毎晩のようによく眠れない、家族から「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」と指摘を受けた経験はありませんか。

その症状は、単なる寝癖や疲れではなく、適切な治療が必要な病気のサインかもしれません。いびき検査を行うことで、自分自身の睡眠状態を客観的に把握し、将来的な健康リスクを回避する手段を得られます。

いびき睡眠時無呼吸症の疑いがある場合、まずは自宅で手軽に行える検査から始め、必要に応じて病院での精密検査へと進む流れが一般的です。

健康な毎日を取り戻すため、検査の種類や費用、具体的な流れについて詳しく理解しましょう。

いびきが引き起こす健康リスクと検査の重要性

いびきは単なる騒音ではなく、身体が発する危険信号であり、放置すると高血圧や心疾患などの重大な健康リスクを招くため、早期の検査による原因特定が必要です。

いびきは睡眠中に気道が狭くなることで発生する振動音であり、背景には深刻な疾患が隠れている場合があります。

特に注意が必要なのは、睡眠中に呼吸が浅くなったり、一時的に止まってしまったりする睡眠時無呼吸症候群です。

この病気は、睡眠の質を著しく低下させるだけでなく、酸素不足による臓器への負担を増大させます。

検査を受けずに放置してしまうと、日中の強い眠気による交通事故のリスクや、作業効率の低下を招く原因となります。

さらに、長期間にわたって心臓や血管に負担がかかり続けるため、高血圧や心不全、脳卒中といった命に関わる疾患を引き起こす可能性も高まります。

いびき検査は、現在の自分の睡眠状態を正しく知り、これらのリスクを未然に防ぐための第一歩となります。

自分では気づきにくい症状だからこそ、家族の指摘や日中の体調変化を重視し、医療機関での適切な評価を受ける判断が大切です。

早期に検査を行い、原因を特定することで、適切な治療へとつなげることができます。

単なるいびきと病的な呼吸障害の違い

いびきには、飲酒や疲労によって一時的に発生する単純ないびきと、睡眠時の呼吸停止を伴う病的ないびきが存在します。

単純ないびきは、風邪による鼻づまりや寝姿勢の影響など、原因が取り除かれれば解消する場合がほとんどです。

一方で、病的ないびきは、慢性的な気道の閉塞が原因であり、毎晩のように大きな音を伴います。

特に、音が途中で止まり、その後に「ガッ」という大きな音とともに呼吸が再開するような場合は警戒が必要です。

これは気道が完全に塞がり、無呼吸状態から回復する際の音です。この状態が繰り返されると、体内の酸素濃度が低下し、睡眠が分断されます。

病的ないびきを見分けるためには、音の大きさや頻度、無呼吸の有無を確認することが重要です。

放置することで高まる全身疾患のリスク

睡眠中の呼吸障害を治療せずに過ごすことは、全身の健康を蝕むことにつながります。呼吸が止まるたびに脳が覚醒し、交感神経が優位になるため、血圧や心拍数が上昇します。

この状態が一晩中続くことで、血管へのダメージが蓄積し、動脈硬化を進行させる要因となります。

糖尿病などの生活習慣病とも密接に関連しており、睡眠時無呼吸症候群の患者は、そうでない人に比べて糖尿病の発症リスクが高いというデータもあります。

また、十分な休息が取れないことで精神的なストレスも増大し、うつ状態を招くケースも見られます。たかがいびきと軽視せず、全身の健康を守るために検査を受ける意識を持つことが大切です。

検査を受けるべき人の特徴とセルフチェック

どのような人がいびき検査を受けるべきか、判断に迷うことがあるかもしれません。基本的には、家族やパートナーからいびきや無呼吸を指摘されたことがある人は、迷わず検査を検討すべきです。

また、一人暮らしなどで他者の指摘がない場合でも、日中に耐え難い眠気を感じたり、起床時に頭痛や口の渇きを感じたりする場合は要注意です。

肥満傾向にある人や、首が太く短い人、顎が小さい人も気道が狭くなりやすいため、リスクが高いと言えます。若年層や痩せ型の人であっても、骨格の影響で発症することは珍しくありません。

自分自身の体調や睡眠環境を振り返り、少しでも不安を感じる要素があれば、専門医に相談する行動が必要です。

いびきの種類と特徴の比較

いびきの種類主な特徴健康への影響
単純いびき症散発的で、飲酒や疲労時に発生する比較的少ないが睡眠の質は低下する
上気道抵抗症候群いびき音は小さいが呼吸努力が強い日中の眠気や疲労感の原因となる
睡眠時無呼吸症候群大きな音と無呼吸を繰り返し発生する高血圧や心疾患のリスクが極めて高い

