内分泌疾患の一種である甲状腺髄様癌(こうじょうせんずいようがん)とは、甲状腺にある特殊な細胞から発生する比較的まれな癌の一つです。

この癌は他の甲状腺癌とは異なる特徴を持っており、遺伝性のものと散発性のものがあります。

遺伝性の場合には家族歴が重要な要素となりますが、散発性の場合は原因が明確でないことが多いです。

甲状腺髄様癌(MTC)は初期段階では症状がほとんどないことが多く、進行するにつれて首の腫れや嚥下困難などの症状が現れることがあります。

早期発見が重要ですが一般的な甲状腺機能検査では見つかりにくいため、専門的な検査が必要となります。

目次

甲状腺髄様癌の病型

甲状腺髄様癌の3つの主要な病型

甲状腺髄様癌(こうじょうせんずいようがん)には大きく分けて3つの主要な病型が存在します。

それぞれの病型によって発症のメカニズムや遺伝的な背景が異なるため、個々の状況に応じた対応が必要です。

MEN2A症候群関連(遺伝性)

MEN2A症候群関連の甲状腺髄様癌は遺伝性の病型の一つです。

この病型は多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A)と呼ばれる遺伝性疾患の一部として発症します。

MEN2A症候群では甲状腺髄様癌以外にも副甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫が併発することがあります。

以下はMEN2A症候群に関連する主な特徴です。

特徴説明
遺伝子変異RET遺伝子の特定の変異
発症年齢比較的若年(20〜30代)
家族歴多くの場合あり
他の内分泌腫瘍副甲状腺腫瘍、褐色細胞腫

MEN2A症候群関連の甲状腺髄様癌の特徴として以下の点が挙げられます。

  • 若年での発症が多い
  • 家族内での発症が見られる
  • 他の内分泌腫瘍を伴うことがある

MEN2B症候群関連(遺伝性)

MEN2B症候群関連の甲状腺髄様癌は、MEN2A症候群関連のものよりもさらに稀な遺伝性の病型です。

この病型は多発性内分泌腫瘍症2B型(MEN2B)という遺伝性疾患の一部として発症します。

MEN2B症候群では甲状腺髄様癌に加えて、褐色細胞腫や特徴的な身体的特徴(マルファン症候群様の体型、粘膜神経腫など)が見られることがあります。

次の表はMEN2B症候群に関連する主な特徴です。

特徴説明
遺伝子変異RET遺伝子の特定の変異(MEN2Aとは異なる)
発症年齢極めて若年(幼児期〜思春期)
家族歴必ずしも明確でない場合もある
他の症状特徴的な身体的特徴、消化器症状

