SMBG(自己血糖測定)は、石けんで手を洗って十分に乾かし、測定器と試験紙を準備してから指先を穿刺するのが基本です。穿刺とは、細い針で皮膚に小さな穴を開け、測定に必要な血液を出す操作を指します。

痛みを軽くするには、指腹の中央を避けて側面に針を当て、血液が得られる範囲で穿刺の深さを浅くします。血が出ないときは傷口を強く絞らず、手を温めて指の付け根から先へ穏やかに血液を送る方法が適切です。

この記事では、SMBGの一連のやり方、穿刺時の負担を減らす工夫、測定値が不自然なときの確認、使用済み針の扱いを解説しています。

SMBGは1回の数値を治療へつなげる

SMBGで得られるのは、測った時点の血糖値です。結果は単独で良し悪しを決める数字ではなく、医師から指定された条件や体調と一緒に記録して、インスリン療法の安全確認に用います。

測定値はその瞬間の血糖を示す

血糖値は時間とともに動くため、1回の結果だけで普段の状態すべてを表すわけではありません。測定値は、そのときの条件を添えて初めて前後と比べやすい情報になります。

そのため、測るタイミングと回数は使っているインスリンや低血糖の危険性に応じて主治医が個別に決め、本人は自己判断で変えず指示を確認してください。

数字と一緒に測定条件を残す

記録の基本項目は、血糖値と時刻です。そこへ医師から指定された測定条件、低血糖を疑う症状、普段と違う出来事を添えます。測定に失敗してやり直した場合も、その事実を残すと診察時に結果を解釈しやすくなります。

残す内容記録例確認できる点
測定結果値と時刻測った時点の血糖
測定条件医師の指示どおり同じ条件での比較
体の状態冷汗、ふらつき、発熱数値と症状の一致
測定時の事情手洗い後に再測定操作によるずれの可能性

インスリン量を変えるのは決めたルールの範囲内

測定値を見てインスリン量を調整する指示がある人は、あらかじめ示された補正方法に従います。予定外の高値や低値が出たからといって、指示のない追加注射や中止を自分だけで決めるのは危険です。

同じ条件で気になる値が続く場合は、記録を持って主治医へ相談し、1回の数字を責める材料にせず、治療を調整するための情報として扱う姿勢が大切です。

測る直前に整えたい手と器具の準備

正確に測るため、まず必要な物を手元にそろえます。手を洗い、完全に乾かすところまでが穿刺前の準備です。穿刺してから試験紙を探すと血液が固まりやすくなるため、測定器の準備を先に済ませます。

測定に使う物を先にそろえる

測定器、対応する試験紙、穿刺器具、新しい穿刺針、使用済み針を入れる容器を用意します。器具によって試験紙を入れる時期や血液の付け方が違うため、初回は取扱説明書の図と実物を見比べてください。

  • 測定器と試験紙 … 製品の組み合わせ、有効期限、保管状態の確認
  • 穿刺器具と新しい針 … 本人専用の器具と未使用針の準備
  • 処分容器 … ふたが閉まり、針が貫通しにくい容器
  • 記録用具 … 測定値、時刻、症状を残せる手帳など

石けんと流水で手を洗う

指に果物、菓子、飲料などの糖分が付いていると、血液に混ざって実際より高い値が出るおそれがあります。手指の見た目だけでは、糖分の付着は判断できません。そのため、測定前は石けんと流水で手を洗うのが基本です。

また、洗ったあとは清潔なタオルなどで水分を十分に拭き取ります。指がぬれていると血液が薄まり、結果が低い側へずれる可能性があるためです。

手洗い後に果物、菓子、ぬれた布へ触れたときは、もう一度洗って乾かします。ハンドクリームを塗るなら測定後に回し、穿刺する指には何も残っていない状態を保ちます。

消毒した場合は乾くまで待つ

医療者からアルコール消毒の指示を受けている場合や流水を使えない状況では、清潔にした指へ消毒綿を使います。アルコールが残ったまま刺すとしみやすく、血液と混ざるおそれもあるので、自然に乾いてから穿刺します。

ただし、消毒だけでは指に付いた糖分を十分に落とせない可能性があるため、流水を使える環境では、手洗いを優先するほうが測定条件を整えやすいでしょう。

試験紙の期限と状態を確かめる

試験紙は測定器に適合する製品を使い、有効期限と容器の表示を確認します。高温、多湿、極端な低温を避けて説明書どおりに保管し、個包装でない製品は取り出したら容器のふたをすぐ閉めます。

確認箇所問題の例対応
手指糖分や水分が残る洗って完全に乾かす
試験紙期限切れ、湿気、変形新しい試験紙へ替える
測定器汚れ、電池表示、温度警告説明書に沿って整える
穿刺針使用済み、曲がり未使用の針へ交換する

SMBGのやり方はどの順番で進める?

