毎晩のように大きないびきをかいているご家族が、急に静かになった。「いびきが止まる」と、うるさくなくて安心、と思うかもしれません。
しかし、その「いびきの停止」は、呼吸そのものが止まっている「無呼吸」状態の可能性があります。これは「いびき 無呼吸症候群」とも呼ばれる睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重大なサインかもしれません。
この記事では、いびきと無呼吸の関係、体に及ぼす危険性、病院を受診する目安について詳しく解説します。
「いびきが止まる」状態はなぜ危険なのか?
いびきと無呼吸の基本的な関係
いびきは、睡眠中に空気の通り道である「上気道(のど)」が狭くなり、そこを空気が通過する際に粘膜が振動して発生する音です。
肥満や扁桃腺の肥大、あごの形状などが原因で気道が狭くなると、いびきをかきやすくなります。
この気道の狭窄がさらに進み、一時的に完全に塞がってしまうと、空気の通り道がなくなり呼吸が停止します。これがいわゆる「無呼吸」状態です。
大きないびきをかいていた人が急に静かになり、しばらくして「ガッ!」と大きないびきとともに呼吸を再開するのは、無呼吸によって脳が危険を察知し、強制的に呼吸を再開させようとするためです。
危険ないびきと通常のいびきの違い
| 特徴 | 危険ないびき(無呼吸のサイン) | 通常のいびき(単純いびき症) |
|---|---|---|
| 音のリズム | 不規則。急に止まり、あえぐように再開する | 比較的規則正しい(ガーガー、ゴーゴー) |
| 呼吸の状態 | 呼吸が10秒以上停止する時間がある | 呼吸は止まらない |
| 日中の症状 | 強い眠気、疲労感、起床時の頭痛 | 日中の症状はほとんどない |
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる(無呼吸)、または浅くなる(低呼吸)状態を繰り返す病気です。
医学的には、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)または呼吸が著しく浅くなる状態(低呼吸)が、1時間あたり5回以上認められる場合に診断します。
「いびき 無呼吸症候群」という言葉で検索する方も多いように、大きないびきはSASの最も代表的な症状の一つです。
無呼吸が体に及ぼす深刻な影響
睡眠中に無呼吸状態になると、体内に取り込まれる酸素の量が著しく減少します(低酸素血症)。酸素が不足すると、心臓や血管に大きな負担がかかります。
また、無呼吸のたびに脳は「覚醒」に近い状態(睡眠が浅くなる)になります。これにより、体は眠っていても脳は休まらず、睡眠の質が極端に低下します。
この状態が毎晩続くことで、日中の活動に支障が出るだけでなく、全身のさまざまな臓器に悪影響が及びます。
無呼吸による体への影響
| 短期的な影響(睡眠中・起床時) | 長期的な影響(日中・全身) |
|---|---|
| 睡眠の質の低下(浅い眠り) | 高血圧の発症・悪化 |
| 起床時の頭痛・だるさ | 心筋梗塞・狭心症 |
| 夜間の頻尿 | 脳卒中(脳梗塞・脳出血) |
家族やパートナーが気づくべきサイン
睡眠時無呼吸症候群は、本人が睡眠中の出来事に気づきにくい病気です。そのため、ベッドパートナーや家族による「いびき」や「呼吸」の観察が非常に重要です。
「いびきが急に止まった」「息苦しそうにしている」「呼吸が再開するときに大きな音を立てる」といった様子に気づいたら、それは専門医に相談するべき重要なサインです。
本人が日中の眠気を訴えていなくても、いびきや無呼吸の指摘があった場合は、一度検査を検討することをお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群の主な種類と原因
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
睡眠時無呼吸症候群のほとんど(約9割)が、この「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA: Obstructive Sleep Apnea)」タイプです。
これは、肥満による首回りの脂肪沈着、扁桃腺の肥大、あごが小さい(小顎症)、舌が大きい(巨舌症)など、物理的な原因で上気道が塞がってしまうことで発生します。
睡眠中は筋肉が弛緩するため、起きている時よりも気道が狭くなりやすく、無呼吸が起こりやすくなります。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
