α-GI薬の成分は、ボグリボース(ベイスン)、ミグリトール(セイブル)、アカルボース(グルコバイ)の3つです。どれも食事のあとの血糖の上がり方を穏やかにしますが、飲む量や抑える酵素の範囲、腎臓の働きや妊娠に応じた注意点が成分ごとに違います。

薬袋の名前が変わったときは、販売名と成分名を分けて読むと、別の種類に替わったのかどうかを整理できます。錠剤のmgの数字も成分ごとに意味が違うので、成分をまたいで大小を比べずに読みましょう。

この記事では、α-GI薬の種類と共通する働き、3成分の効果や飲み方の違い、体調に応じた使い分けを解説します。

α-GI薬は食後の血糖上昇を穏やかにする

α-GI薬は、小腸で糖質が分解される速さを遅らせ、食事のあとに血液へ入る糖の勢いを抑える薬です。食前の値がそれほど高くなくても、食後に大きく上がる人では、この働きが治療に役立ちます。

糖質を細かくする酵素の働きを抑える

α-グルコシダーゼは、小腸の内側で糖を吸収できる大きさに分解する酵素です。α-GIは「α-グルコシダーゼ阻害薬」の略で、この酵素の働きを抑えるという意味があります。

二糖類とは小さな糖が2つつながったものです。α-GIはそのつながりを切る過程を遅らせるため、糖が小腸で吸収されて血液へ入る時間が分散します。

食べた糖質と同じ時間に腸で働く

薬がしっかり働くよう、食べた糖質が小腸へ届く時間に合わせて飲みます。食事と薬の関係を、糖質の流れに沿って並べると次のようになります。

  • 食事 … ご飯やパンなどから糖質が入る
  • 消化 … でんぷんなどが、より小さな糖へ分解される
  • 小腸での作用 … α-GIが糖を細かくする酵素の働きを抑える
  • 吸収 … 血液へ糖が入る速さが緩やかになる

糖質を食べた量そのものを減らす薬ではないため、薬を飲んでいても食事療法は治療の土台です。

食後に上がる血糖が治療の中心

食後過血糖とは、食事のあとに血糖が上がりすぎる状態を指します。α-GIはこの上昇を抑えるために使われ、ご飯や麺類など炭水化物を含む食事と関わりの深い薬です。

一方、朝食前から血糖が高い人では、食後への作用だけで治療全体を組み立てると不十分になりえます。食前と食後のどちらが高いのかを分けると、α-GIが処方に加わる理由も見えてきます。

日本で使われるα-GI薬の3成分と販売名

ベイスンはボグリボース、セイブルはミグリトールの販売名です。グルコバイも成分の名前ではなく、アカルボースの先発品の販売名として知られています。

薬袋では成分名と販売名を分けて読む

同じ成分でも、先発品と後発品で薬袋に書かれる名前が違います。薬を見比べるときは成分名を基準にしましょう。販売名が変わっただけで、別の種類へ切り替わったと決めつけずに済みます。

医薬品の情報を公開する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の一覧では、アカルボースは「サワイ」「NIG」が掲載されています。グルコバイの名前を知っている人も、現在の薬袋ではアカルボースという表記を目にします。

販売名・会社・通常量の対応

下の通常量は成人の糖尿病の食後過血糖に対する量で、ベイスン錠、セイブル錠、アカルボース錠「サワイ」の電子添文(薬の効能や注意点を記した添付文書)に基づきます。製造販売の会社は、PMDAの一般名ごとの一覧に沿った記載です。

成分主な販売名・製造販売の会社1回量と飲むタイミング
ボグリボースベイスン錠・OD錠/T’s製薬株式会社通常0.2mg、効果不十分時0.3mgまで。1日3回、毎食直前
ミグリトールセイブル錠・OD錠/株式会社三和化学研究所通常50mg、効果不十分時75mgまで。1日3回、毎食直前
アカルボースアカルボース錠「サワイ」/沢井製薬株式会社。「NIG」/日医工岐阜工場株式会社通常100mg。50mgから開始する方法もある。1日3回、毎食直前

