医師から在宅酸素療法(HOT)を勧められ、帝人(テイジン)の機器を利用する予定の患者様やご家族へ。
この記事では帝人の在宅酸素サービスについて、酸素濃縮器や携帯用酸素ボンベのレンタル方法、具体的な使い方、そして外出時に重要なボンベの残り時間の計算方法まで、分かりやすく解説します。
安心して治療を始めるための情報をお役立てください。
帝人の在宅酸素療法(HOT)サービスとは
帝人は在宅酸素療法の分野で長年の実績を持つ企業です。患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた多様な機器を提供し、全国的なサポート体制を整えているのが特徴です。
医師の指示のもと、患者さんがご自宅で安心して療養生活を送れるよう、機器の提供からメンテナンスまで一貫したサービスを行っています。
サービス提供の仕組み
帝人の在宅酸素療法サービスは医療機関との連携によって成り立っています。
まず、当クリニックのような医療機関で医師が診察し、在宅酸素療法が必要と判断した場合に処方せんを発行します。
患者さんはその処方せんに基づき、帝人とレンタル契約を結び、ご自宅に機器が設置されるという流れです。費用は公的医療保険が適用されます。
提供される主な機器の種類
帝人では、主に「酸素濃縮器」と「携帯用酸素ボンベ」の2種類をレンタル提供しています。酸素濃縮器はご自宅での使用が基本となり、携帯用ボンベは外出時に使用します。
患者さんの活動量や生活スタイルに合わせて、複数のモデルから適切な機器を選びます。
帝人が提供する主な機器
機器の種類 | 主な用途 | 特徴 |
---|---|---|
酸素濃縮器 | 在宅時の酸素吸入 | 室内の空気から酸素を生成。電源が必要。 |
携帯用酸素ボンベ | 外出時の酸素吸入 | 軽量で持ち運び可能。充填された酸素を使用。 |
液体酸素装置 | 在宅・外出兼用 | 親機から子機へ液体酸素を充填して使用。 |
全国を網羅するサポート体制
帝人の強みの一つが全国各地に営業所を配置し、地域に密着したサポートを提供している点です。
機器の設置や定期的なメンテナンスはもちろん、万が一のトラブルや緊急時にも担当者が迅速に対応する体制が整っています。この安心感が多くの患者さんに選ばれている理由です。
酸素濃縮器・ボンベのレンタル手続き
帝人の在宅酸素サービスを利用するためのレンタル手続きは当クリニックと帝人が連携して進めるため、患者さんご自身が複雑な手続きを行う必要はほとんどありません。
大まかな流れを理解しておくと、よりスムーズに治療を開始できます。
医師の処方から契約までの流れ
まず、医師が患者さんの症状を診察し、HOTが必要であると判断します。
その後クリニックから帝人に連絡し、患者さんの情報と処方内容を伝えます。帝人の担当者から患者さんへ連絡が入り、ご自宅への訪問日を調整します。
レンタル開始までの基本的な流れ
段階 | 実施内容 | 担当 |
---|---|---|
診察・処方 | 医師がHOTの必要性を判断し、酸素流量などを指示 | クリニック(医師) |
業者へ連絡 | クリニックから帝人へ患者情報を連絡 | クリニック(スタッフ) |
訪問・契約 | 帝人担当者が自宅を訪問し、契約と機器説明を行う | 帝人・患者さん |
契約時に準備するもの
帝人の担当者がご自宅を訪問する際に契約手続きを行います。その際いくつかの書類が必要になりますので、事前に準備しておくと話がスムーズに進みます。
- 健康保険証
- 各種医療証(お持ちの方)
- 印鑑
これらの書類を基に医療保険の適用や自己負担額の確認などを行います。不明な点があれば、その場で帝人の担当者に遠慮なく質問してください。
費用と医療保険の適用について
在宅酸素療法は公的医療保険が適用される治療法です。レンタル費用や酸素の費用は保険の種類や所得に応じた自己負担割合(1割〜3割)で利用できます。
高額療養費制度の対象にもなるため、月々の負担額には上限が設けられています。詳しい費用についてはクリニックのスタッフまたは帝人の担当者にご確認ください。
【帝人】酸素濃縮器の使い方と日常管理
酸素濃縮器は、ご自宅での療養生活の中心となる大切な医療機器です。正しい使い方をマスターし、簡単な日常管理を行うことで、常に安定した状態で酸素を吸入できます。
