かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)とはウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器疾患の一種で、一般的に「風邪」と呼ばれる疾患です。

風邪は非常にありふれた疾患ではありますが、症状が重症化した場合に肺炎などの合併症を引き起こす可能性があるため適切な対処が必要となります。

また、風邪は感染力が強く、家族や職場などで集団感染を起こしやすいため、予防に気をつけることも大切です。

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かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)の病型とその症状について

風邪症候群(急性上気道炎)には、いわゆる感冒、咽頭炎、扁桃炎の3つの主要な病型が存在します。

それぞれの病型の症状には以下のような特徴がみられますが、個人差も大きい疾患でもあります。

感冒 (Common Cold)

感冒は風邪症候群の中で最も一般的で頻度が高い病型となっています。

感冒を患うと以下のような症状が現れます。

症状詳細
鼻水水様性から粘性へと変化
くしゃみ鼻粘膜の刺激により反射的に起こる
鼻づまり鼻粘膜の腫れによる鼻道の狭窄

これらの症状はウイルスの感染によって鼻腔や上気道の炎症が起きて発症します。

症状の程度は個人差が大きく、軽症の場合は日常生活に大きな支障がないこともあるでしょう。

咽頭炎 (Pharyngitis)

咽頭炎は咽頭部分の炎症を特徴とする病型で、以下のような症状が挙げられます。

症状特徴
喉の痛み咽頭の炎症による痛み
喉の違和感咽頭の炎症による不快感
発熱高熱
倦怠感全身がだるい

咽頭炎の症状はウイルスの感染による咽頭粘膜の炎症によって引き起こされるのです。

症状が強い場合は、喉の痛みで飲食や会話に支障をきたすこともあると考えられます。

扁桃炎 (Tonsillitis)

扁桃炎は口蓋扁桃や咽頭扁桃の炎症を指す病型となっています。

特に小児や若年成人に発症するケースが多く、主な症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 高熱
  • 激しい喉の痛み
  • 頭痛
  • 倦怠感

扁桃炎はの症状は特に高熱と激しい喉の痛みが特徴的で、全身症状も強く現れます。

まとめ

風邪症候群(急性上気道炎)の主症状は全身症状と局所症状に分けることができます。

感冒では鼻症状、咽頭炎では喉の痛み、扁桃炎では高熱と喉の激痛が特徴的だと言えるでしょう。

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)の原因とそのきっかけについて

風邪症候群(急性上気道炎)はウイルスの感染によって引き起こされる疾患です。

原因となるウイルスは200種類以上あると言われており、それぞれの病型によって主要な原因ウイルスが異なりるのです。

また、ウイルス感染のきっかけとなる要因も様々で、個人の免疫状態や生活環境などが大いに関与しています。

感冒 (Common Cold)

感冒の主な原因ウイルスは以下のようなものがあります。

ウイルス特徴
ライノウイルス最も頻度が高い
コロナウイルス秋から冬に多い
RSウイルス乳幼児に多い

これらのウイルスは飛沫感染や接触感染によって伝播します。

感染のきっかけとしては、以下のような要因が考えられます。

  • 人混みでの感染
  • 家族内での感染
  • 体調不良時の感染

咽頭炎 (Pharyngitis)

咽頭炎の主な原因ウイルスは以下のようなものがあります。

ウイルス特徴
アデノウイルス小児に多い
インフルエンザウイルス季節性あり
エンテロウイルス夏から秋に多い

咽頭炎の原因ウイルスも飛沫感染や接触感染によって伝播し、感染源としては感冒と同様の要因が考えられます。

扁桃炎 (Tonsillitis)

