特殊型糖尿病(MODY・膵性糖尿病・薬剤性糖尿病など)は、一般的な1型・2型の糖尿病と治療法や使用薬が大きく異なります。そのため、災害時の備えにも独自の視点を持つ必要があります。
通常の災害マニュアルでは想定されていない薬剤や治療方法への対応が抜け落ちやすく、事前に特殊型糖尿病に特化した準備をしておくことが大切です。
この記事では、特殊型糖尿病の種類ごとに異なる災害時リスクを整理し、備蓄品の選び方や避難所での血糖管理、かかりつけ医との事前の情報共有まで、平時から実践できる対策を具体的に解説します。
日本は地震・台風・豪雨など自然災害の多い国です。希少疾患としての特殊型糖尿病を持つ方やご家族が「あのとき準備しておけばよかった」と後悔しないために、ぜひ最後までお読みください。
特殊型糖尿病は災害時に一般の糖尿病より深刻なリスクを抱える
特殊型糖尿病の方は、災害によって治療の継続が途絶えたとき、一般的な糖尿病の方以上に深刻な健康被害を受ける危険があります。その背景には、使用する薬の種類が限られていることや、病態そのものが複雑であることが挙げられます。
インスリン供給の途絶が特殊型糖尿病にとって致命的になりやすい
1型糖尿病と同様に、膵性糖尿病(3c型)やMODYの一部では内因性インスリンの分泌がきわめて少なく、外部からのインスリン補充なしには生命を維持できません。災害で薬局や医療機関が閉鎖されると、これらの方のインスリン確保が最大の課題となります。
一般的な2型糖尿病であれば、短期間の内服薬中断でただちに命に関わることは多くありません。しかし、膵性糖尿病ではインスリンだけでなくグルカゴンの分泌も低下しているため、低血糖と高血糖の両方に対して脆弱で、血糖管理の難易度が格段に上がります。
血糖変動の幅が大きい特殊型糖尿病は低血糖にも注意が必要
特殊型糖尿病の多くは血糖値の振れ幅が大きく、いわゆる「ブリットル(不安定型)糖尿病」の状態になりやすいことが知られています。災害時は食事のタイミングや内容が大きく変わるため、通常より低血糖を起こすリスクが高まります。
低血糖は意識障害やけいれんを引き起こす緊急事態です。避難所のような環境では周囲の方に気づいてもらいにくい場面もあるため、ブドウ糖や補食を常に身につけておく備えがいっそう重要となるでしょう。
一般の災害マニュアルだけで特殊型糖尿病に対応できるか
多くの自治体や医療団体が作成している災害時の糖尿病マニュアルは、1型・2型を主な対象としています。そのため、MODYに効果を発揮するスルホニル尿素薬の扱いや、膵性糖尿病で必要な膵酵素補充療法については触れられていないことがほとんどです。
特殊型糖尿病の方は、一般のマニュアルを参考にしつつも、自分の病型に合った独自の備えを加える必要があります。災害時に自分の病状を正確に説明できるよう、病名と治療内容をまとめた「災害時カード」を作っておくと安心です。
MODYや膵性糖尿病など、特殊型糖尿病にはどんな種類がある?
