「肺気腫(COPD)」という病気は、こちらにて説明しました。
「相手を知り己を知れば百戦してあやうからず」
と孫氏(古代中国の戦略家)は言いましたが、肺気腫という病気の概要をまず知った上で、次に重要なのは、「どういう状態が肺気腫といえるのか」・「どうやって診断するのか」ということです。
肺気腫はそもそも慢性閉塞性肺疾患と呼ばれる病気のひとつであり、その「閉塞性換気障害」という障害があるかどうかが最も重要となります。
「閉塞性換気障害」とは、息は吸えるけれども、吐き出すのが難しくなってきていることを言います。肺気腫の場合は、喫煙などによる慢性的な炎症により気管支が細くなっていることが主体で生じてきます。
ですが肺気腫の診断としては、まずは聴診や視診といった身体所見をとる診察を行うのが基本です。そして、診察にて肺気腫らしい症状・所見があった場合、次にいくつかの検査を行います。
肺気腫でポイントとなる「閉塞性換気障害」を調べる検査として最も重要なのは、「呼吸機能検査(スパイロメトリー)」という検査です。
また、胸部X線検査(レントゲン)によって、肺気腫特有の肺の形をしていないか、胸部CTにて肺気腫の原因である肺胞が壊れている所見などがないかをチェックします。
それに加えて、合併症として重要な肺癌などの悪性腫瘍がないかもチェックできます。
あるいは、COPD集団スクリーニング質問票にて、COPDの可能性があるかどうかを一度自分で調べて見るのも良いでしょう。5分もあれば終わる、チェックしていくだけの簡単な検査です。
こうした内容に関して、本記事では肺気腫の知っておくべき事実や情報を、わかりやすく解説します。
1.指と体型を注意深く見れば肺気腫の徴候が分かる(家庭の医学)
病気になると色々とからだに症状が現れるということは、皆さんなんとなくお気づきと思いますが、もちろん見た目にも色々現れてきます。
今回のテーマである肺気腫という病気にも、見た目に特徴的な所見がいくつかあります。
① 「ばち指」
「ばち指」(ばち状指)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ばち指とは、手・足の指の先端が広くなり、爪の付け根が隆起し、凹みがなくなった状態をいいます。その肥厚した指がまるで太鼓のバチ状であることが名前の由来です。
また、両手の人差し指の爪同士を合わせてみるとどうなるでしょうか。普通であれば爪同士の間にできるはずのダイヤモンド型のすき間が、肺気腫患者さんの場合は認められなくなってしまいます。これをシャムロス徴候(Schamroth Sign)と呼び、ばち指であることの証明にもなります。
また、指の色もチェックポイントです。
普通は淡い赤色やピンク色ですが、ある程度進行した肺気腫の方は明らかに白くなっていることがあります。これは「チアノーゼ」と呼ばれる、低酸素血症もしくは末梢循環不全のため起きる症状です。
肺気腫の患者さんは、ガス交換を行う肺胞が壊れてしまったため、十分に酸素を体に取り込むことができず、いわゆる低酸素血症の状態となり、このような症状が起きるのです。
同様に体の末端が低酸素血症の状態となってしまうため、血管が徐々に発達してきます。その結果、手の甲など末端の静脈が怒張(発達して張った状態)してくる事が多いです。
② 「体幹」
この写真は昔から有名なCOPDの方のイラストです。
左の方は赤やせ型(Pink Puffer)と呼ばれ、やせと赤ら顔が特徴で、息切れなどの呼吸困難の症状も強いタイプです。こちらが肺気腫の患者さんでは典型的と言われてきました。
啖は粘り気が強いが少量でる事が多いと言われています。よく見ると首回りの胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉の発達が目立ちます。
右の患者さんは青太り型(blue bloater)と呼ばれ、チアノーゼが強く青白い体をしており、咳と膿の混じった汚い啖が良く出る、慢性気管支炎の患者さんで典型的と言われてきました。
また、体重が変わっていないのに、お腹が出てきたというのも一つのポイントです。
歳を取って筋肉が衰えて脂肪が増えたということ以外に、COPDにより肺が拡張し、横隔膜が下に下がって胃などのおなかの臓器を圧迫している可能性も考えられます。これは間接的なCOPDの身体所見になります。
