「睡眠時無呼吸症候群って、中高年の病気でしょう?」そう思っている方は少なくありません。しかし、実際には小さな子供から高齢者まで、どの年代でも発症する可能性があります。

年齢によって原因やリスク要因は異なりますが、放置すれば日常生活や健康に大きな影響を及ぼす点はどの世代でも共通です。

この記事では、年代ごとの発症リスクや特徴をわかりやすく整理します。

目次

睡眠時無呼吸症候群は赤ちゃんや子供でも発症する

睡眠時無呼吸症候群は大人だけの病気ではありません。乳幼児期から学童期にかけて、およそ1〜6%の子供がこの病気を抱えていると報告されています。とくに2歳から8歳ごろまでの時期に多い傾向がみられます。

子供の睡眠時無呼吸症候群で多い原因はアデノイドと扁桃肥大

大人の場合は肥満が大きなリスク要因ですが、小児期ではアデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃の肥大が主な原因となります。成長とともにリンパ組織が大きくなり、気道を狭めてしまうのです。

とくに3歳から6歳ごろはアデノイドの発達がピークを迎えるため、いびきや口呼吸が目立ちやすくなります。親御さんが「うちの子、寝ている間にいびきをかく」と気づいて受診されるケースが多いでしょう。

寝ている間のいびきや口呼吸は見逃さないでほしいサイン

子供の睡眠時無呼吸症候群では、大人ほど日中の眠気を訴えないことがあります。代わりに、落ち着きのなさや集中力の低下、学業成績の悪化といった形で影響が出やすい点に注意が必要です。

夜間の激しいいびき、寝汗、呼吸の一時停止、口を開けた状態での睡眠、おねしょの増加などが見られたら、一度かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科に相談してみてください。

子供の睡眠時無呼吸症候群にみられる代表的なリスク要因

リスク要因内容
アデノイド・扁桃肥大気道を物理的に狭くする
肥満年長児や思春期ではリスクが上がる
顎顔面の形態異常小さい下顎や特定の症候群に伴う
アレルギー性鼻炎鼻づまりが気道閉塞を助長する
家族歴親に無呼吸症候群がある場合リスク約3倍

小児の睡眠時無呼吸症候群を放置すると成長に影響が及ぶ

子供の時期に適切な対応をとらないと、成長ホルモンの分泌低下による発育の遅れ、心肺機能への負担、行動面での問題など、さまざまな影響が出る恐れがあります。

大人に比べて症状が目立ちにくいだけに、保護者が睡眠中の様子を観察することが早期発見のカギとなるでしょう。

10代の思春期に睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる背景

思春期はアデノイド・扁桃肥大に加え、肥満が発症の引き金となりやすい時期です。10代は生活習慣が乱れやすく、体重増加と相まって気道が狭くなるケースが増えてきます。

思春期の肥満と睡眠時無呼吸症候群の深い関係

近年、子供の肥満率は世界的に上昇しています。首まわりや舌根部に脂肪が蓄積すると、仰向けに寝た際に気道がつぶれやすくなるため、思春期の肥満は無呼吸リスクを大きく引き上げます。

部活動を引退して運動量が減ったタイミングや、受験勉強で夜食が増える時期に体重が一気に増え、いびきが出始めるパターンも珍しくありません。

夜更かしやスマホの使いすぎが睡眠の質を下げている

思春期は体内時計が後ろにずれやすく、就寝時間が遅くなりがちです。加えてスマートフォンやゲームによる長時間のブルーライト暴露が、入眠を妨げます。

睡眠時間が短くなると、仮に無呼吸の症状があっても「ただの寝不足」と見過ごされてしまう危険性があるため注意が必要です。

成績不振や日中の居眠りは無呼吸症候群のサインかもしれない

10代の睡眠時無呼吸症候群は、日中の過度な眠気、授業中の居眠り、イライラしやすさ、頭痛といった症状として現れることがあります。思春期特有の反抗期や怠けだと片づけられやすい点が問題です。

