「最近、異常に喉が渇いて水分をたくさん摂ってしまう」「トイレに行く回数が多くて、夜中に何度も目が覚める」といったお悩みはありませんか。

これらの症状は「多飲」「多尿」と呼ばれ、何らかの病気が隠れているサインかもしれません。

咳は、単なる風邪の症状というだけではなく、様々な体のサインである可能性があります。

このサイトでは、

  • 多飲・多尿の基本的な知識
  • ご自身でできる症状のチェック方法
  • 考えられる原因
  • 医療機関での検査や治療法
  • 日常生活で気をつけるべき点

まで、網羅的に解説します。

ご自身の症状を正しく理解し、適切な対応を考えるための一助となれば幸いです。

神戸きしだクリニック 院長 岸田 雄治

多飲・多尿の種類と概要

多飲・多尿は、単に水分を多く摂り、尿が多く出る状態を指すだけではありません。その背景には様々な要因が考えられます。

まずは、多飲と多尿がそれぞれどのような状態を指すのか、その定義と関係性を理解することが重要です。

多飲・多尿の定義

医学的には、多飲と多尿には明確な基準が存在します。一般的に、成人の場合、1日の水分摂取量が3リットル以上になると「多飲」、1日の尿量が3リットル以上になると「多尿」と判断します。

健康な成人の1日の平均尿量は約1.5リットルなので、その倍以上の量が出ている状態です。ただし、これはあくまで目安であり、体格や運動量、気候などによって必要な水分量や尿量は変動します。

大切なのは、以前のご自身の状態と比較して、明らかに量が増えているかどうかです。

多飲と多尿の関係性

多飲と多尿は、鶏が先か卵が先かのように、どちらが先に起こるかによって原因の推測がある程度可能です。主に二つのパターンに分けられます。

一つは、何らかの原因で尿が大量に作られてしまう「一次性多尿」です。体は尿として水分が過剰に排出されるため、脱水状態に陥ります。

その結果、体は水分を補おうとして強い喉の渇きを感じ、多飲になります。この場合、多尿が原因で多飲が引き起こされています。

もう一つは、精神的な要因などから水分を過剰に摂取してしまう「一次性多飲(心因性多飲症)」です。大量の水分を摂取するため、体は余分な水分を排出しようとして尿量が増加し、多尿になります。

この場合は、多飲が原因で多尿が引き起こされていると言えます。

多飲・多尿の症状とセルフチェック

ご自身の症状が多飲・多尿にあたるのか、また医療機関を受診すべきか判断するために、具体的な症状を把握し、記録をつけることが役立ちます。

ここでは、主な症状とご自身でできるチェック方法を紹介します。

主な自覚症状

多飲・多尿に伴って現れる症状は様々です。以下のような症状に心当たりがないか確認してみましょう。

  • 口の中が異常に渇く、粘つく
  • 以前より明らかに水分を飲む量が増えた
  • トイレに行く回数が1日に8回以上ある(頻尿)
  • 夜中に2回以上トイレのために起きる(夜間頻尿)
  • 1回の尿の量が多いと感じる
  • 体がだるい、疲れやすい(倦怠感)
  • 特に食事制限をしていないのに体重が減る

排尿日誌による客観的な記録

自分の水分摂取量や尿量を正確に把握するために「排尿日誌」をつけることをお勧めします。これは、いつ、どれくらいの量の水分を摂り、いつ、どれくらいの量の尿が出たかを記録するものです。

2〜3日間記録するだけでも、ご自身の状態を客観的に把握でき、医療機関を受診した際に医師に正確な情報を伝えるための重要な資料となります。

排尿日誌の記録例

時間飲んだ量(ml)と種類排尿量(ml)
7:00水 200ml350ml
9:30お茶 150ml
12:00(食事)400ml
15:00コーヒー 180ml300ml

