α-GIを飲み始めてからおならやお腹の張りが増えるのは、小腸で吸収されなかった糖が大腸で発酵し、ガスが生じるためです。飲み始めに目立ち、続けるうちに軽くなる傾向があり、甘い飲み物やお菓子の見直しや主治医による量の調整でも軽くできることがあります。外出中のおならが気になる、食後にお腹がふくらんで食事が進まないといった悩みも、我慢だけで乗り切らずに相談してよい症状です。

この記事では、おならや張りが起きる理由と軽くなるまでの経過、食事の工夫、薬の種類による違い、受診を急ぐ腹痛や嘔吐の目安、主治医への伝え方を解説します。

目次

α-GIでおならやお腹の張りが増える理由

α-GIは食べた糖の分解を遅らせる薬です。小腸で吸収されずに大腸へ届く糖が増えると、腸内細菌がそれを分解する過程でガスが生じます。

吸収されなかった糖が大腸で発酵する

α-GIは、α-グルコシダーゼ阻害薬という、食後の血糖上昇を緩やかにする飲み薬の略称です。小腸は胃の先に続く細長い腸で、食べ物から栄養を吸収する場所に当たります。

糖が小腸で吸収されるには、吸収できる小さな形に分解される必要があり、その分解を遅らせると一部が大腸へ進みます。大腸にすむ細菌による発酵が進み、ガスの量が増えるという流れです。

  • 食事 … 砂糖やでんぷんなどの糖質が腸へ移動
  • 小腸 … 薬の作用で糖の分解が遅れ、一部が吸収されずに通過
  • 大腸 … 腸内細菌による発酵でガスが発生

ガスの出方には、薬の量だけでなく、食べた糖質の種類や量も関わります。

ガスが出る症状と、たまる症状

放屁はおなら、腹部膨満はお腹が張る感覚を指します。鼓腸は、腸にガスがたまってお腹が張る状態の呼び名です。

ガスが外へ出ればおならが増え、腸内にたまれば張りや不快感として感じられます。服用後に便がやわらかくなったり、下痢が加わったりする変化も、消化されずに腸へ届く糖に関連する副作用です。

おならの多さだけで薬の効き目は測れない

お腹の症状と血糖を下げる働きには共通する仕組みがありますが、おならが多いほど治療効果が高いとは判断できません。血糖への効果は血液検査などで、お腹への負担は痛みや便の変化、生活への影響で評価します。

おならが少ない日も薬が効いていないとは限らず、強い張りは効果の証拠ではないので、我慢せずに伝えてかまいません。治療を続けられるかどうかには、検査の結果と日常の過ごしやすさの両方が関わります。

お腹の副作用の頻度と、軽くなるまでの経過

おならや張り、下痢はα-GIで知られている副作用です。飲み始めに出やすく、時間とともに軽くなる傾向がありますが、何日で落ち着くかは一律に決められません。

頻度の区分は同じ条件での薬の比較ではない

ベイスン錠、セイブル錠、アカルボース錠「サワイ」の電子添文(薬の安全な使い方をまとめた添付文書)には、次のお腹の症状が記載されています。表は主な症状を抜き出したもので、各薬の調査対象や集計の仕方が異なるため、数字だけで出やすさの順位はつけられません。

薬頻度の区分主なお腹の症状
ベイスン錠5%以上おなら、張り、下痢
ベイスン錠0.1〜5%未満軟便、腹痛、便秘など
セイブル錠5%以上張り、鼓腸、下痢
セイブル錠0.1〜5%未満腹痛、便秘、吐き気など
アカルボース錠「サワイ」5%以上張り・鼓腸、おならの増加、軟便
アカルボース錠「サワイ」5%未満下痢、腹痛、便秘など

「5%以上」は、その症状が全員に起こるという意味ではなく、一定以上の頻度で記録された区分です。自分の症状を判断するときは、この割合よりも強さや悪化の有無を優先します。

軽い症状は服用を続けるうちに減る傾向

軽い張りやおならは、飲み始めに目立っても、続けるうちに気にならなくなることがあります。経過は、食事や睡眠が普段どおりか、症状が弱まっているかで見ていきましょう。

一方、薬を増やしたあとから張りが強まった場合や、食べる量を減らすほど苦しい場合は、単に時間がたつのを待つだけでは負担が残ります。開始からの長さに加えて、増量した時期と症状の変化を分けて捉えると、調整すべき点が伝わりやすくなります。

