糖尿病で本当に怖いのは血糖値の数字そのものではなく、高い血糖が何年もかけて全身の血管の壁を作り替えてしまう点です。動脈硬化は、その作り替えが太い血管で起きた姿にあたります。

やっかいなのは、糖尿病の動脈硬化が診断のついた時点ですでに進んでいる場合が多く、胸の痛みという分かりやすい合図を伴わないまま心筋梗塞や脳梗塞へ届いてしまう点にあります。

血管を守る入り口は血糖だけではなく、血圧・脂質・喫煙・体重にも分かれており、そのどれもが心筋梗塞と脳梗塞の起こりやすさを左右します。何をどこまで下げるかは年齢や併存する病気で変わるため、主治医と決める前提で読み進めていただければと思います。

目次

糖尿病の動脈硬化は診断より前から静かに進んでいる

血糖が基準を超えたその日から動脈硬化が始まるわけではなく、境界型と呼ばれる時期の数年前から血管の壁はすでに作り替えられています。糖尿病と診断された時点を出発点として数えると、血管の年齢を実際より若く見積もってしまいます。

血管の壁で起きている変化どんな状態か自覚できるか
内側の膜の働きが落ちる血管が必要なときに広がりにくくなるほぼ自覚しない
脂質が壁の中に入り込む内膜が厚くなり脂のかたまりができる自覚しない
かたまりが育って盛り上がる血液の通り道が少しずつ狭まる強い運動のときだけ息切れや圧迫感が出る場合がある
かたまりの表面が破れる血の塊ができて血管を一気に塞ぐ心筋梗塞や脳梗塞として現れる

高い血糖にさらされた年月が血管の壁を作り替える

動脈の内側は内皮という一層の細胞で覆われており、血液と壁のあいだを仕切りながら、血管を広げたり炎症を抑えたりする働きを担っています。高い血糖が続くと、この一層がまっさきに傷み、仕切りとしての性能が落ちていきます。

糖尿病の血管合併症をまとめた総説でも、高血糖・高血圧・脂質異常という危険因子のもとで内皮が機能を失い、炎症と酸化ストレスが増えて一酸化窒素が減っていく流れが整理されています。

その先で、太い血管の動脈硬化と細い血管の障害へ枝分かれしていきます。動脈硬化は、傷んだ内皮のうえに何年もかけて積み上がった結果というわけです。

首の血管の厚みは糖尿病のある人で大きく違う

中国の健診データを使い、20歳以上の1073万3975人を対象に頸動脈を超音波で調べた横断研究では、内膜中膜の厚みが増していた人が全体の26.2パーセント(95パーセント信頼区間25.0〜27.4)でした。

糖尿病のある人だけを取り出すと、その割合は59.0パーセント(同57.8〜60.1)まで上がっています。高血圧のある人では50.8パーセント、脂質異常のある人では32.1パーセントと報告されており、糖尿病が特に大きくかかわる姿がうかがえます。

中国の健診受診者を一時点で切り取った調査なので、そのまま日本の数値として読み替えるわけにはいきません。それでも、危険因子ごとの並び順は目安として役に立つでしょう。

血糖・血圧・脂質は同じ一本の血管に重なって効く

健診の結果は項目ごとに並んで印刷されますが、体の側では別々に作用しているわけではなく、同じ血管の同じ場所へ順番に負担をかけています。血糖が内皮を傷め、血圧がその壁に力をかけ、脂質が傷んだ隙間から中へ入り込むという具合です。

だからこそ、どれか一つだけを完璧に整えても血管の負担は思ったほど軽くならず、複数をそこそこの水準に保つほうが結果として効いてきます。数字がわずかに基準を外れている項目が3つ並んでいる状態は、1つだけ大きく外れている状態より軽いとは限りません。

糖尿病で動脈硬化が加速する血管の中の道すじ

動脈硬化を速める入り口は、内皮の障害・酸化ストレス・糖化最終産物・脂質の質の変化・インスリン抵抗性・慢性の炎症という6つに整理できます。どれか一つを塞いでも他が残るため、対策も複数へ分かれていきます。

血管を広げる一酸化窒素が減っていく

健康な内皮は一酸化窒素という物質を出し、血管をゆるめ、血小板が固まるのを抑え、白血球が壁にくっつくのを防いでいます。高血糖のもとではこの産生が減り、同じ量の血液を流すために血管がこわばったまま働くようになります。