MEN2B症候群関連の甲状腺髄様癌(MTC)の特徴は以下の通りです。

  • 極めて若年での発症
  • 急速な進行の可能性
  • 特徴的な身体的特徴を伴うことが多い

散発性(非遺伝性)甲状腺髄様癌

散発性の甲状腺髄様癌は遺伝性のものとは異なり、特定の遺伝子変異を受け継ぐことなく発症する病型です。

この病型は甲状腺髄様癌全体の約75〜80%を占めており、最も一般的な形態と言えます。

散発性の甲状腺髄様癌は通常、中年以降に発症することが多く、家族歴がないことが特徴です。

以下の表は散発性甲状腺髄様癌の主な特徴をまとめたものです。

特徴説明
遺伝子変異後天的なRET遺伝子変異が多い
発症年齢中年以降が多い
家族歴なし
他の内分泌腫瘍通常は伴わない

散発性甲状腺髄様癌の特徴として次の点が挙げられます。

  • 家族歴がない
  • 中年以降での発症が多い
  • 他の内分泌腫瘍を伴うことは稀

遺伝性と散発性の違いの重要性

甲状腺髄様癌の病型を正確に把握することは患者様の管理において不可欠です。

遺伝性の病型(MEN2A関連およびMEN2B関連)では家族のスクリーニングが必要となる場合があります。一方、散発性の場合は患者様個人の経過観察が中心です。

このように病型によってアプローチが異なるため、正確な診断と分類が求められます。

遺伝性と散発性の違いを理解することで患者様やご家族の方々は自身の状況をより深く理解し、適切な対応を取ることができるようになります。

MTCの主症状

甲状腺髄様癌の初期症状

甲状腺髄様癌(MTC)はその初期段階において特徴的な症状をほとんど示さないことが多く、これが早期発見を困難にする一因です。

しかしながら病状の進行に伴い、徐々に様々な症状が現れ始めます。

初期症状として最も一般的なものは、首の前面にある甲状腺の部位に小さなしこりや腫れが生じることです。

このしこりは通常痛みを伴わず、患者自身が気づかないうちに大きくなっていくことがあります。

以下の表は甲状腺髄様癌の初期症状をまとめたものです。

症状特徴
首のしこり無痛性、徐々に増大
嚥下困難軽度の違和感程度
声の変化かすれ声や軽いしゃがれ声
頸部不快感軽度の圧迫感や違和感

これらの症状は必ずしも甲状腺髄様癌特有のものではなく、他の良性疾患でも見られることがあります。

そのためこれらの症状に気づいた際には専門医による詳細な検査を受けることが重要です。

進行に伴う主要症状

甲状腺髄様癌が進行するにつれて、より明確な症状が現れ始めます。

これらの症状は腫瘍の増大や周囲の組織への浸潤、さらには転移に関連して生じるのです。

以下はその主要な症状です。

  • 首のしこりの増大と固定
  • 嚥下困難の悪化
  • 声の変化(嗄声)の進行
  • 呼吸困難

特に嚥下困難や呼吸困難は腫瘍が周囲の組織を圧迫したり、浸潤したりすることで生じる深刻な症状です。

これらの症状が現れた場合、迅速な医療介入が必要となります。

ホルモン関連症状

甲状腺髄様癌の特徴的な点は腫瘍細胞がカルシトニンという特殊なホルモンを産生することです。

このホルモンの過剰分泌により、様々な全身症状が引き起こされる可能性があります。

下記の表はカルシトニン過剰分泌に関連する主な症状をまとめたものです。

症状説明
下痢持続的または断続的な水様性下痢
顔面紅潮突然の顔面の赤み
骨痛骨密度低下に伴う痛み
体重減少原因不明の体重減少

これらの症状は甲状腺髄様癌の進行度や個人差によって現れ方が異なります。

時には局所的な症状よりも先にこれらのホルモン関連症状が現れることもあるため、注意が必要です。

転移に伴う症状

甲状腺髄様癌は進行すると他の臓器に転移する可能性があります。転移先としては頸部リンパ節、肺、肝臓、骨などが一般的です。

転移に伴う症状は転移先の臓器によって異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。

  • 頸部リンパ節転移 首や鎖骨上のしこり
  • 肺転移 咳、呼吸困難、胸痛
  • 肝臓転移 右上腹部痛、黄疸
  • 骨転移 骨痛、病的骨折

これらの症状が現れた際には既に癌が進行している可能性が高いため、速やかな医療機関の受診が不可欠です。

非特異的症状と全身症状

甲状腺髄様癌の進行に伴い様々な非特異的症状や全身症状が現れることがあります。

これらの症状は必ずしも甲状腺髄様癌に特有のものではありませんが、患者の生活の質に大きな影響を与えかねません。

以下は甲状腺髄様癌に関連する非特異的症状と全身症状をまとめたものです。

症状カテゴリー具体的な症状
全身症状倦怠感、発熱、食欲不振
消化器症状悪心、嘔吐、腹痛
神経症状頭痛、めまい、しびれ感
精神症状不安、抑うつ、不眠

これらの症状は癌そのものの影響やホルモンバランスの乱れ、さらには患者の心理的ストレスなど様々な要因が複雑に絡み合って生じます。

症状の管理と患者のQOL向上のためには総合的なアプローチが重要です。

甲状腺髄様癌の症状は多岐にわたり、その現れ方も個人差が大きいことを理解しておく必要があります。

原因と発症メカニズム

MTCの基本的な発生機序

甲状腺髄様癌は甲状腺のC細胞と呼ばれる特殊な細胞から発生する悪性腫瘍です。この癌の発生には遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合っています。

C細胞は通常、カルシトニンというホルモンを分泌し、体内のカルシウム濃度の調整に関与しているのです。

しかし何らかの理由でC細胞に遺伝子変異が蓄積すると細胞の増殖制御機構が破綻し、無秩序な増殖が始まります。

この過程で正常なC細胞が癌細胞へと変化していくのです。

遺伝性甲状腺髄様癌の原因

遺伝性甲状腺髄様癌は主にRET遺伝子の生殖細胞系列変異によって引き起こされます。

RET遺伝子は細胞の成長と分化を制御する重要な役割を果たしています。

この遺伝子に変異が生じると細胞の増殖制御が失われ、癌化のリスクが高まるのです。

遺伝性甲状腺髄様癌は主に以下の2つの病型に分類されます。

  • MEN2A症候群関連甲状腺髄様癌
  • MEN2B症候群関連甲状腺髄様癌

これらの病型ではRET遺伝子の異なる部位に変異が生じることでそれぞれ特徴的な臨床像を呈します。

以下の表はMEN2A症候群とMEN2B症候群の主な特徴をまとめたものです。

病型主な特徴
MEN2A甲状腺髄様癌、副甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫
MEN2B甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、特徴的な体型、粘膜神経腫

