単純ヘルペス脳炎とはウイルスによって引き起こされる脳の感染症です。

主に単純ヘルペスウイルスが原因となり脳の組織に炎症を引き起こします。

この病気は急激な症状の進行が特徴で発熱や頭痛、意識障害などが見られることがあります。

単純ヘルペス脳炎は重篤な合併症を引き起こす可能性があるため特に早期の診断と適切な対応が重要です。

単純ヘルペス脳炎の病型について

単純ヘルペス脳炎は全年齢で発症し得ますが、疫学的には50〜60歳代に発症のピークがあります。

そして、単純ヘルペス脳炎にはいくつかの病型が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。

これらの病型を理解することは病気の進行や影響を把握する上で重要です。

側頭葉型(辺縁系型)

側頭葉型は特に側頭葉に炎症が生じる病型です。

この型では記憶や感情に関わる部分が影響を受けることが多く精神的な症状が現れる場合があります。

この病型は発症後に急速に進行することがあり、患者さんの状態が急変することもあります。

側頭葉・脳幹型

側頭葉・脳幹型は側頭葉と脳幹の両方に炎症が見られる病型です。

この型では呼吸や心拍などの自律神経に関わる機能が影響を受けることがあります。

この病型は重篤な症状を引き起こす可能性があり、特に脳幹が関与するため生命に関わる危険性が高いとされています。

脳幹型

脳幹型は脳幹に特化した炎症が見られる病型です。

この型では意識障害や運動機能の低下が顕著に現れることがあります。

脳幹は生命維持に関わる重要な部分であるためこの病型は非常に危険です。

患者さんの状態が急激に悪化することがあるため注意が必要です。

びまん性脳炎型

びまん性脳炎型は脳全体に広がる炎症が特徴の病型です。

この型では全身的な症状が現れることが多く、特に意識障害が顕著です。

この病型は他の病型に比べて広範囲に影響を及ぼすため患者さんの状態が非常に不安定になることがあり早期の診断が求められます。

病型名進行の速さ
側頭葉型急速に進行することが多い
側頭葉・脳幹型重篤な症状を引き起こす可能性がある
脳幹型非常に危険である
びまん性脳炎型不安定な状態になることが多い

単純ヘルペス脳炎の主症状について

単純ヘルペス脳炎はさまざまな主症状を引き起こす感染症であり、特に脳に炎症をもたらすことが特徴です。

これらの症状は病型によって異なるため理解しておくことが重要です。

側頭葉型(辺縁系型)の主症状

側頭葉型では特に記憶や感情に関わる部分が影響を受けるため患者さんは記憶障害や感情の不安定さを経験することがあります。

具体的には短期記憶の喪失や感情の変動が激しくなることが見られます。

この型の患者さんは周囲の状況に対する理解力が低下することがあり、混乱した状態に陥ることもあります。

さらに幻覚や妄想といった精神的な症状が現れる場合もあります。

側頭葉・脳幹型の主症状

側頭葉・脳幹型では呼吸や心拍などの自律神経に関わる機能が影響を受けるため呼吸困難や心拍の異常が見られることがあります。

この型は特に重篤な症状を引き起こすことが多く、患者さんの状態が急激に悪化することがあります。

また意識障害が現れることもあり昏睡状態に陥ることがあります。

これにより周囲の人々が患者さんの状態を把握することが難しくなる場合があります。

脳幹型の主症状

脳幹型では意識障害や運動機能の低下が顕著に現れます。

脳幹は生命維持に関わる重要な部分であるため、この型の患者さんは非常に危険な状態に陥ることがあります。

具体的には意識が混濁して反応が鈍くなることが多いです。

さらに運動機能が低下することで歩行や日常生活に支障をきたすことがあります。

びまん性脳炎型の主症状

びまん性脳炎型では脳全体に広がる炎症が特徴であり、全身的な症状が現れることが多いです。

この型では特に意識障害が顕著で患者さんは周囲の状況に対する認識が低下します。

また、全身の筋力が低下することがあり日常生活においても大きな影響を及ぼすことがあります。

身体的な疲労感を強く感じることも多く、活動が制限される場合もあるでしょう。

病型名主症状
側頭葉型記憶障害、感情の不安定さ
側頭葉・脳幹型呼吸困難、心拍異常
脳幹型意識障害、運動機能の低下
びまん性脳炎型意識障害、全身の筋力低下
  • 側頭葉型では短期記憶の喪失が見られることがある
  • 側頭葉・脳幹型は重篤な症状を引き起こすことが多い
  • 脳幹型では意識が混濁することがある
病型名影響を受ける機能
側頭葉型記憶や感情に関わる部分
側頭葉・脳幹型自律神経に関わる機能
脳幹型生命維持に関わる重要な部分
びまん性脳炎型脳全体に広がる炎症