③ 「呼吸」
肺気腫の患者さんは、普通に途切れなくしゃべれる方が普通です。しかし、時折「口すぼめ呼吸」をする事があります。
「口すぼめ呼吸」とは、息を吸った後、口をすぼめて長く息をはく呼吸法です。なぜそんな呼吸の仕方をするのかというと、この方が普通の呼吸より楽なので、自然とからだがそういう呼吸の仕方をするのです。
また、肺気腫が進行してくると、壊れた肺胞に空気がたまっていく(エアトラッピング)ために、肺の普通よりかなり膨らんで(過膨張)しまうため横隔膜が平低化し、息を吸う時に横隔膜の収縮に伴って側胸壁が内の方に陥没します。
この所見をフーバー徴候(Hoover’s sign)と呼び、進行したCOPDの特徴と言われています。
2. 「呼吸機能検査」による肺気腫の確定診断と重症度チェック
呼吸機能検査とは、文字通り肺に出入りする空気の量などを測定する検査となります。
肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ぜんそく、間質性肺疾患をはじめとする、呼吸器の病気が疑われるときや、その状態をみるときに行う検査です。
スパイロメーターという機械を用いることが多いですが、詳しく呼吸障害の程度をみる時は、精密肺機能検査用の機械を用いて行います。
鼻から空気が漏れないようにクリップでつまみ、マウスピースという筒をくわえて、検査技師の指示に従って息を吸ったり吐いたりします。
スパイロメーターの見た目はこのような検査機械であり、チューブを咥えて、息を吸ったり吐いたりする検査です。そして、以下の項目を測定するのが一般的です。
(a) 肺活量測定
肺活量を測定する際は、まずはゆっくりと普通に呼吸して測定します。これによって安静呼気位(①)と安静吸気位(②)をチェックします。
ゆっくりと限界まではききったところ(最大呼気位)から、空気をゆっくり胸いっぱい吸い込んだところ(最大吸気位③)まで吸える量を続いてチェックします。
最大吸気位から再びゆっくり最大呼気位(④)まで吐ききります。吸った時とほぼ同じ量がはかれます。
そして最後にもう一度、普通に吸ってはくことで、終了となります。
出た数値を、年齢・身長・性別から求めた標準値に対して80%以上を正常とします。
「肺活量」は、最大吸気位から最大呼気位までゆっくりと呼出させたときの量となります。
「肺活量」が低下する病気としては、主に間質性肺炎・肺線維症などの肺が硬くなる病気や、胸椎側湾症など胸郭が変形する病気、呼吸筋力が低下して肺の容積が小さくなる病気などが挙げられます。
「努力肺活量」は、胸いっぱい吸い込んだ空気を、できるだけ一気に勢いよく吐いて測定した際の、最大吸気位から最後まで吐ききるまでの量となります。
この「努力肺活量」が低下する病気としては、ぜんそくや肺気腫などのCOPDが挙げられますが、ゆっくりと呼吸したときの肺活量より更に減ってしまいます。
また、努力肺活量を測るときの最初の1秒間に吐くことができた空気の量を「1秒量」といいますが、この量が標準値に比べて少ないときは、気管支が狭くなっている可能性があります。
ぜんそくの診断の際には、気管支拡張薬を吸入する前・後で2回測定し、前後の値を比べることもあります。この1秒量が減る病気としては、肺気腫などのCOPDやぜんそくなどの病気が考えられます。
また、努力肺活量に対する1秒量の割合を「1秒率」(FEV1%)といいますが、これは70%以上が正常であり、「1秒率」は喘息やCOPDなどの気道が狭くなる病気を簡便に見つける指標です。
(b) 予測肺活量と%肺活量(%VC)
肺活量は年齢・性別・慎重によって変化します。
日本人の性状予測式を用いてこれらの要素に対応する平均的な肺活量(予測肺活量)を求めることが出来ます。
・男性(18歳以上)
予測肺活量(L)=0.045×身長(cm)-0.023×年齢-2.258
・女性(18歳以上)
予測肺活量(L)=0.032×身長(cm)-0.018×年齢-1.178
また%肺活量とは、実際に測定した肺活量が、予測肺活量の何%にあたるかを計算して求めた値を%肺活量(%VC)といいます。
%肺活量(%VC)=実測肺活量/予測肺活量×100(%)
(c) 換気障害の分類
%肺活量(%VC)と1秒率(FEV1%)から、換気障害を4つに分類します。