遺伝性甲状腺髄様癌の場合は親から子へと変異遺伝子が受け継がれるため、家族性に発症することが多いのが特徴です。

散発性甲状腺髄様癌の原因

散発性甲状腺髄様癌は遺伝性のものとは異なり、生涯の中で後天的に発生する癌です。

この型の甲状腺髄様癌の正確な原因は完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。

以下は散発性甲状腺髄様癌の発生に関与する可能性のある要因です。

  • 体細胞におけるRET遺伝子の突然変異
  • その他の遺伝子の変異や異常
  • 環境要因(放射線被曝など)
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 慢性的な炎症

これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用することで、C細胞の癌化が引き起こされると考えられています。

遺伝子変異の種類と影響

甲状腺髄様癌の発生に関与する遺伝子変異、特にRET遺伝子の変異には様々な種類があります。

これらの変異の違いにより、癌の攻撃性や発症年齢、随伴症状などが異なってくることが知られています。

主なRET遺伝子変異とその特徴は次の通りです。

変異タイプ主な特徴
コドン634変異MEN2Aの最も一般的な変異、比較的早期発症
コドン918変異MEN2Bに特徴的、極めて早期に発症、攻撃性が高い
コドン768変異比較的穏やかな経過をたどることが多い

これらの遺伝子変異の種類を理解することは個々の患者の状態を適切に評価し、最適な対応を行う上で不可欠です。

環境要因と甲状腺髄様癌

環境要因が甲状腺髄様癌の発生に与える影響についてはまだ十分に解明されていない部分が多いですが、いくつかの要因が関与している可能性が指摘されています。

特に注目されているのが以下の要因です。

  • 放射線被曝
  • 化学物質への曝露
  • 慢性的なストレス
  • 食生活の影響

例えば放射線被曝は甲状腺細胞のDNAに直接的な損傷を与え、遺伝子変異を引き起こすことがあります。

化学物質への曝露も同様のメカニズムで細胞の遺伝子に悪影響を及ぼす危険性も出てくるのです。

慢性的なストレスは体内のホルモンバランスを乱し、間接的に甲状腺の機能に影響を与える可能性が考えられます。

食生活、特にヨウ素の摂取量の偏りは甲状腺の機能に影響を与え、長期的には甲状腺疾患のリスクを高めるケースもあります。

しかしながらこれらの環境要因と甲状腺髄様癌の直接的な因果関係については、さらなる研究が必要とされています。

診察と診断プロセス

初診時の問診と身体診察

甲状腺髄様癌の診断プロセスは詳細な問診と綿密な身体診察から始まります。

ここで病歴、家族歴、生活習慣などについて丁寧に聴取し、甲状腺髄様癌の可能性を示唆する情報を収集します。

特に家族歴の聴取は重要で、多発性内分泌腫瘍症候群(MEN)の可能性を探るのです。

身体診察では甲状腺の触診を中心に、頸部リンパ節の腫大の有無なども確認します。

以下は初診時の主な問診項目です。

問診項目確認内容
家族歴甲状腺疾患、MENの有無
既往歴放射線被曝歴、他の内分泌疾患
自覚症状頸部の腫れ、嚥下困難感など
生活習慣喫煙、飲酒、食生活など

これらの情報はその後の診断プロセスの方向性を決める上で重要な役割を果たします。

血液検査による生化学的診断

甲状腺髄様癌の診断において血液検査は不可欠な役割を果たします。特にカルシトニンとCEA(癌胎児性抗原)の測定は診断の中核をなす検査です。

カルシトニンは甲状腺C細胞から分泌されるホルモンで、甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーとして非常に有用です。

CEAも同様に甲状腺髄様癌の進行度や再発の指標として用いられます。

これらのマーカーの血中濃度が上昇している場合、甲状腺髄様癌の疑いが強まります。

主な血液検査項目とその意義は次の通りです。

検査項目意義
カルシトニン甲状腺髄様癌の特異的マーカー
CEA進行度・再発の指標
甲状腺機能検査甲状腺全体の機能評価
カルシウム副甲状腺機能の評価

これらの検査結果は診断の確定だけでなく、病状の進行度や予後の予測にも活用されます。

画像診断の役割

画像診断は甲状腺髄様癌の局在診断や進展度評価において重要な役割を果たします。

主に用いられる画像診断法には超音波検査、CT、MRI、PET-CTなどがあります。

これらの検査を組み合わせることで、腫瘍の大きさ、位置、周囲組織への浸潤、リンパ節転移、遠隔転移などを詳細に評価することが可能です。

特に超音波検査は非侵襲的で繰り返し実施できるため、スクリーニングや経過観察に広く用いられています。

主な画像診断法とその特徴は以下の通りです。

  • 超音波検査 甲状腺の詳細な観察、穿刺吸引細胞診のガイドに使用
  • CT 周囲組織への浸潤、リンパ節転移の評価に有用
  • MRI 軟部組織の詳細な評価が可能
  • PET-CT 全身の転移巣検索に有効