最初に試験紙を準備し、次に指の側面を穿刺して必要量の血液を出します。最後に血液を試験紙の吸入口へ触れさせるのが、基本の順番です。機種固有の操作があるため、画面表示や説明書の案内を優先します。

試験紙を測定器へ正しく入れる

手を乾かしたら試験紙を容器から1枚取り出し、指定された向きで測定器へ差し込みます。測定可能の表示が出たのを確かめてから、穿刺器具のキャップと深さ設定を確認します。

試験紙には持ってよい部分と血液を吸わせる部分があります。吸入口に指で触れたり、血液を付ける前に汚したりしないよう、端を持って扱います。

指の側面へ穿刺器具を当てる

新しい針を穿刺器具へ正しく装着し、保護部分を外してキャップを戻します。装着中は針先へ直接触れないでください。また、穿刺器具はほかの人と共用しません。

指腹の中央ではなく、左右どちらかの側面へ器具を安定させて当てます。測るたびに指と位置を少しずつ替えると、同じ場所の皮膚が硬くなったり痛みが残ったりするのを避けやすくなります。

血液は試験紙の吸入口へ触れさせる

穿刺後は指の付け根側から先へ穏やかに圧をかけ、丸い血液の滴を作ります。試験紙の指定された吸入口は、滴の縁へ触れさせます。測定器が必要量を吸い取ったという表示や音まで確認してください。

血液を試験紙の上へ塗り広げたり、途中で継ぎ足したりすると、エラーや不正確な値につながります。血液量が足りない表示が出た場合は、その試験紙を再利用せず、新しい試験紙で最初から測り直すのが原則です。

測定後は結果の記録と止血

画面に値が出たら測定時刻と一緒に記録し、清潔なガーゼやティッシュで穿刺部を軽く押さえます。抗凝固薬など血が止まりにくくなる薬を使っている人は、出血が止まったのを確認するまで圧迫を続けます。

順番行う操作確かめる点
準備試験紙を測定器へ入れる測定可能の表示
穿刺指の側面に器具を当てる新しい針と適切な深さ
採血滴を吸入口へ触れさせる必要量を吸った表示や音
終了記録、止血、針の処分出血が止まった状態

穿刺の痛みを和らげる場所と深さ

痛みを抑えるには、感覚の鋭い指腹中央を避けます。針を必要以上に深くしないことも大切です。さらに、毎回同じ点を刺さず、新しい針を用いると皮膚への負担を減らせます。

指腹の中央より左右の側面を選ぶ

指紋が渦を巻く中央部は物に触れる機会が多く、穿刺後の痛みが日常動作へ響きやすい場所です。爪のすぐ横ではなく、指腹から少し側面へずらした柔らかい部分を選びます。

赤み、腫れ、傷、ひび割れ、硬くなった皮膚がある場所は避けます。左右の手と複数の指を順に使えば、次の測定まで同じ部位を休ませられます。

穿刺の深さは浅い設定から

穿刺器具の深さは数字が大きいほど深くなる製品が一般的です。ただし、表示方法は機種ごとに異なります。説明書で方向を確かめ、まず浅めから始めて、必要量が得られないときだけ1段階ずつ調整します。

皮膚の厚さや血の出やすさには個人差があり、毎回最も深い設定にする必要はありません。器具を斜めにせず皮膚へ密着させると、設定した深さで安定して刺しやすくなります。

器具を強く押し付けるほどよいわけではなく、キャップ全体が浮かない程度に安定させます。同じ深さでも当て方が毎回違うと、血液量と痛みがばらつきやすくなるためです。

穿刺針は測定ごとに新しい物へ

使用後の針は先端が傷み、次に使うと痛みや皮膚損傷が増えるおそれがあり、感染を避ける面からも、穿刺針は1回ごとに新しい物へ交換する使い方が基本です。

痛みへの不安から測定をためらう気持ちは、決して珍しいものではありません。場所、深さ、針の交換を見直しても強い痛みが続くなら、実際の操作を医療者に見てもらうと原因を探しやすくなります。