「最近、朝起きられない」「いびきがうるさいと家族に言われる」というお子さんがいれば、一度睡眠の専門外来を受診することをおすすめします。

思春期の睡眠時無呼吸症候群を疑うべき症状一覧

症状のカテゴリ具体例
夜間の症状大きないびき、無呼吸の目撃、寝汗
朝の症状起床困難、起床時の頭痛、口の渇き
日中の症状強い眠気、集中力低下、成績不振

20代・30代でも睡眠時無呼吸症候群は他人事ではない

若い世代は「まだ自分には関係ない」と考えがちですが、生活習慣や体型の変化によって20代・30代でも発症するリスクは十分にあります。近年の研究では、若年成人のあいだでも一定の有病率が報告されています。

デスクワーク中心の生活と体重増加が引き金になる

就職を機に運動量が激減し、飲み会や夜食で体重が増えていくパターンは珍しくありません。BMIが30を超えると、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクは大幅に高まります。

20代のうちは体力でカバーできてしまうため、日中の眠気をコーヒーやエナジードリンクでごまかしている方もいるかもしれません。しかし、根本的な原因が解消されなければ、症状は徐々に悪化していくでしょう。

飲酒や喫煙の習慣は気道の筋肉を弛緩させる

アルコールには上気道の筋肉を緩める作用があり、寝酒をすると気道が閉塞しやすくなります。喫煙も上気道に慢性的な炎症を引き起こし、粘膜の腫れによって気道を狭くします。

20代・30代は社会的な付き合いで飲酒量が増えやすい時期でもあるため、日頃から「飲んだ日にいびきがひどい」と指摘されたことがある方は注意してください。

20代・30代の睡眠時無呼吸症候群に関わる生活習慣

  • 運動不足と不規則な食事による体重の急増
  • 就寝前の飲酒習慣(寝酒)
  • 喫煙による上気道粘膜の慢性的な腫れ
  • 深夜までのスマートフォン操作で慢性的な睡眠不足に陥る

若い世代が放置しやすい理由と早めの受診が大切な理由

20代・30代の方が受診をためらう理由のひとつに、「いびきくらいで病院に行くのは大げさ」という意識があります。しかし、この年代で未治療のまま過ごすと、高血圧や心血管疾患のリスクが将来的に積み重なります。

仕事のパフォーマンス低下や交通事故のリスクも無視できません。パートナーから「いびきが止まる瞬間がある」と言われたら、それは気道が完全にふさがっている証拠です。早めに専門の医療機関を受診しましょう。

40代・50代は睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが急上昇する年代

40代・50代は睡眠時無呼吸症候群がもっとも見つかりやすい年代です。男性では30代後半から有病率が上がり始め、50代にかけてピークを迎えるとされています。この年代では生活習慣病との合併も増えてきます。

中年期の体重増加と筋力の低下が重なる危険な時期

40代以降は基礎代謝が落ち、同じ食事量でも太りやすくなります。首まわりや腹部への脂肪蓄積が進むと、仰向けで寝たときに気道がつぶされやすくなるのです。

さらに、加齢に伴って上気道を支える筋肉の張り(筋緊張)が低下するため、気道が閉塞しやすくなります。こうした複数の要因が重なることが、中年期に発症が増える大きな理由といえます。

高血圧や糖尿病など生活習慣病と同時に見つかるケースが多い

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・心房細動などの生活習慣病と密接に関連しています。健康診断で血圧が高いと指摘された方のなかに、実は無呼吸症候群が隠れていたという事例は数多くあります。

夜間に繰り返される低酸素状態と交感神経の過剰な興奮が、血圧や血糖値のコントロールを乱す原因となるため、生活習慣病の治療と並行して無呼吸症候群の検査を受けることが大切です。

40代・50代で睡眠時無呼吸症候群を疑ったら迷わず受診を

「最近疲れが取れない」「朝起きても頭がぼんやりする」「日中に強い眠気に襲われる」といった自覚がある方は、まず睡眠の専門医療機関で検査を受けてみてください。自宅で行える簡易検査もあります。

この年代で治療を開始することは、将来の脳卒中や心筋梗塞といった深刻な合併症を防ぐうえで非常に有効です。

40代・50代の睡眠時無呼吸症候群に関連するリスク因子

リスク因子影響の概要
内臓脂肪の増加気道周囲への脂肪沈着で閉塞しやすくなる
上気道筋力の低下加齢で筋緊張が落ち、気道がつぶれやすい
飲酒・喫煙気道の弛緩と炎症を助長する
高血圧・糖尿病無呼吸症候群との合併で相互に悪化する

