感染症の一種である深在性カンジダ症とはカンジダ属という真菌(かび)が血液や内臓に侵入して起こる重篤な感染症です。
通常カンジダ菌は私たちの体内に共生していますが、特定の条件下で異常に増殖して深部組織に侵入することがあります。
この疾患は免疫機能が低下している方や長期入院患者、侵襲的な医療処置を受けた方などが罹患しやすいとされています。
症状は発熱や倦怠感など一般的なものから感染部位に応じた特異的なものまで様々です。
深在性カンジダ症の主な症状と注意点
深在性カンジダ症は様々な症状を引き起こす可能性がある感染症です。
ここでは主要な症状について詳しく解説します。
全身症状
深在性カンジダ症に罹患すると多くの患者さんが全身に及ぶ症状を経験されます。
これらの症状は他の感染症とも共通する部分があるため注意深い観察が欠かせません。
深在性カンジダ症の主な全身症状は以下の通りです。
- 持続する高熱(38度以上)
- 悪寒や寒気
- 全身倦怠感
- 食欲不振
- 体重減少
臓器別症状
深在性カンジダ症は全身の様々な臓器に影響を及ぼすことがあります。
感染部位によって現れる症状が異なるため症状の組み合わせから感染部位を推測できる場合もあります。
以下の表は主な感染部位とその特徴的な症状です。
感染部位 | 特徴的な症状 |
肺 | 咳・胸痛・呼吸困難 |
心臓 | 不整脈・胸痛・息切れ |
腎臓 | 排尿時痛・頻尿・血尿 |
脳 | 頭痛・意識障害・けいれん |
これらの症状が単独で、または組み合わさって現れます。
皮膚症状
深在性カンジダ症では内臓だけでなく皮膚にも症状が現れることがあります。
皮膚症状は目に見える形で現れるため患者さんご自身でも気づきやすいのが特徴です。
代表的な皮膚症状は次のようなものです。
- 赤い発疹や丘疹
- かゆみを伴う皮疹
- 皮膚の腫れや熱感
- 膿疱(のうほう)の形成
これらの症状が広範囲に渡って現れたり急速に拡大したりする場合には深在性カンジダ症を疑う根拠となるでしょう。
眼症状
深在性カンジダ症は眼に影響を及ぼすこともあり視力に関わる重大な合併症を引き起こす可能性も生じます。
2019年に発表された研究では深在性カンジダ症患者さんの約16%に眼症状が認められたとの報告がありました。
以下は深在性カンジダ症の主な眼症状です。
症状 | 特徴 |
視力低下 | 徐々にまたは急激に視力が落ちる |
眼痛 | 持続的または断続的な痛み |
充血 | 目の白い部分が赤くなる |
飛蚊症 | 視界に黒い点や糸状のものが浮かぶ |
これらの症状が現れた際には速やかに眼科医の診察を受けることをお勧めします。
症状の違い
同じ深在性カンジダ症でも軽症と重症では症状の現れかたに差が生じます。
具体的な軽症例と重症例の症状の違いは次の通りです。
症状の特徴 | 軽症例 | 重症例 |
発熱の程度 | 微熱程度 | 高熱が持続 |
症状の進行速度 | ゆっくり進行 | 急速に悪化 |
症状の範囲 | 限局的 | 全身に及ぶ |
日常生活への影響 | 軽度の支障 | 重度の機能障害 |
原因とリスク要因を解明する
深在性カンジダ症は通常無害な真菌が体内で異常増殖することで引き起こされる深刻な感染症です。
深在性カンジダ症の原因やリスク要因は多岐にわたり複雑に絡み合っていて個々の状況に応じたリスク評価と適切な予防策の実施が健康管理において不可欠です。
本稿では深在性カンジダ症の発症メカニズムやリスクを高める要因について詳しく解説します。
カンジダ菌と人体の関係
カンジダ菌は人体に常在する微生物の一種で健康な状態では免疫システムがその増殖を抑制しています。
しかし特定の条件下でこのバランスが崩れるとカンジダ菌が過剰に増殖して深部組織に侵入することがあります。
以下はカンジダ菌と人体の通常の関係をまとめたものです。
部位 | カンジダ菌の存在 |
口腔 | 常在 |
消化管 | 常在 |
皮膚 | 時折存在 |
泌尿生殖器 | 時折存在 |
このようにカンジダ菌は本来人体の様々な部位に存在しているのです。
免疫機能低下と深在性カンジダ症
深在性カンジダ症の発症には宿主である人間の免疫機能の状態が密接に関わっています。