排尿量は、市販の計量カップをトイレに用意して測定します。日誌をつけることで、1日の総水分摂取量と総尿量が明らかになり、多飲・多尿の診断に非常に役立ちます。

多飲・多尿の原因と医療機関での検査内容

多飲・多尿の原因は、一時的な生理現象から、治療が必要な病気まで多岐にわたります。原因を特定するためには、医療機関での詳しい検査が必要です。

多飲・多尿を引き起こす主な原因

原因は大きく「生理的なもの」と「病的なもの」に分けられます。生理的なものとしては、暑い夏場や運動後など、汗を多くかいたことによる水分補給が挙げられます。

また、塩分の多い食事や、利尿作用のあるカフェイン・アルコールの過剰摂取も一時的な多飲・多尿の原因になります。一方で、以下のような病気が原因となっている場合は注意が必要です。

多飲・多尿の主な原因疾患

疾患名主な特徴関連する診療科
糖尿病血糖値が高い状態が続き、尿中に糖が排出される際に水分も一緒に排出されるため多尿になる。内分泌内科、糖尿病内科、一般内科
尿崩症尿を濃縮するホルモン(抗利尿ホルモン)の異常により、大量の薄い尿が出る病気。激しい喉の渇きを伴う。内分泌内科、脳神経外科
心因性多飲症精神的なストレスや不安から、強迫的に水分を大量に摂取してしまう状態。精神科、心療内科
高カルシウム血症・低カリウム血症血液中のミネラルバランスの異常が腎臓の機能に影響を与え、多尿を引き起こすことがある。内分泌内科、腎臓内科、一般内科

医療機関で行われる検査

多飲・多尿で医療機関を受診すると、原因を特定するためにいくつかの検査を行います。

まずは問診で症状の詳しい内容や生活習慣、既往歴などを確認し、その後、必要に応じて以下のような検査を進めます。

医療機関での主な検査内容

検査の種類目的内容
尿検査尿の糖、タンパク、比重などを調べる。尿中の糖分が多ければ糖尿病、比重が極端に低ければ尿崩症を疑う。
血液検査血糖値、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム)、腎機能などを調べる。血糖値が高ければ糖尿病、電解質の異常があれば他の内分泌疾患などを疑う。
水制限試験尿崩症の診断のために行う。一定時間水分摂取を制限し、体重や尿量の変化を観察して、尿を濃縮する能力を評価する。
画像検査(頭部MRIなど)中枢性尿崩症の原因を調べる。抗利尿ホルモンを分泌する下垂体に異常がないかを確認する。

これらの検査を組み合わせることで、多飲・多尿の根本的な原因を突き止め、適切な治療へとつなげます。

多飲・多尿の治療と対処法

多飲・多尿の治療は、その原因となっている疾患を治療することが基本です。

自己判断で水分を制限することは、かえって危険な状態を招く可能性があるため、必ず医師の診断に基づいた対処が必要です。

原因疾患に対する治療

原因が特定されれば、それぞれの病気に合わせた治療を開始します。

  • 糖尿病:食事療法、運動療法、血糖降下薬やインスリン注射などの薬物療法を行い、血糖値をコントロールします。血糖値が安定すれば、多飲・多尿の症状も改善します。
  • 中枢性尿崩症:不足している抗利尿ホルモンを補充するために、デスモプレシンという薬(点鼻薬や内服薬)を使用します。
  • 腎性尿崩症:原因によって治療法は異なりますが、サイアザイド系利尿薬や食事での塩分制限などを行います。
  • 心因性多飲症:精神科や心療内科の専門医によるカウンセリングや、向精神薬を用いた治療が中心となります。患者さん自身が水分摂取量を管理できるよう、行動療法などを行うこともあります。

