CGM(持続血糖測定器)は、血糖値の変動を24時間にわたって記録できる医療機器です。保険適応で使えるかどうかは、多くの糖尿病患者さんにとって切実な関心事でしょう。

結論からお伝えすると、インスリン自己注射を1日1回以上行っている方であれば、1型・2型を問わずCGMの保険適応となります。費用は3割負担で月額約4,000円前後が目安です。

この記事では、保険適応の具体的な条件や対象となる方の範囲、自己負担額のシミュレーション、さらに2024年から始まった選定療養の仕組みまで、わかりやすく丁寧に解説していきます。

目次

CGMとは?血糖値を24時間「見える化」できるデバイスの仕組み

CGMは小さなセンサーを皮下に留置し、間質液中のグルコース濃度を連続的に測定する医療機器です。従来の指先穿刺による「点」の測定では見えなかった血糖変動を、「線」のグラフとして捉えられるようになりました。

従来の血糖自己測定(SMBG)との決定的な違い

従来の血糖自己測定(SMBG)は、指先に針を刺して血液を採取し、その瞬間の血糖値だけを測定する方法です。1日に数回しか測れないため、食後のピークや夜間の低血糖を見逃してしまうことも少なくありませんでした。

CGMは5〜15分ごとに自動で血糖値を記録し続けます。そのため、食事や運動、睡眠がどのように血糖値に影響しているのかを詳細に把握できるのが大きな強みです。

リアルタイムCGMとisCGM(間歇スキャン式)の違い

CGMには大きく分けて2つの種類があります。1つはリアルタイムCGMで、センサーが自動的にスマートフォンや専用受信機へデータを送信し、常に血糖値を確認できるタイプです。

もう1つはisCGM(間歇スキャン式)と呼ばれるタイプで、FreeStyleリブレが代表的な製品です。こちらはセンサーにリーダーやスマートフォンをかざしたときにデータを読み取る仕組みになっています。

日本で使える主なCGM機器

機器名種類主な特徴
Dexcom G7リアルタイムCGMアラート機能あり、スマホ連携対応
FreeStyleリブレ2isCGM14日間連続使用、スキャンで読み取り
ガーディアン4リアルタイムCGMインスリンポンプとの連動も対応

低血糖・高血糖のアラートで安心感が増す

リアルタイムCGMには、血糖値が設定した閾値を下回ったり上回ったりした場合にアラートで通知する機能が備わっています。特に就寝中の低血糖は自覚症状が出にくいため、このアラート機能は命を守る備えにもなるでしょう。

スマートフォンアプリとの連携により、測定データを医師と共有することも容易です。診察時にグラフを見ながら治療方針を相談できるため、より精度の高い血糖管理を目指せます。

CGM(持続血糖測定器)が保険適応になる基本条件を徹底解説

CGMの保険適応は、糖尿病の病型にかかわらず「インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っていること」が基本条件となります。1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病のいずれも対象です。

インスリン自己注射が保険適応の出発点になる

CGMの保険適応を受けるための前提は、インスリン製剤の自己注射を1日1回以上継続していることです。これは診療報酬上の算定要件として定められており、GLP-1受容体作動薬の注射だけでは条件を満たしません。

内服薬のみで治療中の2型糖尿病の方は、現行の制度では保険適応の対象外となります。ただし、2024年に始まった選定療養という別の仕組みを利用すれば、保険診療の枠組みの中でCGMを使える道が開けました(詳しくは後述します)。

施設基準を満たした医療機関でなければ使えない

CGMの保険適応には、医療機関側にも施設基準が設けられています。糖尿病治療の専門知識と5年以上の経験を持つ常勤医師が在籍していること、そして糖尿病療養指導の経験がある看護師または薬剤師が配置されていることが求められます。

加えて、医師や医療スタッフは日本糖尿病学会が実施するeラーニングを受講する必要があります。どの医療機関でも自由に処方できるわけではない点は覚えておきましょう。

日本糖尿病学会の適正使用指針に沿った運用が必要

日本糖尿病学会は2024年5月に「持続グルコースモニタリングデバイス適正使用指針」を改訂しました。リアルタイムCGMとisCGMの両方を統合した内容で、保険適応下での使用にはこの指針の遵守が求められます。

指針では、低血糖リスクが乏しく血糖コントロールが安定している方や、医師の指導に従わずSMBGを行わない方などは適応外とされています。単に「使いたい」という希望だけでは保険適応にならないケースもあるため、主治医との相談が大切です。

条件項目保険適応の要件
患者側の条件インスリン自己注射を1日1回以上実施
病型1型・2型・妊娠糖尿病を問わない
医療機関の条件施設基準を満たし届出を済ませた医療機関
医師の要件糖尿病治療の専門知識と5年以上の経験
スタッフの要件糖尿病療養指導の経験2年以上の看護師・薬剤師

