「最近、声がかすれる」「しゃがれたような声が続く」といった症状に悩んでいませんか。のどのかすれやしゃがれ声は、日常的な声の使いすぎから、何らかの病気が隠れているサインである可能性もあります。

この記事では、のどのかすれ・しゃがれ声が起こる仕組みや考えられる原因、ご自身でできる対処法、医療機関を受診する目安などを詳しく解説します。

ご自身の症状と照らし合わせ、適切な対応を考えるための一助としてください。

のどのかすれ・しゃがれ声とは?基本的な知識

声が普段と違うと感じる時、私たちののどの中では何が起きているのでしょうか。まず、声がかすれる、しゃがれるという状態について理解を深めましょう。

声がかすれる・しゃがれるとはどのような状態か

声がかすれる、またはしゃがれるという状態は、医学的には「嗄声(させい)」と呼びます。具体的には、以下のような声の変化を指します。

  • 声がガラガラする
  • 息が漏れるような声になる(気息性嗄声)
  • 弱々しい声になる(無力性嗄声)
  • 努力しないと声が出にくい(努力性嗄声)

これらの声の変化は、声帯の振動が正常に行われていない場合に起こります。声の質が変わるだけでなく、声を出すこと自体に疲れを感じたり、のどに違和感や痛みを伴ったりすることもあります。

声帯の構造と声が出る仕組み

声を出すために重要な役割を担っているのが「声帯」です。声帯は、のど仏の奥にある喉頭(こうとう)という気管の入り口部分に左右一対で存在する、ヒダ状の粘膜組織です。

私たちが声を出すとき、肺から送られた空気がこの声帯の間を通り抜けます。その際、声帯が細かく振動することで音の元となる「喉頭原音(こうとうげんおん)」が作られます。

この喉頭原音が、のど、口、鼻などの空間(声道)で共鳴し、舌や唇の動きによって言葉として形作られます。

声帯が正常に機能するためには、適度な潤いと柔軟性が必要です。声帯に炎症が起きたり、ポリープや結節ができたりすると、声帯の振動が乱れ、声がかすれる原因となります。

声帯の主な構成要素

構成要素役割特徴
粘膜上皮声帯の表面を覆う潤滑と保護の役割
粘膜固有層声帯の振動に関わるゼリー状の柔らかい組織
声帯筋声帯の緊張や位置を調節声の高さや強さを変える

のどのかすれ・しゃがれ声で考えられること

のどのかすれやしゃがれ声が起こる背景には、様々な要因が考えられます。一時的な声の酷使によるものから、治療を必要とする病気まで多岐にわたります。

主なものとしては、声帯の炎症、声帯ポリープや声帯結節、加齢による変化、稀には喉頭がんなどの悪性腫瘍の可能性も考慮に入れる必要があります。

また、胃食道逆流症が原因でのどに炎症が及ぶこともあります。

のどのかすれ・しゃがれ声の主な原因

声がかすれる、しゃがれるといった症状は、なぜ起こるのでしょうか。ここでは、代表的な原因をいくつか紹介します。

声の使いすぎや間違った発声方法

最も一般的な原因の一つが、声の使いすぎ(酷使)です。長時間話し続けたり、大声を出したり、歌いすぎたりすると、声帯に大きな負担がかかります。

声帯が過度に振動し、こすれ合うことで炎症を起こし、声がかすれてしまいます。教師、保育士、歌手、アナウンサーなど、日常的に声を多く使う職業の方によく見られます。

また、無理な発声方法も声帯を傷める原因となります。

例えば、高すぎる声や低すぎる声を無理に出そうとしたり、腹式呼吸ではなく喉だけで声を出そうとしたりする発声は、声帯に余計な力を加え、炎症やポリープ、結節などを引き起こしやすくします。