免疫機能が低下するとカンジダ菌の増殖を抑える力が弱まり菌が血流に乗って全身に広がる機会が増えます。
以下は免疫機能を低下させる要因です。
- 長期の抗生物質使用
- ステロイド剤の長期投与
- 化学療法
- HIV/AIDS
- 臓器移植後の免疫抑制剤使用
これらの状況下にある方は深在性カンジダ症のリスクが高まることを認識しておくことが大切です。
医療処置に関連するリスク
現代医療の発展により様々な高度な医療処置が可能になりましたがその一方でこれらの処置が深在性カンジダ症の発症リスクを高める場合があります。
以下の表は深在性カンジダ症のリスクを高める可能性のある医療処置をまとめたものです。
医療処置 | リスク要因 |
中心静脈カテーテル | 菌の侵入経路になりうる |
人工呼吸器 | 口腔内のカンジダ菌が肺に侵入する可能性 |
腹膜透析 | 腹腔内感染のリスク |
広範囲手術 | 術後の免疫機能低下 |
これらの処置を受ける際には医療従事者と十分なコミュニケーションを取り感染リスクの管理について相談することが重要です。
環境要因と生活習慣
深在性カンジダ症の発症には環境要因や生活習慣も影響を与えることがあります。
特に長期入院や集中治療室での治療を受けている方はリスクが高まる傾向です。
環境要因と生活習慣に関連するリスク因子には以下のようなものがあります。
- 高温多湿の環境
- 不適切な衛生管理
- 栄養不良
- 過度のストレス
- 睡眠不足
これらの要因は単独で あるいは複合的に作用して深在性カンジダ症のリスクを高める可能性が生じます。
遺伝的要因と個体差
近年の研究により深在性カンジダ症への感受性には遺伝的な要因も関与していることが明らかになってきました。
ある特定の遺伝子変異を持つ人はカンジダ菌に対する免疫応答が通常とは異なる場合があり、それが感染リスクの増大につながることがあるのです。
深在性カンジダ症と関連が指摘されている遺伝子の一部は次の通りです。
遺伝子名 | 関連する機能 |
CARD9 | 真菌認識と免疫応答 |
IL-17 | 抗真菌免疫 |
STAT1 | インターフェロンシグナル伝達 |
NADPH oxidase | 好中球の殺菌能 |
これらの遺伝的要因は個人の深在性カンジダ症に対する脆弱性を決定する一因となっています。
年齢とカンジダ感染リスク
年齢も深在性カンジダ症の発症リスクに影響を与える要因の一つです。
特に新生児と高齢者はリスクが高いとされています。
- 新生児 未熟な免疫系や皮膚バリア機能の脆弱性が要因
- 高齢者 加齢に伴う免疫機能の低下や基礎疾患の存在がリスクを高める
年齢に応じた適切な健康管理と感染対策が深在性カンジダ症の予防において重要となります。
深在性カンジダ症の診察と診断
深在性カンジダ症の症状は他の疾患と類似している場合が多く診断が困難になることも少なくありません。
そのため医療機関では様々な検査を組み合わせて総合的に判断を行います。
患者さんは以下の点に留意することが大切です。
- 症状の持続期間や変化に注意を払う
- 複数の症状が同時に現れていないか観察する
- 既往歴や最近の治療歴を医師に詳しく伝える
- 免疫機能に影響を与える要因がないか確認する
ここからは深在性カンジダ症の診断に至るまでの診察過程を解説します。
初診時の問診と身体診察
深在性カンジダ症の診断プロセスは通常詳細な問診から始まります。
医師は患者さんの症状・既往歴・現在服用中の薬剤・最近の手術歴などについて丁寧に問診します。
この情報は感染リスクの評価や他の疾患との鑑別に重要な役割を果たします。
問診に続いては特に次のような点に注目して身体診察を進めます。
- 体温測定
- 血圧や脈拍の確認
- 呼吸音の聴診
- 皮膚の状態確認
- 腹部の触診
これらの基本的な診察により感染の兆候や全身状態を評価します。
血液検査による評価
深在性カンジダ症の診断において血液検査は極めて重要な役割を果たします。
一般的な血液検査に加えてカンジダ感染に特化した検査も実施されることがあります。
以下の表は主な血液検査項目とその意義をまとめたものです。
検査項目 | 意義 |
白血球数 | 感染の有無や程度を示唆 |