OD錠は口の中で崩れるように作られた錠剤です。錠剤の形や飲みやすさが違っても、同じ成分・同じ量かをまず薬袋で確かめると、種類を取り違えずに比べられます。

同じ成分でも効能や組み合わせを区別する

3成分に共通する効能は、食事療法・運動療法などで効果が足りないときの、糖尿病の食後過血糖の改善です。ほかの糖尿病治療薬を使っている場合も対象になりますが、併用に関する電子添文の記載は製品ごとに異なります。

ベイスン錠0.2には、所定の条件を満たす耐糖能異常、いわゆる糖尿病予備軍における2型糖尿病の発症抑制という効能もあり、ベイスン錠0.3と同じ扱いではありません。

グルベスはミチグリニドとボグリボースを組み合わせた配合剤で、電子添文では両成分の併用が適切と判断される2型糖尿病に使います。ボグリボースだけの錠剤と違い、2成分が入った薬として処方全体を見ます。

血糖はどのくらい下がるのか

α-GIの効果は食後血糖に表れやすく、一定期間の血糖の平均を示すHbA1cにも反映されます。下がり幅を読むときは、どの成分をどんな治療条件で使った数値なのかを確かめましょう。

HbA1cの下がり幅には目安がある

2型糖尿病でα-GIを単独使用した12週以上の試験41件の統合では、主にアカルボースとミグリトールの結果から、HbA1cはプラセボという有効成分を含まない薬に比べ約0.7〜0.8ポイント低下しました1)。

この「ポイント」は、HbA1cの数値同士の差を表す言葉です。すでに薬を併用している人や開始前の血糖が異なる人では、その条件に応じて下がり幅を評価します。

食後・空腹時・HbA1cを分けて見る

検査結果は、採血した時間と一緒に読むと薬の働きを捉えやすくなります。食後の1回の値と、一定期間の平均を示す値では、見ている血糖の範囲が異なるためです。

指標α-GIで期待する変化結果を読むときの注意
食後血糖食事に伴う上昇を抑える中心的な対象食べ始めてから測定までの時間を合わせて比較
空腹時血糖改善することもあるが、主な作用の対象は食後朝の値だけで食後への効果を判断しない
HbA1c食後の改善が平均的な血糖にも反映される開始前の値や併用薬を含めて評価

たとえば、朝の空腹時血糖があまり変わらなくても、食後の上昇が小さくなっていれば、薬の狙いに沿った変化として評価できます。反対に、どの食事のあとに高いかを把握するには、HbA1cとは別にその時間の血糖値が必要です。

量を増やすほど効果が比例するわけではない

増量は、現在の血糖と薬を続けられるかの両方を見て判断されます。HbA1cの改善が頭打ちになる一方で副作用が増えるという関係もあるため、増量するかどうかは効果と副作用の両面から決まります。

薬袋の量と採血結果を一緒に見直すときには、食事量が変わった時期や、別の薬が加わった時期も関係します。用量の違いは血糖の差だけで決まらず、安全に継続できるかを含む調整の結果です。

3つのα-GI薬で働く酵素の範囲が違う

3成分は糖の分解を遅らせる点では共通していますが、抑える酵素の範囲に違いがあります。アカルボースは、でんぷんを分解する酵素にも作用する点が比較の軸です。

アカルボースはでんぷんの分解にも作用

α-アミラーゼは、唾液や膵液に含まれ、でんぷんを小さく分ける酵素です。アカルボースはこの酵素と、小腸の内側で糖をさらに細かくするα-グルコシダーゼの働きを抑えます。

  • ボグリボース … 小腸で二糖類などを分解する酵素の働きを抑制
  • ミグリトール … 小腸の粘膜にある糖を分解する酵素の働きを抑制
  • アカルボース … 小腸の酵素に加え、でんぷんを分解するα-アミラーゼも抑制

適する成分を選ぶには、酵素の範囲に加えて実際の血糖の変化を評価します。

酵素への強さと処方量は別々に読む

電子添文には、実験で酵素の働きをどの程度抑えたかという比較も記載されています。動物由来の酵素を使った実験の数値は、食事をとる人の血糖の下がり幅とは分けて読みます。

ボグリボースの0.2mgとアカルボースの100mgは、同じ物差しで薬の強さを示した数字ではありません。それぞれの成分に応じた処方量なので、別の成分へ変更するときにmgの比率で換算する使い方は避けます。

