呼吸器疾患の一種であるじん肺とは、長い期間にわたって粉じんを吸い込むことで引き起こされる慢性的な肺の病気です。

じん肺(じんはい)は主に鉱山で働く方や建設現場で作業する方、陶磁器を作る仕事に携わる方々など特定の職業に就く人に見られる職業病として知られています。

初めのうちは自覚症状がほとんどないため気づかないうちに病気が進んでしまうことがあります。

目次

じん肺の様々な病型

じん肺(じんはい)は吸い込む粉じんの種類によって様々な病型に分けられ、それぞれ特徴的な進み方や肺の変化を示します。

主な病型は石綿肺、珪肺、ベリリウム肺、アルミニウム肺、溶接工肺になります。

石綿肺:静かに進行する脅威

石綿肺はアスベスト繊維を吸い込むことで引き起こされるじん肺の一種で、主な特徴は以下の通りです。

  • 潜伏期間が非常に長い(20〜40年)
  • 肺の線維化が進行性
  • 胸膜プラークの形成
進行段階特徴
初期軽度の線維化
中期びまん性の線維化
晩期蜂巣肺形成

石綿肺は他のじん肺と比べて悪性腫瘍のリスクが高いことが知られています。

珪肺:最も一般的なじん肺

珪肺は結晶性シリカ粉じんを吸い込むことで生じる最も一般的なじん肺で、特徴は以下の通りです。

  • 上肺野優位の病変
  • 特徴的な結節影
  • 進行性の線維化
進行度状態
第1型軽度の変化
第2型明らかな結節影
第3型大陰影の形成

ベリリウム肺:稀だが重要な病型

ベリリウム肺はベリリウムとその化合物を吸い込むことで引き起こされる比較的珍しいじん肺で、主な特徴は次の通りです。

  • 慢性ベリリウム症として知られる
  • 肉芽腫性炎症を伴う
  • 遺伝的感受性が関与する

アルミニウム肺:金属産業の影

アルミニウム肺はアルミニウム粉じんを吸い込むことで生じるじん肺で、以下のような特徴があります。

  • 上葉優位の線維化
  • 結節影の形成は少ない
  • 進行が比較的緩やか
産業曝露リスク
アルミニウム精錬高い
金属加工中程度
塗料製造低〜中

溶接工肺:特殊な職業性肺疾患

溶接工肺は溶接作業中に発生する金属フュームを吸い込むことで引き起こされるじん肺で、特徴は以下の通りです。

  • 多様な金属粒子の複合的影響
  • 上葉優位の線維化
  • 慢性気管支炎を合併しやすい

じん肺の症状

じん肺の主な症状は長い間粉じんを吸い込むことで起こる肺の硬化を反映しています。症状はゆっくりと進行し、初めのうちは自覚症状がほとんどないことが多いでしょう。

しかし、病気が進むにつれて息苦しさや咳などの症状が目立つようになり、患者さんの生活の質に大きく影響します。

呼吸困難:じん肺の代表的症状

次のような呼吸困難はじん肺の患者さんが最もよく経験する症状です。

  • 体を動かした時の息切れから始まる
  • 徐々に悪化していく
  • 安静にしている時でも息苦しくなることがある
病期呼吸困難の程度
初期軽度(階段を上る時など)
中期中等度(日常生活の動作時)
晩期重度(じっとしていても出現)

呼吸困難の程度はじん肺の進み具合や肺の働きの低下を示す目安となるのです。

咳と痰:慢性的な不快感

次のような特徴がある慢性的な咳と痰はじん肺の患者さんにとって日常的な症状となることがあります。

  1. 乾いた咳から始まることが多い
  2. 時間が経つにつれて粘り気のある痰を伴う咳に変化
  3. 朝方に悪化する傾向がある
症状特徴
乾いた咳刺激的、痰を伴わない
痰の出る咳痰を伴う、粘り気がある