自宅で行う簡易検査(スクリーニング)の内容

多くの医療機関では、入院の必要がなく自宅で手軽に行える簡易検査を最初のステップとして採用しており、これによって睡眠時無呼吸症候群の可能性を効率的に選別します。

この検査は、普段と同じ環境で寝ながら行えるため、仕事や家事で忙しい人でも受けやすいという利点があります。検査機器も小型化・軽量化が進んでおり、装着による睡眠への妨げも最小限に抑えられています。

簡易検査の主な目的は、睡眠時無呼吸症候群の可能性をスクリーニング(選別)することです。この検査結果をもとに、さらに詳しい検査が必要かどうか、あるいはすぐに治療を開始すべきかを医師が判断します。

病院で機器を受け取るか、自宅に郵送してもらい、説明書に従って自分で装着し、一晩のデータを記録します。翌日、機器を返却するだけで解析が行われるため、手軽さが大きな魅力です。

検査に対する心理的なハードルを下げ、早期発見につなげるために、この簡易検査は非常に有効な手段です。まずは自分の睡眠状態を数値化し、客観的なデータとして把握することから治療への道が始まります。

パルスオキシメーターを用いた酸素飽和度の測定

簡易検査で広く用いられる方法の一つに、パルスオキシメーターによる測定があります。これは指先にクリップ状のセンサーを挟み、血液中の酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を連続的に記録するものです。

呼吸が止まると酸素の取り込みができなくなるため、血中の酸素濃度が低下します。この低下の頻度や度合いを見ることで、無呼吸の状態を推測します。

操作は非常にシンプルで、就寝前に指に装着し、電源を入れるだけです。痛みや不快感はほとんどなく、普段通りの姿勢で眠ることができます。

このデータから、睡眠中にどれだけ体に酸素が行き渡っていないかを知ることができ、無呼吸の重症度を測る目安となります。

呼吸センサーによる気流と呼吸努力の記録

指先のセンサーに加え、鼻の下にチューブ状のセンサーを装着し、鼻や口からの気流(呼吸の流れ)を測定する方法もあります。

この測定によって、実際に呼吸が止まっているのか、あるいは呼吸が弱くなっているのかを直接的に検知します。

さらに、胸や腹部にバンドを巻くことで、呼吸をしようとする胸郭や腹壁の動き(呼吸努力)を記録するタイプもあります。

これらのデータを組み合わせることで、気道が塞がって呼吸が止まっている「閉塞性」なのか、脳からの呼吸指令が出ていない「中枢性」なのかをある程度判別することが可能です。

複数のセンサーを用いることで、より精度の高いスクリーニングを実現し、適切な診断につなげます。

簡易検査が推奨されるケースとメリット

簡易検査は、いびき検査の入り口として多くの患者に適しています。

特に入院する時間が取れない多忙な方や、環境が変わると眠れないという繊細な方にとっては、自宅でリラックスして検査できる点が大きなメリットです。

費用面でも、入院を伴う精密検査に比べて安価に抑えられるため、経済的な負担も軽減されます。

また、検査結果が出るまでの期間も比較的短く、早急に現状を把握したいというニーズにも応えられます。

簡易検査の結果、重症の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、そのまま治療(CPAP療法など)に移行できるケースもあり、スピーディーな対応が可能です。

まずは簡易検査で現状を知り、必要に応じて次のステップへ進むことが効率的です。

簡易検査が向いている人の特徴

  • 仕事や家事が忙しく、検査入院の日程調整が難しい人
  • 病院のベッドなど、普段と違う環境では寝つけない人
  • いびきや日中の眠気はあるが、まずは手軽に調べたい人
  • 検査費用をできるだけ抑えつつ、睡眠の状態を確認したい人
  • 家族からいびきを指摘され、早急に原因を知りたい人

病院で行う精密検査(PSG)の詳細と必要性

簡易検査で確定診断が困難な場合や詳細な解析が必要な場合に実施されるPSG検査は、脳波を含む多角的なデータを取得できる唯一の方法であり、正しい治療方針を決定するために不可欠なプロセスです。

これは睡眠検査のゴールドスタンダード(標準的基準)とされており、睡眠の質や呼吸状態を総合的かつ詳細に評価できます。

PSG検査では、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸フロー、酸素飽和度、体位、いびき音など、多岐にわたる生体信号を同時に記録します。

