夜間のいびきや無呼吸、日中の強い眠気などが気になる人にとって睡眠時無呼吸症候群の検査は重要です。
自覚症状が少なくても検査を受けることで現在の状態を把握し、重症化を防ぐことにつながります。
本記事では自宅で行う簡易検査から病院での精密検査まで検査の流れや特徴を詳しく紹介します。自分に合った方法を知り、早めの対策を考える参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に呼吸が断続的に止まる、あるいは浅くなる状態が続く睡眠時無呼吸症候群は多くの人が気づかないまま見過ごしがちです。
ここではどのような病気であるか、そしてなぜ検査が大切なのかを解説します。
どのような病気?
睡眠時無呼吸症候群は眠っているあいだに10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、通常の半分以下の呼吸量になる「低呼吸」が繰り返し起こる病気です。
代表的な症状には以下のようなものがあります。
睡眠時無呼吸症候群の主な特徴リスト
- 大きないびき
- 呼吸が止まっているように見える
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝起きたときの頭痛や疲労感
- 日中の眠気や集中力の低下
呼吸障害により血中の酸素濃度が下がると心臓や脳を含む全身に負担がかかります。
放置すると高血圧や心臓病のリスクが高くなるため早期の検査と治療が大切です。
なぜ検査が大切なのか
自覚症状が軽度でも無呼吸症候群の検査によって現在の状態を客観的に把握できます。
適切な治療や生活習慣の見直しを行うきっかけにもなり、将来的な合併症リスクを低減させる効果が期待できます。
無呼吸症候群の検査のメリット
主なメリット | 内容 |
---|---|
早期発見と早期対策 | 病気の進行を抑えて重症化を回避できる |
客観的なデータの取得 | 自覚症状に頼らず具体的な数字で状態を把握できる |
治療法選択の幅が広がる | 結果に合わせてCPAPやマウスピースなど適切な治療を検討 |
生活習慣改善の動機づけ | 自身の状態を把握することで健康意識が高まる |
対象となる人
いびきがひどい人、肥満や首まわりの太さが気になる人、日中に異常なほど眠気を感じる人は無呼吸症候群の可能性があります。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病を抱えている場合は早めに検査を検討するとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群に関わる主な症状
検査を受けるかどうかを判断するためには日常で感じている症状や周囲からの指摘が参考になります。
ここでは無呼吸症候群によく見られる症状や、その背景にあるリスクについて解説します。
夜間のいびき
いびきは気道が狭くなることで発生します。睡眠時無呼吸症候群の場合は特に大きく、断続的な呼吸停止とともにガーッという音が途切れたり復活したりするのが特徴です。
いびきに関する主な原因
原因 | 内容 |
---|---|
肥満 | 首まわりに脂肪がつくと気道が狭くなる |
鼻づまり | 口呼吸が増え、舌根や軟口蓋が沈下しやすくなる |
飲酒 | アルコールで筋肉が弛緩し、気道が塞がりやすい |
顎の骨格 | 下顎が小さいと気道が狭くなる |
日中の眠気
無呼吸状態が続くと睡眠の質が大きく低下し、脳と身体が休めません。
その結果、昼間に激しい眠気を感じたり、集中力や判断力が落ちたりして日常生活に支障が出る場合があります。
日中の眠気で起こりやすいトラブルリスト
- 仕事中や授業中の居眠り
- 車の運転中の注意力低下
- 作業効率の低下によるミスの増加
- イライラ感や抑うつ気分の高まり
隠れた合併症とリスク