全糖尿病の約1〜5%が特殊型に分類され、単一の遺伝子変異で発症するものから、膵臓の疾患に続発するものまで原因はさまざまです。自分がどのタイプに該当するかを正確に把握することが、災害時の適切な対応につながります。
| 種類 | 主な原因 | 治療上の特徴 |
|---|---|---|
| MODY | 単一遺伝子の変異 | サブタイプにより経口薬のみで管理可能な場合がある |
| 膵性糖尿病(3c型) | 慢性膵炎・膵切除など | インスリン+膵酵素補充が必要 |
| 薬剤性糖尿病 | ステロイド・抗精神病薬など | 原因薬の用量調整と血糖管理の併行 |
遺伝子の変異で発症するMODY(若年発症成人型糖尿病)
MODY(Maturity-Onset Diabetes of the Young)は、常染色体優性遺伝の形式をとる単一遺伝子疾患で、現在14以上のサブタイプが報告されています。25歳以前に発症することが多く、肥満を伴わないケースが大半を占めます。
サブタイプによって治療方針が大きく異なるのがMODYの特徴です。たとえば、GCK-MODY(MODY2)は軽度の空腹時高血糖を示しますが薬物治療を必要としないことが多く、一方でHNF1A-MODY(MODY3)は低用量のスルホニル尿素薬によく反応します。
災害時には、サブタイプごとに必要な薬剤が異なる点を周囲に伝えることが大切です。
膵臓の病気が原因で起こる膵性糖尿病(3c型)
膵性糖尿病は、慢性膵炎・膵臓がん・膵切除などにより膵臓の内分泌機能と外分泌機能の両方が障害されて発症します。全糖尿病患者の5〜10%を占めるとの推計もありますが、2型糖尿病と誤診されている例が少なくありません。
この病型では、インスリンの分泌低下だけでなく、消化酵素の分泌も不足するため、食事からの栄養吸収が不安定になります。災害時の限られた食事環境では栄養状態がさらに悪化しやすく、膵酵素補充薬の備蓄も含めた対策が欠かせません。
その他の特殊型 ー ミトコンドリア糖尿病や新生児糖尿病
ミトコンドリア遺伝子の変異で発症するミトコンドリア糖尿病は、難聴を合併することが多く、30〜40代で糖尿病を発症するパターンが典型的です。進行するとインスリン治療が必要となるため、災害時のインスリン確保が課題となります。
新生児糖尿病は生後6か月以内に発症するきわめてまれな病型で、遺伝子検査の結果によってはスルホニル尿素薬への切り替えが可能です。乳幼児が被災した場合、保護者が治療内容を正確に伝えられるかどうかが命を左右するといっても過言ではないでしょう。
ステロイドや抗精神病薬による薬剤性糖尿病の災害時リスク
「薬剤性糖尿病は原因薬を中止すれば治る」と誤解されがちですが、災害時にはむしろ原因薬の急な中断が新たな健康被害を引き起こします。薬剤性糖尿病の方は、血糖管理と原因疾患の治療の両方を維持する難しさに直面するのです。
ステロイド性糖尿病は災害時に薬の入手が困難になりやすい
膠原病やぜんそくなどの治療でステロイド(糖質コルチコイド)を長期服用している方は、食後に血糖値が急上昇しやすい傾向があります。
災害でステロイドの供給が途絶えると、副腎不全という命に関わる状態を起こす危険もあります。ステロイドの備蓄は血糖降下薬と同じくらい優先度が高いといえるでしょう。
ステロイドの種類や用量によって血糖値への影響は大きく変わります。プレドニゾロンとデキサメタゾンでは血糖上昇のピーク時間帯が異なるため、使用しているステロイドの薬効動態(体内での効き方のパターン)を医師に確認しておくと、災害時の自己管理に役立ちます。
抗精神病薬や免疫チェックポイント阻害薬による糖代謝異常
第二世代抗精神病薬(オランザピンやクロザピンなど)は、インスリン抵抗性の増大や体重増加を通じて血糖値を上昇させることが報告されています。これらの薬を服用中の方が災害で内服を中断すると、精神症状の再燃と血糖変動が同時に起こりかねません。
近年がん治療で広く用いられている免疫チェックポイント阻害薬は、自己免疫性の膵炎を誘発し、急激なインスリン分泌低下を起こす場合があります。この薬剤性糖尿病はケトアシドーシス(血液が酸性に傾く危険な状態)で発症することがあり、災害時であっても速やかな医療介入が必要です。
原因薬の急な中断で起きる血糖コントロールの乱れ
薬剤性糖尿病では、原因薬が血糖値を上げている一方で、血糖降下薬やインスリンによってバランスを保っています。災害でどちらか一方だけが手に入らなくなると、高血糖または低血糖に大きく振れるリスクがあります。
たとえば、ステロイドだけが中断されてインスリンの投与量をそのまま続けた場合、重症の低血糖を起こす恐れがあるのです。災害時に薬剤の一部が入手困難になった場合の対処を、事前に主治医と話し合っておくことが望ましいでしょう。
| 原因薬の分類 | 災害時のリスク | 事前に確認すべきこと |
|---|---|---|
| ステロイド | 中断で副腎不全・継続で高血糖 | 減量スケジュールの把握 |
| 抗精神病薬 | 中断で精神症状再燃 | 代替薬の候補と用量 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | 急性膵炎・ケトアシドーシス | 緊急受診の判断基準 |