風邪や感染症による炎症

風邪(普通感冒)やインフルエンザ、咽頭炎、喉頭炎などの感染症にかかると、のどの粘膜に炎症が起こります。この炎症が声帯にまで及ぶと、声帯が腫れたり、動きが悪くなったりして声がかすれます。

これを急性声帯炎と呼びます。通常、原因となる感染症が治るとともに声がれも改善しますが、炎症が長引くと慢性化することもあります。

声がれを伴いやすい感染症

感染症の種類主な症状声がれ以外の特徴
普通感冒軽度の声がれ、のどのイガイガ感鼻水、くしゃみ、微熱など
急性喉頭炎強い声がれ、犬の遠吠えのような咳(クループ)発熱、のどの痛み、呼吸困難(特に小児)
インフルエンザ声がれ、のどの痛み高熱、関節痛、筋肉痛など全身症状

喫煙や飲酒などの生活習慣

喫煙は、のどのかすれ・しゃがれ声の大きな原因の一つです。タバコの煙に含まれる有害物質が、声帯を含む気道粘膜を慢性的に刺激し、炎症を引き起こします。

長期間の喫煙は、声帯が厚く腫れぼったくなる「ポリープ様声帯」や、喉頭がんのリスクを高めます。

アルコールの過度な摂取も、のどに悪影響を与えます。アルコール自体が粘膜を刺激するほか、利尿作用によって体内の水分が失われ、のどが乾燥しやすくなります。

また、飲酒時に大声を出す機会が増えることも、声帯への負担を大きくする要因です。

加齢による声帯の変化

年齢を重ねるとともに、体の様々な部分に変化が現れるように、声帯も変化します。これを「加齢性音声障害」または「声帯萎縮」と呼びます。

具体的には、声帯の筋肉が痩せてきたり、粘膜の潤いや弾力性が失われたりします。

これにより、声帯がうまく閉じなくなり、息が漏れるようなかすれた声(気息性嗄声)になったり、声が弱々しくなったり、高い声が出しにくくなったりします。

加齢による声帯の主な変化

  • 声帯筋の萎縮
  • 粘膜固有層の弾力性低下
  • 声門閉鎖不全(声帯の隙間)

ストレスや心因性の要因

強いストレスや精神的な緊張、不安などが原因で、声が出にくくなったり、声がかすれたりすることがあります。

これを「心因性失声症」や「機能性発声障害」と呼びます。声帯や喉頭自体には器質的な異常が見られないにもかかわらず、声のトラブルが生じます。

急に声が出なくなる、特定の状況下でのみ声が出にくい、といった特徴が見られることがあります。心理的な問題が背景にあるため、精神的なケアやカウンセリングが有効な場合があります。

のどのかすれ・しゃがれ声と関連する病気

長引くのどのかすれやしゃがれ声は、単なる声の使いすぎや一時的な炎症だけでなく、何らかの病気が原因となっている可能性も考えられます。ここでは、代表的な病気を紹介します。

急性声帯炎・慢性声帯炎

急性声帯炎は、主に風邪などのウイルス感染や細菌感染、声の急な使いすぎによって声帯が炎症を起こす病気です。声がれ、のどの痛み、咳などの症状が現れます。

通常は数日から2週間程度で改善しますが、無理に声を出し続けると炎症が長引き、慢性声帯炎に移行することがあります。

慢性声帯炎は、急性声帯炎が治りきらなかったり、喫煙や飲酒、汚れた空気の吸引、声の酷使などが長期間続いたりすることで起こります。声がれが持続し、のどの不快感や痰が絡むといった症状が見られます。

