「最近、異常に喉が渇く」「トイレに行く回数が多くて、夜も眠れない」といったお悩みはありませんか。多飲・多尿は、単なる水分の摂りすぎだけでなく、体に潜む何らかのサインかもしれません。

この記事では、医療機関でどのような検査や治療が行われるのかを解説するとともに、日常生活の中でご自身で取り組める具体的な対処法やセルフケアについて詳しく紹介します。

症状の裏にある原因を正しく理解し、ご自身の体と向き合うための一助となれば幸いです。不安を抱え込まず、正しい知識を身につけていきましょう。

多飲・多尿と向き合うためのセルフケア

多飲・多尿の症状に気づいたら、まずはご自身の体の状態を客観的に把握することが大切です。日々の生活の中で少し意識を変えるだけで、症状の改善につながることもあります。

ここでは、すぐに始められるセルフケアの方法を紹介します。

まずは自分の状態を記録することから

どのくらいの水分を摂り、どのくらいの頻度で、どのくらいの量の尿が出ているのか。これを正確に把握することは、医師が診断を下す上でも非常に重要な情報源となります。

「なんとなく多い気がする」という感覚を、具体的な数値で記録してみましょう。

飲水量と排尿記録のつけ方

「排尿日誌」をつけることをお勧めします。難しく考える必要はありません。

ノートやスマートフォンのメモ機能などを使い、24時間から48時間、飲んだ飲み物の種類と量、トイレに行った時間と尿の量を記録します。尿量は、市販の計量カップを使えば簡単に測れます。

排尿日誌の記入例

時間飲んだもの・量排尿量(ml)
7:00 (起床時)水 200ml350ml
9:30コーヒー 150ml200ml
12:30 (昼食時)お茶 250ml300ml
22:00 (就寝前)白湯 100ml150ml

この記録があることで、1日の水分摂取量と排尿量のバランスが明確になり、医療機関を受診した際にも、医師が状態を正確に理解する助けとなります。

ストレスとの上手な付き合い方

精神的なストレスは、喉の渇きを感じやすくさせ(心因性多飲)、結果として多尿につながることがあります。

ストレスを完全になくすことは難しいかもしれませんが、上手に付き合っていく方法を見つけることが重要です。

リラックスできる時間を作る

1日の中で、たとえ短い時間でも心からリラックスできる時間を作りましょう。

趣味に没頭する、好きな音楽を聴く、ゆっくりと湯船に浸かるなど、ご自身に合った方法で心と体を休ませてあげてください。

軽い運動を取り入れる

ウォーキングやヨガ、ストレッチなどの軽い運動は、気分転換になりストレス軽減に役立ちます。体を動かすことで血行が良くなり、心身のバランスを整える効果も期待できます。

睡眠の質を高める工夫

夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)と、睡眠不足になりがちです。睡眠不足は日中の活動に影響を与えるだけでなく、ストレスの原因にもなります。

質の良い睡眠を確保するための工夫を取り入れましょう。

就寝前の環境づくり

寝室を快適な環境に整えることが大切です。寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見るのは避け、部屋を暗くして静かな環境を作りましょう。

アロマを焚いたり、リラックス効果のある音楽を聴いたりするのも良い方法です。

睡眠の質を高めるための工夫

項目具体的な工夫期待できること
光の調整遮光カーテンを使う、就寝1時間前から照明を暗くする睡眠を促すホルモンの分泌を助ける
音の管理耳栓を使う、静かな音楽を流す物音で目が覚めるのを防ぐ
温度・湿度エアコンや加湿器で快適な室温・湿度を保つ寝苦しさや乾燥による不快感を減らす

毎日の水分補給、見直してみませんか?

「水分はたくさん摂った方が良い」と一般的に言われますが、多飲・多尿の症状がある場合は、その摂り方を見直す必要があります。量だけでなく、何を、いつ飲むかという点も重要です。

ここでは、上手な水分補給のポイントを解説します。

水分は「いつ」「何を」「どれくらい」飲むか

やみくもに水分を摂るのではなく、計画的に補給することが大切です。ご自身の体の声を聞きながら、適切な水分補給を心がけましょう。

一度にがぶ飲みしない

一度に大量の水分を摂取すると、体は吸収しきれずに尿として排出しようとします。コップ1杯程度の量を、1日のうちにこまめに分けて飲むようにしましょう。

これにより、体に負担をかけずに水分を補給できます。

利尿作用のある飲み物を知り、摂取を調整する

飲み物の中には、尿の量を増やす「利尿作用」を持つものがあります。特にカフェインやアルコールは利尿作用が強いため、摂取する量や時間帯に注意が必要です。

利尿作用が強い飲み物と弱い飲み物

種類利尿作用が強いもの利尿作用が弱いもの
カフェイン飲料コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク麦茶、ルイボスティー、ハーブティー
アルコール飲料ビール、ワイン、日本酒など全般
その他一部の清涼飲料水水、白湯