1型糖尿病の方がCGMを保険適応で使うための具体的な要件

1型糖尿病の方は、インスリン治療が生涯にわたって必要となるため、CGMの保険適応を受けやすい立場にあります。特に強化インスリン療法を行っている方は、CGMの恩恵を大きく受けられるでしょう。

強化インスリン療法を実施中の方は対象になりやすい

1日に複数回のインスリン注射を行う強化インスリン療法を実施中の方は、CGMの保険適応において優先度が高い対象です。血糖値が1日の中で大きく変動しやすく、低血糖と高血糖の両方を管理しなければならないからです。

急性発症1型や劇症1型の糖尿病で、低血糖対策と血糖コントロールの両立が強く求められるケースでは、リアルタイムCGM(C150-7の区分)の対象となります。就労や生活環境上の理由でインスリンポンプ一体型CGM(SAP)を使えない方も含まれます。

インスリンポンプ療法(SAP)との組み合わせも保険で使える

インスリンポンプとCGMを一体化したSAP(Sensor Augmented Pump)療法も保険適応の対象です。メドトロニック社のMiniMed 780Gシステムが代表的で、血糖値に応じてインスリン注入量を自動調整するオートモード機能を備えています。

治療形態保険適用区分主な対象
ペン型注射+CGMC150-7インスリン自己注射1日1回以上の方
SAP(ポンプ一体型)C152-2インスリンポンプ使用中の方

小児・思春期の1型糖尿病でもCGMは活用できる

添付文書上、Dexcom G6やG7は2歳以上の患者さんに使用可能です。FreeStyleリブレ2については4歳以上が対象年齢となっています。成長期の子どもは血糖コントロールが難しく、保護者がリアルタイムでデータを確認できるメリットは非常に大きいといえます。

学校生活や部活動の中で低血糖を起こすリスクがある子どもにとって、CGMのアラート機能は心強い味方です。保護者のスマートフォンにもデータを共有できるため、離れていても血糖値を見守れる安心感があります。

2型糖尿病でもCGMの保険適応になるケースとは

2型糖尿病の方でも、インスリン自己注射を1日1回以上行っていれば、CGMの保険適応対象となります。さらに、内因性インスリン分泌が著しく低下している方や血糖コントロールが不安定な方は、リアルタイムCGMの適応を検討できます。

インスリン注射中の2型糖尿病が保険適応の条件

2型糖尿病であっても、インスリン自己注射を行っていれば保険適応の基本条件を満たします。1日1回の持効型インスリン注射だけの方でも対象となるため、思っていたよりもハードルが低いと感じる方もいるかもしれません。

ただし、経口薬のみで治療中の方やGLP-1受容体作動薬の注射のみの方は、保険適応の対象外です。インスリン製剤の注射を併用しているかどうかが分かれ目になります。

内因性インスリン分泌が低下した2型糖尿病は特に対象になりやすい

2型糖尿病でありながら膵臓からのインスリン分泌が著しく低下している方(空腹時血清Cペプチド0.5ng/mL未満)は、1型糖尿病に近い病態です。こうした方がインスリン治療を行っていても低血糖発作など重篤な有害事象を繰り返している場合、リアルタイムCGMの対象となります。

主治医に血清Cペプチドの検査を依頼し、自分の膵臓がどの程度インスリンを出しているのか把握しておくと、保険適応の判断材料になるでしょう。

GLP-1受容体作動薬との併用治療をしている方へ

近年、GLP-1受容体作動薬とインスリンを組み合わせた治療を受けている方も増えています。GLP-1受容体作動薬には食後血糖の上昇を抑える作用があり、インスリンとの併用で血糖変動を小さくする効果が期待されています。

このような併用療法を行っている方の場合、インスリン自己注射を1日1回以上実施しているという条件さえ満たせば、CGMの保険適応対象です。CGMで得られる血糖データをもとに、GLP-1受容体作動薬とインスリンの投与量を細かく調整できれば、治療の質が一段と向上します。

  • インスリン自己注射1日1回以上が保険適応の前提条件
  • 空腹時血清Cペプチド0.5ng/mL未満で低血糖を繰り返す場合はリアルタイムCGMの対象
  • GLP-1受容体作動薬のみの注射では保険適応外
  • 経口薬のみで治療中の場合は選定療養制度の活用を検討