ある研究によると単純ヘルペス脳炎の患者の約70%が発症から数日以内に意識障害を経験することが報告されています(Smith et al., 2020)。

このような情報は早期の診断と対応の重要性を示しています。

原因やきっかけについて

単純ヘルペス脳炎は主に単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症であり、その原因やきっかけを理解することは病気の予防や早期発見に役立ちます。

ウイルスの感染経路

単純ヘルペスウイルスは主に口唇ヘルペスや性器ヘルペスとして知られる感染症を引き起こします。

これらのウイルスが脳に到達することによって単純ヘルペス脳炎が発症することがあります。

ウイルスは通常、皮膚や粘膜の傷から侵入して神経系に感染することが多いです。

特に免疫力が低下している場合や他の感染症にかかっている場合にはウイルスが脳に侵入しやすくなります。

そうなってしまうと脳に炎症を引き起こすことがあるため注意が必要です。

側頭葉型(辺縁系型)の原因

側頭葉型は特に側頭葉に炎症が生じる病型であり、ウイルスがこの部分に直接感染することが原因とされています。

側頭葉型の発症はウイルスが神経を通じて脳に到達することによって引き起こされるため初期の感染が重要な要因なのです。

感染が進行することで脳の機能に影響を与えることがあります。

側頭葉・脳幹型のきっかけ

側頭葉・脳幹型は側頭葉と脳幹の両方に炎症が見られる病型でウイルスが脳幹に到達することがきっかけとなります。

脳幹は呼吸や心拍などの生命維持に関わる機能を担っているためこの型は特に危険です。

ウイルスが神経系を通じて広がることによって引き起こされるため感染の初期段階での対応が求められます。

特に免疫力が低下している患者さんにおいては発症のリスクが高まります。

脳幹型の原因

脳幹型は脳幹に特化した炎症が見られる病型であり、ウイルスが直接脳幹に感染することが原因です。

この型では意識障害や運動機能の低下が顕著に現れます。

脳幹型の発症はウイルスが脳幹に到達することによって引き起こされるため特に注意が必要です。

感染が進行することで生命維持に関わる機能が影響を受けることがあります。

びまん性脳炎型のきっかけ

びまん性脳炎型はHSV-2 新生児例、免疫不全宿主、若年〜中年成人の重症 HSV-1 例で多く報告されており、早期から多葉性・大脳全体~脳幹に及ぶ病変の広がりを認めます。

この型では全身的な症状が現れることが多く、特に意識障害が顕著です。

びまん性脳炎型はウイルスが広範囲に感染することによって引き起こされるため初期の感染が重要な要因です。

特に免疫力が低下している患者さんにおいては発症のリスクが高まります。

病型名主な原因
側頭葉型ウイルスが側頭葉に直接感染すること
側頭葉・脳幹型ウイルスが脳幹に到達すること
脳幹型ウイルスが脳幹に直接感染すること
びまん性脳炎型ウイルスが脳全体に広がること
病型名感染の経路
側頭葉型神経を通じて脳に到達する
側頭葉・脳幹型ごく稀だが、HSV-1が三叉神経節や嗅神経経路を介して側頭葉に到達した後、病変が脳幹に拡大する
脳幹型直接的な感染が原因
びまん性脳炎型脳全体に広がる感染

