旅行やパートナーとの就寝時、「いびきをかきたくない」と強く願うことはありませんか。いびきは自分ではコントロールできないと思われがちですが、実は寝る前の少しの工夫や寝室の環境を整えることで、大きく改善できる可能性があります。この記事では、いびきをかかない方法を探しているあなたのために、今夜からすぐに実践できる新しい習慣と、静かな眠りをサポートする環境づくりの具体的な方法を詳しく解説します。健やかな睡眠といびきのない朝を手に入れるための第一歩を踏み出しましょう。

いびきをかかないための基本知識

いびき対策を始める前に、なぜいびきが起こるのか、その基本的な理由を知っておくことが重要です。原因を理解することで、対策の効果も高まります。

いびきは「気道の狭さ」が原因

いびきの正体は、睡眠中に喉や鼻の空気の通り道(上気道)が狭くなり、そこを空気が通過するときの振動音です。起きている間は筋肉が気道を支えていますが、眠ると筋肉が緩むため、誰でも気道は狭くなります。この狭まり方が大きいと、いびきが発生します。

いびきをかきやすい人の特徴

元々の骨格や生活習慣によって、いびきをかきやすい人がいます。肥満気味の方、顎が小さい方、鼻づまりがある方、そして日常的に口呼吸をしている方は、特に注意が必要です。

いびきのリスクを高める要因

要因理由対策の方向性
肥満首周りの脂肪が気道を圧迫する体重管理
口呼吸舌が喉に落ち込みやすくなる鼻呼吸の習慣化
飲酒喉の筋肉が過度に緩む就寝前の飲酒を控える

一時的ないびきと慢性的ないびき

疲れている日やお酒を飲んだ日だけいびきをかくのは、一時的なものです。しかし、毎晩のようにいびきをかいている場合は、気道が慢性的に狭くなっているサインかもしれません。この状態は、体に負担をかけている可能性があります。

【寝る前の新習慣】いびきをかかないための5つの準備

就寝前のわずかな時間を活用して、いびきを予防するための新しい習慣を取り入れてみましょう。リラックス効果もあり、睡眠の質を高めることにもつながります。

鼻の通りを良くする「鼻うがい」

鼻づまりは口呼吸を招き、いびきの大きな原因となります。寝る前に体温程度のぬるま湯と専用の洗浄液で鼻うがいをすると、鼻腔内のアレルゲンやホコリが洗い流され、鼻呼吸がしやすくなります。

喉と舌の筋肉をほぐすストレッチ

舌や喉周りの筋肉が凝り固まっていると、睡眠中に正しく機能しません。舌を思い切り前に出したり、上下左右に動かしたりする簡単なストレッチを数分間行うことで、筋肉がほぐれ、舌の落ち込みを防ぎます。

寝る前の簡単ストレッチ

ストレッチ名方法目的
舌回し運動口を閉じたまま、舌で歯茎をなぞるように回す舌の付け根の筋肉を柔軟にする
喉のあくびあくびをするように喉を大きく開く喉の奥の空間を広げる意識づけ

リラックス効果のあるハーブティー

カモミールティーなど、カフェインを含まない温かい飲み物は、心身をリラックスさせ、スムーズな入眠を助けます。また、喉を潤すことで、乾燥によるいびきの悪化を防ぐ効果も期待できます。

【環境づくり】いびきをかかないための寝室の整え方

静かで快適な睡眠環境は、いびきをかかないためにとても重要です。寝具の選び方から部屋の状態まで、見直すべきポイントを解説します。

横向き寝を誘う寝具の配置

いびき対策の基本は「横向き寝」です。抱き枕を用意したり、ベッドの片側を壁につけて寝返りの方向を限定したりすることで、自然と横向きで眠る時間を増やすことができます。

枕の高さと硬さを見直す

枕は、高すぎても低すぎても気道を狭める原因になります。理想は、横向きに寝たときに頭から背骨までが一直線になる高さです。オーダーメイドでなくても、タオルケットなどで微調整することが可能です。