CRP | 炎症の程度を評価 |
β-Dグルカン | 真菌感染の指標 |
カンジダ抗原 | カンジダ感染の直接的証拠 |
これらの検査結果を総合的に判断することで深在性カンジダ症の可能性を評価します。
培養検査の実施
深在性カンジダ症の確定診断には培養検査が不可欠です。
患者さんの血液や感染が疑われる部位から採取した検体を用いてカンジダ菌の存在を直接確認します。
培養検査の特徴は次の通りです。
- 結果が出るまでに数日を要する
- 感度が完全ではなく 偽陰性の可能性がある
- 抗真菌薬の感受性試験も同時に行える
培養検査の結果は 診断の確定だけでなく最適な治療方針の決定にも寄与します。
分子生物学的検査法
近年ではPCR法などの分子生物学的検査法が深在性カンジダ症の診断に導入されつつあります。
これらの検査法は従来の培養検査と比較して以下のような利点があります。
- 迅速な結果判定(数時間で結果が得られる)
- 高い感度と特異度
- 少量の検体で検査可能
- 抗真菌薬投与後でも検出可能
一方で費用面や偽陽性の問題などの課題も考慮しなければなりません。
眼科的検査の重要性
深在性カンジダ症では眼病変を合併することがあるため眼科的検査が重要です。
特に血液培養でカンジダ陽性となった患者さんには必ず眼底検査を実施することが推奨されています。
以下は眼科的検査でチェックする項目です。
- 視力検査
- 眼圧測定
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼底検査
これらの検査により早期に眼病変を発見して適切な対応をとることが可能となります。
深在性カンジダ症の画像所見
深在性カンジダ症の画像所見は多彩かつ非特異的であることが特徴です。
単一の画像検査だけでなく複数のモダリティを組み合わせて総合的に判断することが診断の精度を高める上で重要です。
また臨床症状や検査所見と画像所見を照らし合わせることでより正確な診断と適切な治療方針の決定が可能となります。
本項では各種画像検査で見られる特徴的な所見について詳しく解説します。
胸部X線検査における所見
胸部X線検査は深在性カンジダ症の肺病変を評価する上で基本となる検査です。
しかしながらカンジダ症に特異的な所見は少なく他の感染症との鑑別が難しい面もあります。
主な胸部X線所見は以下の通りです。
- びまん性の浸潤影
- 結節影
- 胸水貯留
これらの所見は単独ではカンジダ症の確定診断には至りませんが感染の可能性を示唆する重要な手がかりとなります。
所見:「胸部X線では、右上肺野に複数の結節が見られ、右肺全体にすりガラス影~浸潤影の混在した陰影が確認される。」
胸部CT検査の特徴的所見
胸部CT検査はX線検査よりも詳細な情報を提供して深在性カンジダ症の診断精度を高めます。
以下の表は胸部CT検査で見られる主な所見とその特徴をまとめたものです。
CT所見 | 特徴 |
多発性結節影 | 両肺野に散在する小結節 |
すりガラス影 | びまん性のモヤモヤした陰影 |
浸潤影 | 斑状や楔状の濃度上昇域 |
空洞形成 | 結節内部の壊死による空洞化 |
これらの所見のうち特に多発性の小結節影はカンジダ症を疑う上で重要な手がかりとなります。
所見:「複数の小さな空洞病変と結節。入院14日目に撮影された胸部CT画像では、すりガラス影に囲まれた複数の小さな空洞病変と結節、および両側性胸水が確認される。これらの肺の異常は、気管支血管周囲に分布しているようである。」
腹部画像検査の役割
深在性カンジダ症は肝臓や脾臓など腹部臓器にも病変を形成することがあります。
腹部の画像検査には超音波検査・CT検査・MRI検査などが用いられますがそれぞれ特徴的な所見が存在します。
腹部画像検査で見られる主な所見は次の通りです。
- 肝臓や脾臓の多発性小膿瘍
- 腎臓の楔状低吸収域
- 腹水貯留
これらの所見は深在性カンジダ症の全身性感染を示唆する重要な指標となります。
所見:「肝臓および脾臓の断層画像で、慢性播種性カンジダ症患者における膿瘍(ブルズアイ、矢印)および低吸収性病変が確認される。」
中枢神経系の画像所見
深在性カンジダ症が中枢神経系に及ぶと脳膿瘍や髄膜炎を引き起こすことがあります。