扁桃炎の主な原因はウイルスと細菌の両方があります。

ウイルス性扁桃炎の原因はアデノウイルスやエンテロウイルスなどです。

一方、細菌性扁桃炎の主な原因には以下のようなものがあります。

  • A群溶血性連鎖球菌
  • 淋菌
  • クラミジア

細菌性扁桃炎はウイルス性扁桃炎に続発することもあれば、単独で発症することもあるのです。

感染のきっかけは感冒、咽頭炎と同様だと考えられています。

まとめ

風邪症候群(急性上気道炎)の原因は多種多様なウイルスの感染によるものです。

病型によって主要な原因ウイルスは異なりますが、いずれも飛沫感染や接触感染によって伝播します。

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)の診察と診断における重要点について

風邪症候群(急性上気道炎)の診察と診断においては問診と身体所見が重要な役割を果たします。

病型によって特徴的な所見が異なるため、それぞれの病型に応じた評価が必要となります。

また、重症度の判定や合併症の有無についても注意深く評価し、必要に応じて検査を行うことが求められます。

問診

風邪症候群の診察では、まず問診で以下のような点について確認します。

確認項目詳細
症状発症時期、症状の種類と程度
経過症状の変化、悪化・改善の有無
既往歴慢性疾患、免疫抑制状態の有無

問診では症状の詳細や経過を把握し、重症度や合併症のリスクを評価します。

また、基礎疾患によって重症化リスクが異なるため、既往歴の確認も重要です。

身体所見

問診に続いて身体所見を確認し、病型によって特徴的な所見を見極めます。

感冒では以下のような所見がみられます。

  • 鼻汁
  • 鼻閉
  • 咽頭発赤

咽頭炎では、咽頭の発赤と腫脹が特徴的です。

所見詳細
咽頭発赤咽頭後壁の発赤
腫脹扁桃の腫大、圧痛

扁桃炎では扁桃の発赤と腫脹、白苔の付着などがみられます。 また、頸部リンパ節の腫脹を伴うことが多いです。

検査

風邪症候群の診断は主に問診と身体所見に基づいて行われます。

ただし、重症例や合併症が疑われる場合は以下のような検査を行うこともあります。

  • 血液検査
  • 咽頭ぬぐい液の細菌検査
  • 胸部レントゲン検査

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)における画像所見とその特徴について

風邪症候群(急性上気道炎)の画像所見は病型によって異なります。

感冒では画像検査の必要性は低いものの、咽頭炎や扁桃炎では特徴的な所見がみられることがあるのです。

ただし、画像所見のみで確定診断を下すことは困難で、あくまでも診断の補助としての役割が主体となります。

感冒 (Common Cold)

感冒では特異的な画像所見はみられません。 胸部レントゲン検査を行っても異常所見を認めないことがほとんどなのです。

ただし、合併症が疑われる場合に限って胸部レントゲン検査を行うことがあります。

咽頭炎 (Pharyngitis)

咽頭炎が進行し、高度の炎症を伴ったり膿瘍が出来てしま場合では以下のような所見がみられることがあります。

検査所見
側面頸部軟部組織レントゲン咽頭後壁の腫脹
頸部CT咽頭後壁の肥厚、リンパ節腫大
Jain H, Hohman MH, Sinha V. Retropharyngeal Abscess. 2024 Feb 29. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan–.

「咽頭の後方および頸椎前方に軟部影が目立ち、気管の狭小化あり、咽後膿瘍が疑われる。」

ただし、 臨床所見から咽頭炎が強く疑われる場合は、画像検査を省略することがほとんどです。

扁桃炎 (Tonsillitis)

扁桃炎では以下のような所見がみられることがあります。

検査所見
側面頸部軟部組織レントゲン扁桃の腫大
頸部CT扁桃の腫大、周囲組織の炎症
Case courtesy of Frank Gaillard, Radiopaedia.org. From the case rID: 5344

「咽頭の後方および右側に広範な多房性膿瘍形成が認められ、この結果、口咽頭および下咽頭は変形し、狭窄して前方および左側へ偏位している。」

膿瘍の有無や大きさ、周囲組織への影響を評価することができるので、扁桃周囲膿瘍が疑われる場合は頸部CTが有用だといえます。

しかし、扁桃炎の多くは画像検査なしで診断可能なため、 画像検査は重症例や合併症が疑われる場合に限定して行うのが一般的だと考えられています。

かぜ症候群(風邪・感冒・急性上気道炎)における治療方法と薬、治癒までの期間

風邪症候群(急性上気道炎)の治療は主に対症療法が中心となります。 病型によって若干の違いはありますが、多くの場合は自然治癒を待つことが基本だといえます。

ただし、症状が重い場合や合併症のリスクがある場合は薬物療法を併用することもあります。

治癒までの期間は個人差が大きいですが、通常は1週間から10日程度だと考えられています。

感冒 (Common Cold)

感冒の治療は対症療法が主体となりますが、以下のような薬剤が使用されることがあります。

薬剤目的
解熱鎮痛薬発熱や頭痛、のどの痛みの緩和
抗ヒスタミン薬くしゃみや鼻水の抑制
咳止め薬咳嗽の抑制

これらの薬剤は症状を和らげることが目的で、ウイルスを直接攻撃するものではありません。 安静と十分な休養、水分補給が重要だと言えます。

咽頭炎 (Pharyngitis)

咽頭炎の治療も基本的には対症療法が中心となり、感冒と同様の薬剤が使用されることが多いです。

  • 解熱鎮痛薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • トローチ(のど飴)

ウイルス性咽頭炎には抗菌薬は効果がありませんが、細菌性咽頭炎が疑われる場合は抗菌薬が処方されることがあります。

症状が強い場合は、安静と休養がとくに重要だと考えられています。

扁桃炎 (Tonsillitis)