体内への吸収や食後の反応にも差がある

ミグリトールは小腸から体内へ吸収される点が、ほとんど吸収されないボグリボースやアカルボースと異なります。日本人の2型糖尿病の50人を12週間比較した試験では、ミグリトールとボグリボースの両方で食後に腸から出るホルモンのGLP-1が増え、GIPが減り、体重はミグリトール群で減少しました2)。

腸から出るこれらのホルモンは、食後のインスリン分泌などに関わります。インスリンは血液中の糖を体の細胞に取り込ませるホルモンで、腸で糖を分解する速さ以外にも食後の反応を左右する要素があります。

食後血糖の比較と毎食直前の飲み方

どの成分も日本での基本の用法は1日3回、毎食直前です。食後血糖の下がり方を比べる前に、決められた量とタイミングで使えているかを確かめましょう。

食後のどの時点を測るかで見え方が変わる

食後の血糖は時間とともに動くため、食後1時間の結果と2時間の結果では、薬の効き方の見え方が変わります。食事の内容も異なる日に測った値だけでは、成分の違いによる差とは決められません。

食事療法だけでは血糖管理が十分でない2型糖尿病の30人が、ボグリボース0.2mgとアカルボース100mgを1日3回、それぞれ8週間使用した比較では、両剤が食後1時間の血糖を下げ、アカルボースでは食後2時間の血糖も下がりました3)。

自分の治療と照らし合わせるときは、服用量と測定時点が合っているかを見ます。1日を通した血糖管理は、食後の1時点以外の結果も合わせて評価します。

毎食直前は食べ始める直前を指す

食直前とは、食事を食べ始める直前のことです。朝・昼・夕の時刻だけを目印にするよりも、食事の開始と服薬を結びつけるほうが、薬と糖質が腸に届く関係を捉えやすくなります。

飲む時期を変えた研究はありますが、日本の電子添文に示された通常の用法は毎食直前です。薬を替えたときも、成分名だけでなく薬袋の用量と食事との時間関係を合わせて読みましょう。

開始量は年齢や続けやすさで調整される

通常量より少ない量で始める処方には、体調を見ながら治療を進める意味があります。高齢者ではベイスンは1回0.1mg、セイブルは1回25mgから始める例が、それぞれの電子添文に示されています。

アカルボースは1回50mgから開始し、薬による不調が許容できるかを確かめて100mgへ増やす方法があります。少ない量で処方されていることだけを理由に効き目が足りないと考えず、血糖の経過と一緒に評価します。

腎臓の働きと妊娠によって選択が変わる

腎臓の働きが落ちている人や妊娠中の人では、血糖を下げる効果に加えて、成分ごとの使用条件が薬の選択を左右します。

重い腎機能障害では3成分とも注意が必要

腎機能は、血液から不要な物質などを取り除いて尿へ出す腎臓の働きです。重い腎機能障害があると、薬の血中濃度や体内の糖の扱い方が変化し、同じ量でも治療への反応が変わりえます。

ミグリトールは吸収後に主に腎臓から排泄され、重い腎機能障害では血中濃度が上がる点に注意が必要です。吸収が少ない成分にも腎機能障害に関する注意があり、腸で働く薬でも腎機能を含めて評価します。

電子添文にある腎機能と妊娠の記載

3成分の記載を並べると、妊娠に関する扱いが同一ではないと分かります。下の表はベイスン錠、セイブル錠、アカルボース錠「サワイ」の電子添文の要点です。

成分重い腎機能障害妊婦・妊娠している可能性がある人
ボグリボース代謝状態の変化で血糖管理が大きく変わるおそれ治療の利益が危険性を上回ると判断される場合のみ使用
ミグリトール腎機能が正常な人より血中濃度が上昇投与しない
アカルボース腎機能が正常な人より血中の活性物質の濃度が上昇投与しない

ボグリボースの記載は、治療の利益と危険性を一人ひとり比べて判断するという条件です。普段の薬と同じ分類でも、別の成分へ替えるときは自分で決めずに処方元へ相談しましょう。

妊娠の予定は処方の見直しにつながる

妊娠を予定した時点で、薬の選び方の見直しが始まります。妊娠が分かってからはもちろん、可能性がある段階でも、飲んでいる成分名を伝えるとその後の治療を判断しやすくなります。

