「最近、やけに喉が渇いて水分をたくさん摂ってしまう」「トイレに行く回数が明らかに増えた」。そんな症状が続くと、体に何か問題があるのではないかと不安になりますよね。

病院で検査を受けた方が良いかもしれないと思っても、どんな検査をするのか、痛いのか、時間がかかるのかなど、わからないことが多くて一歩を踏み出しにくいと感じる方もいるでしょう。

この記事では、多飲・多尿の症状で医療機関を受診した際に行われる検査の全体像と、それぞれの検査で何を調べるのかを、順を追って詳しく解説します。

検査への不安を少しでも和らげ、安心して受診するための参考にしてください。

はじめに聞かれること-問診で伝えるべきポイント

医療機関を受診すると、まず医師が症状について詳しく尋ねます。これを問診といいます。正確な診断のためには、あなたの体の状態や生活習慣に関する情報がとても重要です。

事前に情報を整理しておくと、スムーズに自分の状態を伝えることができます。

いつから、どのくらいの量を飲んでいますか?

多飲の診断では、「いつから」「どのくらい」水分を摂っているかが重要な手がかりになります。急に始まったのか、徐々に増えてきたのかを思い出してみましょう。

1日に飲む具体的な量(例:2リットルのペットボトルを3本以上など)を伝えられると、医師は状態をより正確に把握できます。もし可能であれば、数日間、飲んだものの種類と量を記録しておくと大変役立ちます。

尿の回数や量は増えましたか?

飲む量が増えれば尿の量も増えるのは自然ですが、その程度が診断のポイントになります。夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)かどうかも大切な情報です。

尿の色(濃いか、水のように薄いか)や泡立ちなど、気づいたことがあれば伝えましょう。こちらも、1日の排尿回数や、おおよその量を把握しておくと診断の助けになります。

問診で伝えるべき症状の具体例

確認項目伝える内容の例なぜ重要か
水分摂取量1日に約4リットル。特に冷たい水を好む。多飲の程度を客観的に評価するため。
排尿回数日中10回以上、夜間3回トイレに起きる。頻尿や夜間頻尿の有無を確認するため。
症状の始まり1ヶ月前から急に喉が渇くようになった。症状の進行速度を知る手がかりになる。

他に気になる症状はありませんか?

多飲・多尿は、他の病気のサインとして現れることがあります。そのため、一見関係ないように思える症状でも、診断の手がかりになる場合があります。

例えば、体重が急に減った、疲れやすい、目がかすむ、食欲が異常にある、といった症状がないか思い出してください。これらの情報は、原因を絞り込む上で非常に重要です。

普段の生活習慣について

病気だけでなく、生活習慣が多飲・多尿に関わっていることもあります。

医師は、普段の食事内容、飲酒や喫煙の習慣、服用している薬やサプリメント、仕事の内容やストレスの状況などについて尋ねることがあります。

特に、利尿作用のある薬やカフェインの多い飲み物(コーヒー、緑茶など)を多く摂る習慣は、症状と関連することがあります。正直に伝えることが、正しい診断への近道です。

  • 飲酒の頻度と量
  • 服用中の薬(市販薬、漢方薬を含む)
  • 日常的なストレスの有無
  • 食事の傾向(甘いものを好むなど)

体の状態を調べる-身体診察でわかること

問診の次に行うのが、身体診察です。医師が直接体に触れたり、聴診器を使ったりして、体の状態を客観的に評価します。

これにより、多飲・多尿の原因を示唆する手がかりを見つけ出します。

体重や血圧の測定

体重測定は、診断において非常に重要です。糖尿病が原因の場合、体重が急激に減少することがあります。一方で、体重の増減がないかも確認します。

血圧測定も基本的な診察の一つで、全身の健康状態を把握するために行います。

脱水症状のチェック

多尿によって体内の水分が失われ、脱水状態に陥っていないかを確認します。皮膚の弾力(肌をつまんで、元に戻る速さを見る)や、口の中の粘膜の乾燥具合などを観察します。

脱水は体にとって危険な状態であり、その兆候を見逃さないことは大切です。

脱水症状の主なサイン

診察項目確認するポイント脱水が疑われる所見
皮膚の状態皮膚の張り(ツルゴール)つまんだ皮膚の戻りが遅い
口腔内舌や粘膜の湿り気舌が乾燥している
脈拍・血圧心拍数と血圧の変動脈が速い、血圧が低い

甲状腺の触診

首元にある甲状腺が腫れていないかを、医師が触って確認することがあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)という病気では、代謝が活発になり、喉の渇きや多汗、体重減少といった症状が現れることがあるためです。