平時から始める災害備蓄 ー 特殊型糖尿病に合わせた持ち出し品
「災害が起きたら何を持ち出せばいいのかわからない」という不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。特殊型糖尿病の方は、一般的な糖尿病の備蓄品に加え、自分の病型に固有の薬剤や医療器具を追加しておく必要があります。
災害用インスリンの備蓄量と保管温度の目安
日本糖尿病学会の災害マニュアルでは、最低でも1週間分の薬剤と医療物品を備蓄しておくことを推奨しています。特殊型糖尿病の場合はさらに余裕をもち、可能であれば2週間分を確保しておくと安心です。
インスリンは未開封であれば冷蔵庫(2〜8℃)で保管するのが基本ですが、停電時には保冷バッグやFRIOクーリングケースなどで温度管理を行います。
30℃を超える環境に長時間さらされると効力が低下するため、夏場の備蓄管理には特に気を配りましょう。開封後は室温保管が可能ですが、直射日光と高温は避けてください。
自己測定器・ケトン体試験紙・低血糖対策の準備
血糖自己測定器(SMBG)は災害時の血糖管理に欠かせない道具です。予備の電池やセンサーチップも合わせて備蓄しておきましょう。膵性糖尿病やMODYでケトアシドーシスのリスクがある方は、尿中ケトン体試験紙も持ち出し品に加えます。
低血糖対策としては、ブドウ糖(タブレットやゼリータイプ)を常にポケットに入れておくことが基本です。グルカゴン注射キットの使い方を家族や身近な方に事前に説明しておくことも、いざというときの安全につながります。
「お薬手帳」と「災害時カード」を常に持ち歩く習慣
特殊型糖尿病の方が災害時に最も困るのは、自分の病態や治療内容を初対面の医療スタッフに正確に伝えることです。お薬手帳に加えて、病名・使用中の薬剤名と用量・アレルギー情報・主治医の連絡先をまとめた「災害時カード」を作成し、財布やスマートフォンケースに入れておきましょう。
情報はスマートフォンにも保存できますが、充電切れや故障に備えて紙のカードも用意しておくのが望ましい方法です。カードには「特殊型糖尿病」であることを目立つように記載し、一般的な2型糖尿病とは治療が異なる旨を一言添えてください。
特殊型糖尿病の方のための備蓄品チェックリスト
- インスリン製剤(2週間分以上)+注射器具・ペン針
- 経口血糖降下薬(サブタイプに応じた薬剤を2週間分)
- 膵酵素補充薬(膵性糖尿病の方)
- ステロイド予備(薬剤性糖尿病でステロイド服用中の方)
- 血糖自己測定器+センサーチップ+予備電池
- ブドウ糖タブレット・グルカゴン注射キット
- 保冷バッグまたはFRIOクーリングケース
- 災害時カード・お薬手帳のコピー
災害発生直後、特殊型糖尿病の方がまず取るべき行動
命を守ることが最優先です。身の安全を確保したら、次の行動はインスリンや治療薬の確認と血糖値の把握に移ります。
発災から24時間以内にやるべきこと
安全な場所に避難したら、まず手持ちの薬剤と医療物品の在庫を確認してください。何日分あるかを把握し、不足している物品をリストアップすることが、その後の支援要請をスムーズにします。
血糖値はできるだけ早く測定し、可能であれば2〜4時間おきにモニタリングします。食事の量や内容が普段と異なるため、インスリンの投与量を調整する必要が出てくるかもしれません。自己判断が難しければ、近くの医療スタッフや災害医療チーム(DMAT)に相談しましょう。
手持ちのインスリンが足りないときの応急的な血糖管理
災害直後にインスリンが不足する場面は決して珍しくありません。手元の残量を把握したうえで、投与量を必要最小限に減量し、高血糖の症状(強い口渇・多尿・倦怠感)が出たら速やかに医療支援を求めてください。
MODYの一部(HNF1AやHNF4Aサブタイプ)では、一般に流通しているスルホニル尿素薬で血糖管理が可能な場合があります。災害時に別の医師に診てもらう状況になったとき、サブタイプの情報を伝えることで適切な代替治療を受けられる可能性が広がります。
医療支援チーム・災害拠点病院へ早めに連絡をとる
特殊型糖尿病は一般の救護所では対応が難しい場合が多いため、災害拠点病院や糖尿病専門医のいる医療施設への早期アクセスを意識しましょう。自治体の防災アプリや災害用伝言ダイヤル(171)を活用すると、情報収集がスムーズになります。
| 行動 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 薬の確認 | 手持ちの薬剤・インスリンの残量と使用期限を把握する |
| 血糖測定 | 2〜4時間ごとにモニタリングし、記録を残す |
| 支援要請 | 災害拠点病院・DMAT・薬局に早期連絡する |
避難生活での血糖管理 ー 特殊型糖尿病ならではの注意点
避難所での生活が長引く場合、食事の偏りやストレスなど複合的な要因で血糖管理は困難になりがちです。特殊型糖尿病の方は、一般の糖尿病に比べてこれらの影響を受けやすいため、環境に合わせて柔軟に対応する姿勢が大切です。
避難所での食事は血糖値を乱しやすい
避難所で配給される食事は、おにぎりやパン、カップ麺など炭水化物中心になりがちです。特殊型糖尿病の方がこうした食事をそのまま摂ると、食後血糖値が急激に上昇する恐れがあります。可能であれば野菜や蛋白質を含む食品を追加し、炭水化物の割合を減らす工夫をしましょう。