痛みが続く皮膚は休ませる

穿刺部の軽い痛みは通常短時間で治まりますが、同じ部位への反復で皮膚が硬くなると、必要な血液を得るために深い設定を選びがちです。硬い場所をさらに刺すのではなく、別の指へ移して皮膚を休ませます。

痛みにつながる操作見直す内容理由
指腹中央を刺す左右の側面へずらす日常で触れる面を避けやすい
深さを固定する浅めから1段階ずつ調整深すぎる穿刺を避ける
同じ点を刺す指と位置を交代する皮膚を休ませる
針を再使用する毎回新しい針へ替える先端の傷みによる負担を避ける

血が出にくいときは強く絞らず整え直す

血液が足りないときは、まず手を温めて心臓より低い位置に下げます。穿刺した一点を強くつままず、指の付け根から先へ穏やかに血液を送ってください。強く絞る操作は、皮膚の細胞の間にある組織液が混じる原因となり、値を不正確にするおそれがあります。

冷えた手は温めてから測る

手が冷たいと末端の血流が少なくなり、浅い穿刺では滴を作りにくくなるため、温かい流水で手を洗うか、両手をこすり合わせて温め、その後に水分を完全に拭き取ります。

測る側の手を心臓より低い位置にし、腕から指先へ軽くさする方法も使えます。穿刺の直前に指を強く握り続けるより、自然な血流を促す準備が先です。

指の付け根から先へ穏やかに圧をかける

穿刺後は指の付け根を反対の手で包み、先端へ向けてゆっくり圧を移します。傷口の周囲だけを何度も強くつまむ操作は避けます。丸い滴ができた時点で、試験紙へ吸わせてください。

十分な滴ができなければ、同じ傷を押し続けず、新しい試験紙と針を準備して別の場所でやり直します。その際は手の温度、器具の密着、穿刺の深さを1つずつ見直すと原因を絞れます。

採血できない原因を順に探す

血が出にくいからと深さだけを一気に最大へ変えると、痛みが強くなりやすいでしょう。まず手を温め、器具を垂直に密着させ、刺す場所を替え、それでも不足するときに深さを1段階上げます。

何度試しても必要量を採れない場合は、痛みを我慢して反復せず、穿刺器具と試験紙を医療機関へ持参します。装着方法や手の動かし方を実物で確認すると、自宅でも再現しやすくなります。

  • 手の冷え … 温かい流水などで温めてから完全に乾燥
  • 器具の浮き … 指の側面へ垂直に密着
  • 硬い皮膚 … 傷や硬さのない別の指へ変更
  • 浅すぎる設定 … ほかを整えた後に1段階だけ調整
場面避けたい操作次に行う対応
手が冷たいすぐ深く刺す温めて乾かす
小さな滴しか出ない傷口を強く絞る付け根から穏やかに圧を移す
必要量に届かない同じ試験紙へ継ぎ足す新しい試験紙でやり直す
何度も失敗する同じ点を繰り返し刺す器具の扱いを医療者と確認する

SMBGの値が不自然なときの確認順序

予想とかけ離れた値が出たら、最初に症状を確かめます。そのうえで、手指、試験紙、測定器の順に条件を見直してください。体調と数字が一致しない場合は、測定結果だけで安全と判断しない姿勢が必要です。

低血糖を疑う症状では安全を優先

冷汗、手の震え、動悸、強い空腹感、ぼんやりする感じがあるときは、測定器の確認だけに時間をかけないでください。主治医から渡された低血糖時の対応に従い、意識が悪い、飲み込めない、自分で対処できない状態なら周囲が救急要請を行います。

高い値とともに強い口渇、繰り返す嘔吐、腹痛、息苦しさ、意識の変化がある場合も緊急の評価が必要です。家族は本人を一人にせず、医療機関へ連絡してください。

手を洗い新しい試験紙で測り直す

症状がなく再測定できる状態なら、石けんと流水で手を洗い、完全に乾かします。新しい針と試験紙を使い、十分な血液量を一度で吸わせて測り直します。

とはいえ、最初の値だけを都合よく消したり、近い数字が出るまで何度も測ったりするのは適切ではありません。最初と再測定の両方を時刻とともに残し、差が大きければ医療者へ伝えます。

試験紙と測定器で見る箇所

再測定の前に、試験紙の期限と保管状態を確かめます。測定器との適合や、画面のエラー表示も確認してください。測定器が極端に暑い場所や寒い場所にあった場合は、説明書に示された使用温度へ戻るまで待ちます。

