研究で、足の感染による入院の起こりやすさは5.99倍(95%信頼区間4.38〜8.19)と報告されました。感染の種類ごとに見ると全体としては似た傾向が並ぶなかで、足だけが桁の違う数字を示しています。

数えた対象糖尿病のない人と比べた起こりやすさ出どころ
感染症全体による入院1.67倍(95%信頼区間1.52〜1.83)米国の地域住民1万2379人を中央値23.8年追跡
足の感染による入院5.99倍(4.38〜8.19)同じ研究の内訳
感染が原因の死亡1.72倍(1.28〜2.31)同じ研究(死亡362件)

血のめぐりの低下、感覚の鈍さ、体重がかかり続ける位置という3つが足だけで重なるため、この数字は不思議ではありません。逆に言えば、毎日見る習慣を作れる唯一の部位でもあります。

歯ぐきの治療で血糖の指標が動く

歯周病については、35の試験に参加した3249人をまとめた解析があります。歯ぐきの下の歯石や汚れを取り除く治療を受けた群では、3〜4か月後のHbA1cが0.43%(4.7 mmol/mol)低く、95%信頼区間は0.28%から0.59%の低下でした。

6か月後でも0.30%の差が残り、12か月後まで追えた1つの試験では0.50%の差が示されています。この結論の確実性は中等度と評価され、臨床的に意味のある大きさの改善という位置づけが与えられました。

ただし、糖尿病があると歯周病が増えるという逆向きの因果は、この解析の中では「示唆されている」段階にとどまります。関係が双方向であるという説明は広く語られますが、確定した事実として受け取らないほうが正確です。

足の感染はなぜ痛みが出ないまま奥へ進むのか

感覚が鈍った足では、痛みという早期の合図がそもそも鳴りません。靴の中で擦れた場所が水ぶくれになり、破れて細菌が入り、皮下から腱や骨へ進む過程が、痛みのないまま進行してしまいます。

英国の研究で差が最も大きかった感染の一つが骨と関節の感染だった事実も、この流れと重なります。骨まで届くと治療は数週間から数か月に延び、入院や手術が必要になる場合も出てきます。

削れた合図の代わりになるのは、目で見た情報です。赤み、腫れ、色の変化、靴下に付いた汚れのどれかに気づいた時点で、自分で処置せずそのまま持ってきてもらうのが安全な順序になります。

結核も糖尿病があると発症リスクが上がる感染症

過去の病気と思われがちですが、糖尿病は結核の発症と結びつく代表的な要因です。48の追跡研究をまとめた解析では、糖尿病のある人の発症の起こりやすさはおよそ1.5倍から1.9倍と見積もられています。

48の研究をまとめた見積もり

のべ6100万人を超える参加者を含むこの解析では、ハザード比が1.90(95%信頼区間1.51〜2.40、10研究、1171万3023人)と算出されました。ただし研究間のばらつきと偏りの大きさを踏まえ、この推定の確実性は低いと評価されました。

追跡が10年未満の研究に絞ると1.52(1.47〜1.57、7研究)となり、確実性は中等度まで上がります。リスク比で見た場合は1.60(1.42〜1.80、6研究、4405万8675人)で、こちらも中等度でした。

糖尿病がない場合の発症を10万人あたり129人と置くと、糖尿病があるぶんの上乗せは10万人あたり102人(59〜153人)という計算になります。倍率としては大きくても、絶対数としては限られた増え方である点も合わせて知っておくと落ち着いて考えられます。

糖尿病の期間が長いほど段階的に上がる

韓国で健診を受けた442万3177人を追跡した研究は、期間による違いをはっきり示しました。追跡期間の中央値8.3年のあいだに2万6458人(0.6%)が結核と診断され、糖尿病のある人の発症は1.48倍(95%信頼区間1.42〜1.53)でした。

注目したいのは、空腹時血糖が高めでも糖尿病に至っていない群では上昇が見られなかった点です(0.97、0.93〜1.01)。一方、糖尿病と診断されてからの期間が新規発症で1.32倍、5年未満で1.45倍、5年以上で1.57倍と、順に大きくなっていきました。

