妊娠糖尿病と診断されると、毎日の血糖測定が欠かせなくなります。「測定器はいくらかかるの?」「消耗品代は毎月どれくらい?」といった不安を感じる方は少なくないでしょう。
結論からお伝えすると、血糖測定器の本体は医療機関から貸し出されるため、購入費用はかかりません。センサーや穿刺針などの消耗品代も、診療報酬の加算点数に含まれています。
この記事では、妊娠糖尿病で血糖測定をおこなう際の費用体系から自己負担額の目安、消耗品の内訳、さらには分娩後の管理料まで、必要な情報をまとめました。お金の心配を少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。
妊娠糖尿病で血糖測定器が必要になったら、まず知っておきたい費用の全体像
妊娠糖尿病と診断された場合、血糖測定にかかる費用は「在宅妊娠糖尿病患者指導管理料」と「血糖自己測定器加算」という2つの診療報酬で構成されます。測定器本体は医療機関から貸与されるため、患者さんが別途購入する必要はありません。
血糖測定器は「貸与」が原則で購入不要
血糖自己測定器(SMBG機器)は、医療機関が患者さんに貸し出す仕組みになっています。測定器の貸与にかかる費用は、血糖自己測定器加算の点数にすべて含まれているため、自己負担として測定器代が請求されることはありません。
退院時や外来受診時に主治医の指示のもとで測定器を受け取り、妊娠中の血糖管理に活用します。使い方の説明は看護師や糖尿病療養指導士から受けられるので、機械が苦手な方でも安心できるでしょう。
費用を構成する2つの診療報酬のしくみ
妊娠糖尿病に関連する診療報酬は主に2種類あります。1つ目は「在宅妊娠糖尿病患者指導管理料」で、月1回150点(1,500円)が算定されます。2つ目は「血糖自己測定器加算」で、月あたりの測定回数に応じて点数が変わります。
この2つの合計額に、患者さんの窓口負担割合(通常は3割)を掛けた金額が、実際の自己負担額です。インスリン療法をおこなっている場合は、在宅自己注射指導管理料も加わります。
妊娠糖尿病の主な診療報酬と窓口負担の目安
| 項目 | 点数 | 3割負担時 |
|---|---|---|
| 在宅妊娠糖尿病患者指導管理料1 | 150点 | 約450円 |
| 血糖自己測定器加算(月120回以上) | 1,490点 | 約4,470円 |
| 上記合計 | 1,640点 | 約4,920円 |
窓口で支払う金額はどれくらいになるのか
妊娠糖尿病で月120回以上の血糖測定をおこなう場合、指導管理料と測定器加算の合計は1,640点です。3割負担であれば月額約4,920円が目安となります。
ただし、この金額には再診料や検査料、薬剤費は含まれていません。インスリン療法が加わると在宅自己注射指導管理料(750点~1,230点)や注射薬の薬代も上乗せされるため、月々の総額は状況によって異なります。高額療養費制度の対象となるケースもあるため、医療機関の窓口や自治体に確認してみてください。
血糖自己測定器加算の点数は月の測定回数で変わる
血糖自己測定器加算は、ひと月に何回測定するかによって段階的に点数が設定されています。妊娠糖尿病や1型糖尿病の方は、2型糖尿病の方よりも多い回数(月120回まで)が認められています。
測定回数ごとの点数と自己負担の一覧
令和6年度の診療報酬改定に基づく血糖自己測定器加算の点数は、月20回以上で350点から始まり、測定回数が増えるごとに段階的に上がっていきます。妊娠糖尿病の方は1日4回の測定が推奨されることが多く、月120回以上の区分が適用されるケースが一般的です。
なお、この加算点数にはセンサー(試験紙)、穿刺器具、穿刺針、消毒用アルコール綿、そして測定器本体の貸与料がすべて含まれています。消耗品を個別に購入する必要はありません。
妊娠糖尿病では月120回まで測定できる
2型糖尿病の方の場合、月60回までが上限とされています。一方、妊娠糖尿病や1型糖尿病の方は月120回まで測定が認められており、1日あたり4回の測定を30日間おこなう計算になります。
主治医によっては、食前・食後2時間の計6回を指示されることもあるかもしれません。月の測定回数が120回を超える分については、院外薬局で自費購入が必要になる場合があります。
上限を超えた分は自費購入になるケースも
月120回の上限を超えて測定したい場合、超過分のセンサーや穿刺針は全額自己負担で調達することになります。調剤薬局やオンラインショップで購入できますが、メーカーや製品によって価格が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
血糖値の変動パターンを細かく把握したい方もいるでしょう。測定回数やタイミングについては、主治医としっかり相談したうえで決めることが大切です。
| 月の測定回数 | 加算点数 | 3割負担時 |