高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが上がることが知られています。
また血中の酸素が不足すると代謝が乱れて糖尿病などの生活習慣病を悪化させる要因にもなります。
検査の概要
睡眠時無呼吸症候群の検査には大きく分けて「自宅で行う簡易検査」と「医療機関で行う精密検査」があります。
どちらも特徴があり、自分の状況に合わせて選択することが大切です。
簡易検査と精密検査の違い
簡易検査は自宅で寝ているあいだに機器を装着するだけでデータを採取できる手軽さが魅力です。
ただし測定項目が限られるため精密検査ほど詳細な情報は得られません。
精密検査では脳波や心電図など多角的に測定し、より正確な結果を得られます。
簡易検査と精密検査の比較表
項目 | 簡易検査 | 精密検査(終夜睡眠ポリグラフ) |
---|---|---|
測定項目 | 限定的 | 脳波や心電図、筋電図など多岐 |
実施場所 | 自宅 | 病院や検査センター |
費用 | 比較的安価 | やや高額 |
検査の手軽さ | 機器を装着するだけ | 入院または通院で準備が必要 |
結果の正確性 | おおまかな把握 | 詳細かつ正確な診断が可能 |
検査を受けるタイミング
いびきや日中の眠気が続くと感じた時や高血圧や糖尿病などのリスクがあるときには、一度検査を検討するとよいでしょう。
早期に検査すれば生活習慣の見直しや治療で悪化を防ぐことも可能です。
検査前に準備すること
簡易検査の場合は検査キットの使い方を事前に理解しておくとスムーズです。
精密検査を受けるときは夜間の検査入院が必要になる場合があります。生活リズムや当日のスケジュールを調整しておくと安心です。
検査前の準備リスト
- 検査日の夕食は消化の良いものにする
- 検査機器の使い方や注意点を確認
- 定期的に服用している薬があれば医師に相談
- 精密検査の際は入院グッズを準備
自宅で行う簡易検査
自宅で実施する簡易検査は病院に泊まる必要がないため気軽に取り組みやすい方法です。
ここでは簡易検査のメリットや測定項目などを解説します。
簡易検査は医師に指示を受けて行うことが多いですが、患者さん側の負担が少ないため多くの人が初期段階の無呼吸症候群の検査として活用しています。
簡易検査のメリット
自宅で普段通りに眠るため、検査時のストレスが少なく、自然に近い睡眠状態のデータが得られます。
通院の手間も少なく済むので多忙な人でも実施しやすい点がポイントです。
簡易検査の主なメリット
項目 | 内容 |
---|---|
手軽さ | 自宅で実施できるためスケジュールを調整しやすい |
費用負担の軽減 | 精密検査に比べて比較的安価 |
自然な睡眠 | 慣れた寝室で行うため入院検査よりも普段の睡眠に近い状態を観察できる |
初期スクリーニング | 重症度をおおまかに把握し、本格的な治療のきっかけになる |
測定項目と結果の見方
簡易検査で測定する主な項目には鼻や口の呼吸量、いびきの音量、血液中の酸素飽和度(SpO2)などがあります。
結果は機器に記録され、後日医療機関でデータ解析と診断が行われます。
検査機器と取り扱い
鼻に装着するセンサーや指に装着するパルスオキシメーターなど検査用の機器はいくつか種類があります。
装着方法や設定が不十分だと正確なデータが得られないため、説明書や医療スタッフの指示に従って正しく装着してください。
簡易検査に使われる代表的な機器リスト
- 鼻用センサー(呼吸フローを測定)
- 指用パルスオキシメーター(酸素飽和度を測定)
- 体位センサー(寝ているときの体勢を記録)
- いびきマイク(いびきの音量やタイミングを記録)
自宅検査で注意したいポイント
自宅での検査は手軽さが利点ですが、機器の故障や装着ミスでデータがうまく取れない場合があります。
異常を感じたら早めに医師へ相談し、再検査の必要性を検討するとよいでしょう。
