お子さんが糖尿病と診断されたとき、治療費の負担は家計に重くのしかかります。小児慢性特定疾病の医療費助成制度を活用すれば、窓口での自己負担割合が2割に軽減されます。
さらに所得に応じた月額上限額も設定されるため、経済的な不安を大きく和らげることができるでしょう。
この記事では、糖尿病で小児慢性特定疾病の認定を受けるための条件や、申請に必要な書類、手続きの流れ、そして助成の具体的な内容までをわかりやすく解説しています。1型・2型を問わず対象となる可能性がありますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
小児慢性特定疾病の糖尿病は医療費助成の対象になる
糖尿病は小児慢性特定疾病の16疾患群のうちの1つとして認められており、一定の条件を満たせば医療費助成を受けることが可能です。1型糖尿病だけでなく、2型糖尿病やその他の糖尿病も助成の対象に含まれます。
小児慢性特定疾病とはどんな制度か
小児慢性特定疾病とは、児童福祉法に基づき、慢性的に経過する特定の疾病をもつ18歳未満のお子さんに対して医療費の自己負担分を一部助成する制度です。治療が長期にわたり、家庭の医療費負担が高額になりやすい疾病が対象となっています。
平成27年1月1日から新制度として運用が開始され、令和7年4月時点で16疾患群・801疾病まで対象が拡大されました。糖尿病もこの制度の対象疾患群に明確に含まれています。
糖尿病は16疾患群の1つとして独立した分類
小児慢性特定疾病では、悪性新生物や慢性腎疾患、慢性心疾患などと並んで、糖尿病が第7番目の疾患群として独立して分類されています。内分泌疾患とは別枠で扱われている点が特徴です。
対象疾病の詳細な一覧は、小児慢性特定疾病情報センターのウェブサイトで公開されています。糖尿病の告示番号や認定基準も、そこから確認できるようになっています。
小児慢性特定疾病の16疾患群一覧
| 番号 | 疾患群名 | 主な疾病例 |
|---|---|---|
| 1 | 悪性新生物 | 白血病・脳腫瘍 |
| 2 | 慢性腎疾患 | ネフローゼ症候群 |
| 5 | 内分泌疾患 | 甲状腺機能異常 |
| 7 | 糖尿病 | 1型・2型糖尿病 |
| 10 | 免疫疾患 | 免疫不全症 |
| 16 | 脈管系疾患 | リンパ管腫 |
1型・2型・その他の糖尿病すべてが対象
小児慢性特定疾病の糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、そしてその他の特殊な型の糖尿病が含まれます。「糖尿病=1型だけ」と思い込んでいる方も多いのですが、実際にはより幅広い範囲が対象です。
ただし、対象疾病であっても、厚生労働省が定めた「疾病の状態の程度」の基準を満たしていなければ認定を受けることはできません。主治医とよく相談のうえ、申請を検討してみてください。
糖尿病で小児慢性特定疾病の認定を受けるための具体的な条件
小児慢性特定疾病の医療費助成を受けるには、年齢要件と疾病の状態の程度という2つの条件をどちらも満たす必要があります。加えて、指定医・指定医療機関での受診も求められます。
18歳未満が原則|20歳未満まで延長できるケースもある
対象となるのは、原則として18歳未満のお子さんです。ただし、18歳の時点ですでに本制度の認定を受けており、なおかつ引き続き治療が必要と認められた場合は、20歳未満まで延長が可能となります。
注意したいのは、18歳以降に一度でも認定期間が途切れてしまうと、再度の申請ができなくなる点です。更新手続きは有効期間内に必ず済ませておきましょう。
厚生労働省が定めた疾病の状態の程度を満たす必要がある
糖尿病と診断されていれば自動的に認定されるわけではありません。厚生労働省告示第475号に基づき、疾病ごとに定められた「状態の程度」の基準を満たしていることが求められます。
糖尿病の場合、HbA1cやCペプチド値、インスリン治療の有無、合併症の状態などが医療意見書に記載され、審査会で総合的に判断されます。基準の詳細は小児慢性特定疾病情報センターで確認できます。
指定医と指定医療機関での受診が前提となる
平成27年以降、医療費助成の対象となるのは、都道府県知事等が指定した「指定医療機関」で受けた保険診療に限られます。また、申請に必要な医療意見書を作成できるのは「指定医」の資格を持つ医師だけです。
かかりつけの病院が指定医療機関に該当するかどうかは、お住まいの自治体のホームページで公表されている一覧から確認できます。該当しない場合は、主治医に相談してみるとよいでしょう。