声帯粘膜が厚くなったり、硬くなったりする変化が生じます。

声帯ポリープ・声帯結節

声帯ポリープは、声帯の片側にできる、柔らかい腫瘤(こぶ)のことです。

声の使いすぎや、咳などで声帯に急激な負担がかかった際に、声帯粘膜の血管が破れて内出血し、それが吸収されずにポリープとなることが多いと考えられています。

声がれ、特に息が漏れるような声になるのが特徴です。

声帯結節は、声帯の両側にできる、硬いペンだこのような隆起です。慢性的な声の使いすぎや、無理な発声が原因で、声帯の同じ場所が繰り返しこすれ合うことで生じます。

教師や歌手など、声を職業とする人に多く見られるため「歌手結節」とも呼ばれます。声がれ、特に声を出すときに力が必要で、高い声が出しにくいといった症状が現れます。

声帯ポリープと声帯結節の比較

項目声帯ポリープ声帯結節
できる場所主に声帯の片側主に声帯の両側対称性
形状柔らかい腫瘤、水ぶくれ様硬い隆起、ペンだこ様
主な原因急激な声の酷使、咳慢性的な声の酷使、無理な発声

喉頭がんなどの悪性腫瘍

喉頭がんは、喉頭に発生する悪性腫瘍です。初期症状として最も多いのが、原因不明の声がれです。特に喫煙者や多量飲酒者に多く見られます。声がれが2週間以上続く場合は注意が必要です。

進行すると、のどの痛みや違和感、飲み込みにくさ、血痰、呼吸困難などの症状が現れることがあります。早期発見・早期治療が非常に重要です。

声がれが長引く場合は、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診し、専門医の診察を受けることを強く推奨します。

逆流性食道炎(胃食道逆流症)

逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。

胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)が主な症状ですが、逆流した胃酸が喉頭まで達すると、声帯やその周辺に炎症を引き起こし、声がれや咳、のどの違和感(咽喉頭酸逆流症)の原因となることがあります。

特に、朝起きた時に声がかすれていたり、のどのイガイガ感があったりする場合は、この病気の可能性も考えられます。

逆流性食道炎による声がれのサイン

症状特徴
朝方の声がれ就寝中に胃酸が逆流しやすいため
慢性的な咳特に食後や横になった時に出やすい
のどの違和感・異物感何かが詰まっているような感じ

その他(反回神経麻痺など)

反回神経は、声帯の動きをコントロールする神経です。この神経が何らかの原因で麻痺すると(反回神経麻痺)、声帯の動きが悪くなり、声がかすれたり、むせやすくなったりします。

原因としては、甲状腺がんや食道がん、肺がんなどの腫瘍による圧迫や浸潤、大動脈瘤、頸部の手術(甲状腺手術など)の影響、ウイルス感染などが考えられます。原因不明の場合もあります。

その他にも、アレルギー、薬剤の副作用、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、神経筋疾患などが声がれの原因となることがあります。

家庭でできるのどのかすれ・しゃがれ声の対処法とセルフケア

声の調子が悪いと感じたとき、医療機関を受診する前に家庭で試せる対処法や、日頃から心がけたいセルフケアがあります。これらは症状の悪化を防ぎ、回復を助けるために重要です。

声の安静を保つ

声がかすれているときは、声帯が炎症を起こしていたり、傷ついていたりするサインです。このような状態で無理に声を出し続けると、症状が悪化したり、治りが遅くなったりする可能性があります。

最も大切な対処法は、できる限り声を出さずに声帯を休ませること(沈黙療法)です。

仕事などでどうしても話す必要がある場合は、以下の点に注意しましょう。

  • 大きな声を出さない
  • 長時間話し続けない(こまめに休憩を挟む)
  • ささやき声も避ける(かえって声帯に負担をかけることがあります)
  • 筆談やジェスチャーを活用する

のどの保湿と加湿

声帯の粘膜は乾燥に弱く、乾燥すると振動しにくくなり、炎症も起こしやすくなります。のどを潤すことは、声がれの予防と改善に効果的です。

のどを潤す具体的な方法

方法ポイント注意点
こまめな水分補給水や白湯、ノンカフェインの温かい飲み物冷たすぎる飲み物、刺激物は避ける
部屋の加湿加湿器の使用(湿度50~60%が目安)加湿器の清掃をこまめに行う
マスクの着用自分の呼気で喉の湿度を保つ清潔なマスクを使用する
うがいのどの粘膜を潤し、細菌やウイルスを除去刺激の少ないうがい薬や食塩水