これらの画像診断法を適切に組み合わせることで、より正確な病態評価が可能となります。

遺伝子検査の意義

甲状腺髄様癌の診断において遺伝子検査は特に重要な位置を占めています。

主にRET遺伝子の変異の有無を調べることで、遺伝性甲状腺髄様癌の可能性を評価できるのです。

遺伝子検査は患者さん本人だけでなく、ご家族の健康管理にも大きな影響を与える可能性があります。

遺伝子検査の主な対象と意義は次の通りです。

検査対象意義
RET遺伝子遺伝性甲状腺髄様癌の診断
家族のスクリーニング発症前診断、早期介入
病型の分類MEN2AとMEN2Bの鑑別

遺伝子検査の結果は個々の患者さんに合わせた管理方針の決定に大きく寄与します。

病理組織学的診断

甲状腺髄様癌の確定診断には病理組織学的検査が不可欠です。

主に穿刺吸引細胞診(FNA)や生検によって得られた組織を顕微鏡で観察し、癌細胞の有無や特徴を詳細に評価します。

また、免疫組織化学染色を用いることで、カルシトニンやCEAなどの特異的マーカーの発現を確認し、より確実な診断を行います。

病理組織学的診断で提供される情報は次の通りです。

  • 癌細胞の形態学的特徴
  • 腫瘍の分化度
  • 特異的マーカーの発現パターン
  • 周囲組織への浸潤の程度

これらの情報は最終的な診断の確定と治療方針の決定に重要な役割を果たします。

MTCの特徴的な画像所見

超音波検査における甲状腺髄様癌の特徴

甲状腺髄様癌の診断において超音波検査は非常に重要な役割を果たします。この検査法は非侵襲的で繰り返し実施可能であり、腫瘍の詳細な観察が可能です。

甲状腺髄様癌の超音波像にはいくつかの特徴的な所見が認められます。

腫瘍は通常、低エコー性の充実性腫瘤として描出されます。

その形状は不整形であることが多く境界は比較的明瞭ですが、周囲組織への浸潤を示唆する不明瞭な部分が見られることも少なくありません。

内部エコーは不均一で小さな高エコー域(石灰化)を伴うこともしばしばみられます。

以下は甲状腺髄様癌の超音波所見の主な特徴をまとめたものです。

特徴所見
エコーレベル低エコー
形状不整形
境界比較的明瞭(一部不明瞭)
内部エコー不均一
石灰化微小点状高エコー

これらの所見は甲状腺髄様癌を示唆する重要な手がかりとなりますが、確定診断には他の検査法との組み合わせが必要です。

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Wang, Liang et al. “The Diagnostic Value of Ultrasound in Medullary Thyroid Carcinoma: A Comparison With Computed Tomography.” Technology in cancer research & treatment vol. 19 (2020): 1533033820905832.

所見:37歳男性の髄様甲状腺癌(MTC)の超音波画像である。腫瘍は主に充実性で卵形を呈し、等エコーから低エコーのエコー特性を示し、境界は明瞭であり、高さ/幅比が1未満であることを認める。

CT検査で見られる甲状腺髄様癌の特徴

CT検査は甲状腺髄様癌の局在診断や進展度評価に有用です。特に腫瘍の周囲組織への浸潤やリンパ節転移の評価に優れています。

甲状腺髄様癌のCT像では通常、造影前の単純CTで甲状腺内に低吸収域として描出される腫瘤が認められます。

造影CTでは腫瘍は不均一に造影され、周囲の正常甲状腺組織と比較してやや低吸収を示すことが多いです。

また、しばしば腫瘍内に微小な高吸収域(石灰化)が観察されます。

以下はCT検査で観察される甲状腺髄様癌の主な特徴です。

  • 甲状腺内の低吸収腫瘤
  • 不均一な造影効果
  • 微小石灰化の存在
  • 周囲組織への浸潤所見
  • 頸部リンパ節腫大

これらの所見を総合的に評価することで腫瘍の進展度や手術の適応を判断する上で貴重な情報が得られます。

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Wang, Liang et al. “The Diagnostic Value of Ultrasound in Medullary Thyroid Carcinoma: A Comparison With Computed Tomography.” Technology in cancer research & treatment vol. 19 (2020): 1533033820905832.

所見:右甲状腺における髄様甲状腺癌(MTC)のCT画像である。A、甲状腺を通る非造影軸位CTスキャンにて低密度の腫瘤を認める。BおよびC、軸位造影CTでは、動脈相および遅延相で病変(矢印)が軽度に造影されていることを示している。