中枢神経系の評価には主にMRI検査が用いられ、次のような所見が観察されます。
MRI所見 | 特徴 |
多発性微小膿瘍 | T2強調像で高信号・造影で輪状増強効果 |
髄膜肥厚 | 造影T1強調像で髄膜の増強効果 |
脳室拡大 | 髄液循環障害による二次性変化 |
梗塞巣 | 真菌性血管炎による二次的変化 |
上記のような所見は深在性カンジダ症の中枢神経系合併症を診断する上で極めて重要です。
所見:「複数の小さなガドリニウム造影リング状病変が、皮質-皮質下および大脳基底核に分散しており、ニューロカンジダ症による微小膿瘍が示唆される。(1) 軸位T2強調画像、(2) 冠状断T2強調画像、(3) 矢状断T2強調画像、(4) 軸位T2*強調グラジエントエコー画像、(5) DWI、(6) ADC、(7, 8) ガドリニウム増強T1強調画像(それぞれ軸位および冠状断)」
眼底検査の意義
深在性カンジダ症では眼内炎を合併することがあるため眼底検査が不可欠です。
眼底検査では以下のような特徴的所見が観察されることがあります。
- 綿花様白斑
- 網膜出血
- 硝子体混濁
これらの所見はカンジダ性眼内炎を示唆し早期発見と迅速な対応が求められます。
所見:「この左眼のスリットランプ写真では、軽度の結膜充血と前房に1 mmの白色前房蓄膿が認められる。中等度散瞳した瞳孔の後方には、複数の大きな白色のスノーボール状混濁が見られ、さらに多数の小さなスノーボール状混濁が混在しており、これはカンジダ性内因性眼内炎に典型的な所見である。」
PET-CT検査の役割
近年ではPET-CT検査が深在性カンジダ症の診断に活用されるようになってきました。
PET-CT検査は全身の炎症巣を一度に評価できる利点があり次のような情報を提供します。
- 活動性病変の局在
- 病変の広がり
- 治療効果の判定
PET-CT検査の所見と特徴は以下の通りです。
PET-CT所見 | 特徴 |
FDG集積亢進 | 炎症や感染巣を示唆 |
多発性集積 | 全身性感染の可能性 |
経時的変化 | 治療効果の指標 |
PET-CT検査は他の画像検査で捉えにくい小病変の検出にも有用です。
所見:「56歳の免疫健常男性、咳、発熱、および胸部X線で右肺に腫瘤を認めて受診。腫瘤の評価のためにFDG PET/CTを実施した。A) 全身最大強度投影(MIP)PET画像で、肺腫瘤(実線矢印)および縦隔内の別の病変(破線矢印)に強いFDG集積が確認される。B) 軸位PET/CTでは、右肺下葉の胸膜基底の腫瘤(矢印)が不規則な境界と強いFDG集積(SUV max 17.3)を示している。」
画像所見の経時的変化
深在性カンジダ症の治療経過を評価する上で画像所見の経時的変化を追跡することが大切です。
治療効果が現れると次のような変化が観察されることがあります。
- 結節影や浸潤影の縮小
- 膿瘍の縮小や消失
- 炎症所見の改善
一方治療に反応しない場合や再燃時には新たな病変の出現や既存病変の拡大が認められることがあります。
画像所見の変化を注意深く観察することで治療方針の適切な調整が可能です。
所見:「50歳男性、リポソームアムホテリシンBによる抗真菌治療完了後のフォローアップFDG PET/CT検査を実施。A) 治療前の全身最大強度投影(MIP)PET画像では、骨(実線矢印;最大標準化取り込み値[SUV max] 7.5)およびリンパ節(破線矢印;SUV max 8)に病変の範囲が確認される。B) 治療後の全身MIP PET画像では、Aで示された病変のFDG集積が著しく減少しており、特に骨において顕著(実線矢印;SUV max 2)で、治療への部分的な応答を示唆している。破線矢印はリンパ節を示す。しかし、残存する病変を考慮して抗真菌治療が継続された。このように、FDG PET/CTは抗真菌治療の反応をモニタリングするためにも利用できる。」
治療法と回復への道のり
深在性カンジダ症の治療は患者さんの状態や感染の程度によって個別化されます。
本記事では主な治療方法や使用される薬剤、そして治癒までの期間について詳しく解説します。
抗真菌薬治療の基本