蒸気を吸入するのも効果的です。洗面器にお湯を張り、顔を近づけて蒸気を吸い込んだり、お風呂の湯気を吸い込んだりするのも良いでしょう。ただし、火傷には十分注意してください。

バランスの取れた食事と十分な睡眠

体の免疫力を高め、粘膜の健康を保つためには、バランスの取れた食事が重要です。特に、ビタミンA、C、Eは粘膜の保護や修復を助ける働きがあります。緑黄色野菜や果物などを積極的に摂取しましょう。

香辛料の多い刺激物や、熱すぎるもの、冷たすぎるものは、のどへの刺激となるため控えるのが賢明です。

十分な睡眠も、体の回復力を高めるために必要です。睡眠不足は免疫力の低下につながり、炎症が治りにくくなることがあります。規則正しい生活を心がけ、質の高い睡眠を確保しましょう。

禁煙と節酒

喫煙は声帯にとって百害あって一利なしです。声がれを改善したい、あるいは予防したいのであれば、禁煙することが最も効果的な方法の一つです。

タバコの煙は声帯を直接刺激し、慢性的な炎症やポリープ様声帯、さらには喉頭がんのリスクを高めます。禁煙が難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

アルコールも、のどの粘膜を刺激し、脱水を引き起こすため、摂取は控えめにすることが望ましいです。特に声がかすれているときは、飲酒を避けるようにしましょう。

医療機関を受診する目安と検査

のどのかすれ・しゃがれ声は、多くの場合一時的なものですが、中には注意が必要なケースもあります。

どのような場合に医療機関を受診すべきか、また、医療機関ではどのような検査が行われるのかを知っておきましょう。

こんな症状が出たら早めに受診を

以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずに早めに耳鼻咽喉科を受診することを推奨します。

  • 声がれが2週間以上続く
  • 声がれが徐々に悪化している
  • 声が全く出なくなった
  • のどの痛みや飲み込みにくさが強い
  • 呼吸が苦しい、息切れがする
  • 血痰が出る
  • 首にしこりがある
  • 原因に心当たりがないのに声がれが続く

特に、喫煙歴のある方で原因不明の声がれが続く場合は、喉頭がんの可能性も考慮し、必ず専門医の診察を受けてください。

受診を検討する症状のチェックリスト

症状期間・程度特に注意が必要な方
声がれ2週間以上継続、悪化傾向喫煙者、高齢者
嚥下困難・痛み食事や水分摂取が困難、強い痛み全般
呼吸困難安静時でも息苦しい全般(特に小児)

医療機関で行われる主な検査

耳鼻咽喉科では、のどのかすれ・しゃがれ声の原因を調べるために、いくつかの検査を行います。代表的な検査は以下の通りです。

問診・視診・触診
まず、症状がいつからどのように始まったか、声の使い方の状況、喫煙歴や飲酒歴、既往歴などを詳しく聞きます。その後、口の中やのどの奥を視診し、首のリンパ節の腫れなどを触診で確認します。

喉頭内視鏡検査(喉頭ファイバースコープ検査)
細いファイバースコープ(カメラ)を鼻または口から挿入し、喉頭や声帯の状態を直接観察する検査です。声帯の形、色、動き、ポリープや結節、腫瘍の有無などを詳細に確認できます。

検査中の不快感を和らげるために、局所麻酔を使用することがあります。この検査は、声がれの診断において非常に重要な情報を得ることができます。

ストロボスコープ検査
声帯の振動をスローモーションで観察できる特殊な光源を用いた検査です。通常の喉頭内視鏡検査では分かりにくい、声帯粘膜の微細な振動状態や病変の性状を詳しく評価できます。