血圧がじわじわ上がりやすくなるのも、運動時に必要なぶんだけ血流を増やせなくなるのも、この一酸化窒素の目減りが背景にあります。血管が硬いという感覚は本人にはありませんが、負担は毎日積み上がっていきます。

糖化最終産物と酸化ストレスが壁に居座る

糖はたんぱく質と結びついて糖化最終産物と呼ばれる物質に変わり、血管の壁のコラーゲンを硬く変性させ、炎症を促す受容体を刺激すると考えられています。

細胞や動物の実験では一貫した結果が得られている一方、人の体で動脈硬化のどれだけを説明するのかは、なお検討が続いている段階です。ここは確定した事実ではなく、有力な仮説として受け取るのが正確でしょう。

酸化ストレスも同じ方向に働き、壁の中へ入り込んだLDLコレステロールを酸化させて、白血球が食べて処理しようとする流れを呼び込みます。処理しきれなかった細胞が壁の中で壊れ、脂の芯を持つ盛り上がりが育っていきます。

インスリン抵抗性が脂質異常と炎症を連れてくる

インスリンが効きにくい状態では、中性脂肪が増え、善玉と呼ばれるHDLコレステロールが減り、粒の小さいLDLコレステロールの割合が高まります。小さい粒は血管の壁のすき間を通り抜けやすく、同じLDL値でも壁の中に入る量が変わってきます。

内臓脂肪から出る物質が全身の軽い炎症を保つため、傷んだ内皮の修復も追いつきにくくなります。血糖の数値だけを見ていると、この脂質と炎症の変化は取りこぼされてしまいます。

血糖を下げれば動脈硬化も止まるのでしょうか?

血糖の管理は細い血管の合併症をはっきり抑える一方で、心筋梗塞のような太い血管の事故については、下げ幅ほどには減らないという結果が繰り返し報告されてきました。

血管の壁で進んだ変化が、血糖が下がっても一定期間そのまま残るためだと説明されていますが、この説明自体はまだ仮説の域を出ていません。

実務上の意味ははっきりしています。血糖が落ち着いたからといって、血圧・脂質・喫煙の管理を緩める理由にはならないわけです。

加速の入り口血管で起きる変化分かっている度合い
高い血糖内皮が傷み一酸化窒素が減る実験と観察の両方で一貫している
糖化最終産物壁のたんぱく質が硬く変性する細胞と動物では確立、人での寄与度は検討中
酸化ストレスと炎症白血球が壁に入り込みかたまりが育つ病理所見と血液検査で裏づけがある
インスリン抵抗性中性脂肪が増え小型のLDLが増える疫学の観察で一貫している
高い血圧壁に力がかかり傷が入りやすくなる介入試験で確認されている

糖尿病の動脈硬化が心筋梗塞や脳梗塞へ変わる瞬間

心筋梗塞も脳梗塞も、狭くなった血管が少しずつ閉じて起こるより、盛り上がりの表面が破れて血の塊が一気に道を塞いで起こるほうが多いとされています。だから前日まで無症状だった人にも、突然の形で現れます。

薄い膜が破れて血の塊が道を塞ぐ

血管の壁に育った盛り上がりは、脂の芯を薄い膜が覆う構造をしており、炎症が強いと膜が薄くなって裂けやすくなります。膜が裂けると体は傷と判断して血を固め、その塊が血管の内腔をふさいでしまいます。

狭さの程度と危険度が必ずしも一致しないのは、この構造のためです。検査で軽度と言われた盛り上がりが、膜の薄い不安定なものであれば、先に事故を起こす場合もあります。

  • 血圧が急に高くなったとき
  • 高い血糖と脂質異常が続いているとき
  • たばこを吸い続けているとき
  • 体のどこかで炎症が強まっているとき

心臓で詰まったときと脳で詰まったときの違い

心臓を養う冠動脈が塞がると心筋が酸素不足に陥り、胸の中央の締めつけ、肩やあごへ広がる痛み、冷や汗、吐き気として現れます。脳の血管であれば、詰まった場所が担当する働きが急に失われ、片側の手足の麻痺やろれつの回りにくさが出ます。

どちらも治療までの時間が結果を左右するため、様子を見る時間が長いほど助けられる範囲は狭まっていくでしょう。症状が数分で消えた場合でも、血管が一度詰まりかけた事実は残ります。