枕選びのチェックポイント

項目理想的な状態
高さ横向きで頭と背骨がまっすぐになる
硬さ頭が沈み込みすぎず、安定して支えられる
素材通気性が良く、熱がこもらない

湿度と温度の管理

空気が乾燥すると鼻や喉の粘膜が刺激され、いびきの原因となります。加湿器を使い、寝室の湿度を50~60%に保ちましょう。快適だと感じる室温を維持することも、リラックスした呼吸につながります。

いびきをしないための体づくりと生活習慣

寝る前の対策だけでなく、日中の過ごし方や体づくりも、いびきをかかないためには重要です。長期的な視点で改善に取り組みましょう。

鼻呼吸の意識づけ

日中から口を閉じ、鼻で呼吸することを意識するだけで、口周りの筋肉が鍛えられ、睡眠中の口呼吸を防ぐことにつながります。意識的にガムを噛むのも、口輪筋を鍛えるのに役立ちます。

適正体重のコントロール

肥満、特に首周りの脂肪は、気道を狭くする最大の要因の一つです。バランスの取れた食事と、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化し、体重をコントロールすることが根本的な解決策となります。

体重といびきの関係性

状態気道への影響改善策
肥満首周りの脂肪が気道を物理的に圧迫食事の見直し、有酸素運動
適正体重気道に余裕があり、圧迫が少ない現状の維持

いびき対策グッズの上手な使い方

セルフケアを補助する目的で、市販の対策グッズを取り入れるのも一つの方法です。自分のいびきのタイプに合わせて賢く選びましょう。

口閉じテープで鼻呼吸をサポート

寝ている間に無意識に口が開いてしまう方には、口閉じテープが有効です。唇に貼ることで物理的に口を閉じさせ、鼻呼吸を促します。肌が弱い方は、医療用の低刺激なテープを選びましょう。

鼻腔拡張テープで鼻の通りを確保

鼻づまりが気になる方は、鼻腔拡張テープを試してみる価値があります。テープの反発力で鼻翼を外側に広げ、空気の通り道を確保します。鼻いびきタイプの方に特におすすめです。

主な対策グッズと対象者

グッズ主な目的おすすめな人
口閉じテープ口呼吸の防止、鼻呼吸の促進朝起きると喉が渇いている人
鼻腔拡張テープ鼻腔を広げ、鼻の通りを改善アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まりがちな人

それでもいびきをかく場合に考えられること

様々な対策をしてもいびきが一向に改善しない場合、単なる癖ではなく、治療が必要な状態が隠れている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性

大きないびきに加えて、睡眠中に呼吸が止まっていると家族に指摘されたり、日中に強い眠気があったりする場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われます。この病気は、放置すると生活習慣病のリスクを高めるため、専門医による診断が必要です。

骨格的な問題

顎が小さい、下顎が後退している、鼻中隔が曲がっているなど、骨格的な特徴が気道を狭くしている場合もあります。この場合はセルフケアだけでの改善は難しく、専門的な治療が必要となることがあります。

専門医への相談を検討すべきサイン

  • いびきの間に呼吸が止まる
  • 日中、会議中や運転中に眠り込んでしまう
  • 朝起きても疲れが取れていない、頭が重い

いびきをかかない方法に特化したよくある質問

いびきをかきたくないと願う方々から、よく寄せられる質問にお答えします。

Q
横向きで寝てもいびきをかいてしまいます。なぜですか?
A

横向き寝は多くの人に有効ですが、肥満の程度が強い場合や、扁桃腺が大きいなど喉の狭窄が著しい場合は、横向きでも気道が十分に確保できずにいびきをかくことがあります。この場合は、セルフケアの限界と考えられ、専門医への相談をお勧めします。

Q
疲れていると、なぜいびきをかきやすくなるのですか?
A

強い疲労は、全身の筋肉をより深く弛緩させます。このことにより、喉や舌を支える筋肉も普段より緩んでしまい、気道が狭くなりやすくなるため、いびきが発生しやすくなります。日頃から十分な休養をとることも、いびき対策の一つです。

Q
いびきを録音するアプリは役に立ちますか?
A

はい、客観的に自分のいびきの状態を知る上で非常に役立ちます。いびきの大きさや頻度、無呼吸の可能性などを確認でき、医療機関を受診する際の重要な情報にもなります。対策の効果を測定する指標としても活用できます。

以上

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