もちろん、これらの飲み物を完全に断つ必要はありません。しかし、特に就寝前や長時間の外出前などは、摂取を控えるといった工夫が有効です。

代わりに、水や麦茶など、利尿作用の弱い飲み物を選ぶと良いでしょう。

のどの渇きを感じる前に飲む習慣

「喉が渇いた」と感じたときには、すでに体は水分不足の状態にあります。そうなる前に、意識的に水分を補給する習慣をつけることが理想です。

例えば、時間を決めて飲む、活動の合間に飲むなど、自分なりのルールを作ってみましょう。

就寝前の水分摂取のポイント

夜間頻尿で悩んでいる方にとって、就寝前の水分摂取は特に注意したい点です。眠っている間にトイレに行きたくならないよう、少し工夫をしましょう。

就寝2〜3時間前までに済ませる

就寝直前に水分を摂ると、夜中に尿意で目覚める原因になります。夕食後から就寝までの間に水分を摂る場合は、できるだけ就寝の2〜3時間前までに済ませるように心がけましょう。

もし喉が渇く場合は、口を潤す程度に留めるのが賢明です。

食生活から始める多飲・多尿対策

日々の食事内容も、多飲・多尿の症状に影響を与えます。特に塩分や糖分の摂りすぎは、喉の渇きを誘発し、水分摂取量の増加につながります。

ここでは、食生活で気をつけたいポイントについて詳しく解説します。

塩分・糖分の摂取量を見直す

塩辛いものや甘いものを食べると、喉が渇きます。これは、体内の塩分や糖分の濃度を薄めようとして、体が水分を欲するためです。

普段の食事で、塩分・糖分を摂りすぎていないかチェックしてみましょう。

塩分の多い食品と減塩の工夫

加工食品や外食には、知らず知らずのうちに多くの塩分が含まれていることがあります。調味料の使い方を工夫したり、食品の栄養成分表示を確認したりする習慣をつけましょう。

塩分を多く含む食品の例

食品カテゴリ具体的な食品例減塩のポイント
加工肉製品ハム、ソーセージ、ベーコン使用量を減らす、無塩せきの製品を選ぶ
練り物・魚介加工品ちくわ、かまぼこ、干物食べる頻度や量を調整する
漬物・佃煮梅干し、漬物全般減塩タイプを選ぶ、食べ過ぎない

香辛料や香味野菜(ショウガ、ニンニク、ハーブなど)を上手に使うと、薄味でも満足感を得やすくなります。

また、麺類の汁は全部飲まないようにするだけでも、大幅な減塩につながります。

糖分の多い食品と調整方法

糖分の多いジュースやお菓子は、血糖値を急激に上昇させ、喉の渇きの原因となります。

特に、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトアシドーシス)と呼ばれる状態になると、多飲・多尿がさらに悪化するため注意が必要です。

糖分を多く含む食品の例

種類具体的な例調整のポイント
清涼飲料水ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒー水やお茶を選ぶ、無糖の製品にする
菓子類ケーキ、スナック菓子、菓子パン食べる量と頻度を決める、果物などを選ぶ

カリウムを多く含む食品を意識する

カリウムは、体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出する働きを助けるミネラルです。塩分の摂取が多いと感じる方は、カリウムを多く含む食品を意識的に食事に取り入れると良いでしょう。

カリウムの働きと摂取の目安

カリウムは野菜や果物、いも類、海藻類に豊富に含まれています。

ただし、腎臓の機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため、持病のある方は必ず医師に相談してください。

カリウムを多く含む食品

食品カテゴリ具体的な食品例
野菜ほうれん草、小松菜、アボカド、かぼちゃ
果物バナナ、キウイフルーツ、メロン
いも類・豆類さつまいも、里芋、納豆、大豆

食事のタイミングと量の調整

不規則な食事や一度に大量に食べることは、血糖値の乱れにつながり、喉の渇きを引き起こすことがあります。

できるだけ毎日決まった時間に、腹八分目を心がけて食事をすることが、体のリズムを整える上で大切です。

生活リズムを整えて、からだのバランスを取り戻す

私たちの体は、生活リズムと密接に関係しています。不規則な生活は自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、多飲・多尿の症状を悪化させる一因となることがあります。

規則正しい生活を心がけ、体の内側からバランスを整えていきましょう。

規則正しい生活の重要性

毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝る。当たり前のことのように聞こえますが、これが体内のリズムを整える基本です。