セイブルやアカルボースを服用中に妊娠が分かった、または可能性が生じた場合は、次の服用前に処方元へ連絡して対応を確認してください。血糖管理は続ける必要があるので、治療を止めたままにせず、処方元の指示を受けて続けます。

薬の使い分けは血糖の記録と続けやすさから

3成分の使い分けでは、食後の血糖の上がり方と、今の処方を続けられるかを一緒に評価します。比較する中心は薬の名前の印象ではなく、服用後の自分の血糖と体調です。

併用中の薬を含めて効果を判断する

インスリンを使う韓国の2型糖尿病の121人を24週間比較した試験では、アカルボースまたはボグリボースを追加したあとの血糖の下がり方に、大きな差はありませんでした4)。単独で使う場合と、すでに別の治療がある場合とでは、薬の違いの見え方も変わります。

ほかの血糖を下げる薬との組み合わせでは、低血糖にも注意が必要です。α-GI服用中に低血糖が起きたときは、砂糖ではなくブドウ糖をとってください。

お腹の不調も継続できるかの判断材料

血糖が下がっていても、お腹の不調で外出や食事が負担になると、続けるのがつらく感じられるものです。効き目のために我慢を重ねず、生活への影響も処方を調整する材料として主治医に伝えましょう。

健康な日本人男性22人が各薬を3日間使用した比較では、ミグリトールは便がゆるくなりやすく、アカルボースはおならやお腹の張りが出やすい傾向でした5)。

薬の変更はこの傾向だけで決めず、現在の用量と食後の血糖を合わせて判断されます。症状が出た時間と、食事や服用との関係が分かる記録は、変更前後の体調を比べる際にも役立ちます。

診察では血糖と服薬の状況を一緒に伝える

使い分けの判断に関係する情報は、次のように整理できます。測定値がある人は食事との時間関係も添えると、薬を変える必要があるかを検討しやすくなります。

見る項目使い分けに関わる理由
食後の血糖の上がり方どの食事のあと、どの時点で高くなるかが薬の狙いに関わる
一緒に使っている薬追加する効果や低血糖への注意が変わる
腎臓の働き血中濃度や血糖管理が変化するおそれがある
妊娠の予定・可能性使用できる条件が成分によって異なる

まず妊娠の可能性など服用の可否に関わる条件を確かめ、そのうえで血糖の改善と続けやすさを検討します。

たとえば、自宅で夕食後の血糖を測っている人が薬の変更後も高い値を見たら、薬袋の成分名と量、食べ始めた時刻と測った時刻を記録して、次の診察で一緒に見てもらいましょう。数字だけを見て手元の錠剤を増やすより、同じ条件での変化を伝えるほうが処方の判断につながります。

よくある質問

Q
グルコバイとアカルボースは違う薬ですか?
A

グルコバイは販売名、アカルボースは成分名なので、別の成分を指す名前ではありません。グルコバイはアカルボースの先発品の販売名として知られ、PMDAの一覧にはアカルボース錠「サワイ」「NIG」が掲載されています。

Q
ベイスン0.2mgはセイブル50mgより弱い薬ですか?
A

mgの数字の大小だけで、異なる成分の効き目は比較できません。それぞれの成分について決められた通常量が異なり、その用量での血糖の変化を見て評価します。

薬が切り替わった場合は、新しい薬袋に記載された量で服用します。以前の薬の数字に合わせて、錠剤の数を増減することは避けてください。

Q
α-GI薬を替えてもHbA1cがあまり変わらないときはどうしますか?
A

HbA1cに加えて、食後血糖と服用状況を診察で見直します。薬を替えた時期や食事の変化も伝えると、どの条件が結果に関わっているかを整理できます。

食後の測定値がある人は、食べ始めから測定までの時間を記録して持参しましょう。増量するかどうかは、HbA1cだけでなく血糖の経過も見て判断されます。

Q
α-GI薬は腎臓の働きが落ちると必ず使えなくなりますか?
A

腎臓の働きが落ちたという情報だけで、3成分すべてが一律に使用できなくなるわけではありません。重い腎機能障害では、成分によって血中濃度の上昇や血糖管理の変化に注意が必要です。

腎機能が悪化したと説明された場合は、今の成分と用量を継続できるか、検査結果を踏まえて処方元に確認しましょう。腸で働く薬でも、腎臓の状態を含めた評価が必要です。

参考にした文献