深在性カンジダ症の主な治療法は抗真菌薬の投与です。
使用される抗真菌薬は患者さんの全身状態・感染の重症度・薬剤耐性などを考慮して選択されます。
抗真菌薬治療の基本的な流れは以下の通りです。
- 初期治療 経験的治療として広域スペクトラムの抗真菌薬を使用
- 培養結果判明後 感受性に基づいて薬剤を選択
- 長期治療 臨床症状や検査結果に基づいて治療期間を決定
主要な抗真菌薬とその特徴
深在性カンジダ症の治療に用いられる主な抗真菌薬とその特徴は次のようなものです。
抗真菌薬 | 主な特徴 |
フルコナゾール | 経口投与可・副作用が比較的少ない |
ミカファンギン | 真菌細胞壁合成阻害・耐性菌にも有効 |
アムホテリシンB | 広域スペクトラム・重症例に使用 |
ボリコナゾール | 中枢神経系感染症にも有効 |
これらの薬剤は単独でまたは併用して使用されることがあります。
2020年に発表された研究ではフルコナゾールとミカファンギンなどエキノカンジン系薬剤の併用療法が特に重症例において有効である可能性が示唆されています。
治療期間と経過観察
深在性カンジダ症の治療期間は 患者さんの状態や感染の程度によって大きく異なりますが、以下は一般的な治療期間の目安です。
- 非複雑性カンジダ血症 14日間
- 複雑性カンジダ血症 4~6週間以上
- 深部臓器感染 6~12週間以上
治療中は定期的な血液検査や画像検査を行い治療効果を評価します。
経過観察における主なチェックポイントは次の通りです。
観察項目 | 評価内容 |
臨床症状 | 発熱や全身状態の改善 |
血液検査 | 炎症マーカーの推移 |
培養検査 | 血液培養の陰性化 |
画像検査 | 病変の縮小や消失 |
これらの評価を総合的に判断して治療の継続や変更を決定します。
支持療法の重要性
抗真菌薬治療と並行して患者さんの全身状態を改善するための支持療法も大切です。
主な支持療法には以下のようなものがあります。
- 輸液管理 適切な水分・電解質バランスの維持
- 栄養管理 十分なカロリーとタンパク質の補給
- 血糖コントロール 高血糖状態の是正
- 免疫機能サポート 必要に応じた免疫グロブリン投与
これらの支持療法により患者さんの治癒力を高めて抗真菌薬治療の効果を最大化することが期待できます。
カテーテル関連カンジダ血症への対応
深在性カンジダ症の中でもカテーテル関連カンジダ血症は特別な対応が必要です。
この場合は以下の手順で治療が進められます。
- 感染源となっているカテーテルの抜去
- 抗真菌薬の全身投与
- 合併症の有無の評価
- 治療効果のモニタリング
カテーテル抜去後も 一定期間の抗真菌薬治療が必要となることがあります。
治癒判定と再発予防
深在性カンジダ症の治癒判定 慎重に行われ、以下の条件が満たされた際に治癒と判断されることが多いです。
- 臨床症状の完全な消失
- 血液培養の持続的陰性化
- 画像所見の著明な改善
- 炎症マーカーの正常化
ただ、治癒後も一定期間の経過観察が必要となり再発リスクの高い患者さんには予防的な抗真菌薬投与が検討されることもあります。
深在性カンジダ症の治療は長期に渡ることが多く患者さんの忍耐と協力が不可欠です。
副作用とリスク
深在性カンジダ症の治療は患者さんの命を救う重要な過程ですが同時に副作用やリスクを伴うことがあり、それらは決して軽視できるものではありません。
しかしこれらのリスクの多くは適切な管理と早期対応により軽減できる可能性があります。
本記事では治療に伴う可能性のある副作用やデメリットについて詳しく解説します。
抗真菌薬の一般的な副作用
深在性カンジダ症の治療に用いられる抗真菌薬には様々な副作用が報告されています。
これらの副作用は薬剤の種類や投与量、患者さんの体質などによって出現の仕方が異なります。
以下は主な副作用です。
- 消化器症状(吐き気・嘔吐・下痢など)
- 肝機能障害
- 腎機能障害
- 皮疹やかゆみ
- 頭痛やめまい
薬剤別の特徴的な副作用
抗真菌薬の種類によって特徴的な副作用が現れることがあります。
以下の表は主要な抗真菌薬とその特徴的な副作用をまとめたものです。
抗真菌薬 | 特徴的な副作用 |
アムホテリシンB | 発熱・悪寒・電解質異常 |