「中枢性睡眠時無呼吸(CSA: Central Sleep Apnea)」は、脳の呼吸中枢(呼吸をコントロールする司令塔)の働きに問題が生じ、呼吸の指令そのものが一時的に停止してしまうタイプです。
このタイプでは、気道は塞がっていないにもかかわらず、呼吸努力(胸や腹の動き)そのものが停止します。心不全や脳卒中の後遺症、特定の薬剤の影響などで見られることがありますが、頻度としてはまれです。
SASの主な種類と特徴
| 種類 | 原因 | 特徴的な症状 |
|---|---|---|
| 閉塞性(OSA) | 上気道(のど)の物理的な閉塞 | 大きないびき、呼吸停止後のあえぎ呼吸 |
| 中枢性(CSA) | 脳の呼吸中枢の異常 | いびきは目立たず、呼吸努力そのものが停止 |
| 混合性 | 閉塞性と中枢性の両方の要素 | 中枢性で始まり、閉塞性に移行するなど |
混合性睡眠時無呼吸
閉塞性(OSA)と中枢性(CSA)の両方の特徴を併せ持つタイプです。
睡眠検査(PSG検査)を行うと、呼吸停止が始まった当初は呼吸努力のない中枢性パターンを示し、途中から呼吸努力はあるものの気道が塞がっている閉塞性パターンに移行する、といった複雑な状態が観察されます。
いびきや無呼吸を引き起こす要因
いびきや無呼吸、特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、さまざまな要因が組み合わさって発症します。複数の要因が当てはまる場合、リスクはさらに高まります。
- 肥満(特に首回りや上体)
- あごが小さい、または後退している
- 扁桃腺やアデノイドの肥大
- 加齢によるのどの筋肉のたるみ
- アルコールの摂取(筋肉を弛緩させるため)
- 睡眠薬の使用
あなたも当てはまる?睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック
日中の強い眠気や疲労感
睡眠時無呼吸症候群の最も代表的な自覚症状は、日中の耐え難い眠気です。夜間に無呼吸と覚醒を繰り返すため、十分な時間眠ったつもりでも、脳も体も休息できていません。
この結果、会議中、運転中、食事中など、通常では考えられない場面で強い眠気に襲われることがあります。また、常に疲労感が抜けず、体がだるいといった症状もよく見られます。
起床時の頭痛や口の渇き
朝起きたときに、頭が重い、またはズキズキと痛む(特に前頭部)場合、睡眠中の低酸素状態が原因かもしれません。体内の酸素が不足すると、脳の血管が拡張して頭痛を引き起こすと考えられています。
また、無呼吸になると口を開けて呼吸しようとすることが多くなるため(口呼吸)、朝起きたときに口の中やのどがカラカラに乾いていることも、いびきや無呼吸症候群を疑うサインの一つです。
集中力の低下や気分の落ち込み
睡眠の質が慢性的に低下すると、日中の集中力や記憶力が著しく低下します。仕事や勉強でミスが増えたり、新しいことを覚えるのが難しくなったりします。
さらに、質の悪い睡眠は精神状態にも影響を与えます。理由もなくイライラしたり、気分が落ち込みやすくなったり(抑うつ症状)、性格が変化したように感じたりすることもあります。
睡眠時無呼吸症候群 セルフチェックリスト
| 症状・項目 | はい / いいえ |
|---|---|
| 家族やパートナーから、いびきがうるさいと指摘される | |
| いびきが止まり、呼吸が停止していると指摘されたことがある | |
| 日中、会議中や運転中などに強い眠気を感じる | |
| 朝起きた時、頭痛やだるさを感じる | |
| 朝起きた時、口やのどが乾いている | |
| 夜間に何度もトイレに起きる(頻尿) | |
| 集中力や記憶力が低下したと感じる | |
| 肥満気味である(BMI 25以上) |
これらの項目に3つ以上当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
特に「呼吸が停止している」という指摘がある場合は、早急に専門医に相談してください。
睡眠時無呼吸症候群を放置するリスク
高血圧や心疾患との関連
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置すると、体に深刻な合併症を引き起こす危険性が高まります。 無呼吸による低酸素状態は、交感神経を刺激し、血管を収縮させます。
これが毎晩繰り返されることで、慢性的な高血圧を発症しやすくなります。SAS患者の高血圧合併率は非常に高く、SASの治療が高血圧の改善につながることも多く報告されています。