生活に支障が出たら予約日前でも連絡を

「飲み続ければ慣れる」という見込みを理由に、強い腹痛や嘔吐まで我慢するのは危険です。痛みが続くときは受診を優先し、軽い症状でも外出や食事に支障が出ているなら、次回の予約を待たずに処方元へ連絡してください。

落ち着くまでの日数を決めて耐えるより、昨日より張りが軽いか、便が出ているか、食事をとれているかという変化を伝えるほうが診療に役立ちます。日々の変化を書き留めておくと、改善している症状と悪化している症状を区別しやすくなります。

α-GIを少量から始めるのはお腹への負担を抑えるため

お腹の副作用が心配なときは、少ない量から始めて、症状を見ながら増やす方法が検討されます。量の調整は血糖への効果にも関わるため、主治医が経過を見て決めます。

量を増やすと腸に届く糖も変わる

薬の量が増えると、分解されずに大腸へ届く糖が増え、発酵に伴うガスも増えやすくなります。少量から始めるのは、必要な治療を進めながら、お腹の症状を観察できるようにするためです。

セイブル錠の電子添文では、張りや下痢が起こるおそれがあるときに少量で開始し、症状を見ながら増量する方法が示されています。セイブル錠とアカルボース錠「サワイ」では、症状に応じた減量やガスを減らす薬の併用、耐え難い場合の中止も検討されます。

増量後の張りは開始時と分けて記録する

飲み始めた日は問題がなくても、処方量が増えたあとから張りが気になり始めることがあります。症状が始まった日と一緒に、処方量が変わった日も残しておきます。食事の変化で起きた症状か、処方の変更に伴う症状かを検討しやすくなります。

たとえば、自宅で夕食後に張りを感じたら、その日の薬の量、食べたもの、便が出たかを手帳に残す方法があります。数日前に量が増えていれば変更日も添え、痛みや嘔吐があるときは記録を続けるより受診を優先します。

減らす量と再び増やす時期は処方で決める

自分で錠数を減らしたり、つらい日だけ抜いたりすると、症状と血糖の両方を評価しにくくなります。軽い副作用なら、今の処方を基に、量を減らすか増量を待つかを主治医と決めていきます。

増量予定があるのに張りが続いているときは、増やす前に処方元へ症状を伝えましょう。予定の変更が必要かどうかは、症状の程度と血糖の経過を合わせて判断されます。

砂糖の多い飲食物を見直してガスの負担を減らす

食事では、砂糖の多い飲み物やお菓子の量を見直す工夫が役立ちます。主食を含む食事全体を大きく削るより、どの飲食物が増えた日に張りが強かったかを振り返ってみましょう。

甘い飲み物やお菓子が重なる日

α-GIを飲んでいるときは、砂糖が十分に分解されずに大腸へ届き、腸内細菌に発酵されやすくなります。甘い飲料を飲みながら菓子を食べる習慣があれば、1つずつの量が少なく見えても、合わせた量を振り返る意味があります。

たとえば、普段の甘い飲料を砂糖の入っていないお茶や水に替えると、食事そのものを大幅に変えずに砂糖を減らせます。甘いものを控えた日にも強い腹痛が続くなら、食事の工夫だけに頼らず受診してください。

でんぷんを含む主食も、量と組み合わせで捉える

ご飯やパンに含まれるでんぷんも、分解が遅れると一部が大腸で発酵されます。砂糖を減らしても張りが残る場合があり、薬の量や食事全体の内容も関係するため、主食は抜くより量と組み合わせで調整します。

飲食物の例ガスとの関係見直す点
砂糖入りの飲料、お菓子分解されずに届く砂糖が発酵の材料に飲料と間食が重なっていないか
ご飯、パン、麺でんぷんも一部が発酵の材料に普段より主食の量が増えていないか
砂糖の入っていない水、お茶砂糖の発酵による負担を増やさない甘い飲料から替えられる場面

食事量の変更が大きいと糖尿病治療にも影響するため、指示された食事の範囲を基に、砂糖の多いものを控えめにする工夫から始めます。

食事と症状を組にして残す

「何を食べたか」だけでなく、「食後にどれくらい困ったか」を一緒に残すと、見直す対象が具体的になります。張りが弱かった日の食事も記録しておけば、つらかった日だけを思い出して食べられるものを狭めずに済みます。