CGMの保険適応で実際にかかる費用と自己負担額の目安

保険適応の場合、CGMの自己負担額は3割負担で月額約4,000〜5,000円程度が目安です。使用するCGM機器の種類やセンサーの枚数、治療形態によって費用は変動するため、自分のケースに当てはめて確認しておくと安心です。

isCGM(FreeStyleリブレ)利用時の費用シミュレーション

FreeStyleリブレを使用する場合、強化インスリン療法中の方は血糖自己測定器加算として月1,250点(12,500円)が算定されます。3割負担であれば約3,750円です。これにはセンサー代が含まれており、月2枚(1枚14日間使用)まで保険で支給されます。

専用リーダーは初回処方時のみ保険の対象です。スマートフォンのアプリでデータを読み取れる機種であれば、リーダーを別途購入する必要はありません。

リアルタイムCGM利用時の費用シミュレーション

Dexcom G7などのリアルタイムCGMを使用する場合も、保険適用区分C150-7で同様に月1,250点が算定の基本となります。3割負担で約3,750円に加えて、再診料や採血費用などが別途かかります。

CGMの種類月額の目安(3割負担)センサー支給数
isCGM(リブレ)約3,750〜4,500円月2枚まで
リアルタイムCGM約4,000〜5,000円機器により異なる
SAP(ポンプ一体型)約15,000〜25,000円センサー個数で変動

SAP療法を選ぶと費用はどのくらい上がるのか

インスリンポンプとCGMを一体化したSAP療法の場合、持続血糖測定加算(C152-2)が適用され、従来のインスリンポンプ療法と比べて3割負担で月額約12,000円ほど上乗せになります。センサーの使用個数が月5個以下なら33,000点の加算となり、3割負担では約10,000円前後です。

費用は高くなりますが、血糖値に基づいてインスリン量が自動調整されるメリットは大きく、特に血糖コントロールが難しい1型糖尿病の方にとっては検討に値する選択肢といえるでしょう。

高額療養費制度を活用すれば負担はさらに軽くなる

CGMの費用を含めた月々の医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用すれば自己負担額に上限が設けられます。所得区分によって上限額は異なりますが、一般的な所得の方であれば月額約57,600円が上限の目安です。

インスリンポンプとCGMの併用で医療費が高額になりやすい方は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくとよいでしょう。窓口での支払いを上限額までに抑えられるため、一時的な出費の負担を軽減できます。

2024年から始まった選定療養でCGMの利用がさらに広がった

2024年4月の診療報酬改定にあわせて、インスリン注射をしていない糖尿病患者さんでもisCGM(FreeStyleリブレ)を医療機関で購入・使用できる「選定療養」の仕組みが創設されました。保険診療と自費診療を組み合わせた新しい制度です。

選定療養とは保険と自費を組み合わせた新しい枠組み

選定療養とは、保険診療の中で一部の費用を患者さんが自費で負担する仕組みです。入院時の差額ベッド代や予約診療なども選定療養に含まれます。isCGMの選定療養では、保険診療による診察は通常どおり保険が効き、CGMセンサー代のみを自費で支払う形となります。

以前は「混合診療の禁止」により、保険適応外の患者さんが医療機関でCGMを入手することは制度上できませんでした。選定療養の導入でこの壁が取り払われ、より多くの方がCGMを利用できるようになっています。

選定療養の対象はインスリン注射をしていない糖尿病の方

選定療養の対象となるのは、保険適応の条件(インスリン自己注射1日1回以上)を満たさない糖尿病の方です。経口薬のみで治療中の2型糖尿病の方や、食事・運動療法の効果を評価したい方、健診で血糖値の指摘を受けた方などが該当します。

日本糖尿病学会は、食事・運動療法の評価、内服薬の変更時の評価、健診で保健指導判定値を超えた方の食後高血糖の評価などを「良い適応」としています。

選定療養にかかる費用はどのくらいか

選定療養でのCGM使用にかかる費用は医療機関ごとに異なります。日本糖尿病学会は、血糖自己測定器加算のC150-7(1,250点)相当額を標準とし、社会的に妥当な範囲の金額を設定するよう示しています。

FreeStyleリブレ2のセンサーは1個あたり7,000〜8,000円程度が目安となり、14日間で1個を使用します。月2個使うとすると15,000円前後の自費負担が発生しますが、血糖変動を把握して治療に生かせるメリットは大きいでしょう。

  • 選定療養に対応した医療機関でのみ利用可能
  • 対象はisCGM(FreeStyleリブレ)のみ、リアルタイムCGMは対象外
  • 施設基準を満たした医療機関、または連携医療機関の指導のもとで使用

CGM導入前に主治医へ確認しておきたい3つのポイント

CGMの導入を検討しているなら、主治医に相談する前にいくつか整理しておきたい点があります。保険適応の可否、費用の見通し、そして日常の運用方法について事前に把握しておくことで、診察時のやり取りがスムーズになります。