MRI検査による甲状腺髄様癌の評価

MRI検査は軟部組織のコントラスト分解能に優れており、甲状腺髄様癌の詳細な評価に有用です。特に腫瘍の内部構造や周囲組織との関係を明確に描出することができます。

T1強調像では甲状腺髄様癌は通常、正常甲状腺組織と比較して低信号を示します。

T2強調像では腫瘍は不均一な高信号として描出されることが多く、内部に低信号域(線維化や石灰化)が混在する場合があります。

造影MRIでは腫瘍は不均一に増強され、周囲組織との境界が明瞭となるのです。

MRI検査における甲状腺髄様癌の典型的な信号特性は以下の通りです。

撮像法信号特性
T1強調像低信号
T2強調像不均一な高信号
造影T1強調像不均一な増強効果

MRI検査は特に腫瘍の軟部組織浸潤の評価に優れており、手術計画の立案に重要な情報を提供します。

PET-CTによる全身評価

PET-CT検査は甲状腺髄様癌の全身転移検索に非常に有用です。

この検査では腫瘍細胞の代謝活性を反映するFDG(フルオロデオキシグルコース)の取り込みを画像化します。

甲状腺髄様癌は通常、原発巣でFDGの高度な集積を示します。また、転移巣においても同様の集積が見られるため全身の転移巣を一度に評価することができます。

PET-CT検査の主な利点は以下の通りです。

  • 全身の転移巣を一度に評価可能
  • 代謝活性に基づく機能的評価
  • 解剖学的情報と機能的情報の融合

しかしFDGの集積は炎症性病変でも見られるため、他の画像検査や臨床情報と併せて総合的に判断する必要があります。

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Object name is JTR2019-1893047.001.jpg
Kushchayev, Sergiy V et al. “Medullary Thyroid Carcinoma: An Update on Imaging.” Journal of thyroid research vol. 2019 1893047. 7 Jul. 2019,

所見:転移性髄様甲状腺癌の異なる放射線技術を用いた画像である。(a) 全身拡散強調磁気共鳴画像(DWI)、(b) 全身造影磁気共鳴画像(T1強調画像、3DレンダリングDCE)、(c) 陽電子放射断層撮影/磁気共鳴画像融合技術(18F-FDG-PET/MR画像融合技術)、(d) 18F-FDGを用いた陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(18F-FDG PET/CT)。DWIおよびDCE画像において、複数の肝転移(黄色矢印)、縦隔転移(赤色矢印)、および左腸骨の大きな転移(緑色矢印)が優れた可視化を示しており、これらは18F-FDG PET/CTと比較しても同等であるが、全く異なる生物物理的組織特性を調査している点に留意すること。なお、PET撮影時には腕を上げ、MR撮影時には腕を下げているため、画像が完全にコレジストレーションされていないことに留意すること。