扁桃炎の治療方針は原因によって異なります。

ウイルス性扁桃炎の場合は対症療法が中心となります。

治療詳細
対症療法解熱鎮痛薬、トローチなど
安静十分な休養と睡眠
水分補給脱水の予防

一方、細菌性扁桃炎の場合は抗菌薬の投与が必要です。

ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が使用されることが多いです。

治療期間は通常は数日から1週間程度ですが、重症例では入院治療を要することもあるのです。

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)の治療における副作用やデメリット(リスク)について

風邪症候群(急性上気道炎)の治療では対症療法が中心となりますが、使用する薬剤によっては副作用やデメリットが生じる可能性があるのです。

解熱鎮痛薬

解熱鎮痛薬は発熱や痛みの緩和に用いられますが、以下のような副作用が生じることがあります。

副作用詳細
胃腸障害胃痛、胃潰瘍、出血性潰瘍など
肝障害肝機能障害、肝不全など
腎障害腎機能障害、間質性腎炎など

とくにアセトアミノフェンは大量投与により重篤な肝障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水の抑制に用いられますが、以下のような副作用が生じることがあります。

  • 眠気
  • 口渇
  • 便秘
  • 尿閉

高齢者や前立腺肥大症の患者さんは特に注意が必要です。 また、服用中は車の運転や機械の操作を控えるなどの注意が必要だと考えられています。

咳止め薬

咳止め薬は咳嗽の抑制に用いられますが、以下のような副作用が生じることがあります。

副作用詳細
眠気中枢抑制作用による
便秘腸管運動の抑制による
呼吸抑制とくにコデインで注意が必要

咳は異物の排出や分泌物の喀出に重要な役割を果たすため、必要以上の抑制は好ましくありません。 適切な使用が求められるでしょう。

抗菌薬

抗菌薬は細菌感染が疑われる場合に使用されますが、以下のようなデメリットがあります。

  • 薬剤耐性菌の出現
  • 菌交代現象
  • アレルギー反応

抗菌薬はウイルス感染には効果がないため、不必要な使用は避けるべきだと考えられています。

また、適切な種類の抗菌薬を適切な期間使用することが重要なのです。

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)における再発の可能性と予防の仕方について

風邪症候群(急性上気道炎)は一度罹患しても再発する可能性が高い疾患だと言えます。

その理由は風邪の原因となるウイルスが多種多様で、一度の感染では十分な免疫を獲得できないためなのです。

ただし、再発を防ぐための予防法はいくつかあり、それらを適切に実践することで風邪のリスクを減らすことができるのです。

再発の可能性

風邪症候群の再発率は、以下のような要因によって異なります。

要因詳細
年齢乳幼児や高齢者で高い
免疫状態免疫力が低下している場合に高い
季節冬季に高い

特に感冒や咽頭炎では再発が多く、年に数回罹患することもめずらしくありません。 一方、扁桃炎は適切な治療を行えば再発は比較的少ないとされています。

予防法(1)感染予防

風邪の予防で最も重要なのは、ウイルスへの感染を防ぐことだと言えます。

そのためには以下のような対策が有効なのです。

  • 手洗いの徹底
  • マスクの着用
  • 人混みを避ける
  • 十分な睡眠と休養

とくに手洗いはウイルスの感染経路を断つ上で非常に重要だと考えられています。 外出後や食事前には石鹸を使って十分に手を洗うことが大切なのです。

予防法(2)免疫力の維持・向上

風邪の予防には免疫力を維持・向上させることも重要だと言えます。

そのためには以下のような生活習慣が推奨されるのです。

生活習慣詳細
バランスの取れた食事ビタミンやミネラルを十分に摂取
適度な運動免疫機能の活性化に寄与
禁煙喫煙は気道の防御機能を低下させる

また、ワクチン接種も免疫力の維持・向上に役立つのです。

インフルエンザワクチンはインフルエンザだけでなく、他の呼吸器感染症の予防にも一定の効果があるとされています。

かぜ症候群(風邪・急性上気道炎)における治療費に関して

風邪症候群の治療費は病型や重症度、医療機関によって異なりますが、一般的に数千円から数万円程度だと言えます。 初診料や再診料、検査費、処置費などが主な内訳となります。

初診料と再診料

風邪症候群の治療で医療機関を受診した場合、初診料または再診料がかかります。

料金金額
初診料2,880円
再診料780円

検査費と処置費

風邪症候群の診断や治療に必要な検査や処置を行った場合、追加の費用がかかるのです。

項目金額
血液検査
1,500~5,000円
レントゲン検査2,100円~4,000円
点滴治療1,000~3,000円
保険適用となると、上記の1割~3割の自己負担となります。

これらの検査や処置の必要性は症状や重症度によって異なります。

医師の判断に基づいて行われるため、事前に正確な費用を把握することは困難だと考えられています。

入院費

風邪症候群で入院治療が必要となった場合、入院費は1日あたり数万円~数十万円と高額になることがあります。

ただし、風邪症候群で入院治療が必要となるケースは、高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクが高い場合に限られるので非常に稀です。

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文