新規発症の人の中で空腹時血糖がもっとも低い層と比べると、202 mg/dL以上の層は1.79倍(1.42〜2.26)でした。血糖の高さそのものが結びついている様子がうかがえ、診断されたばかりの時期から手を打つ意味もここに表れています。

見た指標糖尿病がある人の結核の起こりやすさもとになった集団
ハザード比(期間を分けない)1.90倍(95%信頼区間1.51〜2.40)まとめた解析のうち10研究・1171万3023人
ハザード比(追跡10年未満)1.52倍(1.47〜1.57)同じ解析のうち7研究
リスク比1.60倍(1.42〜1.80)同じ解析のうち6研究・4405万8675人
調整ハザード比1.48倍(1.42〜1.53)韓国の健診受診者442万3177人・中央値8.3年

肺の中で何が起きているかは研究の途中

冒頭で触れた南アフリカの検討は、この結びつきを細胞の側から探ったものです。2型糖尿病のある人の肺胞マクロファージでは、菌に反応する遺伝子の動き出しが遅れ、炎症を伝える物質の産生が偏っていました。

細菌を捕まえる足がかりになるCD32という分子の発現も低く(p=0.0206)、単球から育てた細胞では炎症を担う型が少ない傾向もありました(p=0.0072)。ただし参加人数は限られ、比べたのは結核に接触した人だけです。

つまり、統計として確かなのは「発症が増える」ところまでで、そのしくみは仮説の段階にあります。説明として腑に落ちる話ほど、確定した知見と混ぜずに聞いておくのが安全です。

糖尿病の感染症リスクを日々の治療でどこまで下げられるか

差をゼロにはできませんが、重い感染ほど血糖の高さが効いてきます。英国の解析では、HbA1cを6〜7%に保った場合を想定すると、重症の感染のうち相当な割合が避けられた計算になると見積もられました。

重い感染ほど血糖の高さが効いてくる

その見積もりでは、骨と関節の感染の46%、心内膜炎の26%、結核の24%、敗血症の21%が血糖の高さに帰せられるとされました。感染による入院では17%、感染による死亡では16%という数字が示されています。

重い感染ほど割合が大きい並びになっており、日々の治療がどこに効いているのかを示す手がかりになります。軽い感染をゼロにする話ではなく、入院や後遺症につながる側を減らす話だと捉えると、続ける意味がつかみやすくなるでしょう。

もっとも、血糖と感染の関係を調べた研究は互いに食い違うものも多く、対象数が足りない、交絡する要因を調整しきれていないという指摘もあります。血糖を良くすれば感染が減るという因果は、まだ確定した知見ではありません。

70歳を超えた人でどの水準を目標にすべきかも定まっておらず、そこは年齢や併存する病気に応じて個別に決める領域です。

毎日見ておきたいのは足と口の中

血糖の管理と並んで効くのが、変化に早く気づく仕組みを暮らしの側に置くことです。とくに感覚の鈍りやすい足と、出血や腫れが出ても痛みの出にくい歯ぐきは、意識して目を向ける価値があります。

  • 足の裏と指の間の色と傷(鏡や家族の目を借りる)
  • 靴下や靴の内側に付いた血や浸出液のあと
  • 歯ぐきの腫れ、歯みがき時の出血、口臭の変化
  • 排尿時の痛みや濁り、背中側の鈍い痛み
  • 皮膚の赤みが広がる速さと熱の持ち方

歯科の定期受診も、血糖の指標が動いた先ほどの解析を踏まえれば、口の中だけの話にとどまりません。歯周病の治療歴や最後に受診した時期は、糖尿病の診察でも伝えてもらえると役に立ちます。

薬によって上がる感染と、上がらない感染

糖尿病の薬のなかには、特定の感染だけを増やすものがあります。デンマークの研究では、SGLT2阻害薬を始めた5万2414人とGLP-1受容体作動薬を始めた2万7023人を比べています。

開始から1年以内に性器の感染が起きた割合は2.0%と0.7%で、リスク比は2.95(95%信頼区間2.52〜3.44)でした。

ただし5年まで見ると1.64(1.49〜1.80)へ縮まり、尿路感染については10.0%と10.2%でほぼ同じ(0.98、0.94〜1.03)という結果です。尿に糖が出る薬だから膀胱炎が増える、という理解は必ずしも当てはまりませんでした。

薬の選び方は、血糖以外の効果や腎臓・心臓への影響を含めて決まります。感染が心配だからと自分で中止したり量を変えたりせず、気になる症状が出た時点で主治医に伝えるほうが確実です。

熱が出たとき、まず何をすればよい?