これらの症状は気道の炎症や粘液が増えていることを反映しています。

胸の痛み:不快な付随症状

以下のような特徴がある胸の痛みはじん肺の患者さんの一部で経験される症状です。

  • 深く息を吸う時に強くなる
  • 胸膜の炎症や硬化によって起こる
  • 鈍い痛みや圧迫感として感じられる

胸の痛みは、特に石綿肺の患者さんにおいて目立つことがあります。

全身症状:じん肺の進行を示す兆候

じん肺が進行すると慢性的な酸素不足や代謝低下、栄養障害によって全身に次のような症状が現れることがあります。

  • だるさ
  • 体重が減る
  • 熱が出る(二次感染の時)
  • 食欲がなくなる

これらの全身症状はじん肺が重くなっていることや合併症があることを示唆することもあるのです。

病型による症状の違い

じん肺の病型によって症状の現れ方や進む速さに違いがあります。

石綿肺の症状は潜伏期間が長く進行が遅いことが特徴として挙げられます。また、胸膜プラークによる胸の痛みが目立つでしょう。

珪肺の特徴的症状は初期から乾いた咳が目立ち、息苦しさが徐々に悪化していきます。ベリリウム肺では慢性的なだるさと熱や関節の痛みなどの全身症状が現れやすいでしょう。

原因とリスク因子

じん肺は長い間粉じんを吸い込むことで起こる仕事に関連した肺の病気です。その主な原因は作業環境に漂う目に見えないほど小さな粉じんを慢性的に吸い込むことにあります。

粉じんの種類や性質、吸い込む期間、個人の体質などが、じん肺の発症と進行に大きく関わっています。

粉じんの種類と特性

じん肺を引き起こす粉じんはその性質によって大きく分けられます。

粉じんの種類主な発生源
珪酸塩(シリカ)採石、陶磁器製造
アスベスト(石綿)建築材料、断熱材
金属粉じん(ベリリウム、アルミニウムなど)金属加工、溶接
炭素粉じん

これらの粉じんはそれぞれ特有の物理的・化学的特性を持ち、肺の組織への影響も異なります。

粒子サイズの重要性

粉じん粒子の大きさはじん肺になるリスクに大きく関わります。当然ながら粒子が細かいほうが肺への営業が高いです。

  • 10μm以上:鼻や喉の奥で捕まえられる
  • 2.5〜10μm:気管支に沈みやすい
  • 0.5〜2.5μm:肺の奥まで到達しやすい

特に0.5〜2.5μmの粒子は肺の奥まで届いて長い間とどまるため、じん肺の主な原因です。

吸い込む期間と粉じんの総量

じん肺の発症には粉じんを吸い込む期間と総量が重要な要因となります。

  • 短い期間(数年):通常、はっきりとした影響は見られない
  • 中程度の期間(5〜10年):軽いじん肺が起こる可能性がある
  • 長い期間(10年以上):重いじん肺のリスクが高くなる