声帯ポリープ、声帯結節、声帯麻痺などの診断に有用です。

その他、必要に応じて、声の音響分析、CTやMRIなどの画像検査、アレルギー検査、血液検査、生検(組織の一部を採取して調べる検査)などを行うことがあります。

専門医(耳鼻咽喉科)の受診も検討

のどのかすれ・しゃがれ声が続く場合や、原因がはっきりしない場合は、まず耳鼻咽喉科を受診することが基本です。耳鼻咽喉科医は、のどや声に関する専門家であり、適切な診断と治療を行います。

特に、音声外来や喉頭疾患を専門とする医師がいる医療機関では、より専門的な検査や治療を受けることが可能です。

かかりつけの内科医がいる場合は、まず相談し、必要に応じて耳鼻咽喉科を紹介してもらうのも良いでしょう。

のどのかすれ・しゃがれ声の治療法

のどのかすれ・しゃがれ声の治療は、その原因によって異なります。原因疾患を特定し、それに応じた適切な治療を行うことが重要です。

保存的治療(薬物療法、音声治療)

多くの声がれは、保存的治療で改善が期待できます。

薬物療法
炎症を抑えるために消炎鎮痛薬やステロイド薬(吸入または内服)、感染が原因の場合は抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します。胃酸逆流が原因の場合は、胃酸分泌抑制薬(PPIやH2ブロッカーなど)を用います。

痰の切れを良くする去痰薬や、声帯の潤いを保つための保湿薬が処方されることもあります。

主な薬物療法の種類と目的

薬剤の種類主な目的対象となる状態・疾患例
消炎鎮痛薬炎症や痛みを和らげる急性声帯炎、喉頭炎
ステロイド薬強い炎症を抑える重度の声帯炎、声帯浮腫
胃酸分泌抑制薬胃酸の逆流を抑える逆流性食道炎、咽喉頭酸逆流症

音声治療(音声リハビリテーション)
声帯に負担の少ない正しい発声方法を習得するための訓練です。言語聴覚士などの専門家の指導のもと、呼吸法、発声法、共鳴法などを学び、実践します。

声帯結節や声帯ポリープ(小さいもの)、機能性発声障害、加齢性音声障害などに有効です。声の衛生指導(日常生活での注意点など)も併せて行います。

手術的治療が必要な場合

保存的治療で改善が見られない声帯ポリープや声帯結節、喉頭がんなどの悪性腫瘍、一部の声帯麻痺などに対しては、手術的治療を検討します。

喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)
全身麻酔下で、顕微鏡を使って声帯の病変部(ポリープ、結節、初期のがんなど)を精密に切除する手術です。入院が必要となることが一般的です。術後は、声の安静期間が必要となります。

喉頭形成術・声帯内注入術
声帯麻痺や声帯萎縮により声門閉鎖不全がある場合に、声の改善を目的として行われる手術です。

声帯を内側に移動させたり(甲状軟骨形成術)、声帯内にコラーゲンや自家脂肪などの物質を注入して声帯を膨らませたりします(声帯内注入術)。

喉頭がんの場合は、病期(進行度)や患者さんの状態に応じて、放射線治療、化学療法、手術療法(喉頭部分切除、喉頭全摘出など)を組み合わせて治療を行います。

原因疾患に応じた治療

声がれの原因が特定できれば、その根本的な原因に対する治療が優先されます。

例えば、逆流性食道炎が原因であれば、生活習慣の改善(食事内容の見直し、禁煙、減量など)とともに、胃酸を抑える薬物療法を行います。

甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が原因であれば、ホルモン補充療法などを行います。

アレルギーが関与している場合は、抗アレルギー薬の使用やアレルゲンの回避が有効です。心因性の場合は、カウンセリングや心理療法、場合によっては抗不安薬などが用いられます。