フルコナゾール | 肝機能障害・QT延長 |
ミカファンギン | 血小板減少・溶血性貧血 |
ボリコナゾール | 視覚障害・光線過敏症 |
これらの副作用の多くは薬剤の減量や中止により改善することが多いですが慎重な経過観察が必要です。
薬物相互作用のリスク
深在性カンジダ症の患者さんは しばしば複数の薬剤を併用することがあります。
この際には薬物相互作用によって予期せぬ副作用が生じる可能性も考慮しなければなりません。
以下は抗真菌薬と相互作用を起こしやすい薬剤の例です。
- ワルファリン(抗凝固薬)
- シクロスポリン(免疫抑制剤)
- リファンピシン(抗菌薬)
- フェニトイン(抗てんかん薬)
これらの薬剤を服用中の方は必ず担当医師に伝えてください。
長期治療に伴うリスク
深在性カンジダ症の治療は長期に及ぶことがありますが、以下のような長期の抗真菌薬投与に伴うリスクも考えられます。
リスク | 内容 |
耐性菌の出現 | 薬剤に対する感受性の低下 |
二次感染 | 他の病原体による感染症の併発 |
臓器機能への影響 | 肝臓や腎臓への長期的な負担 |
QOLの低下 | 長期入院による生活の質の低下 |
これらのリスクを最小限に抑えるためにが定期的な検査と状態の評価が大切です。
免疫抑制状態に関連するリスク
深在性カンジダ症の患者さんはしばしば免疫機能が低下した状態にあります。
免疫抑制状態での治療には次のようなリスクが伴う可能性があります。
- 他の日和見感染症の併発
- 創傷治癒の遅延
- ワクチンの効果減弱
- 腫瘍性疾患の進行リスク上昇
これらのリスクに対しては総合的な健康管理と慎重なモニタリングが必要です。
カテーテル関連合併症
深在性カンジダ症の治療では中心静脈カテーテルを使用することがあります。
以下はカテーテル使用に伴うリスクです。
合併症 | 特徴 |
カテーテル感染 | カテーテル自体が感染源となる |
血栓形成 | カテーテル周囲での血栓発生 |
気胸 | カテーテル挿入時の肺損傷 |
出血 | 挿入部位からの出血 |
これらのリスクを軽減するために厳重な無菌操作と定期的なカテーテルケアが実施されます。
心理社会的影響
深在性カンジダ症の治療は患者さんの心理面にも影響を与えることがあります。
具体的には長期入院や治療に伴う不安 ストレスなどが生じる患者さんもいるでしょう。
以下は主な心理社会的影響です。
- 不安やうつ状態
- 社会的孤立感
- 仕事や学業への影響
- 経済的負担
これらの問題に対しては心理カウンセリングや社会福祉サービスの利用が検討されることがあります。
深在性カンジダ症治療の費用
深在性カンジダ症の治療費は使用する薬剤や入院期間によって大きく変動します。
本稿では一般的な治療費の目安を示しますが個々の状況によって実際の費用は異なることにご留意ください。
処方薬の薬価
抗真菌薬の薬価は種類や投与量によって異なりますが、ここでは代表的な薬剤の1日あたりの薬価を以下に示します。
薬剤名 | 1日あたりの薬価 |
フルコナゾール | 158.3円 |
ミカファンギン | 9,150円 |
1週間の治療費
入院治療を要する場合になると1週間の治療費は薬剤費に加えて入院費や検査費用などが含まれます。
それらを概算すると20万円から35万円程度になることがあります。
以下は1週間の治療費の内訳例です。
- 抗真菌薬費 1,108.1円〜64,050円
- 入院基本料 10万円〜15万円
- 検査費用 2万円〜5万円
- その他処置費 5万円〜10万円
1か月の治療費
1か月にわたる治療の場合での費用は80万円から140万円に達することもあります。
長期治療では薬剤の変更や追加検査が必要となる場合があり費用が増加することも考えておかなければなりません。
そのため、民間保険や高額療養制度などの医療費削減策が重要となってきます。
なお、上記の価格は2024年10月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
以上
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