粉じんの総量は空気中の濃度と吸い込む期間をかけ合わせたものです。

職業別のじん肺リスク

じん肺のリスクは職種によって大きく異なります。リスクの高い仕事の例は次の通りです。

職業主なじん肺のタイプ
鉱山労働者、陶磁器製造工珪肺
建設作業員石綿肺
金属加工、塗装アルミニウム肺
溶接工溶接工肺

これらの仕事では適切な粉じん対策が極めて重要です。

個人の体質と遺伝的要因

じん肺の発症には個人の体質や遺伝的要因も関係します。体質に影響を与える要因として次のようなものが挙げられます。

  • 喫煙の習慣
  • 肺疾患の持病がある
  • 免疫系の状態
  • 遺伝子の違い

特にベリリウム肺では遺伝的要因が大きく関わるとされているのです。

診断への道のり

じん肺(じんはい)の診察と診断は複雑で多面的な過程を経ます。診察や複数の検査を組み合わせて正確な診断を下していくのです。

詳細な職歴聴取:診断の第一歩

じん肺の診断において詳しい職歴聴取は欠かせません。問診では職種と勤務期間、吸い込んだ粉じんの種類、作業環境の状況、防護具の使用状況を聞き取り可能性を探るのです。

職歴項目診断的意義
粉じん吸入期間リスク評価
粉じんの種類じん肺の病型推定

身体診察:重要な手がかり

身体診察でははじん肺の診断において重要な呼吸音の異常(捻髪音など)、チアノーゼ、バチ状指、胸郭の変形といった所見を確認します。

身体所見意味
捻髪音肺の線維化
チアノーゼ重度の酸素化障害

画像診断:じん肺の特徴的所見

胸部X線検査、分解能CT(HRCT)といった画像診断はじん肺の診断において中心的な役割を果たします。

詳細は次項で述べますが、じん肺の病型や進行度の評価に重要な情報を提供するのが画像所見なのです。

肺機能検査:機能的影響の評価

じん肺が肺の働きに与える影響を数値で評価するためにスパイロメトリー、拡散能力検査、動脈血ガス分析といった肺機能検査が行われます。

肺機能検査では以下のような典型的な異常が観察されるでしょう。

  • 拘束性換気障害
  • 拡散能力の低下
  • 低酸素血症

じん肺の病型別診断アプローチ

じん肺の病型によって診断アプローチが異なることがあります。

石綿肺の診断ポイントは長い潜伏期間と胸膜プラークの存在、珪肺では特徴的な小粒状影と進行性の線維化、ベリリウム肺はベリリウムリンパ球増殖試験(BeLPT)と肉芽腫性病変の存在です。

これらの特徴を理解することで、より精密な診断が可能となります。

じん肺の画像所見

胸部X線写真や高分解能CT(HRCT)などの画像検査により、じん肺の特徴的な所見を捉えることが可能です。

これらの所見は粉じんの種類や病気の進行度によって様々な姿を見せ、適切な診断と管理に欠かせない情報を提供します。

胸部X線写真:初期スクリーニングの要

胸部X線写真はじん肺の初期評価や経過観察に広く用いられる基本的な画像検査で、主な所見は次の通りです。

所見特徴
小粒状影びまん性、上肺野優位
大陰影進行例で出現、融合性

これらの所見はじん肺の進行度を反映し、国際労働機関(ILO)の分類基準に基づいて評価されます。

Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.

所見:両側上中肺野に班状影や大小様々な結節影が散見され、塵肺症として説明可能な所見である。

高分解能CT(HRCT):詳細な肺野の評価

HRCTはじん肺の診断において最も有用な画像検査の一つで、次のような典型的な所見が観察できるのです。

所見特徴
小粒状影1-3mm大、上肺野優位
線維化像不整な線状影、蜂巣肺

さらに気腫性変化や胸膜肥厚といった所見も確認でき、これらは病変の分布や進行度を詳しく評価して、じん肺の診断精度を高めます。

Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.

所見:両側上葉においてリンパ管周囲(中心小葉および胸膜下)中心に小結節が散見される。また、末梢部における結節の癒合経口(矢印)が見られ、珪肺症として合致する所見である。

病型別の特徴的画像所見

じん肺の病型によって、画像所見に特徴的な違いが見られます。

石綿肺の特徴的所見:

  • 胸膜プラーク
  • びまん性胸膜肥厚
  • 蜂巣肺様変化
Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.
Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.

珪肺の特徴的所見:

  • 上肺野優位の小粒状影
  • エッグシェル石灰化
  • 進行性大陰影(PMF)
Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.

ベリリウム肺の特徴的所見:

  • 上中肺野優位の小結節影
  • リンパ節腫大
  • すりガラス陰影
Chong, Semin et al. “Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings.” Radiographics : a review publication of the Radiological Society of North America, Inc vol. 26,1 (2006): 59-77.