|---|---|---|
| 月20回以上 | 350点 | 約1,050円 |
| 月40回以上 | 580点 | 約1,740円 |
| 月60回以上 | 830点 | 約2,490円 |
| 月90回以上 | 1,170点 | 約3,510円 |
| 月120回以上 | 1,490点 | 約4,470円 |
血糖測定にかかる消耗品の種類と費用負担を詳しく解説
血糖自己測定に必要な消耗品は複数ありますが、すべて血糖自己測定器加算の点数に含まれているため、個別に実費を支払う必要はありません。どんな消耗品が使われているか、その内訳を把握しておくと安心感が増します。
センサー(試験紙・バイオセンサー)は測定のたびに1枚使う
血糖値を測定するたびに、使い捨てのセンサー(試験紙やバイオセンサーとも呼ばれます)を1枚消費します。月120回の測定であれば、月に120枚のセンサーが必要です。
市販価格は1枚あたり60~120円程度ですが、医療機関を通じて支給される場合はこの金額が直接請求されることはありません。加算点数にまとめて含まれているためです。
穿刺器具と穿刺針は指先から少量の血液を採る道具
指先に細い針を刺して微量の血液を採るための道具が穿刺器具(ランセットデバイス)です。器具本体は繰り返し使えますが、針は使い捨てが原則で、1回の測定ごとに新しい針に交換します。
痛みを心配される方もいますが、近年の穿刺針は非常に細く作られており、チクッとする程度で済むことがほとんどでしょう。穿刺の深さを調節できる器具もあるため、痛みに敏感な方は主治医に相談してみてください。
- センサー(試験紙・バイオセンサー):測定1回につき1枚使用
- 穿刺針(ランセット):測定1回につき1本使用
- 穿刺器具(ランセットデバイス):本体は繰り返し使用可能
- 消毒用アルコール綿:穿刺前の指先消毒に使用
消耗品はすべて加算点数に含まれている
センサー、穿刺針、穿刺器具、消毒用アルコール綿など、血糖自己測定に必要な物品はすべて血糖自己測定器加算の所定点数に含まれています。別途費用が発生することはないので、追加の請求を心配する必要はありません。
ただし、前述のとおり月の測定回数が上限を超える場合は、超過分の消耗品は自費での購入になります。薬局で個別に購入する際の価格はメーカーごとに異なるため、どの製品を使っているか確認しておくとスムーズです。
在宅妊娠糖尿病患者指導管理料とは何か、わかりやすく説明します
在宅妊娠糖尿病患者指導管理料は、妊娠中の血糖管理に対する医師の指導・管理を評価する診療報酬です。管理料1(妊娠中)と管理料2(分娩後)の2区分があり、それぞれ150点が設定されています。
管理料1は妊娠中の血糖指導に対する報酬
管理料1は、周産期における合併症リスクが高い妊娠糖尿病の方に対して、血糖自己測定値に基づく療養指導をおこなった場合に、月1回算定されます。対象となるのは、75gブドウ糖負荷試験の結果や空腹時血糖値、HbA1cの値が一定の基準を満たした方です。
具体的には、75gOGTTで空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のうち2項目以上に該当する場合などが対象となります。BMIが25以上の方は1項目でも該当すれば対象になるケースがあります。
管理料2は分娩後12週間以内に1回だけ算定される
妊娠中に管理料1が算定された方については、分娩後も引き続き血糖管理の指導が必要な場合があります。管理料2は、分娩後12週間以内に1回限り算定できる報酬です。
妊娠糖尿病を経験した方は、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています。分娩後のフォローアップは、ご自身の長期的な健康を守るためにとても大切です。産後の通院を面倒に感じることもあるかもしれませんが、主治医の指示に従って経過観察を続けてください。
インスリン療法を併用する場合の追加費用
食事療法や運動療法だけでは血糖値が目標に達しない場合、インスリン療法が追加されることがあります。インスリンの自己注射をおこなう場合は、在宅自己注射指導管理料(月28回以上の場合750点)が別途算定されるほか、注入器用注射針加算(200点)なども発生します。
さらにインスリン製剤そのものの薬代も窓口負担に上乗せされます。使用する製剤の種類や投与回数によって金額が変わるため、治療方針が変更になった際には、主治医や薬剤師に費用の目安を確認しておくと心構えができるでしょう。
| 項目 | 点数 | 3割負担時 |
|---|---|---|
| 在宅妊娠糖尿病患者指導管理料1 | 150点 | 約450円 |
| 在宅妊娠糖尿病患者指導管理料2 | 150点 | 約450円 |
| 在宅自己注射指導管理料(28回以上) | 750点 | 約2,250円 |
