「パートナーのいびきがうるさくて眠れない」「自分のいびきで旅行に行くのが不安」。
いびきの悩みは深刻ですが、その原因は一つではありません。いびきの音には「喉」からくるものと「鼻」からくるものがあり、原因に合わせた対策こそが改善への近道です。
この記事では、ご自身のいびきの原因を見分け、喉・鼻それぞれに効果的なセルフケアから専門的な治療法までを詳しく解説します。
静かな夜を取り戻すための正しい知識を身につけましょう。
あなたのいびきはどのタイプ?音でわかる原因の違い
いびきを効果的に止めるには、まず自分のいびきがどこから発生しているのかを知ることが第一歩です。
いびきの音質や特徴から、主な原因が「喉」にあるのか「鼻」にあるのかを推測できます。
喉から鳴る「ガーガー」という低い音
太く低い「ガーガー」「グォーグォー」といった音のいびきは、主に喉が原因です。
睡眠中に舌の付け根(舌根)や喉の奥の軟口蓋が緩んで気道を狭め、そこを空気が通る際に粘膜が大きく振動することで発生します。
肥満やアルコール、疲労などが原因で悪化しやすい傾向があります。
鼻から鳴る「スースー」という高い音
比較的高い「スースー」「ピーピー」といった音や、鼻が詰まったような「フガフガ」という音がする場合は、鼻に原因がある可能性が高いです。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などによって鼻腔が狭くなり、空気の通りが悪くなることで発生します。
音で判断するいびきの原因
タイプ | 音の特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
喉いびき | 低い音(ガーガー) | 舌根の沈下、軟口蓋のたるみ、肥満 |
鼻いびき | 高い音(スースー) | 鼻づまり、鼻炎、鼻の骨格の問題 |
原因に合わせた対策の重要性
喉いびきと鼻いびきでは効果的な対策が異なります。例えば、鼻いびきの方に口周りのトレーニングを行っても効果は限定的です。
自分の原因に合った正しい方法を選ぶことが、いびきを止めるための最も効率的なアプローチです。
【喉いびき】を止めるためのセルフケア
喉の気道の狭窄が原因で起こるいびきは寝るときの姿勢や習慣を見直すことで軽減できる場合があります。今日から試せる簡単な方法を紹介します。
横向き寝を習慣にする
仰向けで寝ると重力の影響で舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。横向きで寝るだけで舌の位置が安定し、気道が確保されやすくなるため、いびきの改善が期待できます。
抱き枕を利用したり、背中にクッションを挟んだりして自然に横向きを保てるよう工夫しましょう。
枕の高さを調整して気道を確保
枕の高さも気道の広さに大きく影響します。高すぎる枕は顎を引いた状態になり気道を圧迫し、低すぎると口が開きやすくなります。
自分に合った高さの枕を選び、首から背骨にかけてのラインが自然なS字カーブを描くように調整することが重要です。
寝姿勢と枕の高さの目安
寝姿勢 | 枕のポイント | 気道への影響 |
---|---|---|
仰向け寝 | 首のカーブを自然に支える高さ | 高さが合わないと気道が狭まりやすい |
横向き寝 | 肩幅を考慮し、首と背骨が直線になる高さ | 気道を確保しやすく、いびきを軽減しやすい |
口周りの筋肉を鍛えるトレーニング
口周りや舌の筋肉が衰えると睡眠中に舌が落ち込みやすくなります。
舌や口を意識的に動かす「あいうべ体操」などのトレーニングを日常的に行うことで筋肉が鍛えられ、いびきの予防につながります。
【鼻いびき】を止めるためのセルフケア
鼻の通りが悪いことが原因の鼻いびきは鼻腔を広げ、鼻呼吸をスムーズにするための対策が効果的です。市販のグッズや環境の整備を試してみましょう。
鼻腔を広げるグッズの活用
鼻づまりを物理的に解消するためのグッズが市販されています。鼻に貼って鼻腔を広げるテープや、鼻に挿入して空気の通り道を確保するチューブなどがあります。
自分の鼻の状態や使い心地に合わせて選んでみましょう。
鼻いびき対策グッズの種類
グッズ | 使用方法 | 特徴 |
---|---|---|
鼻腔拡張テープ | 鼻の外側に貼る | 手軽で目立ちにくい |
鼻腔挿入チューブ | 鼻の穴に挿入する | 繰り返し使えて効果が高い |
部屋の湿度を適切に保つ
空気が乾燥していると鼻の粘膜が乾いて炎症を起こしやすくなり、鼻づまりが悪化します。
特に秋冬は加湿器を使って寝室の湿度を50~60%程度に保つことを心がけましょう。濡れタオルを干すだけでも効果があります。
アレルギー対策で鼻の炎症を抑える
ハウスダストや花粉などのアレルギーが鼻炎を引き起こし、いびきの原因になっていることも少なくありません。
こまめな掃除や空気清浄機の使用、寝具を清潔に保つなどアレルゲンを減らす工夫が鼻の炎症を抑えるのに役立ちます。
生活習慣の見直しでいびきを根本から対策
喉いびき・鼻いびきに関わらず、日々の生活習慣がいびきに大きく影響しています。根本的にいびきを止めたいなら生活習慣の改善が重要です。
適正体重の維持が最も重要