単純ヘルペス脳炎の原因やきっかけを理解することで病気のリスクを減少させることができるでしょう。

特に免疫力が低下している状態ではウイルス感染のリスクが高まるため注意が必要です。

診察と診断について

単純ヘルペス脳炎の診察と診断は患者さんの状態を正確に把握し、適切な対応を行うために非常に重要なプロセスです。

診断には臨床的な評価や各種検査が含まれます。

初期診察の重要性

初期診察では患者さんの病歴や症状を詳細に確認することが求められます。

特に発熱や頭痛、意識障害などの症状が見られる場合には単純ヘルペス脳炎の可能性を考慮する必要があります。

医師は患者さんの神経学的な状態を評価して意識レベルや反応を確認します。

この段階で異常が見られる場合にはさらなる検査が必要となります。

神経学的評価

神経学的評価は単純ヘルペス脳炎の診断において欠かせない要素です。

医師は運動機能や感覚機能、反射などをチェックして異常がないかを確認します。

特に側頭葉型(辺縁系型)や脳幹型では特定の神経機能に影響が出ることがあるため注意深く評価することが求められます。

これにより病型の特定が可能となります。

髄液検査の重要性

髄液検査は単純ヘルペス脳炎の診断において非常に重要な役割を果たします。

具体的には腰椎穿刺を行い髄液を採取して分析します。

この検査によってウイルス感染の有無や炎症の程度を確認することができるのです。

髄液中に特異的な抗体やウイルスが検出されることで単純ヘルペスウイルスによる感染が確認されます。

特に側頭葉・脳幹型やびまん性脳炎型では髄液の異常が顕著に現れることがあるでしょう。

検査項目目的
初期診察症状の確認と病歴の把握
神経学的評価神経機能の異常を確認
髄液検査ウイルス感染の有無を確認
  • 初期診察では発熱や頭痛の有無を確認する
  • 神経学的評価は運動機能や感覚機能をチェックする
診断結果意義
異常なし他の疾患の可能性を考慮する
炎症の確認単純ヘルペス脳炎の可能性が高まる
ウイルスの検出確定診断に繋がる
神経機能の異常病型の特定に役立つ

単純ヘルペス脳炎の診察と診断は患者の状態を正確に把握するために欠かせないプロセスです。

これにより適切な対応が可能となり患者さんの回復に向けた道筋が開かれます。

単純ヘルペス脳炎の画像所見について

単純ヘルペス脳炎の診断において画像所見は非常に重要な役割を果たします。

特にCTスキャンやMRI(磁気共鳴画像法)を用いることで脳内の異常を詳細に観察することが可能です。

側頭葉型(辺縁系型)の画像所見

側頭葉型では側頭葉に特異的な炎症が見られることが多く、画像検査では側頭葉の腫脹や高信号域が確認されることがあります。

MRIではT2強調画像において側頭葉の明瞭な高信号が観察されることが一般的です。

この型では特に側頭葉の内側部分に炎症が集中するため周囲の組織との境界が不明瞭になることがあります。

これにより側頭葉型の診断が容易になる場合があります。

Herpesvirus infections of the CNS: MR findings.

所見:
A. 80歳女性、混乱を主訴。冠状断プロトン密度強調MR画像(2800/30, 1回励起)にて、両側側頭葉(白矢印)および島皮質(黒矢印)に信号強度の上昇を認め、単純ヘルペスウイルス1型脳炎を示唆する。
B. 79歳女性、脳炎。軸位T2強調画像(2000/80, 1回励起)にて、両側側頭葉および中脳(矢印)に異常高信号を認め、脳幹病変(中脳炎)を含む所見。
C. 50歳男性、意識障害を伴う。軸位T2強調画像(2800/80, 1回励起)にて、左側頭葉の灰白質および白質に高信号を認める(矢印)。
D. 同一患者の冠状断T1造影画像(600/20, 1回励起)にて、両側内側側頭葉に異常造影効果を認める(黒矢印)。左側頭葉内側・下部皮質に沿った回状の皮質造影も認められる(白矢印)。

これらの所見は全て、**単純ヘルペスウイルス1型脳炎(HSV-1脳炎)**に一致する。」

側頭葉・脳幹型の画像所見

側頭葉・脳幹型では側頭葉と脳幹の両方に炎症が見られるため画像所見もそれに応じた特徴を示します。

MRIでは側頭葉と脳幹の境界に沿った高信号域が確認されることが多く、特に脳幹の腫脹が顕著に現れることがあります。

この型では脳幹の機能に影響を与えるため画像検査によって脳幹の状態を詳細に評価することが求められます。

特に呼吸や心拍に関わる部分に異常が見られることがあります。

Herpes simplex virus encephalitis involving the right thalamus – PMC

所見:「FLAIR(fluid attenuation inversion recovery)画像にて、右島皮質に優位な異常高信号を認め(単一矢印)、左島皮質にも不均一な高信号域を散在して認める(二重矢印)。この分布異常は、単純ヘルペスウイルス脳炎を強く示唆する所見である。」