膵性糖尿病の方は、膵酵素補充薬を食事のたびに服用する必要があります。薬が不足してきた場合は、1回あたりの食事量を減らして回数を分け、消化への負担を軽減する方法も一つの選択肢です。
インスリン注射のプライバシー確保と周囲への伝え方
大勢の人が集まる避難所では、インスリン注射を行う場所の確保に苦労することがあります。避難所の運営スタッフに事情を伝え、医療行為用の個室やパーティションを設けてもらえないか相談するとよいでしょう。
周囲の方に糖尿病であることを伝える際は、「注射をしないと命に関わる」という点を簡潔に説明するのが効果的です。特殊型糖尿病という言葉になじみがない方がほとんどなので、「通常の糖尿病とは治療法が異なる特別なタイプの糖尿病です」と伝えると理解を得やすくなります。
特殊型糖尿病を知らない医療スタッフへの説明ポイント
巡回診療に来た医師や看護師が、特殊型糖尿病について十分な知識を持っているとは限りません。先ほど紹介した「災害時カード」を見せながら、自分の病型・使用薬剤・血糖管理の目標値を端的に伝えましょう。
MODYの場合は「遺伝子変異による糖尿病で、スルホニル尿素薬に反応するサブタイプです」など、治療上のキーポイントを一言で伝えられるように練習しておくと心強いでしょう。
膵性糖尿病であれば「膵臓の外分泌と内分泌の両方が障害されています」と伝えれば、医師は治療の方向性を素早く判断できます。
| 伝えるべき情報 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 病名と病型 | 「MODY3型です」「膵性糖尿病(3c型)です」 |
| 現在の薬剤 | 「グリクラジド40mg/日を服用中です」 |
| 低血糖の頻度 | 「月に2〜3回、軽い低血糖があります」 |
ストレスや睡眠不足が血糖値に及ぼす影響への備え
災害後のストレスや睡眠不足は、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンの分泌を増やし、血糖値を押し上げます。特殊型糖尿病の方はもともと血糖変動が大きいため、ストレスによる影響がさらに増幅されやすい傾向があります。
可能な範囲で睡眠時間を確保し、深呼吸やストレッチなど簡単なリラクゼーションを取り入れることが、血糖コントロールの安定に寄与します。精神的につらいと感じたときは、避難所の相談窓口や心理士に話を聞いてもらうことも検討してください。
災害に備えてかかりつけ医と事前に共有すべき治療情報
災害対策の中で最も効果が大きいのは、平時のうちにかかりつけ医と「もしものとき」の治療プランを話し合っておくことです。診察のたびに少しずつ情報を整理し、紙やデータとして残しておくだけで、いざというときの行動が大きく変わります。
治療内容を災害時にも引き継げるようにまとめておく
かかりつけ医に依頼して、現在の処方内容・直近のHbA1c値・合併症の有無・アレルギー情報を「診療情報提供書」として紙に出してもらうと、他の医師に引き継ぎやすくなります。特殊型糖尿病の場合は遺伝子検査の結果や画像検査所見なども含めておくとよいでしょう。
スマートフォンにデータを保存しておくと便利ですが、クラウドストレージを活用して複数の端末からアクセスできるようにしておけば、端末の紛失時にも対応できます。
災害時の代替薬やインスリンの切り替えプランを相談する
普段使用しているインスリン製剤が災害時に手に入らなくなった場合、どの製剤に切り替えればよいかを事前に主治医と決めておくことが安心につながります。
たとえば、超速効型インスリンが入手できない場合のレギュラーインスリンへの切り替え方や、用量換算の目安を確認しておきましょう。
MODYでスルホニル尿素薬を服用中の方は、同じ薬効の別の一般名の薬剤をリストアップしてもらうと、処方薬局が変わった場合にも対応しやすくなります。膵性糖尿病で膵酵素補充薬を使用中の方は、代替品の有無も確認しておいてください。
| 病型 | 相談しておくべき内容 |
|---|---|
| MODY | サブタイプに応じた代替スルホニル尿素薬と用量 |
| 膵性糖尿病 | 膵酵素補充薬の代替品名と入手経路 |
| 薬剤性糖尿病 | 原因薬中断時のインスリン減量目安 |
定期的に備蓄品を見直すタイミングと方法
備蓄品は「用意して終わり」ではなく、定期的な見直しが必要です。とりわけインスリンには使用期限があるため、3か月に1度は在庫を確認し、古いものから使用して新しいものを補充するローテーションを習慣にしましょう。
防災の日(9月1日)や通院日をリマインダーにするのも効果的な方法です。家族と一緒に備蓄品の場所と使い方を確認しておけば、本人が動けない場合でも周囲の方が対応できるようになります。
- 3か月ごとにインスリン・経口薬の使用期限を確認する
- 血糖自己測定器のセンサーと電池を補充する
- 災害時カードの記載内容を現在の処方情報に更新する
- 家族と備蓄品の保管場所や使い方を共有する
よくある質問
- Q特殊型糖尿病の方が災害に備えて最低限そろえておくべき持ち出し品は何ですか?