特に、尿量を調節するホルモン(抗利尿ホルモン)は夜間に多く分泌されるため、規則正しい睡眠は夜間頻尿の改善にもつながります。

適度な運動を習慣にする

運動は、血行を促進し、自律神経の働きを整える効果があります。また、下半身の筋力を維持することは、尿意のコントロールにも良い影響を与えます。

激しい運動である必要はありません。継続できる軽めの運動を生活に取り入れましょう。

おすすめの運動と時間帯

夕方から夜にかけて軽い運動を行うと、体温が一時的に上昇し、その後のスムーズな入眠につながります。ただし、就寝直前の激しい運動は体を興奮させてしまうため避けましょう。

  • ウォーキング
  • 軽いジョギング
  • ストレッチやヨガ
  • 骨盤底筋体操

体を冷やさない工夫

体が冷えると、血管が収縮して腎臓への血流が増え、尿が作られやすくなります。また、膀胱が刺激されて尿意を感じやすくなることもあります。

特に下半身を冷やさないように注意しましょう。

入浴や服装で体を温める

シャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる習慣をつけましょう。リラックス効果も得られ、一石二鳥です。

服装は、体を締め付けないゆったりとしたものを選び、靴下や腹巻きなどを活用して保温を心がけてください。

セルフケアを進める上での大切な注意点

これまで紹介してきたセルフケアは、多飲・多尿の症状を和らげるために有効な方法ですが、進める上ではいくつか注意すべき点があります。

自己判断で誤った対処をしてしまうと、かえって健康を損なう危険性もあります。大切なポイントをしっかり理解しておきましょう。

自己判断で薬を中断しない

多飲・多尿の原因となる病気(例えば糖尿病や高血圧など)ですでに治療を受けている場合、自己判断で薬の服用を中止することは絶対にやめてください。

薬を中断することで、元の病気が悪化し、深刻な事態を招く可能性があります。

急激な変化は避ける

「早く治したい」と焦るあまり、急に水分摂取を極端に減らしたり、厳しい食事制限をしたりするのは危険です。

特に夏場や運動時など、汗を多くかく状況で水分摂取を怠ると、脱水症状を引き起こす恐れがあります。セルフケアは、少しずつ、無理なく継続できる範囲で始めることが重要です。

不安な時は専門家に相談を

セルフケアを試みても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合には、ためらわずに医療機関を受診してください。

多飲・多尿の背後には、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。早期発見・早期治療が何よりも大切です。

受診を検討すべき症状の例

症状考えられる背景受診の目安
急激な体重減少糖尿病の可能性できるだけ早く内科や糖尿病内科へ
強い倦怠感、疲れやすさ糖尿病、腎臓疾患、ホルモン異常など症状が続く場合は受診を検討
むくみ、息切れ腎臓や心臓の疾患の可能性早めに内科や循環器内科へ

これらの症状が見られる場合は、単なる水分の摂りすぎではない可能性が高いです。専門家である医師の診断を仰ぎましょう。

よくある質問

Q
水分を減らせば多尿は治りますか?
A

自己判断で極端に水分を制限するのは危険です。多飲・多尿の原因が糖尿病などの場合、水分制限は脱水症状を招き、かえって病状を悪化させる可能性があります。

まずは排尿日誌をつけてご自身の状態を把握し、利尿作用のある飲み物を控えるなど、上手な水分補給を心がけることから始めてください。

根本的な解決には、原因に応じた対応が必要ですので、症状が続く場合は医療機関への相談が重要です。

Q
子供の多飲・多尿で気をつけることは何ですか?
A

子供の場合も、大人と同様に糖尿病や尿崩症などの病気が隠れている可能性があります。

特に、急に飲みたがる量が増えた、おねしょが始まった・増えた、体重が減ってきた、元気がないといった様子が見られる場合は、早めに小児科を受診してください。

遊びに夢中になって水分補給を忘れた反動でがぶ飲みすることもありますが、症状が続く場合は注意深く観察することが大切です。

Q
セルフケアはどのくらい続ければ効果が出ますか?
A

効果が出るまでの期間は、症状の原因や個人の体質、生活習慣によって大きく異なります。数週間から数ヶ月単位で、気長に取り組む姿勢が大切です。

大切なのは、結果を急がず、無理なく続けられることを見つけることです。

2〜4週間程度セルフケアを続けても全く改善が見られない、あるいは症状が悪化するようであれば、他の原因が考えられるため医療機関を受診することをお勧めします。

Q
サプリメントは効果がありますか?
A

頻尿対策を謳ったサプリメントも市販されていますが、その効果は科学的に証明されていないものがほとんどです。

多飲・多尿の原因は様々であり、サプリメントで根本的な原因が解決するわけではありません。

また、持病のある方や薬を服用中の方が自己判断でサプリメントを使用すると、予期せぬ健康被害につながることもあります。

使用を検討する際は、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。

以上

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