基本的な操作方法
機器の設置と最初の操作説明は帝人の担当者が丁寧に行います。
基本的な操作は非常にシンプルです。主電源を入れ、医師に指示された流量にダイヤルを合わせ、カニューラ(鼻から酸素を吸入するチューブ)を装着すれば酸素吸入が始まります。
酸素濃縮器の基本操作
手順 | 操作内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 電源を入れる | 本体の電源スイッチを押す | 緑色のランプが点灯することを確認 |
2. 流量を合わせる | 医師の指示通りの流量にダイヤルを回す | 流量計のボールの中心で目盛りを読む |
3. 酸素を吸入する | カニューラを鼻に装着する | チューブがねじれていないか確認 |
日常のセルフチェックと清掃
安全かつ衛生的に使用するために、簡単なセルフチェックと清掃を日常的に行いましょう。特に加湿器の水は毎日交換することが重要です。
また、本体のフィルターに溜まったホコリを定期的に掃除機で吸い取ることで機器の性能を維持できます。
トラブル発生時の確認事項
万が一、アラームが鳴ったり酸素が出ていないように感じたりした場合は、慌てずにいくつかの点を確認します。
電源プラグが抜けていないか、チューブが折れ曲がっていないかなどをまずチェックします。
それでも解決しない場合は、すぐに帝人の緊急連絡先に電話してください。24時間対応のサポート体制が整っています。
【帝人】携帯用酸素ボンベの使い方
携帯用酸素ボンベは通院や買い物、散歩など外出時の活動範囲を広げてくれる心強い味方です。正しい使い方を覚え、安全に持ち運びましょう。
「帝人 酸素 ボンベ 使い方」をしっかりマスターすることが、安心して外出するための第一歩です。
ボンベの開栓と流量設定
携帯用ボンベの使い方も基本的には難しくありません。
まず、ボンベ上部にある流量調整器のバルブを開けます。次に医師から指示された流量にダイヤルを合わせます。カニューラを接続し、吸入を開始します。
使用後は必ずバルブを閉めることを忘れないでください。
安全な持ち運びと保管方法
携帯用ボンベは専用のカートやキャリーバッグに入れて持ち運びます。持ち運びの際は衝撃を与えたり、倒したりしないよう注意が必要です。
保管する際は火気や直射日光を避け、風通しの良い場所に置きます。特に夏場の車内に放置することは絶対に避けてください。
携帯用ボンベの取り扱い注意点
項目 | 具体的な注意点 |
---|---|
火気厳禁 | ストーブ、ガスコンロ、タバコの火などから2m以上離す |
衝撃注意 | 倒したり、ぶつけたりしないように丁寧に扱う |
高温注意 | 直射日光の当たる場所や、夏場の車内に放置しない |
ボンベの交換と返却
携帯用酸素ボンベの中身がなくなったら、新しいボンベと交換します。
帝人では定期的に担当者がご自宅を訪問し、使用済みの空ボンベを回収して新しいボンベを届けてくれます。訪問日やボンベの在庫については担当者と相談して調整します。
携帯用酸素ボンベの残り時間 計算方法
外出時に最も気になるのが、「このボンベはあとどのくらいもつのだろう?」ということでしょう。
「帝人 酸素 ボンベ 時間」の計算方法を覚えておけば、外出計画が立てやすくなり、安心して行動できます。計算は少し複雑に感じますが、一度覚えれば簡単です。
計算に必要な3つの数値
ボンベの残り時間を計算するには、3つの数値が必要です。それは「圧力計の指示値」「ボンベの内容積」、そして「医師に指示された酸素流量」です。
- 圧力計の指示値 (MPa)
- ボンベの内容積 (L)
- 1分間の酸素流量 (L/分)
残り時間の計算式
残り時間は以下の式で計算できます。
帝人の担当者から計算方法の説明を受け、早見表などももらえますが、自分でも計算できるとより安心です。
残り時間 (分) = (圧力計の指示値 × ボンベの内容積) ÷ 流量
例えば、圧力計が「10MPa」を指しており、内容積が「2.8L」のボンベを、流量「2L/分」で使用する場合、(10 × 2.8) ÷ 2 = 140分、つまり約2時間20分使用できると計算できます。
流量ごとの使用可能時間(目安)
毎回計算するのが大変な場合は流量ごとの大まかな使用時間を把握しておくと便利です。