認定に必要な主な条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 18歳未満(延長で20歳未満) |
| 疾病の程度 | 告示で定められた基準を満たす |
| 受診先 | 指定医療機関での保険診療 |
| 意見書 | 指定医による医療意見書が必要 |
医療費の自己負担が2割に|小児慢性特定疾病の糖尿病で受けられる助成内容
認定を受けると、医療費の窓口負担が3割から2割に軽減されるうえ、世帯の所得に応じた月額自己負担上限額が設けられます。糖尿病治療のように毎月の通院が欠かせない場合、家計への恩恵は大きいといえます。
窓口負担が3割から2割に引き下げられる
小児慢性特定疾病の認定を受けた場合、医療保険の自己負担割合が従来の3割(就学前は2割)から一律2割に引き下げられます。インスリン注射や血糖測定に関わる費用も、指定医療機関での保険診療であれば助成の対象です。
ただし、入院時の食事代や差額ベッド代、文書料、交通費などは助成の範囲外となります。保険診療に該当する治療費のみが対象である点を押さえておいてください。
所得に応じた月額自己負担上限額が設定される
2割負担に加えて、世帯の住民税課税額(所得割)に応じた月額の自己負担上限額が定められています。上限額に達した月は、それ以上の窓口支払いが発生しません。
上限額の管理には「自己負担上限額管理票」が使われます。受診のたびに医療機関で記入してもらうことで、その月の累積額をいつでも把握できる仕組みです。
所得区分別の月額自己負担上限額(円)
| 所得区分 | 一般 | 重症 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 0 | 0 |
| 低所得I | 1,250 | 1,250 |
| 低所得II | 2,500 | 2,500 |
| 一般所得I | 5,000 | 2,500 |
| 一般所得II | 10,000 | 5,000 |
| 上位所得 | 15,000 | 10,000 |
重症患者に認定されるとさらに上限額が下がる
一定の条件を満たす場合、「重症患者」として認定を受けることができ、自己負担上限額がさらに引き下げられます。1型糖尿病の場合、多くのケースで重症に該当するとされています。
重症認定の条件は、医療費総額が月5万円を超える月が年間6回以上ある場合(高額かつ長期)、もしくは重症患者認定基準に適合する場合のいずれかです。該当する可能性があるなら、あわせて申請を検討してみてください。
小児慢性特定疾病の糖尿病を申請するときに必要な書類
申請に必要な書類は自治体によって一部異なりますが、共通して求められるものがいくつかあります。書類の不備があると審査に時間がかかるため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
医療意見書は指定医にしか作成できない
申請の中核となるのが「小児慢性特定疾病医療意見書」です。疾病ごとに専用の様式が用意されており、糖尿病用の意見書にはHbA1c、血糖値、Cペプチド、GLP-1アナログの使用状況など、詳細な臨床情報が記載されます。
この意見書は、小児慢性特定疾病の「指定医」でなければ作成できません。令和5年10月以降は、意見書に「診断年月日」の欄が追加された新様式が原則として使われています。
申請書と世帯調書を忘れずに用意する
医療費支給認定申請書と世帯調書は、いずれも自治体の窓口やホームページからダウンロードできます。申請書には患者さんの基本情報や希望する指定医療機関を記載し、世帯調書には同一医療保険に加入する家族の情報を記入します。
記載漏れがあると差し戻しの原因になりますので、提出前に全項目を見直しておくと安心でしょう。
健康保険の資格情報と所得証明書も準備する
令和6年12月以降、健康保険証の新規発行が廃止されたため、マイナ保険証への移行に伴い提出書類に変更が生じています。資格確認書や資格情報のお知らせの写しなど、有効な保険資格を証明できる書類を準備してください。
所得に関しては、住民税の課税証明書や非課税証明書が求められます。加入している医療保険の種類(被用者保険・国民健康保険など)によって必要書類が変わるため、事前に自治体窓口へ確認しておくのが確実です。
申請時に用意するもの
- 小児慢性特定疾病医療費支給認定申請書
- 世帯調書
- 指定医が記入した医療意見書(糖尿病用の専用様式)