全身状態の観察

その他にも、顔色、目の状態、足のむくみなど、全身を注意深く観察します。

これらの診察から得られる情報は、問診の内容と合わせて、次に行う検査の計画を立てる上で重要な役割を果たします。

まず行われる基本的な検査

問診と身体診察で得た情報をもとに、原因を特定するために具体的な検査を進めます。

最初に行うのは、体への負担が少なく、多くの情報を得られる尿検査と血液検査です。

尿検査-尿からわかる多くの情報

尿検査は、多飲・多尿の原因を探る上で基本となる検査です。試験紙を使って、尿の中に糖やタンパク質、ケトン体などが含まれていないかを調べます。

糖尿病の場合、血液中の糖が多すぎて尿にあふれ出てくるため、尿糖が陽性になります。ケトン体は、体がエネルギー源として脂肪を分解する際に作られる物質で、糖尿病が進行した状態で見られます。

尿検査の主要項目とわかること

検査項目基準陽性の場合に疑われること
尿糖陰性(-)糖尿病、腎性糖尿など
尿蛋白陰性(-)腎臓の病気、糖尿病性腎症など
ケトン体陰性(-)糖尿病の悪化、飢餓状態など

血液検査-体内のバランスを調べる

血液検査では、血糖値や電解質(ナトリウムなど)、腎臓の機能などを調べます。多飲・多尿の原因として最も多い糖尿病の診断には、血糖値の測定が欠かせません。

また、尿崩症という病気では、血液中のナトリウム濃度が高くなることがあります。

腎臓の機能が低下して尿を濃縮できなくなり、多尿になることもあるため、腎機能を示す項目(クレアチニンなど)も確認します。

血液検査の主要項目とわかること

検査項目主な役割異常値が示す可能性
血糖値血液中のブドウ糖の濃度高値の場合、糖尿病の疑い
電解質(Na, Kなど)体内の水分バランスの調整尿崩症、脱水、腎機能障害など
腎機能(BUN, Cre)老廃物を排出する腎臓の働き腎機能の低下

尿比重・浸透圧の測定

尿の濃さを調べる検査です。健康な状態では、体内の水分量に応じて腎臓が尿の濃さを調節します。

しかし、尿崩症などではこの機能がうまく働かず、水分摂取量に関わらず薄い尿(比重や浸透圧が低い尿)が出続けます。

この検査は、尿を濃縮する能力が正常かどうかを評価するために重要です。

糖尿病が疑われる場合の詳しい検査

基本的な検査で血糖値が高いなど、糖尿病の可能性が考えられる場合には、診断を確定させるためにさらに詳しい検査を行います。

空腹時血糖値の測定

10時間以上食事を摂らない状態で採血し、血糖値を測定する検査です。糖尿病の診断基準の一つであり、最も基本的な検査です。

朝食を抜いて医療機関を受診するように指示されることが一般的です。

75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)

空腹時血糖値だけでは診断が難しい場合や、糖尿病の境界型が疑われる場合に行う検査です。まず空腹の状態で採血し、その後ブドウ糖の入った甘い液体(75g)を飲みます。

そして、30分後、1時間後、2時間後にそれぞれ採血して、血糖値がどのように変化するかを調べます。これにより、糖を処理する能力(耐糖能)を詳しく評価できます。

糖尿病の診断基準(血糖値)

検査の種類糖尿病型正常型
空腹時血糖値126 mg/dL以上110 mg/dL未満
75gOGTT 2時間値200 mg/dL以上140 mg/dL未満
随時血糖値200 mg/dL以上

ヘモグロビンA1c(HbA1c)の確認

ヘモグロビンA1cは、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖の状態を反映する指標です。赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質に、ブドウ糖がどのくらい結合しているかをパーセンテージで示します。

食事の直前の状態に影響されないため、普段の血糖コントロールの状態を知る上で非常に有用な検査です。血糖値と合わせて、糖尿病の診断や治療効果の判定に用います。

  • 糖尿病の診断基準の一つ
  • 長期的な血糖コントロールの指標
  • 食事時間の影響を受けない

尿崩症を調べるための特別な検査

基本的な検査で糖尿病が否定され、かつ薄い尿がたくさん出ている場合には、尿崩症という病気を疑います。

尿崩症は、尿を濃縮するホルモン(抗利尿ホルモン、バソプレシン)の作用が不足することで起こります。この診断のためには、専門的な入院検査が必要になることがあります。

水制限試験-尿を濃縮する力を調べる

尿崩症の診断で中心となる検査です。一定時間、水分を摂るのをやめて、体が尿をどのくらい濃縮できるかを調べます。

安全に検査を行うため、入院して体重や血圧、尿量、尿と血液の浸透圧などを頻繁に測定しながら進めます。この検査によって、尿を濃縮する能力が本当に低下しているのかどうかを評価します。