自分の治療内容が保険適応の条件に合っているか確認する

まずは、自分が現在受けている治療内容がCGMの保険適応条件に合致しているかを確認しましょう。インスリン自己注射を行っているかどうか、行っている場合は1日に何回注射しているかが重要な情報です。

確認事項チェック内容
インスリン注射の有無1日1回以上の自己注射を行っているか
医療機関の対応状況通院先が施設基準を満たしているか
スマートフォンの対応CGMアプリに対応した機種を持っているか
費用の見通し月々の自己負担がどの程度になるか

通院先がCGMの施設基準を満たしているか確認する

CGMを保険で使うには、通院先の医療機関が所定の施設基準を満たし、厚生局へ届出を済ませている必要があります。かかりつけのクリニックや病院が対応しているかどうか、受付や担当医に直接尋ねてみるのが確実です。

もし通院先が施設基準を満たしていない場合は、対応可能な医療機関を紹介してもらうことも検討しましょう。糖尿病専門のクリニックや大学病院の糖尿病内科であれば、施設基準を満たしている可能性が高いです。

センサー装着後の日常生活で気をつけること

CGMのセンサーは腕や腹部に装着し、10〜14日間ほど連続して使用します。入浴やシャワーは装着したまま行えますが、サウナや長時間の水泳ではセンサーが外れたり故障したりすることがあるため注意が必要です。

装着部位のかぶれやかゆみが出る方もいるので、肌トラブルが気になる場合は主治医に相談してください。テープの種類を変えるなどの対処法もあります。日常生活への影響は比較的少ないものの、MRI検査を受ける際にはセンサーを外す必要がある点も覚えておきましょう。

よくある質問

Q
CGM(持続血糖測定器)はインスリン注射をしていなくても保険で使えるのか?
A

現在の保険制度では、CGMの保険適応はインスリン自己注射を1日1回以上行っている方に限られます。経口薬のみで治療中の方やGLP-1受容体作動薬の注射のみの方は、保険適応の対象外です。

ただし、2024年4月からisCGM(FreeStyleリブレ)を対象とした選定療養制度が始まりました。インスリン注射をしていない方でも、選定療養に対応した医療機関であればCGMを自費で購入し、保険診療と組み合わせて使うことが可能です。

Q
CGM(持続血糖測定器)のセンサーは月に何枚まで保険で支給されるのか?
A

isCGM(FreeStyleリブレ)の場合、強化インスリン療法を行っている方はセンサーが月2枚まで保険で支給されます。1枚あたり約14日間使用できるため、1か月をほぼカバーできる計算です。

リアルタイムCGMについては機器によってセンサーの使用期間が異なるため、支給数は主治医の判断や使用するデバイスの種類によって変わります。SAP療法の場合はセンサー個数に応じた加算が算定され、月5個以下か6個以上かで点数が変わります。

Q
CGM(持続血糖測定器)を自費で使う場合の費用はどのくらいか?
A

保険適応の条件に当てはまらない方がCGMを自費で使う場合、全額自己負担となります。医療機関によって価格は異なりますが、FreeStyleリブレ2のセンサー1個あたり7,000〜8,000円程度が一般的な目安です。

2週間で1個使用するため、毎月継続して使うなら月額15,000円前後の出費になるでしょう。選定療養制度を利用すれば、診察部分には保険が適用されるため、完全な自由診療よりも総額を抑えやすくなります。

Q
CGM(持続血糖測定器)とGLP-1受容体作動薬を併用する場合の注意点は?
A

GLP-1受容体作動薬とインスリンを併用している方であれば、インスリン自己注射の条件を満たしているためCGMの保険適応対象となります。GLP-1受容体作動薬は食後の血糖上昇を穏やかにする作用があるため、CGMのデータと照らし合わせることで治療効果をより詳しく確認できます。

一方、GLP-1受容体作動薬のみで治療中の方(インスリン注射なし)はCGMの保険適応対象外です。主治医とインスリン導入の必要性も含めて相談することをおすすめします。

Q
CGM(持続血糖測定器)を装着したまま入浴や運動はできるのか?
A

ほとんどのCGMセンサーは耐水設計になっており、装着したまま入浴やシャワーが可能です。日常的な運動も問題なく行えるため、普段の生活スタイルを大きく変える必要はありません。

ただし、メーカーが定める水深や水中での使用時間を超える長時間の潜水や、サウナなどの高温環境では故障やセンサー脱落のリスクがあります。激しい接触スポーツでは装着部位を保護するテープを併用するとよいでしょう。詳しい使用上の注意は、主治医やメーカーの取扱説明書で確認してください。

参考にした文献