- A
特殊型糖尿病の方は、一般的な糖尿病の備蓄に加えて、自分の病型に応じた薬剤を2週間分以上用意しておくことをおすすめします。インスリン製剤・注射器具・血糖自己測定器・センサーチップ・予備電池・ブドウ糖タブレットが基本の持ち出し品です。
膵性糖尿病の方は膵酵素補充薬、ステロイド性糖尿病の方はステロイド予備もあわせて用意してください。どの薬剤が必要かは病型によって異なるため、かかりつけ医と相談のうえリストを作成し、お薬手帳や災害時カードと一緒に持ち歩くのが安心です。
- Q薬剤性糖尿病の方が災害時にインスリンを入手できないときはどうすればよいですか?
- A
まず手元のインスリン残量を確認し、投与量を必要最小限に減量しながら、災害拠点病院やDMAT(災害派遣医療チーム)に早急に連絡を取ってください。
薬剤性糖尿病では原因薬(ステロイドなど)も同時に手に入らなくなる場合がありますが、ステロイドの急な中断は副腎不全を招く危険があるため、自己判断での中止は避けましょう。
日頃から主治医と「インスリンが入手できない場合の対処法」を話し合い、代替薬や減量の目安を書面にまとめておくと、緊急時に慌てず行動できます。
- Q特殊型糖尿病に関する情報を避難所の医療スタッフにどのように伝えればよいですか?
- A
病名・使用中の薬剤名と用量・アレルギー情報・直近のHbA1c値をまとめた「災害時カード」を見せるのが最も効率的な方法です。医療スタッフが特殊型糖尿病になじみがない場合でも、カードがあれば治療方針の判断材料になります。
口頭で説明する際は、「遺伝子変異による糖尿病でMODY3型です」「膵臓の手術後に発症した3c型糖尿病です」のように、病型と原因を簡潔に伝えてください。一般的な2型糖尿病とは治療が異なる旨を最初に伝えると、適切な対応を受けやすくなります。
- QMODYや膵性糖尿病は災害時に一般の糖尿病と同じ対処で問題ありませんか?
- A
同じ対処では十分とはいえません。MODYはサブタイプによって有効な薬剤が異なり、たとえばGCK-MODYでは薬物治療が不要なケースもありますが、HNF1A-MODYではスルホニル尿素薬が効果的です。
一般的な2型糖尿病の治療をそのまま当てはめると、不要な薬剤の投与や必要な薬剤の欠如が生じるおそれがあります。
膵性糖尿病ではインスリン治療に加えて膵酵素補充が必要な点が、1型・2型との大きな違いです。災害時に「糖尿病です」とだけ伝えた場合、膵酵素補充薬が処方されない可能性があるため、自分の病型を正確に伝えることが適切な医療を受ける鍵となります。
- Q特殊型糖尿病の災害備蓄品はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
- A
3か月に1度を目安に見直すことをおすすめします。インスリンには使用期限があるため、古いものから先に使い、新しいものを補充する「ローテーション方式」を取り入れると無駄が少なくなります。血糖自己測定器のセンサーチップや電池の在庫も同じタイミングで確認しましょう。
処方内容が変更になった場合は、その都度備蓄品と災害時カードを更新してください。通院日や防災の日をリマインダーに設定しておくと、見直しのタイミングを忘れにくくなります。