| 注入器用注射針加算 | 200点 | 約600円 |
血糖測定器の貸与ルールと返却のタイミングを押さえておこう
血糖測定器は医療機関からの貸与品であるため、使用期間や返却のルールを正しく把握しておくことが大切です。貸与中に故障した場合の対応や、出産後の取り扱いについてもあらかじめ確認しておきましょう。
貸与期間は主治医の指示に基づいて決まる
血糖測定器の貸与期間は、主治医が血糖自己測定の必要性を判断している間です。妊娠糖尿病の場合は妊娠中から分娩後12週間程度まで続くことが一般的といえます。
主治医の判断で測定が不要と判断された時点で、測定器を医療機関に返却します。返却を忘れてしまうと次の患者さんへの貸し出しに支障が出る場合もあるので、通院時に忘れずに持参してください。
転院する場合の測定器はどうなるのか
妊娠中に里帰り出産などで転院する場合、貸与された測定器の取り扱いは医療機関によって異なります。転院先の病院で新たに貸与を受けることもあれば、元の医療機関から引き続き同じ測定器を使うよう指示されることもあるでしょう。
転院が決まった段階で、現在の主治医と転院先の主治医の両方に相談しておくとスムーズです。消耗品の受け取り方法も変わる可能性があるため、早めの確認をおすすめします。
- 妊娠中から分娩後12週間が貸与期間の目安
- 故障時は速やかに医療機関へ連絡して交換を依頼
- 転院時は元の病院と転院先の双方に確認が必要
- 返却時期は主治医の指示に従う
分娩後の返却と長期フォローアップ
分娩後に血糖値が正常範囲に安定すれば、測定器は返却となります。ただし、妊娠糖尿病を経験した方は産後6~12週間で75gOGTTを受けることが推奨されており、糖代謝異常が残っていないか確認することが大切です。
もし産後も耐糖能異常が続く場合は、通常の糖尿病としての管理に移行し、再度測定器の貸与を受ける場合もあります。将来の健康を見据えて、定期的な検査を続けていきましょう。
持続血糖測定器(CGM・isCGM)と従来型SMBG、妊娠中はどちらを選べるのか
近年、フリースタイルリブレなどの持続血糖測定器(isCGM)が注目を集めていますが、妊娠糖尿病での利用には一定の条件があります。従来の指先穿刺による測定(SMBG)との違いや費用面の差を整理しておきましょう。
isCGM(フリースタイルリブレ等)を妊娠中に使うための条件
間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)は、インスリン製剤の自己注射を1日1回以上おこなっている方が対象です。妊娠糖尿病で食事療法のみの管理をしている方は、isCGMの保険適用対象にはなりません。
インスリン療法を併用している妊娠糖尿病の方であれば、isCGMの使用が認められるケースがあります。加算点数は月1,250点で、3割負担の場合は月約3,750円です。センサー代はこの加算に含まれます。
従来型SMBGとisCGMの費用比較
従来型のSMBGでは、月120回以上の測定で1,490点(3割負担で約4,470円)です。一方、isCGMの加算は1,250点(3割負担で約3,750円)となっています。数字だけ見るとisCGMのほうが安く感じるかもしれません。
ただし、isCGMを使用する場合でも指先穿刺による補正測定が必要になることがあり、その際の費用はisCGMの加算に含まれるため追加負担はありません。いずれの方法を選ぶかは、血糖コントロールの状況や生活スタイルを踏まえて主治医と相談してください。
CGMは2024年の選定療養制度でも注目されている
2024年6月からは、isCGMの使用に関する選定療養の運用が始まりました。これは、保険診療の範囲外でisCGMの利用を希望する患者さんが、一定の自己負担で使えるようにする制度です。
選定療養の費用は血糖自己測定器加算C150-7(1,250点)相当額が目安とされており、施設ごとに異なります。利用を希望する場合は、かかりつけの医療機関で詳細を尋ねてみましょう。
| 方式 | 月額加算点数 | 3割負担時 |
|---|---|---|
| 従来型SMBG(月120回以上) | 1,490点 | 約4,470円 |
| isCGM(フリースタイルリブレ等) | 1,250点 | 約3,750円 |
妊娠糖尿病の血糖測定で費用を抑えるために活用できる制度
妊娠糖尿病の治療費は毎月の積み重ねになるため、利用できる公的制度を把握しておくことで経済的な負担を軽減できます。高額療養費制度や医療費控除といった仕組みは、多くの方が対象になり得ます。
高額療養費制度で月の上限額を超えた分が戻ってくる
| 所得区分 | 自己負担上限額の目安(70歳未満) |
|---|---|
| 年収約370万円以下 | 57,600円/月 |