この多角的なデータによって、単に呼吸が止まっているかどうかだけでなく、深い睡眠が取れているか、睡眠の分断が起きていないか、足の動きなどの他の要因がないかまで詳しく調べることが可能です。

医師や専門の技師がデータを解析し、確定診断を行います。

自宅での簡易検査では捉えきれない微細な変化や、他の合併症との鑑別を行うために、この精密検査は非常に重要な役割を果たします。

正確な診断こそが、その後の治療効果を最大化するための基盤となります。

簡易検査と精密検査の決定的な違い

簡易検査と精密検査の最大の違いは、測定する項目の多さと、それによって得られる情報の深さにあります。

簡易検査は主に「呼吸」と「酸素」に焦点を当てていますが、PSG検査はそれに加えて「睡眠の深さ(脳波)」と「睡眠の質」を測定します。

簡易検査では「呼吸が止まっていた時間」はわかりますが、その時に「実際に脳が起きているのか、眠っているのか」までは正確に判別できません。

PSG検査では脳波を測定するため、患者が実際に眠っている時間を正確に算出できます。その結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)をより厳密に計算することができ、誤診を防ぐことにつながります。

また、睡眠時無呼吸症候群以外の病気、例えばレム睡眠行動障害や周期性四肢運動障害などの発見にも役立ちます。

入院が必要となる理由と環境

PSG検査において入院が必要となる主な理由は、多数のセンサーを正確に装着し、一晩中トラブルなくデータを記録するためです。

専門の技師がセンサーを取り付け、就寝中の波形をモニタリングすることで、センサーが外れた場合でもすぐに対応できます。

また、防音環境の整った個室で行われることが多く、外部の騒音に邪魔されずに正確なデータを取得できる環境が整っています。

多くの病院では、夕方から夜に入院し、翌朝早くに退院できるスケジュールを組んでいます。そのため、仕事帰りに検査を受け、翌朝そのまま出勤することも可能です。

シャワー室やアメニティが完備されているクリニックも増えており、ホテルに宿泊するような感覚で検査を受けられるよう配慮されています。

確定診断における精度の重要性

睡眠時無呼吸症候群の治療、特にCPAP(持続陽圧呼吸療法)を健康保険適用で行うためには、一定の基準を満たす検査結果が必要です。

簡易検査だけでこの基準を満たす場合もありますが、境界線上の数値が出た場合や、自覚症状と結果が一致しない場合には、PSG検査による確定診断が必須となります。

精度の高い診断を行うことで、患者一人ひとりの病態に合わせた最適な治療方針を立てることができます。

例えば、仰向けの時だけ無呼吸になるのか、レム睡眠時のみ悪化するのかといった詳細な傾向を知ることで、マウスピース治療や生活指導など、CPAP以外の選択肢も含めた幅広い検討が可能になります。

簡易検査と精密検査(PSG)の比較

比較項目簡易検査(自宅)精密検査(病院・PSG)
測定項目呼吸、酸素飽和度、脈拍脳波、筋電図、眼球運動など多数
脳波の測定なしあり(睡眠の深さを判定)
検査場所自宅の寝室病院の個室(一泊入院)

いびき検査から診断までの具体的な流れ

いびき検査は、問診から始まり、医師の判断による検査タイプの決定、検査の実施、そして結果説明へと進むのが標準的なフローであり、現在はオンライン診療や郵送検査の普及により利便性が向上しています。

一般的な流れとしては、まず医療機関を受診して問診を行い、医師の判断のもとで検査の種類を決定します。その後、検査機器の手配や入院予約を行い、検査を実施し、後日結果説明を受けます。

近年では、オンライン診療を活用して問診を行い、検査機器を郵送するサービスを提供するクリニックも増えています。

こうしたサービスを活用すれば、通院の回数を減らし、よりスムーズに検査を受けることが可能になっています。ここでは、標準的な対面診療および検査の流れについて解説します。