これらの特徴的所見を理解することで、粉じんの種類の推定が可能となります。

画像所見の時間による変化

じん肺の画像所見は時間とともに変化し、一般的なパターンはつぎのようになります。

病期主な画像変化
初期小粒状影の出現
中期不整形陰影の形成
進行例大陰影の出現
晩期大陰影、気腫性変化

治療法と完治の可能性

じん肺の治療法は病気の種類や重さによって個別に決められ、長期的に経過を見ていくことが欠かせません。

完全に治すことは難しいですが、適切に対処することで病気の進行を抑え、患者さんの生活の質を良くすることができます。

粉じん曝露の回避:治療の第一歩

じん肺治療の最も重要なステップは粉じんを完全に避けることです。

これにより肺の機能が守られて病気の進行を抑えることができますし、他の病気が起こるリスクを減らすという効果もあります。

対策効果
職場環境の改善新たに粉じんを吸い込むことを防ぐ
職種変更完全に粉じんを避ける

薬物療法

じん肺で使用する薬物として気管支拡張薬、吸入ステロイド、痰を出しやすくする薬、抗生物質(感染した時)が挙げられます。

これらの療法は主に息苦しさを改善したり炎症を抑えるといった症状を和らげることと、合併症を防ぐことが目的です。

酸素療法

じん肺が進行すると体を動かしたときや安静にしていても血液中の酸素が少なくなる状況に陥ったり、肺性心(肺の病気が原因で心臓に負担がかかる状態)になるケースが生じます。

このようなときには酸素療法を用いることで患者さんの負担を和らげるだけでなく、他の病気が起こるリスクも減らすのです。

肺リハビリテーション

肺リハビリテーションはじん肺の患者さんの体全体の状態を良くし、生活の質を高めるのに効果があります。次のような肺リハビリテーションのプログラムが一般的です。

プログラム主な効果
運動療法体を動かす能力を改善する
呼吸筋トレーニング呼吸の効率を良くする
栄養指導免疫力の向上

病型別の治療アプローチ

じん肺の病型によって、治療のアプローチに違いがあります。

石綿肺の特徴的治療:

  • 胸膜プラークを定期的に観察する
  • 悪性中皮腫のスクリーニングを行う

珪肺の特徴的治療:

  • 結核を予防し早期に発見する
  • 進行性大陰影(PMF)に対処する

ベリリウム肺の特徴的治療:

  • ステロイド療法を検討する
  • 慢性ベリリウム症に対処する

これらの病型別アプローチにより、より効果的な治療が可能でしょう。

治癒までの期間と長期的な対処

じん肺は完全に治すことが難しい病気であり、長期的な対処が必要です。

症状を和らげて進行を抑え、肺機能を維持して合併症を予防することが治療の目標になります。

じん肺治療の副作用とリスクを理解する

じん肺の治療に用いられる薬物療法、酸素療法、肺リハビリテーションなどの治療に伴うリスクについて、患者さん自身が十分に理解し、対策を講じることが重要です。

薬物療法の副作用

じん肺の治療に用いられる薬には、様々な副作用のリスクがあります。

  • 気管支拡張薬:心拍が速くなる、不整脈、震え
  • 吸入ステロイド:口の中のカビ感染、声がかすれる
  • 痰を出しやすくする薬:胃腸の不快感
  • 抗生物質:アレルギー反応、耐性菌の出現

これらの副作用は薬の量や使用期間に関連して起こるため、慎重な管理が必要です。

酸素療法のリスクと注意点

酸素療法は進行したじん肺の患者さんにとって重要な支えとなる治療ですが、次のようなリスクも考慮しなければなりません。

  1. 二酸化炭素ナルコーシス(体内に二酸化炭素がたまる状態)
  2. 酸素中毒
  3. 火災のリスク
  4. 体を動かすことが制限される

職業変更に伴う社会経済的リスク

じん肺治療の一環として勧められる職業変更は、社会的・経済的なリスクを伴うことがあります。さらに、新しい環境に慣れるための心理的なリスクがかかる患者さんもいるでしょう。