| 年収約370~770万円 | 約80,100円+α/月 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円/月 |
ひと月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が健康保険から払い戻される仕組みが高額療養費制度です。妊娠糖尿病の管理に加えて妊婦健診や分娩費用が重なる月は、上限額に達する可能性があります。
事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いが上限額までに抑えられるため便利です。加入している健康保険の窓口に問い合わせてみてください。
確定申告の医療費控除も忘れずに
1年間に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合は、確定申告で医療費控除を受けられます。妊娠糖尿病の治療費はもちろん、通院にかかった交通費なども対象です。
共働きの世帯であれば、所得の高いほうの名義でまとめて申告するほうが節税効果は高くなります。レシートや領収書は捨てずに保管しておきましょう。
自治体独自の助成制度がないか確認する
自治体によっては、妊娠中の医療費に対する独自の助成制度を設けているところがあります。助成内容は地域差が大きいため、お住まいの市区町村役場や保健センターに問い合わせるのが確実です。
「妊産婦医療費助成」「子ども医療費助成」の名称で案内されていることが多いので、ウェブサイトや広報誌で情報を探してみてください。妊娠がわかった段階で申請しておくと、後から手続きに追われることが減ります。
よくある質問
- Q妊娠糖尿病の血糖測定器は薬局で自分で購入する必要がありますか?
- A
血糖測定器の本体は、医療機関から貸し出される仕組みになっています。患者さんが薬局や通販サイトで購入する必要はありません。
測定器の貸与にかかる費用は、血糖自己測定器加算の点数にすべて含まれています。センサーや穿刺針といった消耗品も同様に加算の範囲内で支給されるため、別途実費を支払うケースは通常ありません。
ただし、月120回の測定上限を超える分の消耗品については、調剤薬局で自費購入する場合があります。測定の頻度やタイミングは主治医と相談して決めてください。
- Q妊娠糖尿病の血糖自己測定にかかる月々の自己負担額はいくらですか?
- A
月120回以上の測定をおこなう場合、血糖自己測定器加算(1,490点)と在宅妊娠糖尿病患者指導管理料1(150点)の合計は1,640点です。3割負担の方であれば、月額約4,920円が目安になります。
インスリン療法を併用している場合は、在宅自己注射指導管理料や注射針の加算、インスリン製剤の薬代が上乗せされます。治療内容によって月の総額は大きく変わるため、主治医や医療機関の事務担当者に具体的な見積もりを確認しておくと安心でしょう。
- Q妊娠糖尿病で使う血糖測定のセンサー代は誰が負担しますか?
- A
血糖測定に使うセンサー(試験紙・バイオセンサー)の費用は、血糖自己測定器加算の点数に含まれています。穿刺針や消毒用アルコール綿も同様で、これらの消耗品が別途請求されることはありません。
患者さんの窓口負担は、加算を含めた診療報酬全体に対して負担割合(通常3割)を掛けた金額です。消耗品だけを切り離して請求される仕組みではないため、「センサー代がいくら」という形での支払いは発生しません。
- Q妊娠糖尿病と診断された場合、出産後も血糖測定器の費用は発生しますか?
- A
分娩後12週間以内に限り、在宅妊娠糖尿病患者指導管理料2(150点)を1回だけ算定できます。この期間中に血糖測定が必要と判断された場合は、血糖自己測定器加算も引き続き算定される可能性があります。
多くの方は出産後に血糖値が改善しますが、耐糖能異常が残るケースもゼロではありません。産後の75gブドウ糖負荷試験で糖代謝異常が確認された場合は、通常の糖尿病管理として改めて測定器の貸与や消耗品の支給が始まることもあります。
- Q妊娠糖尿病の血糖測定で使えるフリースタイルリブレの費用はいくらですか?
- A
フリースタイルリブレなどの間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)を使う場合、血糖自己測定器加算の「間歇スキャン式」区分として月1,250点が算定されます。3割負担であれば月約3,750円です。
ただし、isCGMが保険で認められるのはインスリン製剤の自己注射を1日1回以上おこなっている方に限られます。食事療法のみで管理している妊娠糖尿病の方は対象外です。2024年6月からは選定療養の制度も始まっており、保険適用外でもisCGMを利用できる場合がありますが、費用は施設ごとに異なるため主治医に確認してください。
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