食事量が落ちるほど張るときは、無理に制限を増やさず、記録を持って主治医へ相談しましょう。食事を減らして症状を隠すより、薬を続けられる量や治療内容を見直すほうが近道です。

α-GIの種類でおならと便の変化に違いがある

同じα-GIでも、おならが目立つか、便がゆるくなるかといった症状の出方には違いがあります。薬の変更を検討するときは、いちばん困っている症状と、普段の便の状態が判断材料です。

ボグリボースとアカルボースのおならの比較

2型糖尿病の30人がボグリボース0.2mgとアカルボース100mgを1日3回、各8週間服用した比較では、おならが増えた人はそれぞれ56.7%と90%だったという報告があります1)。この量での比較ではボグリボースのお腹の症状が少なく、食後血糖の下がり方はやや小さい結果でした。

薬を替えるかどうかは、おならの頻度だけで決まるものではなく、今の量での血糖の改善と生活への負担を合わせて検討します。どちらでも張りや下痢は起こり得るため、変更後も同じ項目で経過を見ていきます。

ミグリトールでは便のゆるさも判断材料

健康な日本人男性22人がミグリトール75mgとアカルボース100mgを毎食、各3日間服用した比較では、ミグリトールで便がやわらかくなりやすく、アカルボースでおならが多い傾向が報告されています2)。普段から便がゆるいか、便秘ぎみかによって、負担に感じる症状も変わります。

薬の種類による傾向を、お腹の症状に絞ってまとめると次のようになります。処方を見直すときに、主治医と話す内容を整理するための表です。

成分比較でみられた傾向伝えたい症状
ボグリボース上記の量ではアカルボースよりおならが少なかった現在の張りと日常への影響
アカルボース比較試験でおならや張りが目立つ傾向おなら、張り、便の硬さ
ミグリトール短期間の比較で便がやわらかくなる傾向軟便や下痢の有無、普段の便

同じ人でも服用量や食べたものが変わると症状が動くため、薬の名前だけで原因を決めずに経過を見ます。

薬を選び直すときは生活への支障も含める

おならが困るのか、下痢で外出できないのかによって、処方の見直しで目指す状態が変わります。便秘ぎみの人と、もともと軟便の人とでは、便がやわらかくなる変化の受け止め方も異なります。

種類の変更を希望するときは、いちばん困る症状と、薬を飲む前の便の状態を主治医へ伝えましょう。変更の判断には、お腹への負担に加えて、現在の血糖の状態や薬の量も含まれます。

続く腹痛や嘔吐は腸閉塞を疑って受診する

腹痛が続く、吐く、強く張って便やおならが出にくいときは、次の服用をせず、すぐに医療機関へ連絡・受診してください。腸閉塞は腸の内容物が先へ進めなくなる状態で、α-GIの重大な副作用に挙げられています。

いつもの張りと決めつけずに受診したい変化

軽いおならの増加と、続く痛みや嘔吐は対応が異なります。次のような変化があれば、食事を減らしたり市販薬を足したりして様子を見るより、診察を受けるほうが安全です。

  • 持続する腹痛、または強い腹痛
  • 吐き気や嘔吐を伴うお腹の張り
  • 便やおならが出にくく、張りや痛みが増す状態
  • 張りや便秘に加わる血便

すべての症状がそろうまで待つ必要はなく、夜間や休日でも痛みが続く、繰り返し吐くときは受診を優先してください。自力での移動が難しいほど状態が悪いときは救急要請が必要です。

お腹の手術歴や腸閉塞の経験がある人

開腹手術を受けた人や腸閉塞を起こした人では、腸内のガスが増えると腸閉塞が起こるおそれがあります。以前の手術から時間がたっていても、薬を使う際に確認される病歴です。

胃や腸の手術を受けた経験がまだ伝わっていなければ、手術名が不明でも、どこをいつ手術したかを処方元へ伝えてください。張りに痛みや嘔吐が重なっているときは、手術の書類がそろうのを待たずに受診します。