医療機関で行う精密検査
自宅で行う簡易検査に比べ、より正確な診断を得られるのが医療機関での精密検査です。
脳波や心電図など多角的に測定することで睡眠の質や呼吸障害の詳細を把握できます。
終夜睡眠ポリグラフ検査の特徴
「ポリソムノグラフィー」とも呼ばれる検査で、睡眠中の脳波、筋電図、呼吸、心電図などさまざまな生体情報を同時に測定します。
1泊2日で入院して行うことが多いですが、外来で夜間だけ通院する形の施設もあります。
終夜睡眠ポリグラフ検査が対象とする主な測定項目
測定項目 | 目的 |
---|---|
脳波 | 睡眠の深さやステージ(レム睡眠、ノンレム睡眠) |
心電図 | 不整脈や心拍数の変動を把握 |
呼吸フロー | 無呼吸や低呼吸の発生状況を詳細に記録 |
酸素飽和度 | 低酸素状態がどの程度起こっているかを確認 |
筋電図 | 筋肉の緊張度合いから身体の動きを把握 |
いびき音 | いびきの強さやタイミングの特定 |
測定されるデータ
脳波からは睡眠ステージの変化、心電図からは心拍数の変動や不整脈の有無など複数のデータが一度に得られます。
無呼吸の回数がどの睡眠段階で多いかや、無呼吸にともなう酸素飽和度の変動も詳しく解析可能です。
入院検査と外来検査の違い
多くの医療機関では1泊2日の入院で検査を行いますが、中には夜間のみ施設に泊まる「外来検査」を提供している場合もあります。
入院検査は身体の状態を総合的に把握しやすい一方、外来検査は費用や時間の負担が抑えられる利点があります。
入院検査と外来検査の特徴
項目 | 入院検査 | 外来検査 |
---|---|---|
検査の環境 | 個室や専用ベッドでゆったり検査 | 夜だけ検査施設に滞在し日中は帰宅 |
費用 | 入院費用がかかる | 入院費は不要(検査費用はかかる) |
観察時間 | 連続した観察がしやすい | 夜間中心のデータ取得 |
追加検査の可能性 | その場で血液検査なども実施しやすい | 外来形式のため追加検査は別途日程を要する |
検査結果が出るまでの流れ
検査終了後は膨大なデータを医師が解析して結果をまとめます。
結果は数日から1週間ほどかかる場合もあるため、再度医療機関で診断と治療方針の説明を受けるのが一般的です。
その他の診断補助
睡眠時無呼吸症候群の検査はポリソムノグラフィーなどが中心ですが、他にも耳鼻咽喉科的検査や画像検査を組み合わせて行うことがあります。
原因を突き止めることで、より適切な治療が考えやすくなります。
耳鼻咽喉科的検査
鼻腔や咽頭、扁桃腺など気道に狭窄が起きやすい部位を内視鏡でチェックします。
ポリープや鼻中隔の変形、扁桃肥大などが見つかると手術や薬物療法が検討されることもあります。
耳鼻咽喉科的検査で確認されるポイント
- 鼻腔の形状や詰まりの有無
- 扁桃やアdenoidの肥大
- のどちんこ(口蓋垂)の長さや形状
- 気道全体の狭窄部位
画像検査(CT、MRIなど)
骨格や組織の状態を詳しく見るためにCTやMRIを撮影する場合があります。
顎の位置関係や鼻腔の構造を正確に把握でき、外科的処置が必要かどうかを判断する手がかりとなります。
画像検査から得られる主な情報
項目 | 内容 |
---|---|
顎の骨格 | 上顎・下顎の位置や大きさ、歯並びなどを確認 |
気道断面積 | 軟口蓋や舌根が気道をどの程度塞いでいるかを把握 |
鼻腔の構造 | 鼻中隔の湾曲やポリープなどの有無 |
周囲組織 | 首まわりの軟部組織の肥厚具合 |
心肺機能のチェック
無呼吸状態が長期間続くと心臓や血管に大きな負担がかかります。
心電図や負荷心電図、呼吸機能検査などで心肺機能を総合的に評価し、循環器系への影響を確認する場合もあります。
検査後の流れ
各種検査で得られた情報をもとに医師が睡眠時無呼吸症候群の程度や原因を総合判断します。
治療法の提案や生活習慣の改善についてのアドバイスを受けたら、次は実際に治療に取り組んでいきましょう。