60代以降の高齢者で睡眠時無呼吸症候群の有病率はさらに高くなる

60代以降になると、睡眠時無呼吸症候群の有病率はさらに上昇します。65歳以上では約20〜50%が何らかの睡眠時呼吸障害を抱えているとする報告もあり、加齢そのものが大きなリスク要因となっています。

高齢になると上気道の組織がたるみやすくなる

加齢による筋力低下は全身に及びますが、喉まわりの軟部組織も例外ではありません。舌の付け根や軟口蓋(のどちんこ付近の柔らかい部分)がたるみ、睡眠中に気道を塞ぎやすくなります。

高齢者の場合、体重が大きく増えていなくても筋力の低下だけで無呼吸が起こるケースがあり、「痩せているから大丈夫」とは言い切れません。

日中の眠気を「年のせい」で片づけてはいけない

高齢者では、日中のうたた寝や居眠りが「年齢のせい」と見なされがちです。しかし、その背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合があります。

年代別の睡眠時無呼吸症候群の推定有病率

年代推定有病率の目安
小児(2〜8歳)約1〜6%
若年成人(20〜30代)約5〜10%前後
中年(40〜50代)男性約15〜30%、女性約5〜15%
高齢者(65歳以上)約20〜50%

高齢者の睡眠時無呼吸症候群は認知機能の低下に影響を及ぼす

夜間の低酸素状態が繰り返されると、脳への酸素供給が不安定になり、認知機能の低下を促進する恐れがあります。物忘れが増えた、ぼんやりすることが多くなった、という変化がある方は、無呼吸症候群の可能性も視野に入れてみてください。

認知症と似たような症状が出るケースもあるため、鑑別のためにも睡眠の検査が有用です。治療によって認知機能が改善したという報告もみられます。

女性の睡眠時無呼吸症候群は閉経をきっかけにリスクが変わる

睡眠時無呼吸症候群は男性に多い病気とされてきましたが、女性も無関係ではありません。とくに閉経を迎えた後の女性では、発症率が閉経前の約3倍に跳ね上がるという調査結果が出ています。

女性ホルモンが上気道を守っていた

閉経前の女性にこの病気が少ない背景には、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの作用があります。これらのホルモンには上気道の筋緊張を保ち、呼吸の安定性を高める働きがあると考えられています。

閉経に伴ってこれらのホルモンが減少すると、その保護効果が薄れ、男性と同程度に気道が閉塞しやすくなるのです。

女性は「いびきをかかない睡眠時無呼吸」に注意が必要

女性の場合、男性ほど大きないびきを伴わないことがあり、倦怠感や朝の頭痛、不眠といった非典型的な症状で現れやすい傾向があります。そのため、うつ病や更年期障害と間違われてしまうケースも珍しくありません。

「更年期に入ってから疲れやすくなった」「眠っているのに熟睡感がない」という症状は、無呼吸症候群が原因の可能性があるため、睡眠の検査を受けることが助けになるでしょう。

体重管理とホルモンの変化を意識した対策が鍵になる

閉経後は基礎代謝が下がるうえ、脂肪の分布が変わり、上半身や首まわりに脂肪がつきやすくなります。体重管理は閉経後の女性にとって、睡眠時無呼吸症候群を予防するうえで重要なポイントです。

適度な有酸素運動と筋力トレーニングを日常に取り入れ、内臓脂肪を減らす努力が効果的といえます。

閉経後の女性で睡眠時無呼吸症候群を見分けるヒント

  • 朝起きたときの頭痛や口の渇きが続く
  • 十分に寝ているはずなのに日中の疲労感がとれない
  • パートナーに「呼吸が止まっていた」と言われた経験がある
  • 更年期障害の治療をしても倦怠感が改善しない

睡眠時無呼吸症候群を年齢に関係なく早期発見するための受診の目安

睡眠時無呼吸症候群は何歳であっても発症する可能性がある病気であり、年齢にかかわらず気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが回復への近道です。

まずセルフチェックで自分のリスクを確認してみよう

自宅で簡単にできるセルフチェックとして、就寝中の様子を家族やパートナーに観察してもらう方法があります。いびきの有無、呼吸の一時停止、口を開けて寝ているかどうかなどを確認してもらいましょう。