初診・問診と検査方針の決定

最初の診察では、いびきの状況、日中の眠気、既往歴、生活習慣などについて詳しく問診を行います。また、鼻や喉の状態を視診し、物理的な気道の狭窄がないかを確認します。

この段階で、医師はいびき睡眠時無呼吸症の疑いがどの程度あるかを推測し、簡易検査から始めるか、最初から精密検査を行うかを提案します。

多くの場合は、まず負担の少ない簡易検査が選択されます。検査の目的や方法、費用についての説明を受け、同意した上で検査の予約や機器の手配を行います。

不安な点や疑問点があれば、この時点で医師に相談し、解消しておくことが大切です。

検査機器の受け取りと実施

簡易検査の場合、機器はクリニックで直接受け取るか、宅配便で自宅に届けられます。検査を行う日の夜、就寝前に説明書に従ってセンサーを装着します。

装着時はリラックスし、普段通りの睡眠環境で寝ることが重要です。

飲酒については、普段飲んでいる場合は医師の指示に従いますが、正確な状態を知るために普段通りの生活を送るよう指示されることが一般的です。

精密検査(入院PSG)の場合は、予約した日時に病院へ向かいます。夕食を済ませてから入院し、着替え後に技師によるセンサー装着が行われます。

多数のコードが繋がれますが、トイレに行くことなどは可能です。消灯後は朝まで睡眠をとり、翌朝センサーを外して退院となります。

結果の解析と医師による説明

検査終了後、簡易検査機器は返送または持参して返却します。PSG検査のデータは病院内で解析されます。解析には数日から1週間程度の時間を要するのが一般的です。

解析が完了した後、再度受診して結果の説明を受けます。

医師は、検査データ(AHIなど)と問診内容を照らし合わせ、診断を下します。正常範囲内なのか、治療が必要なレベルなのか、あるいは別の検査が必要なのかが明確に伝えられます。

この結果に基づいて、今後の治療計画を患者と一緒に立てていきます。

検査開始から治療方針決定までの目安期間

ステップ簡易検査の場合精密検査(PSG)の場合
予約・受診初診当日または後日配送入院日の予約(数日〜数週間先)
検査実施機器到着後の任意の夜予約した日の一晩
結果説明返却後1〜2週間程度退院後1〜2週間程度

いびき検査にかかる費用の目安

いびき検査は基本的に健康保険が適用され、簡易検査であれば数千円、精密検査であれば数万円程度が自己負担額の目安となりますが、具体的な金額は検査の種類や医療機関の設備によって異なります。

そのため、全額自己負担となることは少なく、1割から3割の負担額で受けることができます。

ただし、初診料や再診料、検査結果に基づく判断料などが別途加算されるため、トータルの金額を把握しておくことが重要です。

費用は、行う検査の種類(簡易検査か精密検査か)や、入院施設の設備(個室料金の有無)、検査を行う医療機関の体制によって多少変動します。

事前に医療機関のウェブサイトを確認するか、電話で問い合わせておくと安心です。健康への投資として、決して無駄にはならない費用です。

簡易検査の費用相場

自宅で行う簡易検査の費用は、3割負担の方でおおよそ3,000円から4,000円程度が目安となります。これには検査判断料などが含まれます。

比較的安価に設定されており、気軽に受けやすい価格帯です。1割負担の方であれば、さらに費用は抑えられます。

ただし、初診時に検査機器を持ち帰る場合は初診料が、検査結果を聞きに来院した際には再診料がかかります。また、機器を郵送でやり取りする場合、送料が別途必要になる医療機関もあります。

全体として、5,000円から6,000円程度の予算を見ておけば、検査から結果説明までの一連の流れをカバーできることが多いでしょう。

精密検査(PSG)の費用相場

入院して行うPSG検査は、検査項目が多く専門的な設備を使用するため、簡易検査に比べて費用は高くなります。3割負担の方で、検査料自体はおおよそ30,000円から40,000円程度が目安です。

これに入院基本料や食事代、個室を利用する場合の差額ベッド代などが加算されるため、総額で40,000円から60,000円程度になることが一般的です。

一部の医療機関では、自宅でPSG検査と同等の精度で行える検査機器(在宅PSG)を導入している場合があり、その場合は入院費がかからないため費用を抑えることができます。

費用の内訳や支払い方法(クレジットカード対応など)については、事前に確認することをお勧めします。

検査以外にかかる諸費用

検査自体の費用以外にも、通院に関わる諸費用が発生します。

初診料や再診料のほか、鼻や喉の状態を詳しく調べるためのレントゲン撮影やファイバースコープ検査が行われる場合、その分の費用が追加されます。

また、紹介状なしで大病院を受診する場合の選定療養費がかかるケースもあります。

診断後の治療(CPAPなど)に進む場合、毎月の通院と機器レンタル料が発生します。

長期的な視点で、検査費用だけでなく治療にかかるランニングコストについても、検査結果を聞く際に医師に確認しておくと計画が立てやすくなります。

主な検査費用の自己負担額目安(3割負担)