水制限試験の簡単な流れ

手順内容目的
1. 検査開始飲水を禁止し、定期的に採血・採尿。脱水に対する体の反応を見る。
2. 状態の確認体重減少や尿浸透圧の変化を監視。尿が適切に濃縮されるか評価。
3. ホルモン投与尿が濃縮されない場合、バソプレシンを投与。ホルモンへの反応性を見る。

高張食塩水負荷試験

この検査は、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が脳から正常に分泌されているかを調べるために行います。濃度の高い食塩水を点滴で体に入れ、血液の浸透圧を人為的に上昇させます。

正常であれば、これに反応してバソプレシンの分泌が増えますが、中枢性尿崩症(脳からのホルモン分泌に問題があるタイプ)では、この反応が鈍くなります。

バソプレシン(ADH)の測定

水制限試験や高張食塩水負荷試験と同時に、血液中のバソプレシンの濃度を直接測定します。

血液の浸透圧とバソプレシンの値の関係をみることで、尿崩症の原因がホルモンを出す脳(中枢性)にあるのか、それともホルモンが効くべき腎臓(腎性)にあるのかを区別するのに役立ちます。

中枢性尿崩症と腎性尿崩症の主な違い

タイプ問題の箇所バソプレシンへの反応
中枢性尿崩症脳下垂体(ホルモンの分泌不足)ホルモン投与で尿が濃縮される
腎性尿崩症腎臓(ホルモンへの反応が悪い)ホルモンを投与しても反応が薄い

原因を特定するための画像検査

血液検査や尿検査などで原因の候補が絞られてきたら、体の内部を画像で確認し、診断をより確実なものにします。どの臓器を調べるかは、疑われる病気によって異なります。

腹部超音波(エコー)検査

超音波を使って、腎臓や膀胱の形に異常がないかを調べる検査です。体に害がなく、手軽に行えるのが特徴です。腎臓の病気や、尿路の閉塞などが疑われる場合に行われます。

CT検査やMRI検査

CT検査やMRI検査は、超音波検査よりもさらに詳しく体の中を調べることができます。CTはX線を、MRIは磁気を使って体の断面を撮影します。

腎臓やその周りの臓器に腫瘍などの異常がないかを確認する場合に有用です。

脳の画像検査の重要性

中枢性尿崩症が疑われる場合、原因となる脳の病気(特にホルモンを分泌する脳下垂体やその周辺の腫瘍、炎症など)がないかを調べるために、頭部のMRI検査が非常に重要です。

この検査により、原因を特定し、適切な治療方針を立てることができます。

よくあるご質問(Q&A)

最後に、多飲・多尿の検査に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q
検査当日の食事や飲み物はどうすればいいですか?
A

検査内容によって異なります。特に糖尿病を調べるための空腹時血糖値測定や75gOGTTでは、検査の10時間前から絶食が必要です。

水やお茶など、糖分を含まない水分は摂っても良い場合が多いですが、必ず事前に医療機関の指示を確認してください。

尿崩症を調べる水制限試験では、検査中の水分摂取は厳しく制限されます。

Q
検査にはどのくらいの時間がかかりますか?
A

基本的な尿検査や血液検査は、受付から会計まで含めて1〜2時間程度で終わることが多いです。

しかし、75gOGTTはブドウ糖液を飲んでから2時間後まで採血があるため、全体で3時間近くかかります。

水制限試験のように入院が必要な検査は、数日間を要する場合もあります。

Q
検査費用はどのくらいかかりますか?
A

費用は、行う検査の種類や医療機関によって大きく異なります。健康保険が適用される場合、一般的な初診と基本的な血液・尿検査であれば、自己負担額は数千円程度が目安です。

しかし、MRIなどの画像検査や、入院が必要な特殊な検査を行う場合は、費用はさらに高くなります。詳しい費用については、受診する医療機関に事前に問い合わせることをお勧めします。

Q
どの診療科を受診すればよいですか?
A

多飲・多尿の原因は多岐にわたるため、どの診療科を受診すればよいか迷うかもしれません。

まずはかかりつけ医に相談するか、総合的に診察してくれる内科や総合診療科を受診するのが一般的です。

その後の検査で糖尿病が強く疑われれば内分泌内科や糖尿病内科、尿崩症が疑われれば内分泌内科、腎臓の病気が疑われれば腎臓内科など、専門の診療科へ紹介されることもあります。

受診する診療科の目安

診療科主な対象となる状態・疾患ポイント
内科・総合診療科原因がはっきりしない初期段階まずは気軽に相談できる窓口。
内分泌内科・糖尿病内科糖尿病、尿崩症、甲状腺疾患などホルモンや代謝に関する専門科。
腎臓内科腎機能低下が疑われる場合尿の異常や腎臓の病気を専門とする。

以上

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