測定器へ血液や汚れが付いているなら指定された方法で清掃し、水に浸す、家庭用洗剤を直接かける、内部を分解するといった扱いは避ける必要があります。

専用の精度確認液が用意された機種では、落下後や繰り返す異常表示など、説明書が指定する場面で確認液を使います。判定範囲や操作は製品ごとに違うので、別の液で代用せず付属文書に従います。

繰り返す異常値は記録を添えて相談

正しい手順で測り直しても極端な値が続く場合や、同じエラーが何度も出る場合は、測定器、試験紙、記録をそろえて医療機関または製品の相談窓口へ連絡します。測定器の精度には規格上も許容範囲があり、別の機器と数字が完全に一致するとは限りません。

状況最初の確認次の行動
症状と値が合わない意識、低血糖症状、重い体調変化安全対応を優先し再測定
予想外の値で症状なし手の汚れや水分洗浄後に新しい資材で再測定
エラー表示説明書の表示内容指定された対処を行う
異常値が繰り返す値、時刻、試験紙、器具医療機関などへ相談

使用済みの針は処分方法を先に確認

使用済みの穿刺針は、むき出しのままごみ箱へ入れません。針が貫通しにくく、ふたを確実に閉められる容器で保管します。回収方法は地域や医療機関で異なるため、受け取った医療機関や薬局へ事前に確認してください。

針先へ触れず穿刺器具から外す

穿刺器具に針を残したままにすると、家族が誤って触れたり、次回に再使用したりする原因になります。製品に排出機能があれば針先に触れず直接容器へ落とし、外し方は説明書どおりに操作します。

針が内蔵されたカセット式やドラム式は、分解せず製品指定の方法で扱います。無理に針を取り出すと刺傷につながるため、構造が分からないときは医療者へ現物を見せて確認しましょう。

丈夫な容器での一時保管

専用の廃棄容器が渡されている場合は、その容器を使います。容器へ移した針を取り出そうとせず、子どもやペットの手が届かない安定した場所に置きます。

薄い袋、紙箱、飲料缶のように破れたり開いたりしやすい物は、針の一時保管に向きません。容器を満杯まで詰め込まず、指定された線や容量に達する前にふたを閉じます。

捨てる場所は受取先へ事前に聞く

家庭から出る使用済み針の扱いは、自治体、医療機関、薬局によって異なります。一般ごみに混ぜてよいか、自己判断はできません。針を受け取った場所へ、返却の可否、容器の種類、持参方法を確認してください。

持参するときは容器のふたが閉じているかを確かめ、袋の中で倒れないようにします。試験紙やガーゼの扱いも地域の案内に従い、血液が付いた物を他人が直接触れない形に整えます。

使用済み針が誤って自分や家族へ刺さったときは、傷を流水と石けんで洗い、出血の有無にかかわらず医療機関へ連絡してください。誰が使った針か、いつ刺さったかを伝えると、その後の対応を判断しやすくなります。

よくある質問

Q
毎回、指をアルコール消毒したほうがよいですか?
A

流水を使える環境では、石けんで手を洗い、完全に乾かせば測定の準備になります。アルコール消毒をした場合は、しみる痛みや血液への混入を避けるため、自然に乾いてから穿刺してください。

ただし、医療者から消毒方法について個別の指示を受けている場合は、その指示に従います。

Q
穿刺針は何回まで使えますか?
A

穿刺針は測定ごとに新しい物へ交換します。

再使用した針は先端が傷んで痛みや皮膚損傷につながるおそれがあり、感染を避ける面からも使い回さない扱いが基本です。

Q
血が少ないときは同じ試験紙へ足してもよいですか?
A

必要量に届かなかった試験紙へ、あとから血液を足すのは避けます。

血液不足やエラーの表示が出たら、新しい試験紙と針を使い、手を温めて別の部位から測り直してください。

Q
測定器の値が普段と大きく違うときはどうしますか?
A

まず意識の状態と低血糖などの症状を確認し、症状があれば主治医から指示された安全対応を優先します。再測定できる状態なら、手を洗って乾かし、新しい試験紙と針で測り直します。

測り直しても極端な値が続く場合は、インスリン量を自己判断で変えず、最初と再測定の値、時刻、症状を医療機関へ伝えてください。

Q
使い終わった穿刺針は家庭ごみに出せますか?
A

家庭ごみに出せるかは地域ごとに異なるため、自己判断で混ぜないでください。針が貫通しにくい容器へ保管し、針を受け取った医療機関や薬局に、返却先と容器の指定を確認します。

参考にした文献