以下は一般的な携帯用ボンベ(内容積2.8L、圧力14.7MPaで充填時)の目安です。
携帯ボンベの使用時間目安
酸素流量 (L/分) | 計算式 (分) | 使用可能時間 (目安) |
---|---|---|
1 | (14.7 × 2.8) ÷ 1 | 約411分 (約6時間50分) |
2 | (14.7 × 2.8) ÷ 2 | 約205分 (約3時間25分) |
3 | (14.7 × 2.8) ÷ 3 | 約137分 (約2時間15分) |
このことにより、外出の時間に合わせて予備のボンベを持っていくかどうかを判断できます。
在宅酸素療法の安全な利用のために
在宅酸素療法を安全に続けるためには機器の正しい使い方を理解するだけでなく、日常生活での注意点を守ることが非常に重要です。特に火気の取り扱いには細心の注意を払いましょう。
最も重要な「火気厳禁」
酸素はそれ自体が燃えるわけではありませんが、物が燃えるのを助ける性質(支燃性)を持っています。そのため酸素吸入中は周囲での火気の使用が厳禁です。
ガスコンロやストーブ、ロウソク、タバコなどは酸素吸入中の人から最低でも2メートル以上離す必要があります。
火気に関する具体的な注意点
場面 | 注意すべき火気 |
---|---|
調理中 | ガスコンロ、オーブントースター |
暖房 | 石油ストーブ、ガスファンヒーター |
その他 | タバコ、ライター、ロウソク、仏壇の線香 |
チューブやコード類の管理
酸素濃縮器から伸びるチューブ(カニューラ)や電源コードに足を引っかけて転倒する事故を防ぐため、部屋の中での配線には工夫が必要です。
壁際に沿わせたり、家具の裏を通したりして、生活動線を妨げないようにしましょう。
定期メンテナンスの重要性
帝人の担当者が定期的にご自宅を訪問し、機器が正常に作動しているか、安全に使用できているかなどを点検します。
この定期メンテナンスは機器の性能を維持し、トラブルを未然に防ぐために大切な機会です。機器について不安なことや疑問があれば、この時に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
帝人の在宅酸素療法に関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。
- Q旅行や外出はできますか?
- A
はい、可能です。
携帯用酸素ボンベを使用することで日帰りの外出はもちろん、宿泊を伴う旅行も楽しめます。
旅行の際は必要なボンベの本数を事前に計算し、帝人の担当者に連絡して手配してもらう必要があります。
宿泊先にボンベを直接配送してもらうサービスもありますので、早めに相談しましょう。
- Q帝人の酸素ボンベのレンタル料金はいくらですか?
- A
在宅酸素療法の費用は機器のレンタル料、管理料、指導料などがすべて含まれた包括的な料金体系となっており、医療保険が適用されます。そのため、「ボンベ1本いくら」という形での請求はありません。
月々の自己負担額は保険の種類や所得によって定められた上限額の範囲内となります。詳しくは当クリニックの窓口へお問い合わせください。
費用に関するポイント
項目 内容 保険適用 公的医療保険が適用される 自己負担 所得に応じ1〜3割負担。高額療養費制度の対象。 請求 月々の定額制。ボンベ本数による変動はない。
- Q機器の調子が悪い時はどこに連絡すれば良いですか?
- A
機器の設置時に帝人の担当者から緊急連絡先が記載されたシールやカードが渡されます。まずはそちらに連絡してください。
24時間365日対応のコールセンターがあり、専門のスタッフが対応します。状況に応じて、ご自宅への訪問などのサポートを行います。
- Q他のメーカーから帝人に変更することはできますか?
- A
はい、可能です。
現在利用しているメーカーから帝人のサービスに変更したい場合は、まずは当クリニックの主治医にご相談ください。医師が必要と判断すれば変更の手続きを進めることができます。
患者さんの療養環境や希望に合わせて、より良い選択肢を一緒に考えます。
以上
参考にした論文
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