腸の壁にガスがたまる病気にも注意する

腸管嚢胞様気腫症は、腸の内側を流れるガスとは異なり、腸の壁の中に袋状のガスがたまる病気です。α-GIの使用中にまれに報告されており、張りや便秘に血便などが加わると検査が必要になります。

この病気かどうかは検査で確かめるもので、おならが出れば解決するとは限りません。血便が出たときや腹痛が続くときは、服用している薬の名前を伝えて速やかに受診してください。

つらくて続けにくいときの相談と処方の調整

つらさを具体的に伝えると、減量や薬の追加、治療の変更を検討しやすくなります。検査値だけでなく、食事や外出への影響も診療で扱う内容です。

症状と生活への影響を短くまとめる

おならの悩みは診察室で話しにくく感じられても、日常生活への支障は薬を続けられるかに直結します。「外出を控えている」「張って食べられない」といった困りごとまで含めて、主治医へ伝えましょう。

伝えたい内容記録の例調整に役立つ理由
始まった時期服用開始後か、増量後か処方変更との関係を検討するため
症状と便の状態張り、痛み、下痢や便秘の有無軽い副作用と受診を急ぐ状態を分けるため
食事との関係甘い飲料や間食が多かった日食事で見直せる点を探すため
生活への影響外出、睡眠、食事への支障続けられる治療内容を検討するため

細かな回数を数えるのが負担なら、前日より軽いか重いか、生活に支障があったかという記録でも役立ちます。

ガスを減らす薬や減量が検討される

張りが続くときは、症状に応じて減量や消化管内ガス駆除剤の併用が検討されます。消化管内ガス駆除剤とは、胃や腸にたまるガスによる不快感を和らげるために使う薬です。

追加する薬は強い腹痛や嘔吐を隠して飲み続けるためのものではなく、受診を急ぐ症状があれば原因の確認が先になります。耐え難い症状があるときは中止も含めて判断されるので、続けるかやめるかの2択を一人で抱えず、調整を受けましょう。

便秘薬や胃腸薬も服用情報に含める

一緒に飲む薬がガスを増やすこともあります。アカルボースでは、便秘や肝臓の病気などで使われるラクツロース、ラクチトール水和物との併用で、腸内の発酵が重なりお腹の症状が強まるおそれがあります。

また、でんぷんの消化を助ける酵素を含む薬は、アカルボースと互いの働きに影響する可能性があるため、市販の胃腸薬も処方の検討に関わります。薬の名前が分からなければ、お薬手帳や包装を診察に持参すると、成分まで確認できます。

よくある質問

Q
α-GIのおならは何日くらいで落ち着きますか?
A

落ち着くまでの日数は一律に決められず、飲み始めに目立った症状が時間とともに軽くなる傾向があります。増量後に強まったか、食事や睡眠に支障があるかも含めて経過を見ます。

症状が続いて外出や食事を控えているなら、次回の予約を待たずに処方元へ相談してください。続く腹痛や嘔吐があるときは、慣れるのを待たずに受診が必要です。

Q
おならが気になる日はα-GIを減らしてもよいですか?
A

減量は血糖への効果も変えるため、自己判断で量を変えずに主治医と決めます。どの食事のあとにつらいか、何に困っているかを伝えると、処方量や増量予定を見直しやすくなります。

ただし、腹痛が続く、吐く、強く張って便やおならが出にくいときは、次の服用をせず、すぐに連絡・受診してください。通常の減量相談を待つ状態とは対応が異なります。

Q
甘いものを控えればお腹の張りはなくなりますか?
A

砂糖の多い飲食物を控える工夫で軽くなることはありますが、それだけで張りがなくなるとは限りません。でんぷんを含む食事や薬の量も関わるため、主食を抜くより、甘い飲料や間食が重なる習慣を見直す方法があります。

Q
市販の胃腸薬を足しておならを抑えてもよいですか?
A

追加する前に、飲んでいるα-GIの名前と市販薬の成分を薬剤師や主治医へ伝え、併用できるか確認しましょう。アカルボースでは、一部の便秘薬や消化を助ける酵素を含む薬が、お腹の症状や薬の働きに影響します。

張りに続く痛みや嘔吐が伴うときは、市販薬で抑えるより受診が先です。症状が軽くても長引くなら、追加の薬だけでなく、α-GI自体の量を見直す必要があるかも検討されます。

参考にした文献