- 健康保険の資格情報が確認できる書類
- 住民税の課税証明書または非課税証明書
- 同意書(自治体所定の様式)
申請書類を提出してから医療受給者証が届くまでの手続き
申請の大まかな流れは、自治体窓口への相談、書類の準備・提出、審査会での認定審査、そして医療受給者証の交付という順番で進みます。審査には一定の期間がかかるため、早めに動き出すことが肝心です。
まず自治体の窓口か主治医に相談する
申請を考えたら、お住まいの都道府県・指定都市・中核市の担当窓口に連絡をとるところから始めましょう。窓口では、必要書類の案内や手続きの進め方を教えてもらえます。
主治医に直接相談するのもよい方法です。指定医であれば、医療意見書の作成と並行して制度の説明を受けられることが多いでしょう。
必要書類をまとめて自治体窓口に提出する
医療意見書を含むすべての書類が揃ったら、お住まいの自治体窓口に提出します。郵送で受け付けている自治体もあれば、窓口への持参が必要な場合もあるため、事前に確認してください。
なお、医療意見書の作成に時間がかかる場合は、先に自治体窓口へ相談しておくと、申請のタイミングについてアドバイスを受けられます。
申請から認定までの流れ
| 段階 | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| 相談 | 自治体窓口・主治医に相談 | 随時 |
| 書類準備 | 意見書の作成・各種証明書取得 | 2〜4週間 |
| 申請提出 | 窓口へ書類一式を提出 | 1日 |
| 審査 | 審査会で認定の可否を判定 | 1〜2か月 |
| 交付 | 医療受給者証が届く | 審査後約2週間 |
審査会で認定審査が行われ結果が通知される
提出された書類をもとに、小児慢性特定疾病審査会が認定の可否を審査します。認定されると「小児慢性特定疾病医療受給者証」が交付され、記載された疾病名に関する保険診療について助成が適用されます。
審査中に医療機関を受診した場合は、いったん通常の自己負担額を支払う形になりますが、受給者証の交付後に償還請求(払い戻し申請)を行えるケースもあります。詳しくはお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
18歳を超えても糖尿病の小児慢性特定疾病助成は継続できる
「18歳になったら助成が打ち切られるのでは」と不安に感じるご家庭は少なくありません。しかし、条件を満たせば20歳未満まで延長が認められています。一方で、延長手続きを怠ると取り返しがつかなくなるため、スケジュール管理が重要です。
18歳時点で認定を受けていれば20歳未満まで延長可能
18歳に到達した時点で小児慢性特定疾病の医療受給者証を保持しており、かつ引き続き治療が必要と認められる場合は、20歳の誕生日の前日まで助成を延長できます。
1型糖尿病のようにインスリン治療が生涯にわたる疾病では、ほとんどの場合この要件に該当します。
有効期限内に延長申請しないと失効する
延長の手続きは、医療受給者証の有効期間内に行わなければなりません。18歳を迎えて有効期限が過ぎてしまった後では、更新も新規申請もできなくなります。
更新時期が近づいたら自治体から通知が届く場合もありますが、届かないケースもあるため、ご自身で期限を管理しておくことが大切です。カレンダーやスマートフォンのリマインダーを活用して、余裕をもって手続きを進めてください。
20歳以降の医療費支援はどうなるか
現行制度では、20歳に達した時点で小児慢性特定疾病の医療費助成は終了します。20歳以降の1型糖尿病患者にとって、インスリンや血糖測定器にかかる費用は大きな経済的負担となり得ます。
成人後の支援としては、高額療養費制度や障害者手帳の取得による自立支援医療など、別の公的制度を活用する方法があります。主治医やソーシャルワーカーに早めに相談し、切れ目のない支援体制を準備しておくと安心です。
年齢と助成の関係
- 18歳未満:小児慢性特定疾病の医療費助成を受けられる
- 18歳〜20歳未満:条件を満たせば延長可能
- 20歳以降:高額療養費制度や自立支援医療の活用を検討
小児慢性特定疾病の糖尿病申請で見落としがちな注意点
制度を正しく活用するためには、申請時や認定後の細かなルールを把握しておくことが欠かせません。知らなかったために損をしてしまうケースもあるため、申請前にしっかり確認しておきましょう。
支給認定開始日の遡りが可能になった新ルール