また、心臓にも大きな負担がかかり、不整脈、狭心症、心筋梗塞といった命に関わる心疾患のリスクが健常者の数倍に高まることがわかっています。
脳卒中(脳梗塞・脳出血)の危険性
高血圧や動脈硬化が進行すると、脳の血管にも影響が及びます。睡眠中の低酸素状態や血圧の急激な変動は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」や、血管が破れる「脳出血」(あわせて脳卒中と呼びます)の引き金となります。
特に重症のSAS患者では、脳卒中の発症リスクが健常者の約3〜4倍になるともいわれています。
SASの放置による主な合併症
| 分類 | 具体的な病名 | 概要 |
|---|---|---|
| 循環器系 | 高血圧、不整脈、心筋梗塞、狭心症、心不全 | 無呼吸による低酸素と交感神経の緊張が心血管系に負担をかける |
| 脳血管系 | 脳梗塞、脳出血(脳卒中) | 血圧変動や動脈硬化の進行により、脳血管のイベントリスクが増加する |
| 代謝系 | 糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症 | 睡眠の質の低下がインスリンの働きを悪くし、生活習慣病を悪化させる |
糖尿病や生活習慣病の悪化
睡眠不足や低酸素状態は、血糖値をコントロールする「インスリン」の働きを悪くします(インスリン抵抗性)。
このことにより、糖尿病の発症リスクが高まるだけでなく、すでに糖尿病の人が治療を受けていても血糖コントロールが悪化しやすくなります。
同様に、脂質異常症(高コレステロール)やメタボリックシンドロームとも深い関連があり、SASの治療がこれらの生活習慣病の改善にも重要です。
居眠り運転など社会生活への支障
SASによる日中の強い眠気は、日常生活にも大きな危険をもたらします。特に重大なのが、居眠り運転による交通事故です。SAS患者は、健常者に比べて事故率が数倍高いというデータもあります。
また、仕事中の集中力低下による業務効率の悪化や、学業成績の不振など、社会生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。
病院で行う検査と診断の流れ
まずはどの診療科を受診すべきか
いびきや無呼吸の症状で受診を考える場合、まずは「呼吸器内科」「耳鼻咽喉科」「循環器内科」などを標榜しているクリニックや病院に相談するのが一般的です。
最近では「いびき外来」「睡眠時無呼吸外来」など、専門の外来を設けている医療機関も増えています。
どの科を受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、当クリニックのような睡眠医療を専門に扱う施設にお問い合わせください。
問診と簡易検査(自宅でのスクリーニング)
病院を受診すると、まずは問診を行います。いびきや無呼吸の状況(家族からの指摘)、日中の眠気の程度(ESSという問診票を使うこともあります)、生活習慣、既往歴などを詳しく伺います。
その結果、SASが疑われる場合、まずは自宅で行える「簡易検査(スクリーニング検査)」を実施します。
手の指に装着するセンサー(パルスオキシメーター)や、鼻と指にセンサーをつける小型の機械を貸し出し、ご自宅で一晩眠っていただきます。
この検査で、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素飽和度を測定し、無呼吸・低呼吸の回数(AHI)を調べます。
精密検査(PSG検査)とは
簡易検査で中等症以上のSASが強く疑われる場合や、簡易検査では軽症でも症状が強い場合などには、より詳細な「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査」を行います。
この検査は、通常、医療機関に一泊入院して行います。脳波、眼球の動き、筋肉の緊張、呼吸、心電図、血液中の酸素量など、非常に多くのセンサーを体に取り付けて睡眠の状態を詳細に記録します。
この検査により、無呼吸・低呼吸の正確な回数や重症度、睡眠の深さ、無呼吸のタイプ(閉塞性か中枢性か)などを正確に診断できます。
簡易検査とPSG検査の比較
| 項目 | 簡易検査(自宅) | 精密検査(PSG検査・入院) |
|---|---|---|
| 実施場所 | 自宅 | 医療機関(一泊入院) |
| 測定項目 | 呼吸、酸素飽和度、脈拍など(少数) | 脳波、呼吸、心電図、筋電図、酸素など(多数) |