足の動脈にも同じ変化が起きている

動脈硬化は心臓と脳だけを選んで起こるものではなく、骨盤から足へ向かう動脈にも同時に進みます。歩くとふくらはぎが痛くなり、少し休むと治まって再び歩ける状態は、その代表的な現れ方です。

足の症状に気づいた人は、心臓や脳の血管にも同じ変化が進んでいる可能性が高いと考えて差し支えありません。糖尿病では足の感覚が鈍って痛みに気づきにくい場合もあるため、冷たさや色の変化も手がかりになります。

糖尿病では胸の痛みが出ない心筋梗塞がある

症状の軽さは血管の無事を意味しません。糖尿病のある人では、心筋梗塞を起こしていても胸痛が記録されない割合が高いと報告されており、受診の遅れにつながります。

胸痛のない心筋梗塞は糖尿病のある人で多い

心筋梗塞で医療機関を受診した人を対象に22件の研究・23万2519人分をまとめた系統的レビューとメタ分析では、胸痛が無いまま心筋梗塞に至る割合が、糖尿病のある人で高いという結果でした。

コホート研究と横断研究をまとめた解析でオッズ比1.43(95パーセント信頼区間1.26〜1.62)、症例対照研究では1.44(同1.11〜1.87)と報告されています。

この数字は、糖尿病のある人が心筋梗塞を起こすと胸痛が出にくい傾向を示すものであり、糖尿病のある人全体で心筋梗塞が静かに起きているという意味ではありません。それでも、典型的でない症状で受診する可能性を頭に置いておく価値はあります。

なぜ糖尿病では胸の痛みが出にくくなるのでしょうか?

糖尿病では、心臓の働きを調整する自律神経も長い経過のなかで傷むと考えられており、痛みを伝える経路がうまく働かなくなる場合があります。足の感覚が鈍るのと同じことが、心臓の側でも起きているという見方です。

そのため糖尿病の人では、胸痛の代わりに息切れ、強い倦怠感、みぞおちの不快感、吐き気といった形で現れる場合があります。いつもの動作でこれまでに無い息切れが出るようになったら、心臓側の血流を疑う理由になります。

救急車を呼ぶ場面をあらかじめ決めておく

症状が起きてから判断しようとすると、痛みや不安のなかで基準が甘くなり、様子を見る方向へ流れがちです。呼ぶ場面と当日受診の場面を先に文字にして、家族とも共有しておくほうが確実に動けます。

起きている症状疑われる状態動き方
胸の中央が締めつけられ15分以上続く、冷や汗を伴う心筋梗塞迷わず救急車を呼ぶ
片側の手足が急に動かない、ろれつが回らない、顔がゆがむ脳梗塞症状が軽くなっても救急車を呼ぶ
片方の目が急に見えなくなり数分で戻った一過性の脳の血流不足当日中に受診する
いつもの散歩で息切れや強い疲れが出るようになった心臓の血流不足予約を早めて主治医に相談する
歩くと足が痛み、休むと治まる状態が続く足の動脈の狭まり早めに受診する

糖尿病の動脈硬化を測る検査と、目標値の決まり方

血管の状態は血液検査だけでは分からないため、壁の厚みや血流を直接見る検査を組み合わせます。目標とする数値も一律ではなく、年齢・すでに起きた病気・腎臓の働きによって動くのが実情です。

検査見ているもの限界
頸動脈エコー首の血管の壁の厚みと盛り上がり心臓や脳の血管を直接は見ていない
足首と上腕の血圧比足の動脈が細くなっていないか壁が硬いと数値が高めに出る
冠動脈のCT心臓の血管の狭さと石灰化造影剤と放射線を伴う

首の血管と足の血圧から全身の傷み具合を推し量る

頸動脈エコーは首に器械を当てるだけで壁の厚みと盛り上がりを見られるため、全身の動脈硬化の進み具合を推し量る窓口として使われます。首に盛り上がりが見つかった人では、心臓や脳の血管にも変化が及んでいる可能性を視野に入れておきたいところです。

足首と上腕で血圧を比べる検査は、足へ向かう動脈の細さを数値にできます。糖尿病が長い人では血管の壁が硬くなって数値が高めに出る場合があるため、症状と合わせて読む必要があります。