「閉塞性障害」とは、%肺活量は保たれているが、1秒率が低下している状態です。
肺・胸郭は正常に広がるため吸気はスムースに行えますが、気道閉塞があるため、ゆっくり出ないと呼気しづらい(一気に息が吐けない)ということを意味しています。
この「閉塞性障害」が特徴的な病気は、肺気腫などのCOPDやぜんそくなどが挙げられます。
「拘束性障害」とは、1秒率は保たれているが、%肺活量が低下している状態です。
肺・胸郭が広がりにくいため吸気しづらいが、気道閉塞はないため、呼気はスムースに行えるということを意味しています。この「拘束性障害」が特徴的な病気は、間質性肺炎や肺結核後遺症などが挙げられます。
そして、病気が進行し、その両方が認められる状態を「混合性障害」といいます。
こうした所見から、肺気腫などのCOPD、ぜんそくを診断するのですが、この呼吸機能検査が最も診断にとって必要な検査なのです。
また、治療していく上で、この呼吸機能検査がどのように変化していくのかも、重要なポイントとなります。そしてこの呼吸機能検査の結果から、俗に言う「肺年齢」というものもチェックできます。
あるテレビ番組にて、芸能人の華丸大吉さんが、肺年齢69歳と実年齢を大幅に超えた診断が出されて相当ショックを受けている様子が報道されたこともありました。
息切れなどの症状は特にないと番組中で言っていましたが、目に見えた症状がなくとも喫煙は体の中を着実にむしばんでしまっていることが良くわかる話でした。
3. 専門医であれば「レントゲン検査」でここまで進行度と合併症を見抜ける
続いて重要な検査は、いわゆるレントゲン検査です。正式名称は「胸部単純X線検査」といいますが、胸部領域の診断において第一に行う基本的な画像検査です。
X線を体に照射し、それをフィルムで検出し、からだを傷つけたり痛みを感じたりすることなく、体の中を詳しく見ることが出来ます。
成人の方であれば健康診断にて、下記の様な形で一度は撮影したことがあるのではないでしょうか。
X線はからだを通過するときに、様々な組織に吸収されます。その際、組織ごとに吸収度が異なり、結果的には白〜黒の色調で表されることとなります。
黒く写るのは、主に空気です。肺内の空気や気管などが黒く写ります。
濃いグレーに写るのは、皮下脂肪です。
薄いグレーに写るのは、心臓や血管、縦隔臓器、横隔膜などです。
白く写るのは、骨や石灰化です。
その結果、皆さんご存じの下図のような画像が得られるというわけです。
こちらは正常な胸部単純写真の画像ですが、肺気腫などのCOPDになると下記の特徴が現れてきます。
肺胞壁が破壊され、それに伴い血管が変化するため、肺野の透過性の亢進(黒く見える)と肺や末梢血管影の細小化(外よりでは見えにくくなる)が認められます。
また、破壊された肺胞に空気が貯留することで肺が過膨脹し、横隔膜の低位・平坦化(低く平べったくなる)、滴状心(心臓が細長くなる)、肋間腔の拡大(肋骨の間の距離が広くなる)等が認められ、進行すると肺高血圧となるため、肺動脈主幹部の拡大(心臓に近い肺動脈が太く見える)が認められるようになります。
その結果、下図の様な画像を来すようになります。こちらは肺気腫に特徴的な状態の胸部単純写真の画像です。
正常に比べて肺の過膨脹(黒い部分が拡大)が認められ、横隔膜が平坦化しています。
また、心臓が縦に程長く見え、滴状心と呼ばれる状態になっています。
加えて、下肺野(肺の下の方)などに索条影・斑状影といった陰影が認められ、昔の炎症の後や肺気腫による変化の影響が認められます。
また、胸部単純写真にてもう一つ重要な目的は、肺気腫以外の病気がないかをチェックする事です。
肺気腫などのCOPDは、特に肺癌などの悪性腫瘍を合併する事が多く、しっかりと定期的に画像検査を行っていく事が重要です。
ただし、白黒の胸部単純写真からここまでの情報を読影し、診断するのは、普通の医師では現実的には難しいのが実情です。
呼吸器科専門医や放射線科診断専門医であればここまで情報を読み解くことが可能なため、出来ればそうした専門医にチェックして貰うのをお勧めしますが、実際問題わかりにくい事も多く、更なる精査が必要な事があります。
4.レントゲン検査で発見困難な病気も詳しくわかる「CT検査」
前述のレントゲン検査は被曝も極端に少なく、簡便なのが良いのですが、そこまで情報量が多くないというところが問題です。