| 診断できること | 無呼吸・低呼吸の有無とおおよその重症度 | 無呼吸の重症度、種類(閉塞性/中枢性)、睡眠の質 |
診断基準と重症度の分類
検査の結果、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI: Apnea Hypopnea Index)によって重症度が分類されます。
AHIが5回以上で、かつ日中の眠気などの症状がある場合に「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。AHIが20回以上(簡易検査では40回以上)の場合、後述するCPAP療法の保険適用となります。
SASの重症度分類(PSG検査の場合)
- 軽症: AHI 5回以上 15回未満
- 中等症: AHI 15回以上 30回未満
- 重症: AHI 30回以上
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法
CPAP(シーパップ)療法
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)は、現在、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対して最も有効とされる標準的な治療法です。
寝るときに鼻(または鼻と口)にマスクを装着し、本体装置から空気を送り込むことで、睡眠中に気道が塞がらないように物理的に支えます。
正しく使用すれば、治療を開始したその夜からいびきや無呼吸が劇的に改善し、睡眠の質が向上します。日中の眠気や疲労感も大幅に改善することが期待できます。
保険診療で治療を継続するには、毎月の外来受診が必要です。
マウスピース(口腔内装置)による治療
軽症から中等症のOSA患者、またはCPAP治療が合わない場合に選択されるのが、マウスピース(口腔内装置)による治療です。
睡眠中に下あごを上あごよりも少し前に突き出させた状態で固定する装置を装着します。このことにより、舌の付け根が持ち上がり、気道が広がりやすくなります。
この治療は、専門の歯科医と連携して作製します。CPAPに比べて持ち運びが便利ですが、あごの関節に負担がかかる場合があるため、定期的な調整が必要です。
生活習慣の改善(減量・禁煙など)
SASの治療において、CPAPやマウスピースと並行して行うべき最も基本的な対策が、生活習慣の改善です。特に肥満が原因である場合、減量は非常に効果的です。
体重が減少すると、首回りの脂肪が減り、気道の閉塞が改善します。減量だけでSASが大幅に改善したり、軽症化したりするケースも少なくありません。
治療の基本となる生活習慣の改善
- 減量:適正体重を目指す(特に肥満者の場合)
- 禁酒・節酒:特に就寝前のアルコールは控える
- 禁煙:喫煙はのどの炎症を引き起こし、気道を狭くする
- 睡眠薬の見直し:筋肉を弛緩させる作用のある薬は医師に相談
- 横向き寝:仰向け寝は舌が落ち込みやすいため、横向きで寝る工夫をする
外科的手術という選択肢
扁桃腺やアデノイドが極端に大きい場合(特に小児のSAS)や、鼻の構造に明らかな問題(鼻中隔弯曲症など)がある場合、外科的手術が治療の選択肢となることがあります。
成人の場合、口蓋垂(のどちんこ)やその周辺の軟口蓋を切除する手術(UPPPなど)もありますが、効果には個人差があり、痛みを伴うことや、術後にCPAP治療が困難になる場合もあるため、適応は慎重に判断します。
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法
| 治療法 | 対象(目安) | 概要 |
|---|---|---|
| CPAP療法 | 中等症〜重症 | マスクから空気を送り、気道の閉塞を防ぐ。最も効果的。 |
| マウスピース | 軽症〜中等症 | 下あごを前に出し気道を広げる装置を装着する。 |
| 生活習慣の改善 | すべての患者 | 減量、禁酒、禁煙、横向き寝など。治療の基本。 |
| 外科的手術 | 一部の患者(扁桃肥大など) | 扁桃摘出や鼻の構造改善など、物理的原因を取り除く。 |
クリニック受診の目安とタイミング
このようないびき・症状なら受診を
「いびき 無呼吸症候群」を疑うべきサインは、いびきの音そのものよりも、呼吸の状態にあります。
「大きないびきが突然止まり、静かになる」「数十秒後に、あえぐように『ガッ!』と大きな音を立てて呼吸を再開する」「睡眠中に息苦しさを感じて目が覚める」 このような症状が週に数回でもある場合は、重症度に関わらず、一度専門の医療機関を受診することを強く推奨します。