のどのかすれ・しゃがれ声を予防するために

のどのかすれ・しゃがれ声は、日頃の心がけである程度予防することができます。声帯に優しい生活習慣を送り、のどを健やかに保ちましょう。

正しい発声方法を意識する

無理な発声は声帯に大きな負担をかけます。特に、日常的に声を多く使う方は、正しい発声方法を身につけることが重要です。

  • 腹式呼吸を意識する(お腹から声を出すイメージ)
  • 喉に力を入れすぎない
  • 適切な声の高さ、大きさで話す
  • 早口にならないように、ゆっくりと話す

発声方法に不安がある場合は、ボイストレーニングを受けたり、言語聴覚士に相談したりするのも良いでしょう。

のどに負担をかけない生活習慣

日常生活の中で、のどに優しい習慣を取り入れましょう。

のどを守る生活習慣のポイント

習慣具体的な行動期待される効果
十分な水分補給こまめに水や白湯を飲む声帯粘膜の潤いを保つ
適切な湿度管理加湿器の使用、マスク着用のどの乾燥を防ぐ
禁煙タバコをやめる、受動喫煙を避ける声帯への刺激を減らす
節酒アルコールの摂取量を控えるのどの粘膜への刺激と脱水を防ぐ
十分な睡眠規則正しい生活、質の高い睡眠免疫力向上、疲労回復

また、大声や長時間の会話を避け、必要な場合はマイクを使用するなど、声帯を酷使しない工夫も大切です。風邪やインフルエンザが流行する時期は、手洗いやうがいを徹底し、感染予防に努めましょう。

定期的な健康チェック

定期的な健康診断や人間ドックを受けることは、全身の健康状態を把握し、病気の早期発見につながります。

特に、喫煙歴のある方や、声がれが気になる方は、耳鼻咽喉科での定期的なチェックを受けることを検討しましょう。喉頭がんなどの病気は、早期に発見できれば治療の選択肢も広がり、治癒率も高まります。

自分の声の変化に気づいたら、放置せずに早めに対処することが、のどの健康を守る上で重要です。

のどのかすれ・しゃがれ声に関するよくある質問

ここでは、のどのかすれ・しゃがれ声に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q
声がれは自然に治りますか?
A

原因によって異なります。風邪や一時的な声の使いすぎによる声がれは、安静にしていれば数日から1週間程度で自然に治ることが多いです。

しかし、声帯ポリープや声帯結節、喉頭がん、反回神経麻痺などが原因の場合は、自然治癒が難しく、専門的な治療が必要になることがあります。

2週間以上声がれが続く場合や、他の症状(痛み、呼吸困難など)がある場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。

Q
のど飴は効果がありますか?
A

のど飴には、のどの粘膜を潤したり、炎症を和らげたりする成分が含まれているものがあり、一時的なのどの不快感や軽い炎症を和らげる効果は期待できます。

しかし、のど飴だけで声がれの原因そのものを治療することはできません。あくまで対症療法の一つと考え、声がれが長引く場合は医療機関を受診することが大切です。

糖分の多いのど飴の舐めすぎにも注意しましょう。

Q
子供の声がれで気をつけることは?
A

子供の声がれは、風邪に伴う急性喉頭炎(クループ症候群)や、大声を出しすぎることによる声帯結節(小児結節)などが原因として考えられます。特に、犬の遠吠えのような咳(ケンケン咳)や呼吸困難を伴う場合は、夜間や休日でも救急受診が必要です。

普段から大きな声で叫んだり、無理な発声をしたりしないように注意を促すことも大切です。声がれが長引く場合は、小児科または耳鼻咽喉科に相談しましょう。

子供の声がれで注意すべきサイン

サイン考えられる状態対応
犬の遠吠えのような咳、呼吸困難急性喉頭炎(クループ)夜間・休日でも救急受診
長引く声がれ(2週間以上)声帯結節、その他小児科または耳鼻咽喉科受診
発熱、元気がない感染症小児科受診

以上

参考にした論文