人間の分厚い胸の部分を二次元の一枚の写真として撮るのですから、仕方ない部分はあります。そのためスクリーニングとして、用いられることが中心です。
そのレントゲン検査で異常が疑われたり、はっきり悪いところがなさそうだけど身体所見上何かありそうだったり、といった場合には更なる精密検査としてCT検査が行われます。
CT検査は、正式名称を「Computed tomography・コンピュータ断層撮影(法)」といいますが、上記の様な大きな機械に横になって撮影する方法です。
痛みなどはレントゲン同様全くなく、撮影時間としてはレントゲンほど短くはないですが、台に乗った後の時間としては数分程度と十分に短い時間です。
レントゲンでは体の後ろから(あるいは前から)X線を照射して撮影しますが、CT検査ではそのX線を体の周囲から当てることで三次元的な情報が得られるのです。
その結果、下図の様にレントゲン検査とは比べものにならないくらい情報量が増え、詳しく肺やその他の臓器の状態を調べることが出来ます。
こちらも白黒の写真ですが、レントゲン同様にX線を使った検査なので、組織ごとにX線吸収度が異なることから、結果的には白〜黒の色調で表されることとなります。
写真の大部分を占める黒い部分が肺実質(肺そのもの、肺胞のあつまり)です。その中の白い部分は基本的に肺血管(肺動脈および肺静脈)です。
肺血管のとなりに見える黒い管状の部分は気管支です。その他、心臓や肺動脈、皮下脂肪、背骨、肋骨なども写っていますが、基本的にはこの画像は肺を見るための処理をしているため、こうしたものは白く写っていてよくわからなくなっています。
CT検査の画像は、一度撮影するとみたいものに合わせて処理を変えるだけで色々な情報が手に入るのが特徴であり、もちろん肺以外の臓器を見るための処理をすると詳しくその部分が見えるわけですが、今回の肺気腫の話ではあまり重要でないので割愛します。
上記の画像は正常の方の画像ですが、肝心の肺気腫の方の画像は全く異なる画像になります。
正常のCT画像よりもスポンジ状の黒い部分が多いのが見てわかると思います。
これは肺気腫が進行して、肺胞の破壊が進んだ結果、空気のたまった場所(嚢胞・ブラ)がたくさん出来てしまった状態です。
しかも、この黒い空気のたまった部分は、酸素の取り込み・二酸化炭素の排出といった呼吸の大事な部分の働きが出来なくなってしまっています。
そのため、普通にしていても息切れするといった肺気腫の症状が生じてしまっているわけです。
また、気管支の壁も厚くなっている部分が散見され、これらは気管支に炎症を生じている事を反映しています。上記の肺胞の破壊とこの気管支の炎症も相まって、咳や啖がずっと続くと言った症状の原因を表す所見となっています。
加えて、同時にいろいろな病気が見つかる事もあります。
下図は肺気腫の方で、なおかつ右肺の末梢に白い塊が認められますが、こちらが肺癌病変です。
肺気腫などのCOPDの患者さんは、肺癌の様な肺気腫と同時に起きやすい随伴疾患のスクリーニング・精査も合わせて行う事が重要です。
しかし、実際のところ医師の専門領域以外は、病気の見逃しや診断差異が起きてしまう事も多々あります。
それを防ぐため、こうした画像を全身くまなくチェックする事に特化した医師を、放射線科診断専門医といいます。大学病院などの大病院であれば全てのCT検査を放射線科診断専門医がチェックしています。
しかし、普通の小さな病院・クリニックでは在駐していない・できないため、残念ながらチェック出来てないのが実情です。
なお、当院では院長を初めとした放射線科診断専門医が全ての画像検査をチェックしているため安心して検査を受けて頂けるかと思います。
5. 肺気腫のセルフチェックをしてみよう
今までの話を読んでみて、
「息切れやせき・たんの症状が気になる」
「私は肺気腫・COPDなのかもしれない」
などと気になった方は一度下記のセルフチェックをしてみるのもお勧めです。
COPD集団スクリーニング質問票(COPD-PS TM: COPD Population Screener)は、一般の方を対象として、COPDの可能性があるかどうかを調べられる質問票です。
設問数が5問と少ないため、簡単に自己採点ができます。
1. 過去4週間にどのくらい頻繁に息切れを感じましたか?