スマートフォンの睡眠記録アプリを活用して、いびきの頻度や呼吸パターンを記録するのもひとつの手段です。

睡眠時無呼吸症候群を疑う代表的な自覚症状・他覚症状

分類症状の例
自覚症状起床時の頭痛、日中の強い眠気、熟睡感がない
他覚症状大きないびき、呼吸停止の目撃、寝相の悪さ
関連する体の変化夜間頻尿、起床時の口渇、集中力の低下

何科を受診すればいいのか迷ったときの選び方

睡眠時無呼吸症候群の診療は、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来など複数の診療科で行われています。どの科を受診すべきか迷った場合は、「睡眠外来」や「睡眠時無呼吸症候群外来」を掲げている医療機関を選ぶとスムーズです。

小児の場合は、小児科や小児耳鼻咽喉科が窓口になることが多いでしょう。まずはかかりつけ医に相談し、紹介状を書いてもらうのも有効な方法です。

検査は自宅でもできる簡易型から始められる

睡眠時無呼吸症候群の確定診断にはポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる精密検査が用いられますが、まずは自宅で行える簡易型の検査から始めるケースが一般的です。指先や鼻にセンサーをつけて就寝するだけなので、体への負担はほとんどありません。

簡易検査の結果、無呼吸が疑われた場合は、医療機関で一泊して精密検査を受けることになります。検査の結果をもとに、CPAP療法やマウスピース療法など、一人ひとりに合った治療法が提案されます。

よくある質問

Q
睡眠時無呼吸症候群は生まれたばかりの赤ちゃんでも発症しますか?
A

新生児や乳児でも、先天的な顎の形態異常や気道の狭さなどが原因で睡眠中の呼吸障害がみられることがあります。ただし、一般的に「睡眠時無呼吸症候群」として診断される頻度が高いのは2歳以降です。

乳児期に呼吸が不規則になる場合、睡眠時無呼吸症候群とは異なる「乳児無呼吸」の可能性もあるため、気になる症状があれば小児科で相談してみてください。

Q
睡眠時無呼吸症候群は痩せている人でも発症することがありますか?
A

はい、痩せている方でも発症します。肥満は代表的なリスク要因ですが、顎が小さい(小顎症)、扁桃が大きい、鼻中隔が曲がっているなど、骨格や組織の構造的な特徴によって気道が狭くなるケースがあります。

日本人を含むアジア人は、欧米人に比べて顎が小さい傾向があり、体重が標準範囲内であっても無呼吸症候群を発症するリスクがあるといわれています。体型だけで判断せず、いびきや日中の眠気といった症状にも注意してください。

Q
睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高まる年齢のピークは何歳ごろですか?
A

男性では40代から50代にかけて発症率がピークに達するとされています。女性は閉経後にリスクが急上昇し、60代以降に有病率が男性に近づいていく傾向があります。

ただし、65歳以上の高齢者ではさらに有病率が高くなるため、ピークの年齢は性別や定義によって異なります。どの年代であっても、いびきや呼吸停止を指摘されたら早めの受診が大切です。

Q
睡眠時無呼吸症候群は加齢とともに自然に治ることがありますか?
A

基本的に、自然に治ることは期待しにくい病気です。子供の場合はアデノイドや扁桃の縮小、成長に伴う気道の拡大によって改善するケースがありますが、大人の場合は自然治癒はまれと考えてよいでしょう。

加齢に伴って筋力がさらに低下するため、治療を受けなければ症状が悪化する方向に進みやすくなります。体重管理や生活習慣の改善だけでは限界がある場合も多いため、医療機関での相談をおすすめします。

Q
睡眠時無呼吸症候群の検査や治療は何歳から受けられますか?
A

検査や治療に明確な年齢制限はありません。小児であっても、いびきや無呼吸の症状がある場合は、小児科や耳鼻咽喉科でポリソムノグラフィー検査を受けることができます。

大人の場合は、簡易検査であれば自宅で手軽に行えるため、年齢を問わず気軽に検査を受けられます。「まだ若いから」「高齢だから仕方ない」と思わず、気になったタイミングで医療機関に相談してみてください。

参考にした文献