毎晩の大きないびき、なんとかして治したいと思っていませんか。

いびきは周りに迷惑をかけるだけでなく、あなた自身の健康を損なう危険なサインかもしれません。

この記事では、いびきを治したいと考えるすべての方へ向けて、即効性が期待できる市販の対策グッズの正しい使い方から生活習慣の改善、そして病院で行う根本的な治療法まで、あらゆる「いびきの治し方」を網羅的に解説します。

原因に合った正しい治し方を見つけ、静かで健康な睡眠を手に入れましょう。

なぜ「いびき」を治すべきなのか?音だけではない健康リスク

いびきは単なるうるさい音ではありません。それは、睡眠中にあなたの気道が狭くなっているという体からの警告サインです。

特に危険ないびきを放置すると、深刻な健康問題につながる可能性があります。

いびきは気道が狭くなっている証拠

いびきは狭くなった空気の通り道(気道)を、空気が無理やり通ることで喉の粘膜などが振動して鳴る音です。

つまり、いびきをかいているということは睡眠中にうまく呼吸ができていない状態を示しています。

危険ないびきと、そうでないいびき

疲れている時やお酒を飲んだ時にかく一時的ないびきは生理的なものであることが多く、過度な心配は要りません。

しかし、毎晩のようにかく大きないびきや、いびきの間に呼吸が止まる場合は睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気の可能性があり、治療が必要です。

危険ないびきのセルフチェック

チェック項目危険度
毎晩のように、大きな音でいびきをかく
いびきの音が途中で止まり、静かになる時間がある
息苦しそうにあえいで、呼吸を再開する

睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスク

危険ないびきを放置するとSASが進行し、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる生活習慣病のリスクが著しく高まります。

また、日中の強い眠気が仕事上のミスや重大な交通事故の原因となることもあります。いびきを治すことは、これらのリスクから自分自身を守ることにつながるのです。

【即効性が期待できる対策】市販グッズの正しい治し方

今夜のいびきを少しでも和らげたい場合、市販の対策グッズが助けになることがあります。

ただしその効果と限界を理解し、根本的な解決にはならないことを知っておくことが重要です。

鼻腔拡張テープ|鼻詰まりによるいびきに

鼻に貼ることで鼻腔を広げ、鼻の通りを良くするテープです。アレルギー性鼻炎などによる鼻詰まりで口呼吸になり、いびきをかいている場合に即効性が期待できます。

手軽に試せるのが利点ですが、喉の奥の閉塞が原因のいびきには効果がありません。

口閉じテープ(マウステープ)|口呼吸の防止に

睡眠中に口が開いてしまうのを防ぎ、鼻呼吸を促すためのテープです。口呼吸による喉の乾燥や舌の落ち込みが原因のいびきに効果的な場合があります。

ただし、鼻が詰まっている状態で使用すると窒息の危険があるため、絶対に使用しないでください。

市販グッズの効果と注意点

グッズ期待できる効果主な注意点
鼻腔拡張テープ鼻呼吸の促進喉の閉塞には無効
口閉じテープ口呼吸の防止鼻詰まりがある場合は使用厳禁
市販マウスピース気道の確保歯や顎を痛めるリスクあり

市販マウスピースのリスクと限界

自分で歯型をとって作るタイプのマウスピースは下顎を前に出して気道を広げることを目的としています。

しかし医療用とは異なり精度が低く、歯並びや顎関節を痛める危険性があります。また、根本原因であるSASを隠してしまうことにもなりかねないため、安易な使用はお勧めできません。

生活習慣の改善でいびきを治す方法

いびきの根本的な治し方として、日々の生活習慣を見直すことは非常に重要です。薬やグッズに頼る前に、まず取り組むべき対策です。

適正体重の維持(減量)

肥満がいびきの原因である場合、減量が最も確実な治し方です。

体重を数キログラム落とすだけでも首周りの脂肪が減って気道が広がり、いびきが劇的に改善することがあります。バランスの取れた食事と定期的な運動を習慣にしましょう。

横向き寝を習慣にする

仰向けで寝ると重力で舌が喉に落ち込みやすくなります。横向きで寝ることでこれを防ぎ、気道を確保しやすくなります。

抱き枕や背中にクッションを置くなどして、横向きの姿勢をキープする工夫が有効です。

就寝前の飲酒・喫煙を控える

アルコールは喉の筋肉を弛緩させ、いびきを悪化させます。喫煙は喉の粘膜に炎症を起こし、気道を狭くします。

いびきを治したいなら就寝前の飲酒は避け、禁煙に取り組むことが大切です。

枕を見直す

枕の高さが合っていないと気道を圧迫していびきの原因になります。高すぎても低すぎてもいけません。

横向きになった時に首の骨から背骨までが床と平行に、まっすぐになる高さを目安に選びましょう。

病院での「いびき根本治療」とは?