□まったく感じなかった (0)
□数回感じた (0)
□ときどき感じた (1)
□ほとんどいつも感じた (2)
□ずっと感じた (2)
2. 咳をしたとき、粘液や痰などが出たことが、これまでにありますか?
□一度もない (0)
□たまに風邪や肺の感染症にかかったときだけ (0)
□1か月のうち数日 (1)
□一週間のうち、ほとんど毎日 (1)
□毎日 (2)
3. 呼吸に問題があるため、以前に比べて活動しなくなった。
(過去12カ月のご自身に最もあてはまる回答を選んでください。)
□まったくそう思わない (0)
□そう思わない (0)
□何ともいえない (0)
□そう思う (1)
□とてもそう思う (2)
4. これまでの人生で、たばこを少なくとも100本は吸いましたか?
□いいえ (0)
□はい (2)
□わからない (0)
5. 年齢はいくつですか?
□35~49歳 (0)
□50~59歳 (1)
□60~69歳 (2)
□70歳以上 (2)
各質問に対するご自身の回答の横にある数字を全て足して、合計点を出して下さい。
合計点が高いほどCOPDの可能性が高くなり、合計点が4点以上であれば、COPDの可能性があると考えられます。
・息切れやせき・たんの症状が気になる
・このセルフチェックで、合計点が4点以上だった
・人生の間でたばこを吸っていた期間が長かった
・今現在もたばこを吸っている
といった方は、一度かかりつけや近隣の医療機関に受診して、診察してもらうのをお勧めします。
6. まとめ
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの一つである「肺気腫」という病気は、見た目に特徴的な所見がいくつかあります。
指では、ばち指という手・足の指の先端が広くなり、爪の付け根が隆起し、凹みがなくなった状態となります。
体幹では、赤やせ型と呼ばれる、やせと赤ら顔が特徴的で、息切れなどの呼吸困難の症状も強く、首回りの胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉の発達が目立つ状態になります。
また、息を吸った後、口をすぼめて長く息をはくという「口すぼめ呼吸」が時折出ていることもあります。息を吸う時に横隔膜の収縮に伴って側胸壁が内の方に陥没するフーバー徴候が見られることもあります。
レントゲン検査でも特徴的な画像が認められます。
正常に比べて肺の過膨脹(黒い部分が拡大)が認められ、横隔膜が平坦化します。また、心臓が縦に程長く見え、滴状心と呼ばれる状態になっています。
そして、そのレントゲンより詳しく肺やその他の臓器の状態を調べることが出来るCT検査では、スポンジ状の黒い部分が多く認められ、空気のたまった場所(嚢胞・ブラ)がたくさん出来てしまった状態がみてわかるようになります。
気管支の壁も厚くなっている部分が散見され、これらは気管支に炎症を生じている事がわかります。加えて、同時に肺癌などのよく起きる合併疾患が見つかる事もあります。
息切れなどの症状が目立つ、肺気腫かもしれない、といった方は、COPD集団スクリーニング質問票にて、COPDの可能性があるかどうかを一度調べて見るのも良いでしょう。
肺気腫・COPDの正確な診断には呼吸機能検査などの検査が必要であり、画像検査は呼吸器科専門医・放射線科診断専門医の読影・診断されていることが大切な為、最終的にはちゃんとした呼吸器科・呼吸器内科の医療機関で診て貰うべきですが、まずはかかりつけ医や近くのクリニック・病院を受診して相談してみることが大事です。
7. 参考文献
1. Rabe KF, Watz H. Chronic obstructive pulmonary disease. Lancet. 2017 May 13;389(10082):1931-1940.