画像所見と病型との関連

甲状腺髄様癌の画像所見はその病型によってわずかに異なる特徴を示すことがあります。

MEN2A症候群関連の甲状腺髄様癌では多発性の小さな腫瘍が両側の甲状腺に見られることが多いです。

一方、MEN2B症候群関連の甲状腺髄様癌は、より早期に発症して急速に進行する傾向があるため、画像上でも進行した所見を示すことがあります。

散発性(非遺伝性)の甲状腺髄様癌は通常、単発性の腫瘍として描出されます。

以下は各病型と典型的な画像所見の関連をまとめたものです。

病型典型的な画像所見
MEN2A関連両側性、多発性の小腫瘍
MEN2B関連早期から進行した所見
散発性単発性腫瘍

これらの特徴を理解することで画像所見から病型を推測し、より適切な診断・管理につなげることができます。

治療法と経過

外科的治療 基本的アプローチ

甲状腺髄様癌の治療において外科的切除は最も重要な治療法です。一般的に甲状腺全摘出術と中央頸部リンパ節郭清が標準的な手術方法とされています。

腫瘍の進行度や転移の有無によっては側頸部リンパ節郭清も追加されることがあります。

手術の範囲は術前の画像診断や生検結果、血液検査の結果などを総合的に判断して決定されるのが一般的です。

甲状腺髄様癌の手術方法とその適応は次の通りです。

手術方法適応
甲状腺全摘出術ほぼ全例
中央頸部リンパ節郭清標準的に実施
側頸部リンパ節郭清転移が疑われる場合
縦隔リンパ節郭清進行例、再発例

手術の目的は腫瘍の完全切除と潜在的な転移巣の除去です。早期の段階で適切な手術を行うことで良好な予後が期待できます。

放射線療法の役割

甲状腺髄様癌における放射線療法の役割は主に局所進行例や手術後の再発リスクが高い症例に限定されています。

外科的切除が困難な局所進行例や術後の残存腫瘍に対して放射線療法が考慮されます。また、骨転移などによる疼痛緩和目的で用いられることもあるでしょう。

放射線療法の適応と目的は以下の通りです。

  • 切除不能な局所進行例での腫瘍制御
  • 術後の局所再発リスク低減
  • 転移巣(特に骨転移)の症状緩和
  • 緩和的治療としての使用

放射線療法は個々の患者の状態や腫瘍の進行度を考慮して、慎重に適応が判断されます。

分子標的薬による治療

近年、進行性または転移性の甲状腺髄様癌に対して分子標的薬が新たな治療選択肢として注目されているのです。

これらの薬剤は甲状腺髄様癌の発生や進行に関与する特定の分子を標的としています。

主に使用される分子標的薬はバンデタニブやカボザンチニブなどです。

以下の表は甲状腺髄様癌治療に用いられる主な分子標的薬をまとめたものです。

薬剤名主な標的
バンデタニブRET、VEGFR、EGFR
カボザンチニブRET、MET、VEGFR2
ソラフェニブRAF、VEGFR、PDGFR

これらの薬剤は手術不能または転移性の甲状腺髄様癌患者に対して、腫瘍の進行を遅らせる効果が期待されています。

化学療法の位置づけ

従来の細胞毒性化学療法は甲状腺髄様癌に対しては限定的な効果しか示さないことが知られています。

そのため現在では主に他の治療法が無効な進行例や症状緩和が必要な場合に考慮されます。

使用される薬剤にはドキソルビシン、シスプラチン、5-FUなどがありますが、その効果は個人差が大きいです。

化学療法の主な目的と考慮点は以下の通りです。

  • 進行例での腫瘍増大抑制
  • 症状緩和
  • 他の治療法との併用による相乗効果
  • 副作用と生活の質のバランス

化学療法の使用は、患者の全身状態や腫瘍の進行度、期待される効果と副作用のバランスを慎重に検討した上で決定されます。

治療効果のモニタリングと経過観察

甲状腺髄様癌の治療効果は主に血中カルシトニン値とCEA値のモニタリングによって評価されます。

これらのマーカーは治療の反応性や再発の早期発見に有用です。

治療後の経過観察は長期にわたって継続されることが多く、定期的な画像検査と血液検査が実施されます。

甲状腺髄様癌の経過観察における主なチェックポイントは次の通りです。

検査項目頻度
血中カルシトニン3-6ヶ月ごと
CEA3-6ヶ月ごと
頸部超音波検査6-12ヶ月ごと
全身CT/MRI必要に応じて

経過観察の期間や頻度は個々の患者の状態や初期治療の結果によって調整されるでしょう。

治癒までの期間と予後

甲状腺髄様癌の治癒までの期間は診断時の病期や治療の反応性によって大きく異なります。

早期に発見され完全切除が可能であった場合、5年生存率は90%以上と報告されています。

一方、進行例や転移を有する症例では完全治癒が困難な場合もあり、長期的な管理が必要です。

予後に影響を与える主な因子には以下のようなものがあります。

  • 診断時の病期
  • 完全切除の可否
  • RET遺伝子変異の有無
  • 年齢
  • 遠隔転移の有無

甲状腺髄様癌の治療は外科的切除を中心とし、必要に応じて放射線療法や分子標的薬、化学療法を組み合わせて行われます。

治療方針は個々の患者の状態に応じて慎重に決定され、長期的な経過観察が重要です。

治癒までの期間は症例によって大きく異なりますが、早期発見と適切な治療により良好な予後が期待できるでしょう。

患者さん一人一人の状況に合わせた総合的なアプローチが、甲状腺髄様癌の治療成功の鍵となります。

MTCの治療に伴う副作用とリスク

外科的治療に関連する副作用とリスク

甲状腺髄様癌の外科的治療は腫瘍の完全切除を目指す重要な手段ですが、いくつかの副作用やリスクを伴うこともあるでしょう。