リスク影響
収入減少生活水準が下がる
心理的ストレスうつ病になるリスクが増える

これらの問題に対処するため、社会的な支援や職業リハビリテーションが重要となります。

再発のリスクと予防への取り組み

じん肺は一度発症すると完全に治すことは難しいですが、適切に対処することで症状が悪化したり合併症が起こったりするのを防ぐことができます。

再発のリスクは患者さんによって異なりますが、粉じんを吸い込まないようにすることと生活習慣を改善することが予防の鍵となります。

再発のリスク

じん肺の再発や進行のリスクは、次のような要因によって影響を受けます。

要因再発リスク
粉じんを吸い込み続けること非常に高い
初めて診断された時の重症度中程度
患者さんの年齢と全身の状態中程度
他の病気の有無中程度〜高い

一般的にじん肺の進行リスクは、粉じんを完全に避けた場合でも5年以内で約10〜20%とされています。

粉じん吸入の完全回避

じん肺の再発や進行を防ぐ最も重要な対策は粉じんを完全に吸い込まないようにすることです。

次のような粉じん吸入を避ける対策を徹底することで、じん肺の進行リスクを大幅に減らすことができるでしょう。

  1. 職場環境を良くする
  2. 個人用の防護具を適切に使う
  3. 職種を変えることを検討する
  4. 日常生活で粉じんを避ける

生活習慣の改善

じん肺の患者さんが全身の状態を良好に保つことは、再発や進行の予防に効果的です。以下の点に注意して生活するよう心がけてください。

  • たばこを吸わない
  • 適度に体を動かす
  • バランスの取れた食事をする
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレスをうまくコントロールする

これらの生活習慣の改善はじん肺の再発予防だけでなく、体全体の健康維持にも役立ちます。

定期的な健康診断:早期発見の重要性

定期的な健康診断は、じん肺の進行や合併症を早く見つけ、素早く対応するために欠かせません。年に1度を目安に胸部X線検査、肺機能検査、血液検査、心電図検査を受けることが推奨されています。

病型別の予防アプローチ

じん肺の病型によって、予防のアプローチに違いがあります。

石綿肺の予防ポイント:

  • アスベスト製品を完全に避ける
  • 胸膜プラークを定期的に観察する

珪肺の予防ポイント:

  • シリカ粉じんを徹底的に避ける
  • 結核の予防を強化する

ベリリウム肺の予防ポイント:

  • ベリリウムを完全に避ける
  • 遺伝的な感受性を考慮する

これらの病型別アプローチにより、より効果的な予防が可能となるでしょう。

じん肺の治療費

じん肺の治療費は診断から長期的な管理まで様々な要素が含まれ、患者さんによって大きく異なります。初診料から入院費用まで治療にかかる費用の内訳を知ることが重要です。

初診・再診料

初診料は2,910円程度、再診料は750円程度になります。専門医による診察にて場合によっては各種加算が算定されることがあります。

検査費用

検査項目概算費用
胸部CT14,700円~20,700円
肺機能検査2,300円~5,700円

薬剤費

気管支を広げる薬や痰を出しやすくする薬の費用は、例えばスピリーバ2.5μgレスピマット60吸入を1日1回2吸入で月額3320.4円です。

入院費用

詳しく述べると、日本の入院費計算方法は、DPC(診断群分類包括評価)システムを使用しています。
DPCシステムは、病名や治療内容に基づいて入院費を計算する方法です。以前の「出来高」方式と異なり、多くの診療行為が1日あたりの定額に含まれます。

主な特徴:

  1. 約1,400の診断群に分類
  2. 1日あたりの定額制
  3. 一部の治療は従来通りの出来高計算

表:DPC計算に含まれる項目と出来高計算項目


DPC(1日あたりの定額に含まれる項目)出来高計算項目
投薬手術
注射リハビリ
検査特定の処置
画像診断(投薬、検査、画像診断、処置等でも、一部出来高計算されるものがあります。)
入院基本料

計算式は下記の通りです。
「1日あたりの金額」×「入院日数」×「医療機関別係数※」+「出来高計算分」

例えば、14日間入院とした場合は下記の通りとなります。

DPC名: 間質性肺炎 手術処置等1なし 手術処置等2なし
日数: 14
医療機関別係数: 0.0948 (例:神戸大学医学部附属病院)
入院費: ¥375,790 +出来高計算分

保険適用となると1割~3割の自己負担であり、更に高額医療制度の対象となるため、実際の自己負担はもっと安くなります。
なお、上記値段は2024年6月時点のものであり、最新の値段を適宜ご確認ください。

以上

参考にした論文