LDLコレステロールの下げどころは集団によって違う

中国で35〜75歳の378万9025人を追跡した前向きコホート研究では、心血管が原因の死亡がいちばん少なかったLDLコレステロール値が、集団によって大きく離れていました。

危険度の低い集団では117.8ミリグラム毎デシリットル、一次予防の集団では106.0、すでに心血管の病気を持つ集団では55.8という値です。

同じ検査値でも、その人の背景によって望ましい位置がまるごと変わってしまうわけです。

同じ研究で糖尿病のある人といない人を比べると、総死亡がいちばん少なかった値は90.9対117.0、心血管死では87対114.6と、糖尿病のある側で低いほうへずれていました。

観察研究なので因果を示すものではありませんが、糖尿病では基準を厳しめに置く方向で議論されている背景が読み取れるでしょう。

日本で実際に用いる目標値は、年齢・喫煙・腎臓の働き・すでに起きた心血管の病気の有無で変わります。ここに挙げた数値をそのまま自分の目標に置き換えず、検査結果を持って主治医と相談する形をおすすめします。

血圧をどこまで下げるかは試験の中身を見て考える

中国の116施設で心血管の危険が高い1万1255人を対象にした無作為化試験では、収縮期血圧を120未満に下げる群と140未満にとどめる群を比べています。参加者のうち4359人が糖尿病を、3022人が脳卒中の既往を持っており、平均年齢は64.6歳でした。

追跡期間の中央値3.4年で、心筋梗塞・血行再建・心不全入院・脳卒中・心血管死をまとめた指標は、厳しく下げた群で547人(9.7パーセント)、標準の群で623人(11.1パーセント)でした。

ハザード比は0.88(95パーセント信頼区間0.78〜0.99)で、糖尿病の有無による違いは認められていません。

ただし失神が重い有害事象として厳しく下げた群で24人(0.4パーセント)、標準の群で8人(0.1パーセント)に起きています。中国で行われた試験の結果であって日本の目標値を決めるものではないため、どこまで下げるかは主治医と相談して決める領域です。

糖尿病の動脈硬化から血管を守るために積み上げる対策

血管を守る手立ては一つの決め手ではなく、禁煙・血圧・脂質・血糖・体重の積み上げで成り立ちます。効き方の大きさは対策ごとに違い、対象となる人によっても変わります。

  • たばこをやめる
  • 血圧を毎日同じ時間に測って記録する
  • 体重と腹囲の変化を追う
  • 早歩きを日課へ組み込む
  • 塩分と飲酒の量を見直す

若い世代の心筋梗塞では喫煙と糖尿病の重みが大きい

18〜55歳で初めて急性心筋梗塞を起こした2264人と、年齢・性別・人種をそろえた対照2264人を比べた症例対照研究では、糖尿病のオッズ比が女性で3.59(95パーセント信頼区間2.72〜4.74)、男性で1.76(同1.19〜2.60)でした。

喫煙は男女とも3.28(同2.65〜4.07)で、高血圧は女性2.87、男性2.19と報告されています。

この7つの因子だけで、女性の83.9パーセント、男性の85.1パーセントの発症リスクが説明できたとされています。対象が若い世代に限られる研究ではあるものの、手を打てる因子が大半を占めている点は励みになります。

脂質を下げる治療の効き幅を相対と絶対の両方で見る

米国予防医学専門委員会のために行われた系統的レビューでは、心血管の病気をまだ起こしていない成人9万624人を含む22件の試験がまとめられました。

スタチンを使った群では、心筋梗塞が相対リスク比0.67(95パーセント信頼区間0.60〜0.75)、脳卒中が0.78(同0.68〜0.90)と報告されています。

総死亡も0.92(同0.87〜0.98)と下がっています。

ただし同じ解析で、絶対的な差は心筋梗塞でマイナス0.85パーセント、脳卒中でマイナス0.39パーセントと示されており、心血管死の差は統計的にはっきりしませんでした。

糖尿病だけを集めた集団ではない点も含め、割合の大きさと実際の差の幅は分けて受け取りたいところです。

薬の種類によって守れるものが違う

心血管の病気をすでに持つ人を組み入れた無作為化試験20件・12万9465人をまとめたコクランのネットワークメタ分析では、薬のクラスごとに結果が分かれました。心血管が原因の死亡を下げた一方で、心筋梗塞そのものは下がりきらないという組み合わせもみられます。