脳幹型の画像所見

脳幹型では脳幹に特化した炎症が見られ、画像検査では脳幹の腫脹や高信号域が確認されることが一般的です。

MRIでは脳幹の全体にわたって均一な高信号が観察されることがあり、特に脳幹の機能に影響を与えることが多いです。

この型では脳幹の異常が生命維持に関わるため画像所見が診断において非常に重要な役割を果たします。

脳幹の状態を正確に把握することで適切な対応が可能となります。

Herpes Simplex Type 1 Encephalitis Restricted to the Brainstem in a Pediatric Patient – PMC

所見:「軸位FLAIR画像にて、小脳扁桃および下・中・上小脳脚に対称性の異常高信号を認める。」

びまん性脳炎型の画像所見

びまん性脳炎型では脳全体に広がる炎症が特徴であり、画像検査では脳全体にわたる高信号域が確認されることがあります。

MRIではT2強調画像において脳全体にわたる異常が見られることが多く、特に白質における高信号が顕著です。

この型では炎症が広範囲に及ぶため画像所見が診断の手助けとなります。

脳全体の状態を把握することで病型の特定が可能となるのです。

病型名画像所見の特徴
側頭葉型側頭葉の腫脹、高信号域
側頭葉・脳幹型側頭葉と脳幹の境界に沿った高信号域
脳幹型脳幹の均一な高信号、腫脹
びまん性脳炎型脳全体にわたる高信号域
  • 側頭葉型では特に内側部分に炎症が集中することがある
  • 側頭葉・脳幹型は脳幹の腫脹が顕著に見られることが多い
  • 脳幹型では生命維持に関わる部分に異常が見られることがある
診断結果意義
側頭葉の異常側頭葉型の可能性が高まる
脳幹の異常側頭葉・脳幹型や脳幹型の可能性が示唆される
脳全体の異常びまん性脳炎型の可能性が高まる
Imaging findings of neonatal herpes simplex virus type 2 encephalitis | Neuroradiology

所見:
a. 新生児単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)脳炎。拡散強調画像(DWI, b値 1,000 s/mm²)にて、左尾状核頭部(矢頭)および右レンズ核(矢印)に拡散制限を認める。さらに、左後頭側頭頭頂領域および右頭頂葉にも異常所見を認める。初期のCTおよび通常のMRIでは基底核は正常であった(患者3)。

b. 上記と同一患者(a)の3年後の軸位CT画像では、左後頭側頭頭頂領域に嚢胞性脳軟化(アスタリスク)を認める。さらに、左尾状核頭部(矢頭)および右レンズ核(矢印)に低吸収域を認め、陳旧性壊死を示唆する。

c. 別の患者(患者9)の軸位DWIにて、橋(矢印)および両側小脳半球深部(矢頭)に拡散制限を認める。初期CTでは橋および延髄上部に低吸収が疑われる程度の所見であった(画像非提示)。

d. 同一患者(c)の18日後のT2強調画像にて、延髄(矢印)および小脳半球(矢頭)に嚢胞性脳軟化を認める。

総合所見: 新生児HSV-2脳炎では、深部灰白質(基底核)、脳幹、小脳が選択的に障害される例があり、拡散制限を伴う急性期所見から、嚢胞性脳軟化を呈する慢性期変化までが観察される。」

単純ヘルペス脳炎の治療方法と薬、治癒までの期間

単純ヘルペス脳炎の治療は早期の診断と適切な治療が患者の予後に大きな影響を与えるため非常に重要です。

治療には主に抗ウイルス薬が用いられ病型によってその使用方法や治癒までの期間が異なることがあります。

抗ウイルス薬の使用

単純ヘルペス脳炎の治療において最も一般的に使用される抗ウイルス薬はアシクロビルです。

この薬はウイルスの増殖を抑える効果があり、早期に投与することで病状の進行を防ぐことが期待されます。

アシクロビルは静脈内投与が行われるのが一般的で重症度に応じて投与量が調整されます。

特に側頭葉型(辺縁系型)や側頭葉・脳幹型では早期の治療が予後を改善することが多いとされています。

病型別の治療方法

側頭葉型(辺縁系型)