肥満はいびきの最大の危険因子です。体重が増加すると首周りや喉の内部にも脂肪がつき、気道を物理的に狭めてしまいます。
食事管理と運動によって体重をコントロールすることが、いびきを止めるための最も効果的な方法の一つです。
アルコールと喫煙を控える
アルコールには筋肉を弛緩させる作用があるため、就寝前に飲むと喉の筋肉が緩み、気道が塞がりやすくなります。
また、喫煙は鼻や喉の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、腫れさせることで空気の通り道を狭くします。
いびきを悪化させる主な生活習慣
習慣 | いびきへの影響 |
---|---|
肥満 | 首周りの脂肪が気道を圧迫する |
飲酒 | 喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭くする |
喫煙 | 鼻や喉の粘膜を炎症・腫脹させる |
疲労やストレスを溜めない
過度な疲労やストレスは全身の筋肉の緊張を低下させ、いびきを悪化させる原因となります。
十分な休息をとり、リラックスできる時間を作ることが質の良い睡眠といびきの改善につながります。
セルフケアで改善しない場合の専門的な治療法
様々な対策を試してもいびきが改善しない、あるいは悪化する場合は医療機関での治療が必要です。
特に呼吸が止まるなどの症状がある場合は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。
喉が原因の場合の治療法
喉の構造的な問題が原因のいびきやSASに対しては、以下のような治療法があります。
- マウスピース治療(スリープスプリント)
- CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
- 外科手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など)
鼻が原因の場合の治療法
鼻の病気が原因で慢性的な鼻づまりがある場合は耳鼻咽喉科での治療が効果的です。
薬物療法で炎症を抑えたり、曲がった鼻の骨を矯正する手術(鼻中隔矯正術)を行ったりします。
原因別の主な専門治療
原因 | 主な治療法 | 診療科 |
---|---|---|
喉 | CPAP、マウスピース、手術 | 睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科 |
鼻 | 薬物治療、手術 | 耳鼻咽喉科 |
治療が必要な危険ないびきのサイン
すべてのいびきが治療対象ではありませんが、中には健康を害する危険なサインが隠れていることがあります。
以下のような特徴が見られたら、早めに専門医に相談してください。
睡眠中の呼吸停止
いびきが突然止まり、数十秒後に「ガッ」という大きな音とともに呼吸が再開する場合、睡眠中に呼吸が止まる「無呼吸」が起きている可能性があります。
これは睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状です。
日中の耐えがたい眠気
夜間に十分な睡眠時間をとっているはずなのに、日中に強い眠気に襲われる場合、いびきや無呼吸によって睡眠の質が著しく低下していることが考えられます。
この状態は仕事の能率低下や重大な事故の原因にもなり得ます。
受診を検討すべきサイン
症状 | 考えられる状態 |
---|---|
呼吸が止まる | 睡眠時無呼吸症候群の疑い |
日中の激しい眠気 | 深刻な睡眠不足、低酸素状態 |
起床時の頭痛・倦怠感 | 睡眠の質の低下 |
いびきを止める方法に特化したよくある質問
いびきを止めたいと考えている方からよく寄せられる質問と、その回答をまとめました。
- Qパートナーのいびきをすぐに止めたい時はどうすればいいですか?
- A
まずは体を優しく揺すったり、肩を軽く叩いたりして寝返りを促してみてください。横向きの姿勢に変えるだけで、いびきが静かになることがあります。
ただし、これは一時的な対処法です。根本的な解決のためには本人に症状を伝え、専門医への相談を勧めることが大切です。
- Qいびき防止グッズはどれを選べばいいですか?
- A
まずは自分のいびきの原因が鼻なのか喉なのかを考え、それに合ったグッズを選ぶことが重要です。
鼻づまりがあるなら鼻腔拡張テープ、口が開いてしまうなら口閉じテープといった具合です。いくつか試してみて自分に合うものを見つけるのが良いでしょう。
ただし、これらは対症療法であり、根本的な解決にはならないことを理解しておく必要があります。
- Q治療すればいびきは完全に治りますか?
- A
治療法や原因によって異なります。例えば鼻の手術で物理的な問題が解消されれば、いびきが完治する可能性は高いです。
CPAPやマウスピースは使用している間は症状を抑えることができます。
肥満が原因の場合は減量後に生活習慣が元に戻ると再発する可能性もあるため、継続的な自己管理が重要です。
以上
参考にした論文
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