手術の範囲や患者の状態によってその程度は異なりますが、主な副作用として以下のようなものが挙げられます。

術後の声の変化や嚥下困難は反回神経や上喉頭神経への影響によって生じる可能性があります。

これらの症状は一時的なものから永続的なものまで程度の差が生じます。また、甲状腺全摘出後は甲状腺ホルモンの永続的な補充が必要です。

以下の表は外科的治療に伴う主な副作用とそのリスクをまとめたものです。

副作用リスク
声の変化5-10%
嚥下困難3-5%
副甲状腺機能低下症1-2%
出血・感染1% 未満

上記のような副作用は手術手技の向上や術中モニタリングの導入により発生率は低下傾向にありますが、完全に避けることは困難です。

放射線療法に伴う副作用

放射線療法は局所進行例や手術後の再発リスクが高い症例に対して実施されることがありますが、いくつかの副作用を伴う可能性が否めません。

急性期の副作用としては照射部位の皮膚炎や粘膜炎、口腔内乾燥、嚥下痛などが挙げられます。

これらの症状は一般的に一時的なものですが、患者の生活の質に影響を与えるケースもでてきます。

長期的な副作用としては、以下のようなものが報告されています。

  • 唾液腺機能低下による口腔内乾燥
  • 甲状腺機能低下
  • 頸部の線維化や硬化
  • 二次癌のリスク増加

これらの副作用は照射線量や照射野、患者の個体差によって発生頻度や程度が異なるでしょう。

分子標的薬による治療の副作用

分子標的薬は進行性または転移性の甲状腺髄様癌に対して効果が期待される新たな治療選択肢ですが、特有の副作用プロファイルを有します。

主な副作用には高血圧、下痢、皮膚症状(発疹、手足症候群など)、倦怠感などがあります。

これらの副作用は薬剤の作用機序に関連して発生するため、ある程度予測可能ですが、管理が必要となります。

主な分子標的薬とその代表的な副作用は次の通りです。

薬剤名主な副作用
バンデタニブ高血圧、下痢、QT延長
カボザンチニブ手足症候群、下痢、倦怠感
ソラフェニブ皮膚症状、高血圧、甲状腺機能低下

これらの副作用は用量調整や支持療法によって管理可能な場合が多いですが、重篤化する可能性もあるため、慎重なモニタリングが重要です。

化学療法に伴う副作用

従来の細胞毒性化学療法は甲状腺髄様癌に対しては限定的な効果しか示さないことが知られていますが、使用される場合には様々な副作用が生じる可能性があります。

主な副作用には以下のようなものがあります。

  • 骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)
  • 消化器症状(悪心・嘔吐、食欲不振)
  • 脱毛
  • 倦怠感
  • 末梢神経障害

これらの副作用は使用する薬剤の種類や投与量、患者の全身状態によって発生頻度や程度が異なります。

化学療法の副作用は患者さんの生活の質に大きな影響を与えるケースもあるため、慎重な管理と支持療法が必要です。

ホルモン補充療法に関連するリスク

甲状腺全摘出後は甲状腺ホルモンの永続的な補充が必要となります。この補充療法自体は比較的安全ですが、長期にわたるホルモン管理には注意が必要です。

過剰な甲状腺ホルモン補充によって生じるリスクは次の通りす。

  • 骨密度低下と骨折リスクの増加
  • 心房細動などの不整脈
  • 動悸や発汗過多などの症状

一方、不十分な補充は甲状腺機能低下症の症状を引き起こす可能性があります。

適切なホルモン補充量の調整と定期的なモニタリングが重要です。

心理的影響とQOLへの影響

甲状腺髄様癌の治療は身体的な副作用だけでなく、心理的な影響も大きいことが認識されています。

長期にわたる治療や経過観察、再発の不安などが患者のメンタルヘルスに影響を与えることが少なくありません。

以下は甲状腺髄様癌患者が経験する可能性のある心理的影響です。

  • 不安やうつ症状
  • ボディイメージの変化に伴うストレス
  • 社会生活や仕事への影響による自尊心の低下
  • 将来への不確実性に対する恐れ

これらの心理的影響は患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与えてしまう可能性を秘めています。

そのため心理的サポートや患者さんへの指導も治療の重要な一部となるのです。

再発リスクと予防戦略

再発のメカニズムと頻度

甲状腺髄様癌は初期治療後も再発のリスクが存在する疾患です。

再発は初期治療で取り除けなかった微小な腫瘍細胞が増殖することで起こります。

再発の頻度は初期の病期や治療の完全性、遺伝的要因などによって異なりますが、一般的に10年以内の再発率は20-30%程度とされています。

再発のパターンとしては局所再発(頸部)と遠隔転移(肺、肝臓、骨など)があり、それぞれ異なるアプローチが必要です。

甲状腺髄様癌の再発パターンとその特徴は以下の通りです。

再発パターン特徴
局所再発頸部リンパ節や残存甲状腺組織に発生
遠隔転移肺、肝臓、骨などに多い

再発のリスクは時間とともに低下しますが、長期にわたる経過観察が重要です。

再発リスク因子の理解

甲状腺髄様癌の再発リスクはいくつかの要因によって影響を受けます。

これらのリスク因子を理解することで、個々の患者さんに適した予防策を講じることができます。

主なリスク因子は次の通りです。

  • 初期の病期(進行度が高いほどリスクが高い)
  • 腫瘍の完全切除の可否
  • リンパ節転移の有無と範囲
  • RET遺伝子変異の存在と種類
  • 初期治療後の血中カルシトニン値とCEA値