薬のクラス心血管が原因の死亡心筋梗塞
GLP-1受容体作動薬オッズ比0.87(0.79〜0.95)オッズ比0.89(0.78〜1.01)
SGLT2阻害薬オッズ比0.82(0.70〜0.95)オッズ比0.97(0.84〜1.12)
DPP-4阻害薬オッズ比1.00(0.91〜1.09)オッズ比0.97(0.88〜1.08)

いずれもプラセボとの比較で、対象は心血管の病気をすでに持つ人です。どの薬をどの順で使うかは腎臓の働き・体重・心不全の有無で変わるので、用量や銘柄をこの表から選ぶ使い方はできません。

薬を飲んでいれば血管は守られますか?

2型糖尿病と動脈硬化性の心血管疾患を持つ1万3299人を無作為に割り付けた試験では、チルゼパチド群で心血管死・心筋梗塞・脳卒中をまとめた指標が801人(12.2パーセント)、デュラグルチド群で862人(13.1パーセント)でした。

ハザード比0.92で非劣性は示されたものの、優越性の検定は有意になっていません。実薬どうしの比較である点も、読むときに落とせない条件です。

米国の6つの医療システムで2型糖尿病の成人24万1981人を追った比較研究でも、2.5年間の心血管事故の起こりやすさは薬のクラスで差があり、その差は動脈硬化性の心血管疾患や心不全を持つ人、65歳以上の人で大きく出ていました。

一方で50歳未満では差が認められておらず、効き幅は誰にでも同じではありません。薬は下支えであって、血管が守られる保証にはならないわけです。

よくある質問

Q
糖尿病があると動脈硬化はどのくらい早く進みますか?
A

何年ぶん早いかを一律に言い切れる数値はありませんが、中国の健診データでは、頸動脈の壁が厚くなっていた割合が全体で26.2パーセントだったのに対し、糖尿病のある人では59.0パーセントでした。

進み方は血圧・脂質・喫煙の状況で大きく変わるため、同じ糖尿病でも人によって差が出ます。実際の進み具合は、頸動脈エコーなどで測って確かめる形になります。

Q
糖尿病の動脈硬化は、血糖値が下がれば元に戻りますか?
A

血糖を整えると細い血管の合併症ははっきり抑えられますが、太い血管に育った盛り上がりが元の壁に戻るとは限りません。進み方を緩めることと、できたものを消すことは別の話になります。

そのため実際の管理では、血糖に加えて血圧・脂質・禁煙を並行して進める形が取られます。血糖が落ち着いた時期こそ、ほかの項目の見直しどきといえます。

Q
糖尿病では胸の痛みがないまま心筋梗塞が起きる場合がありますか?
A

あります。心筋梗塞で受診した23万2519人分をまとめた解析では、胸痛が無いまま心筋梗塞に至る割合が糖尿病のある人で高く、オッズ比1.43(95パーセント信頼区間1.26〜1.62)と報告されています。

息切れ、冷や汗、みぞおちの不快感、強い倦怠感だけで現れる場合もあります。いつもと違う体調が続くときは、胸が痛くなくても受診の理由になると考えてください。

Q
糖尿病の動脈硬化を調べる検査にはどんなものがありますか?
A

首の血管の壁を超音波で見る頸動脈エコー、足首と上腕の血圧を比べて足の動脈の細さを測る検査、心臓の血管を写す冠動脈のCTなどが使われます。それぞれ見ている場所が違うため、組み合わせて判断します。

どの検査をいつ受けるかは、症状・年齢・これまでの経過によって変わります。健診の数値だけで不安が残るときは、主治医に検査の必要性を相談するのが近道です。

Q
糖尿病の人がLDLコレステロールを下げる目標は決まっていますか?
A

全員に共通する一つの数値はありません。中国の大規模コホートでは、心血管の死亡がいちばん少なかったLDLコレステロール値が、危険度の低い集団と心血管の病気を持つ集団で60ミリグラム毎デシリットル以上も離れていました。

日本での目標は、年齢・喫煙・腎臓の働き・すでに起きた心血管の病気の有無を踏まえて設定されます。自分の数値をどこへ置くかは、検査結果を見ながら主治医と決める形が安全です。

参考にした文献