検査結果を受けたあとにできること
検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の傾向が見つかった場合、生活習慣の見直しや治療法の選択などを次に行う対策があります。
ここでは結果を受けてから踏み出す第一歩をまとめます。
生活習慣の見直し
肥満や飲酒習慣、喫煙などが無呼吸状態を悪化させます。
運動を取り入れたり、食事内容を改善したりといった取り組みは呼吸障害の軽減にもつながります。
生活習慣改善の具体的な方法リスト
- 適度な有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)
- 就寝前の過度なアルコールを控える
- 横向きで寝る習慣をつける
- 食事は腹八分を意識し、野菜やタンパク質をバランスよく摂取
追加治療に向けた第一歩
検査結果によっては医師からCPAP(経鼻的陽圧呼吸)療法やマウスピース治療、あるいは外科的治療の提案を受けることもあります。
自分の病状やライフスタイルに合った治療法を相談しましょう。
主な治療法選択
治療法 | 特徴 |
---|---|
CPAP療法 | 就寝時にマスクを装着し、気道を陽圧で開く |
マウスピース治療 | 顎を前方に固定し、気道スペースを確保する |
外科的治療 | 気道構造の問題が大きい場合に検討される |
その他の補助療法 | 禁煙、減量、鼻づまりの改善など |
周囲のサポート
無呼吸症候群は本人が気づきにくい病気です。
家族やパートナーの協力を得ながらいびきの頻度や体調の変化を共有すると、継続的な対策につなげやすくなります。
定期的な再検査の重要性
治療によって症状が改善しても生活習慣が元に戻れば再び症状が悪化することがあります。
改善具合を確認するため、定期的に無呼吸症候群の検査を受けて状態をチェックすることが大切です。
クリニックで検査を受ける流れ
実際に無呼吸症候群の検査を検討する場合、クリニックでどのような手順を踏むのかを知っておくと安心です。最後に一連の流れを紹介します。
予約から初回診察
まずは電話やウェブ予約で診察日時を決めます。
初回診察では問診や簡単な身体診察を行い、いびきの状況や日中の眠気、ライフスタイルなどを詳しく聞かれることが多いです。
初回診察の主な聞き取り内容リスト
- いびきの大きさや頻度
- 夜中に呼吸が止まるかどうかの家族からの指摘
- 朝起きたときの頭痛や倦怠感
- 日中に眠くなる頻度や状況
- 高血圧や肥満、糖尿病などの有無
簡易検査 or 精密検査の選択
初回診察や簡単な耳鼻咽喉科的検査の結果から自宅での簡易検査が適しているか、精密検査が必要かを検討します。
症状の度合いや患者さんの希望に応じて最適な検査方法を提案するケースが多いです。
医師が検査方法を選ぶ際の考慮ポイント
考慮要素 | 内容 |
---|---|
症状の重症度 | 強い眠気や高リスクの兆候があるか |
患者の生活環境 | 自宅で検査が可能か、仕事の都合はどうか |
既往歴や合併症 | 糖尿病や心臓疾患があるかどうか |
検査費用や保険適用 | 患者の経済的負担の状況 |
結果の説明と今後の方針
検査データの解析後、医師が結果を詳しく説明します。
無呼吸の頻度や血中酸素濃度の変動などを確認したうえでCPAPやマウスピースなどの治療法、もしくは生活習慣改善の指導が行われます。
経過観察とフォローアップ
治療に進んだ場合や生活習慣改善を始めた場合も症状の変化を定期的にチェックすると安心です。
再度無呼吸症候群の検査を行い、治療の効果や状態の推移を客観的に把握することが重要です。
フォローアップ時に確認するポイント
- CPAPなどの機器が適切に使えているか
- マウスピースのフィット感やメンテナンス状況
- 血圧や血糖値など合併症の管理状況
- 睡眠の質や日中の眠気の改善度
以上