発熱そのものより、食事と水分がとれているかどうかが分かれ目になります。食欲が落ちた日でも、糖尿病の薬やインスリンを自己判断で中止したり増減したりする対応は避け、主治医の指示に従うのが原則です。

連絡の目安は、体温の数字だけで決めなくてかまいません。水分がとれない、嘔吐が続く、いつもと違う痛みや赤みがある、血糖の値が普段の幅を大きく外れているといった変化のどれかがあれば、その時点で相談を。

あらかじめ、体調を崩した日の連絡先と受診の目安を主治医と決めておくと迷いが減ります。糖尿病の感染症リスクを下げる工夫は、熱が出てからではなく、出る前の準備からはじまります。

よくある質問

Q
糖尿病があると、かぜやインフルエンザにもかかりやすくなりますか?
A

かかる回数そのものより、こじれたときの重さに差が出ます。英国の診療記録を用いた解析では、2型糖尿病の人でHbA1cの高さと高度の肥満が、インフルエンザや肺炎で入院する起こりやすさと結びついていました。

相対的な危険度の上昇は70歳未満で最も大きく、若い世代でも軽視できません。咳や発熱が長引くとき、あるいは呼吸が浅く感じるときは、早めに診察を受けるほうが安心です。

Q
糖尿病の感染症リスクは、HbA1cを下げれば元どおりになりますか?
A

ゼロには戻りません。英国の8万5312人を対象とした解析では、HbA1cが6〜7%に保たれている人でも、糖尿病のない人と比べた感染による入院は1.41倍(95%信頼区間1.36〜1.47)でした。

それでも11%以上の4.70倍と比べれば差は大きく、重い感染ほど血糖の影響を受けます。下げ幅そのものより、高い状態を長く続けない姿勢が実際の守りにつながると考えてください。

Q
糖尿病で足の感染がとくに危ないといわれるのはなぜですか?
A

数字の開きが桁違いだからです。米国の地域住民1万2379人を中央値23.8年追跡した研究では、感染症全体の入院が1.67倍だったのに対し、足の感染だけは5.99倍(95%信頼区間4.38〜8.19)でした。

血のめぐりの低下、感覚の鈍さ、体重がかかり続ける位置という条件が足だけで重なります。赤みや腫れ、色の変化に気づいたら、自分で処置せずそのまま見せてもらうのが安全な順序です。

Q
糖尿病の治療薬で感染症が増えることはありますか?
A

薬の種類によって、特定の感染だけが増えます。デンマークの研究では、SGLT2阻害薬を始めた人の性器の感染が1年以内に2.0%、GLP-1受容体作動薬では0.7%で、リスク比は2.95(95%信頼区間2.52〜3.44)でした。

一方で尿路感染は10.0%と10.2%でほぼ同じでした。薬の選び方は腎臓や心臓への影響も含めて決まるため、症状が出たときに自分で中止せず主治医へ伝えるほうが確実です。

Q
糖尿病があって熱が出たとき、何度からクリニックに連絡すればよいですか?
A

体温の数字だけで線を引かないほうが実際的です。水分がとれない、嘔吐が続く、いつもと違う痛みや赤みがある、血糖の値が普段の幅を大きく外れているといった変化のどれかがあれば、その時点で相談してください。

食欲が落ちた日でも、薬やインスリンを自己判断で中止したり量を変えたりする対応は避け、主治医の指示に従うのが原則です。体調を崩した日の連絡先と受診の目安を、あらかじめ決めておくと迷いが減ります。

参考にした文献