特にRET遺伝子変異の種類は再発リスクと密接に関連しています。例えばMEN2B症候群に関連する特定の変異は、より攻撃的な経過をたどる傾向です。

以下の表は主なRET遺伝子変異と再発リスクの関連をまとめたものです。

RET遺伝子変異再発リスク
コドン634変異中程度
コドン918変異高い
コドン768変異比較的低い

これらのリスク因子を総合的に評価することで個々の患者の再発リスクを予測し、適切な予防策を講じることができます。

定期的なフォローアップの重要性

甲状腺髄様癌の再発を早期に発見し、適切に対応するためには定期的なフォローアップが不可欠です。

フォローアップの頻度と内容は個々の患者さんの再発リスクに応じて調整されますが、一般的には以下のような項目が含まれます。

  • 定期的な血中カルシトニン値とCEA値の測定
  • 頸部超音波検査
  • 必要に応じたCTやMRI検査
  • 全身状態の評価

これらの検査を定期的に実施することで再発の早期発見が可能となるでしょう。

また、フォローアップは単なる検査だけでなく、患者の心理的サポートや生活指導の機会としても重要です。

生活習慣の改善による再発予防

甲状腺髄様癌の再発予防において患者自身の生活習慣の改善も重要な役割を果たします。

健康的な生活習慣は全身の免疫機能を高め、潜在的な腫瘍細胞の増殖を抑制する可能性が高まるでしょう。

以下は再発予防に寄与する可能性のある生活習慣の改善点です。

  • バランスの取れた食事
  • 定期的な運動
  • 十分な睡眠とストレス管理
  • 禁煙
  • 適度な体重維持

これらの生活習慣の改善は甲状腺髄様癌の直接的な予防効果に加えて、全身の健康状態を向上させてQOLの維持にも寄与します。

家族性甲状腺髄様癌の予防戦略

家族性甲状腺髄様癌(MEN2A症候群やMEN2B症候群に関連するもの)の場合、遺伝子検査に基づく予防的アプローチが重要です。

RET遺伝子変異が確認された家系では未発症の家族全員に対して以下のような予防策が考えられます。

  • 定期的な遺伝子検査とカウンセリング
  • リスクに応じた予防的甲状腺切除の検討
  • 他の内分泌腫瘍の定期的なスクリーニング

これらの予防策は個々の家族の状況やリスクレベルに応じて慎重に検討される必要があります。

以下の表はRET遺伝子変異のタイプと推奨される予防的介入の時期をまとめたものです。

RET変異タイプ予防的介入の推奨時期
高リスク変異5歳未満
中リスク変異5-10歳
低リスク変異10歳以降

家族性甲状腺髄様癌の予防には長期的な視点と家族全体のケアが重要です。

MTCの治療に関わる費用

甲状腺髄様癌の治療費は病状や治療方法によって大きく異なりますが、初期の外科的治療から長期的なフォローアップまで様々な費用が発生し、一般的に高額になる傾向です。

患者さんの経済的負担を軽減するため、公的医療保険や高額療養費制度以外にも民間の医療保険や各種支援制度の活用が重要です。

初診・再診料

初診料は通常2,910円~5,410円、再診料は750円~2,660円です。

検査費用

血液検査、画像検査など、一連の検査費用は合計で数万円から10万円程度になることがあります。

検査項目概算費用
血液検査4,200円(血液一般+生化学5-7項目の場合)
+カルシトニン 1,300円+CEA 990円+CA19-9 1,240円
CT検査14,500円~21,000円

手術費用

手術費用は術式や入院期間によって異なりますが、100万円から300万円程度かかることがあります。

手術のみでは、甲状腺悪性腫瘍手術
1 切除
(頸部外側区域郭清を伴わないもの)241,800円
2 切除
(頸部外側区域郭清を伴うもの)261,800円
3 全摘及び亜全摘
(頸部外側区域郭清を伴わないもの)337,900円
4 全摘及び亜全摘
(片側頸部外側区域郭清を伴うもの)357,900円
5 全摘及び亜全摘
(両側頸部外側区域郭清を伴うもの)367,900円

と値段は様々です。

入院費用

入院費用は1日あたり5,000円から20,000円程度で、入院期間によって総額が変動します。

入院タイプ1日あたりの概算費用
一般病棟5,000円〜10,000円
特別室10,000円〜20,000円

日本の入院費はDPC(診断群分類包括評価)システムを使用して計算されます。このシステムは、患者の病名や治療内容に基づいて入院費を決定する方法です。以前の「出来高」方式とは異なり、DPCシステムでは多くの診療行為が1日あたりの定額に含まれます。

DPCシステムの主な特徴

約1,400の診断群に分類される

1日あたりの定額制

一部の治療は従来通りの出来高計算が適用される

DPCシステムと出来高計算の比較表

DPC(1日あたりの定額に含まれる項目)出来高計算項目投薬手術注射リハビリ検査特定の処置画像診断入院基本料

DPCシステムの計算方法

計算式は以下の通りです:

「1日あたりの金額」×「入院日数」×「医療機関別係数」+「出来高計算分」

*医療機関別係数は各医療機関によって異なります。

例えば、患者が14日間入院した場合の計算は以下のようになります。

DPC 5 11 60 2927 2170 1844 甲状腺の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術処置等1なし
DPC名: 甲状腺の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術処置等1なし
日数: 14
医療機関別係数: 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
入院費: ¥341,650 +出来高計算分

治療費の総額は初期治療から長期的なフォローアップまで含めると、数百万円に達する可能性があります。

保険が適用されると、自己負担額は1割から3割になります。また、高額医療制度の対象となる場合、実際の自己負担額はさらに低くなります。
なお、上記の価格は2024年7月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文