自己判断による水分制限の危険性

特に、多尿が先行しているタイプの多飲・多尿(糖尿病や尿崩症など)の場合、自己判断で水分摂取を極端に制限すると、深刻な脱水症状を引き起こす危険があります。

脱水は血液を濃縮させ、意識障害や臓器不全など、命に関わる状態につながることもあります。喉の渇きは、体が水分を必要としているサインです。

医師の指導がない限り、無理に水分を我慢することは絶対に避けてください。

すぐに受診が必要な危険な多飲・多尿の症状

多飲・多尿に加えて、以下のような症状が現れた場合は、重篤な病気が隠れている可能性があります。放置せず、速やかに医療機関(内科や救急外来)を受診してください。

  • 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い
  • けいれんを起こした
  • 急激に体重が減少した(1ヶ月で数kgなど)
  • 吐き気や嘔吐がある
  • 呼吸が速く、苦しそう
  • 強い倦怠感で起き上がれない

これらの症状は、糖尿病の重篤な合併症である糖尿病ケトアシドーシスや、重度の脱水、電解質異常などを示唆するサインです。緊急の対応を要します。

予防・改善の為の生活習慣

多飲・多尿の根本的な解決には原因疾患の治療が重要ですが、日々の生活習慣を見直すことも、症状の管理や予防につながります。

ここでは、日常生活で取り入れられるポイントを紹介します。

バランスの取れた食事

特に糖尿病の予防・管理において、食生活は非常に重要です。特定の食品に偏らず、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を心がけましょう。

糖質や脂質の摂りすぎに注意し、野菜や海藻、きのこなどから食物繊維を十分に摂取することが大切です。また、塩分の多い食事は喉の渇きを誘発し、水分摂取量の増加につながるため、薄味を基本としましょう。

適度な運動の習慣化

ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、血糖値の改善や体重管理に効果的です。週に3〜5日、1回30分程度を目安に、無理のない範囲で継続することが重要です。

運動習慣は、ストレス解消にも役立ち、心因性多飲症の誘因となる精神的な負担を軽減する効果も期待できます。

水分摂取の工夫

水分補給は大切ですが、その摂り方にも工夫が必要です。喉が渇いたからといって、一度に大量の水を飲むと、かえって尿意を強く感じることがあります。少量をこまめに飲むように心がけましょう。

また、飲み物の種類も重要です。コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインや、アルコールには利尿作用があるため、摂りすぎには注意が必要です。

日常的な水分補給は、水やお茶(麦茶などカフェインを含まないもの)を中心にするのがお勧めです。

多飲・多尿に関するよくある質問

最後に、多飲・多尿に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。

Q
子どもでも多飲・多尿になりますか?
A

はい、子どもでも多飲・多尿になることがあります。原因としては、大人と同様に1型糖尿病や尿崩症などが考えられます。

「おねしょが急に増えた」「異常に飲み物を欲しがる」などのサインが見られたら、小児科を受診してください。

Q
多飲・多尿は何科を受診すればよいですか?
A

まずはかかりつけの内科、もしくは一般内科を受診するのがよいでしょう。

そこで初期的な診断を行い、必要に応じて糖尿病内科、内分泌内科、腎臓内科、泌尿器科、脳神経外科、心療内科といった専門の診療科へ紹介されることになります。

どの科に行けばよいか分からない場合は、総合内科や総合診療科も選択肢の一つです。

Q
市販薬で症状を抑えることはできますか?
A

多飲・多尿の原因は多岐にわたり、背景に重大な病気が隠れている可能性があるため、自己判断で市販薬を使用するのは危険です。

頻尿を改善する市販薬もありますが、原因が異なれば効果がないばかりか、診断の遅れにつながる恐れがあります。

まずは医療機関で正確な原因を調べることが重要です。

Q
高齢者の場合、特に気をつけることはありますか?
A

高齢者はもともと体内の水分量が少なく、喉の渇きを感じにくい傾向があるため、脱水症状を起こしやすいという特徴があります。

多飲・多尿が見られる場合、腎機能の低下や薬の副作用なども原因として考えられます。ご家族など周りの方が、水分摂取量やトイレの回数の変化に気づいてあげることが大切です。

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