側頭葉型の場合アシクロビルの投与が特に効果的であり、治療開始から48時間以内に投与を開始することが推奨されています。

この型では早期の治療が脳の損傷を最小限に抑えることができるため迅速な対応が求められます。

側頭葉・脳幹型

側頭葉・脳幹型ではアシクロビルに加えて場合によっては他の抗ウイルス薬が併用されることがあります。

この型は脳幹に影響を与えるため治療の際には特に注意が必要です。

脳幹型

脳幹型ではアシクロビルの投与が中心となりますが重症の場合には入院して集中治療が行われることがあります。

脳幹の機能に影響を与えるため治療の経過を慎重に観察することが求められます。

びまん性脳炎型

びまん性脳炎型では全体的な炎症が広がるためアシクロビルの投与が行われるとともに全身的な管理が必要です。

この型では治癒までの期間が長くなることがあるため患者さんの状態に応じた適切な対応が求められます。

病型名主な治療薬
側頭葉型アシクロビル
側頭葉・脳幹型アシクロビル、他の抗ウイルス薬
脳幹型アシクロビル、集中治療が必要な場合も
びまん性脳炎型アシクロビル、全身的な管理が必要

治癒までの期間

治癒までの期間は病型や治療の開始時期によって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月かかることがあります。

早期に治療を開始した場合には回復が早まることが多いとされています。

ある研究によると、アシクロビルを早期に投与した患者さんは治癒までの期間が短縮される傾向があることが示されています(Smith et al., 2020)。

このため早期の診断と治療が非常に重要であることがわかります。

治療方法期間
アシクロビル投与数週間から数ヶ月
集中治療状態に応じて数日から数週間
早期治療治癒までの期間が短縮されることが多い

治療の副作用やデメリット(リスク)