セルフケアでは改善しない、あるいは危険ないびきのサインがある場合は医療機関での根本治療が必要です。

まずは検査で原因を特定

いびきの治し方は原因によって異なります。

そのためまずは睡眠検査(簡易検査・精密検査)を行い、いびきの原因がどこにあるのか、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていないか、重症度はどのくらいかを正確に診断します。

CPAP(シーパップ)療法

中等症から重症のSASに対する最も効果的で標準的な根本治療です。

鼻に装着したマスクから圧力をかけた空気を送り、物理的に気道が塞がるのを防ぎます。この治療により、いびきも無呼吸も確実になくなります。

主な根本治療法

治療法対象特徴
CPAP療法中等症~重症SAS効果が最も高い根本治療。
マウスピース治療軽症~中等症SAS手軽だが適応が限られる。
外科手術扁桃肥大などが原因の場合原因によっては根本治療となる。

マウスピース(医療用)治療

主に軽症から中等症のSASの患者さんが対象です。

歯科で精密な歯型をとり、オーダーメイドのマウスピースを作製します。睡眠中に装着することで下顎を前方に固定し、気道を広げていびきを治します。

耳鼻咽喉科での外科手術

子どものいびきの多くがそうであるように、扁桃腺やアデノイドの肥大が気道閉塞の明らかな原因である場合これらを切除する手術が根本治療となります。

鼻の骨が曲がっている(鼻中隔弯曲症)場合なども手術の適応となることがあります。

女性や子どものいびきの治し方

いびきは男性だけの悩みではありません。女性や子どもにも特有の原因と治し方があります。

女性のいびきとホルモンバランス

女性ホルモン(プロゲステロン)には上気道の筋肉の活動を高め、気道を開きやすくする働きがあります。

このため女性ホルモンが減少する閉経後には、いびきが悪化したり新たに始まったりする女性が多くいます。

妊娠中のいびき対策

妊娠中は体重増加やホルモンバランスの変化、むくみなどにより、いびきをかきやすくなります。

多くの場合は出産後に改善しますが、横向きで寝る(特に左側を下にするシムス位)などの対策が有効です。

子どものいびきの原因と治療

子どものいびきの主な原因はアデノイドや扁桃腺の肥大です。子どものいびきは成長や発達、学業成績にも影響を及ぼすことがあるため放置は禁物です。

耳鼻咽喉科で相談し、必要であれば切除手術などの根本治療を検討します。

よくある質問

最後に、いびきの治し方に関して患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q
いびきは自力で治せますか?
A

原因によります。肥満や飲酒など生活習慣が原因の軽いいびきであれば、セルフケアで改善する可能性は十分にあります。

しかし骨格の問題やSASが原因のいびきを自力で完全に治すのは困難です。危険ないびきのサインがあれば、専門医に相談することが根本治療への近道です。

Q
レーザーでのどを焼く治療は効果がありますか?
A

かつて口蓋垂(のどちんこ)などをレーザーで切除する手術(LAUP)がいびき治療として行われていました。

しかし、長期的な効果が不安定なことや手術後の瘢痕(傷跡)が硬くなってかえって症状を悪化させるリスクがあることから、現在では多くの学会で推奨されていません。

  • 効果が長続きしないことがある
  • 手術後の痛みが強い
  • 傷跡が硬くなるリスクがある
Q
いびき治療は何科を受診すればよいですか?
A

いびきや睡眠時無呼吸症候群を専門に診ているのは主に呼吸器内科、睡眠専門クリニック、耳鼻咽喉科です。

日中の眠気などSASの症状が強い場合は呼吸器内科や睡眠専門クリニック、鼻詰まりなど鼻や喉の症状が主であれば耳鼻咽喉科への受診が良いでしょう。

どこに相談すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談してみるのも一つの方法です。

以上

参考にした論文

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