項目費用の目安備考
簡易検査(パルスオキシメーター等)約3,000円〜初診料等は別途必要
精密検査(入院PSG)約30,000円〜入院費・食事代等は別途必要
精密検査(在宅PSG)約12,000円〜実施機関は限られる

検査結果の見方と重症度判定

検査結果で最も重要視される指標は1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)であり、この数値に基づいて重症度が3段階に分類され、今後の治療方針が決定されます。

検査結果が出た際、専門的な用語や数値が並んでいて戸惑うことがあるかもしれません。しかし、診断の基準となる指標は明確であり、それを理解することで自分の状態を正しく把握できます。

検査結果は単なる数字ではなく、今後の治療方針を決めるための羅針盤です。数値が高いほど、心血管疾患などのリスクが高いことを意味し、積極的な治療が求められます。

医師からの説明をより深く理解するために、基本的な判定基準を知っておきましょう。

AHI(無呼吸低呼吸指数)とは

AHI(Apnea Hypopnea Index)は、睡眠1時間あたりに「無呼吸(10秒以上呼吸が止まる)」と「低呼吸(呼吸が浅くなり酸素飽和度が低下する)」が合計で何回起きたかを示す数値です。

例えば、7時間の睡眠中に無呼吸と低呼吸が合計140回あった場合、AHIは20となります。この数値が5以上であれば睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

AHIは国際的な診断基準として用いられており、治療の効果判定にも使われます。

簡易検査ではRDI(呼吸障害指数)やREI(呼吸イベント指数)という用語が使われることもありますが、基本的にはAHIと同様に呼吸状態の悪化度合いを示す指標と考えて差し支えありません。

重症度の分類基準

AHIの数値に基づいて、睡眠時無呼吸症候群は「軽症」「中等症」「重症」の3段階に分類されます。AHIが5以上15未満の場合は軽症、15以上30未満の場合は中等症、30以上の場合は重症と診断されます。

重症の患者では、一晩に数百回もの無呼吸を繰り返していることも珍しくありません。

特にAHIが30を超える重症例では、死亡リスクや心血管イベントの発生率が有意に上昇することが研究で明らかになっています。

そのため、この段階と判定された場合は、迅速にCPAP療法などの治療を開始することが強く推奨されます。中等症以下であっても、自覚症状が強い場合や合併症がある場合は治療の対象となります。

酸素飽和度低下の影響

AHIと並んで重要なのが、最低酸素飽和度(SpO2)や、酸素飽和度が90%未満になる時間の割合です。

健康な人は睡眠中でも95%以上を保ちますが、無呼吸患者ではこれが80%、70%、時には50%台まで低下することがあります。これは高山に登って酸欠状態になっているのと同様の過酷な環境です。

酸素不足は心臓に大きな負担をかけ、不整脈や虚血性心疾患の引き金となります。

検査結果を見る際は、AHIの回数だけでなく、どれくらい酸素が下がってしまったかという点にも注目し、身体へのダメージの大きさを認識することが大切です。

AHIに基づく重症度分類

重症度AHI(回/時間)状態の目安
正常5未満病的な無呼吸は認められない
軽症5以上〜15未満軽度の呼吸障害、経過観察の場合も
中等症15以上〜30未満症状に応じ治療検討、リスク上昇
重症30以上積極的な治療が必須、合併症リスク大

診断後の治療オプションと生活改善

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、CPAP療法やマウスピース療法などの医療的介入に加え、減量や飲酒制限といった生活習慣の改善を組み合わせることで、症状を効果的にコントロールできます。

検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、重症度や身体的な特徴、ライフスタイルに合わせて治療法を選択します。

治療の目的は、気道の閉塞を取り除き、良質な睡眠を確保することで、日中の眠気を解消し、合併症のリスクを下げることです。

治療は継続することが何よりも重要であり、医師と相談しながら無理なく続けられる方法を見つける必要があります。

医療的な介入と並行して、自分自身で行える生活習慣の改善も治療の大きな柱となります。肥満の解消や寝姿勢の工夫など、毎日の積み重ねが症状の軽減につながります。

ここでは代表的な治療法と、生活の中で意識すべきポイントについて解説します。

CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

CPAP(シーパップ)療法は、世界標準となっている最も効果的な治療法です。鼻にマスクを装着し、機器から送り込まれる空気の圧力で気道を押し広げ、睡眠中の閉塞を防ぎます。