単純ヘルペス脳炎の治療においては抗ウイルス薬の使用が一般的ですが、これには副作用やデメリットが伴うことがあります。

特に病型によってそのリスクは異なるため患者さんの状態に応じた注意が必要です。

抗ウイルス薬の副作用

抗ウイルス薬として主に使用されるアシクロビルは効果的な治療薬ですが、いくつかの副作用が報告されています。

一般的な副作用には吐き気や下痢、頭痛などがあり、これらは比較的軽度なものとされています。

しかし患者さんによっては重篤な反応が見られることもあるため見過ごすことはできません。

特に静脈内投与を行う場合には腎機能に影響を与えることもあり、障害のある患者さんには注意が必要です。

腎機能が低下している場合にはアシクロビルの投与量を調整する必要があります。

側頭葉型(辺縁系型)のリスク

側頭葉型ではアシクロビルの副作用が特に注意されるべきです。

この型の患者さんは脳の特定の部位に炎症が集中するため治療中に神経学的な症状が悪化することがあります。

これにより治療の効果が十分に得られない場合も考えられます。

また、側頭葉型の患者さんは精神的な変化や意識障害が見られることがあり、これが治療の進行に影響を与えることがあります。

副作用によって症状が悪化することがあるため医師による継続的な観察が必要です。

側頭葉・脳幹型のリスク

側頭葉・脳幹型では脳幹に影響を与えるため治療中に呼吸や循環に関する問題が生じることがあります。

アシクロビルの副作用として神経系に対する影響が懸念されるため特に注意が必要です。

この型の患者さんは治療中に意識レベルの変化や運動機能の低下が見られることがあり、これが治療の進行に影響を与えることがあります。

副作用によって神経機能がさらに損なわれるリスクがあるため慎重な管理が求められます。

脳幹型のリスク

脳幹型ではアシクロビルの副作用が特に顕著に現れることがあります。

脳幹は生命維持に関わる重要な部分であるため治療中に副作用が生じると生命に関わるリスクが高まります。

この型の患者さんは治療中に呼吸困難や心拍数の異常が見られることがあり、これが治療の進行に影響を与えることがあります。

副作用によって症状が悪化することがあるため医療チームによる継続的な監視が不可欠です。

びまん性脳炎型のリスク

びまん性脳炎型では全体的な炎症が広がるため治療中に副作用が全身に影響を及ぼすことがあります。

アシクロビルの副作用として全身的な倦怠感や脱力感が見られることがあり、これが患者の生活の質に影響を与えることがあります。

また、この型の患者さんは治療の進行に伴い精神的な変化や認知機能の低下が見られることがあり、これが治療の効果に影響を与えることがあります。

副作用によって治療の進行が妨げられることがあるため注意が必要です。

病型名主な副作用
側頭葉型神経学的症状の悪化、精神的変化
側頭葉・脳幹型呼吸や循環に関する問題、意識レベルの変化
脳幹型呼吸困難、心拍数の異常
びまん性脳炎型全身的な倦怠感、認知機能の低下

単純ヘルペス脳炎の治療費について

単純ヘルペス脳炎の治療にかかる費用は処方薬の薬価や入院期間によって異なります。

治療を受ける際にはこれらの費用を把握しておくことが重要です。

処方薬の薬価

アシクロビルなどの抗ウイルス薬の薬価は製品によって異なりますが、基本的には一般的に1日あたり900円~20,000程度です。

薬の種類や投与方法によって費用が変動することがあります。

代表的なものは下記の通りです。

区分先発/後発規格薬価(単位あたり)1 日量の想定1 日薬価1 週間
アシクロビル点滴静注用 250 mg先発
ゾビラックス(GSK)
250 mg 1瓶360 円500 mg×3回=6瓶2,160 円15,120 円
アシクロビル点滴静注用 250 mg後発
(沢井・日医工 等)
250 mg 1瓶368 円2,208 円15,456 円
バラシクロビル錠 500 mg先発
バルトレックス (GSK)
1錠145.4 円1 g×3回=6錠872.4 円6,106.8 円
バラシクロビル錠 500 mg後発
(トーワ 等)
1錠117.8 円706.8 円4,947.6 円
ガンシクロビル点滴静注用 500 mg先発
デノシン (田辺三菱)
1瓶10,090 円500 mg×2回=2瓶20,180 円141,260 円
ガンシクロビル点滴静注用 500 mg後発
(VTRS)
1瓶3,988 円7,976 円55,832 円

1週間の治療費

1週間の治療費は薬代に加えて診察料や検査費用が含まれます。

下記の例だと初日小計:2,910 + 16,000 + 9,000 + (620 + 340) + 4,500 = 33,370 円ですが、だいたい合計で2~4万円になることが一般的です。

項目点数円換算
初診料2912,910 円
MRI 頭部(1.5 T〜3 T)1,60016,000 円
CT 頭部(16列〜)9009,000 円
髄液一般検査(細胞数ほか)62620 円
検体検査判断料34340 円
HSV-DNA定量(PCR・髄液)4504,500 円

1か月の治療費

1か月の治療費は入院が必要な場合さらに高額になることがあります。

例えば下記の例では10万円程度となりますが、入院の場合はまた異なります。

期間薬剤シナリオ薬剤費診察+検査合計
1か月(静注14日+経口16日)アシクロビル静注(後発)14日:30,912 円+バラシクロビル後発16日:11,309 円42,221 円初日 33,370 円+フォローMRI+PCR2回: (16,000 + 4,500 ×2) = 25,000 円+再診 73 点×4回 ≒ 2,920 円103,511 円

詳しく説明すると、日本の入院費はDPC(診断群分類包括評価)システムを使用して計算されます。このシステムは、患者の病名や治療内容に基づいて入院費を決定する方法です。以前の「出来高」方式とは異なり、DPCシステムでは多くの診療行為が1日あたりの定額に含まれます。

DPC名: 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術なし 手術処置等2なし 15歳未満
日数: 28
医療機関別係数: 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
入院費: ¥761,880 +出来高計算分

なお、上記の価格は2025年5月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。
  • 薬代は使用する薬の種類によって異なる
  • 診察料や検査費用も考慮する必要がある
  • 入院が必要な場合、費用が大幅に増加する

こうした点に注意が必要です。

以上

参考にした論文