令和5年10月1日以降、医療費助成の支給認定開始日を遡れるようになりました。医療意見書に記載される「診断年月日」を基準に、申請日から1か月前まで遡ることが可能です。
やむを得ない理由がある場合は3か月前まで遡れます。ただし、令和5年10月1日より前に遡ることはできないため、その点だけは注意してください。
支給認定開始日に関する変更点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変更時期 | 令和5年10月1日以降の申請から |
| 遡り期間 | 申請日から1か月前(最長3か月前) |
| 基準日 | 診断年月日(意見書に記載) |
| 制限事項 | 令和5年10月1日より前には遡れない |
指定医療機関以外での受診は原則助成対象外
医療受給者証を使って助成を受けられるのは、指定医療機関として登録された病院・診療所・薬局・訪問看護ステーションに限られます。指定を受けていない医療機関で受診した場合、原則としてその医療費は助成の対象になりません。
やむを得ない事情がある場合には、事後的に指定医療機関の変更手続きを行うことで対応できるケースもあります。転居や入院先の変更などが生じた際は、早めに自治体窓口に相談してください。
自己負担上限額管理票で毎月の支払いを把握する
医療受給者証と一緒に交付される「自己負担上限額管理票」は、月ごとの医療費負担を管理するための大切なツールです。受診のたびに医療機関の窓口で支払額を記入してもらうことで、その月の累積額がひと目でわかるようになっています。
複数の医療機関で治療を受けている場合も、すべての自己負担額を合算したうえで上限額が適用されます。管理票は忘れずに毎回持参するようにしてください。
よくある質問
- Q小児慢性特定疾病の糖尿病申請はどの窓口で手続きすれば良い?
- A
小児慢性特定疾病の糖尿病に関する申請は、お住まいの都道府県、指定都市、中核市、または児童相談所設置市の担当窓口で受け付けています。市区町村によって担当部署の名称は異なりますが、多くの場合は保健所やこども家庭支援課が窓口です。
必要書類は自治体ごとに若干異なる場合があるため、申請前に電話やホームページで確認しておくとスムーズに進められるでしょう。主治医から案内を受けられることも多いので、まずは診察時に相談してみてください。
- Q小児慢性特定疾病の医療費助成は1型糖尿病だけが対象なのか?
- A
1型糖尿病だけが対象というわけではありません。小児慢性特定疾病の糖尿病疾患群には、1型糖尿病、2型糖尿病、そしてその他の型の糖尿病も含まれています。
ただし、いずれの型であっても厚生労働省が定めた「疾病の状態の程度」の基準を満たす必要があります。基準を満たすかどうかは、主治医の診断と医療意見書の内容をもとに審査会が判断します。
- Q小児慢性特定疾病の糖尿病申請から認定までどのくらい期間がかかる?
- A
申請から認定までの期間は自治体によって差がありますが、一般的には1か月から2か月程度が目安です。
医療意見書の作成に数週間かかることもあるため、書類の準備期間を含めると、相談開始から受給者証の交付まで2か月から3か月ほど見込んでおくと安心でしょう。
審査中に受診した場合でも、受給者証の交付後に払い戻しを申請できるケースがあります。急ぎの場合は、まず自治体窓口に事情を伝えて相談してみてください。
- Q小児慢性特定疾病の医療受給者証は全国どの病院でも使える?
- A
医療受給者証が使えるのは、都道府県知事等が指定した「指定医療機関」に限られます。全国すべての病院で使えるわけではないため、受診前に指定医療機関かどうかを確認しておくことが大切です。
指定医療機関の一覧は、各自治体のホームページで公開されています。転居先や旅行先で受診が必要になった場合は、その地域の指定医療機関を事前に調べておくか、やむを得ない場合の対応について自治体窓口に確認しておくと良いでしょう。
- Q小児慢性特定疾病の糖尿病で日常生活用具の給付も受けられる?
- A
小児慢性特定疾病の認定を受けているお子さんは、自治体によっては日常生活用具の給付事業を利用できる場合があります。糖尿病に関連する用具としては、血糖自己測定器やインスリン注入器などが対象となる可能性があるでしょう。
ただし、対象となる品目や給付の条件は自治体ごとに異なります。世帯の所得に応じた自己負担が生じることもあるため、利用を希望する場合はお住まいの自治体に直接お問い合わせください。
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