家族からの指摘があった場合
前述の通り、睡眠中の無呼吸は本人が自覚することが困難です。もし家族やパートナーから「いびきが止まっているよ」と指摘されたら、それを軽く考えないでください。
本人は「疲れているだけ」「よく眠れている」と感じていても、体は深刻な酸欠状態と睡眠不足に陥っている可能性があります。
日中の眠気などの自覚症状がなくても、家族からの指摘は受診の十分な理由になります。
セルフチェックで複数当てはまったら
先述のセルフチェックリストで、「いびきが止まる」という指摘に加えて、「日中の強い眠気」「起床時の頭痛」「肥満気味」など、複数の項目が当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性がかなり高いと考えられます。
合併症が進行する前に、早期に検査を受け、適切な対策を始めることが重要です。
受診を強く推奨する目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 家族の指摘 | 「いびきが止まっている」「呼吸が苦しそう」と指摘された |
| 日中の症状 | 耐え難い眠気がある、運転中にヒヤリとすることがある |
| 起床時の症状 | 起きた時に頭痛がする、熟睡感がない |
| 合併症 | 高血圧や糖尿病の治療中だが、なかなか改善しない |
検査や治療への不安を解消するために
「病院で何をされるかわからない」「CPAPという機械をずっと着けるのは大変そう」といった不安から、受診をためらう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、検査は自宅でできる簡単なものから始められますし、治療法もCPAPだけではありません。まずはご自身の状態を正確に知ることが第一歩です。
放置することで将来的に心筋梗塞や脳卒中になるリスクを抱え続けるよりも、早期に適切な対策を行うことが、ご自身の健康とご家族の安心につながります。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態やライフスタイルに合わせた治療法を提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群に関するよくある質問(Q&A)
- Qいびきをかくだけでも治療は必要ですか?
- A
いびきだけをかく「単純いびき症」で、無呼吸や低呼吸、日中の眠気などが全くない場合は、必ずしも積極的な治療の対象とはなりません。
しかし、大きないびきは気道が狭くなっている証拠であり、将来的に睡眠時無呼吸症候群(SAS)に移行する可能性があります。
また、いびきの音自体がご家族の睡眠を妨げている場合もあります。いびきの原因を調べ、生活習慣の改善(減量、禁酒など)に取り組むことは大切です。
- Q検査や治療にはどれくらいの費用がかかりますか?
- A
睡眠時無呼吸症候群の検査(簡易検査、PSG検査)および治療(CPAP、マウスピース)は、すべて健康保険が適用されます。
簡易検査は3割負担の方で数千円程度、PSG検査(1泊入院)は数万円程度が目安です。
CPAP治療は、保険適用(AHIが20回以上など)の場合、毎月の外来受診と装置のレンタル料を含めて、3割負担の方で月額4,500円程度です。
- QCPAP治療はいつまで続ける必要がありますか?
- A
CPAPは、気道が塞がらないように空気を送り込む対症療法です。そのため、使用を中止すれば、基本的には元のいびきや無呼吸の状態に戻ってしまいます。
高血圧の薬を毎日飲むのと同じように、合併症を防ぐために継続的な使用が必要です。
ただし、治療の根本原因である肥満を解消するために大幅な減量に成功した場合や、外科的手術で気道の閉塞が改善した場合など、SASそのものが改善すれば、CPAP治療を終了できる可能性もあります。
- Q子どもでも睡眠時無呼吸症候群になりますか?
- A
はい、お子さんでも睡眠時無呼吸症候群になることがあります。子どもの場合の最も多い原因は、扁桃腺(口蓋扁桃)やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大です。
「大きないびきをかく」「呼吸が苦しそう」「寝汗が多い」「おねしょが治らない」「日中いつも口を開けている」「成長が遅い」などのサインがあれば、小児科や耳鼻咽喉科にご相談ください。
大人のSASとは異なり、原因となっている扁桃やアデノイドを摘出する手術によって、根本的に治癒することが多いのが特徴です。