重症の患者や、中等症でも症状が強い患者に対して保険適用となります。

使用したその日からいびきが消失し、熟睡感が得られる人が多く、劇的な症状改善が期待できます。継続して使用することで、高血圧や心疾患のリスクを健常人と同レベルまで低減させる効果も証明されています。

定期的な通院でデータの確認と機器のメンテナンスを行いながら、生活の一部として定着させていく治療です。

マウスピース(OA)療法

軽症から中等症の患者、あるいはCPAPが使用できない患者に適しているのがマウスピース療法です。

専用のマウスピースを装着して下顎を数ミリ前方に固定することで、舌根の沈下を防ぎ、気道を確保します。歯科と連携して、個々の歯型に合わせて作成します。

小型で持ち運びが容易なため、出張や旅行が多い人にも好まれます。ただし、重症の無呼吸には効果が限定的である場合や、歯や顎関節の状態によっては作成できない場合もあります。

自分の症状に適合するかどうか、医師の判断を仰ぐことが大切です。

外科手術という選択肢

扁桃肥大やアデノイド、軟口蓋の形態異常など、気道を塞ぐ物理的な原因が明確な場合には、手術療法が検討されます。特に小児の無呼吸では第一選択となることが多い治療法です。

成人では、CPAPやマウスピースが使用できない場合や、鼻閉が著しくCPAPの使用を妨げる場合などに、鼻中隔弯曲症の手術などを併用することがあります。

レーザー手術などで喉の粘膜を焼く方法もありますが、効果には個人差があり、再発の可能性もあるため、慎重な適応判断が必要です。

手術は根本的な解決になる可能性がありますが、身体への侵襲を考慮し、専門医と十分に相談して決定します。

日常で取り組むべき生活習慣の改善

医療機器による治療と同時に、生活習慣を見直すことは症状改善への近道です。特に肥満は気道を狭くする最大の要因であるため、適正体重を目指す減量は治療効果を大きく高めます。

また、アルコールは筋肉を弛緩させ、いびきを悪化させるため、就寝前の飲酒は控えることが賢明です。

仰向けで寝ると重力で舌が落ち込みやすいため、横向きで寝る工夫(抱き枕の活用など)も有効です。

口呼吸の癖がある人は、鼻呼吸を促すテープや体操を取り入れるなど、小さな工夫の積み重ねが快眠への助けとなります。

症状改善のために推奨される生活習慣

  • 適度な運動と食事管理による減量・体重維持
  • 就寝4時間前のアルコール摂取の制限
  • 横向き寝を維持するための枕や寝具の工夫
  • 禁煙(喫煙は喉の炎症や浮腫を引き起こすため)
  • 規則正しい睡眠リズムの確保

よくある質問

いびき検査に関して患者様から多く寄せられる、痛み、飲酒、費用などの疑問に対し、医学的な観点から分かりやすく回答します。

Q
痛みや苦しさはありますか?
A

簡易検査、精密検査ともに、体にセンサーを貼り付けるだけですので、針を刺すような痛みは一切ありません。

精密検査の場合はコード類が多くなるため、寝返りが打ちにくいといった違和感を覚えることはありますが、多くの患者は問題なく就寝しています。痛みに対する心配は不要です。

Q
検査当日はお酒を飲んでもいいですか?
A

普段から晩酌をしている方は、基本的には普段通りの状態で検査を受けていただくことが推奨されます。アルコールがいびきや無呼吸にどの程度影響しているかを知るためです。

ただし、医師から禁酒の指示がある場合や、睡眠薬を使用している場合は、必ず医師の指示に従ってください。

Q
検査中に眠れなかった場合、どうなりますか?
A

いつもと違う環境や装置の装着により、なかなか寝付けない方もいらっしゃいます。しかし、完全に一睡もできないというケースは稀です。

ある程度の睡眠時間が確保できれば、データ解析は可能です。もし極端に睡眠時間が短く、正確な判定が難しいと医師が判断した場合は、再検査を提案することもあります。

Q
紹介状がなくても大きな病院で検査を受けられますか?
A

紹介状なしで大学病院などの特定機能病院を受診する場合、選定療養費という追加費用が発生することがあります。

また、予約が取りにくい場合もあります。

まずは近隣の睡眠専門クリニックやかかりつけ医を受診し、そこで簡易検査を行うか、必要に応じて適切な専門病院への紹介状を書いてもらう流れがスムーズです。

参考にした文献