パートナーから「いびきがうるさくて眠れない」と指摘されたり、自分自身のいびきの音で目が覚めてしまったりすることはありませんか。
大きないびきは周りの人に迷惑をかけるだけでなく、ご自身の健康状態を示すサインかもしれません。
この記事では、うるさいいびきに悩む方のために、寝る前のわずかな時間で実践できる簡単な対策から生活習慣の見直し、すぐに試せるいびき対策グッズまで具体的な方法を詳しく解説します。
静かな夜とすっきりとした目覚めを取り戻すための第一歩として、ぜひ今日から取り組んでみてください。
なぜいびきは鳴るのか?基本的な原因を知ろう
いびきを効果的に対策するためには、まずなぜその音が発生するのかを知ることが重要です。
いびきの多くは睡眠中に空気の通り道が狭くなることで起こります。その原因を理解し、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。
空気の通り道「上気道」の狭窄
いびきの正体は鼻から喉にかけての空気の通り道(上気道)が何らかの原因で狭くなり、そこを空気が通過するときの振動音です。
起きている間は筋肉が上気道を支えているため、十分な広さが保たれています。しかし睡眠中は全身の筋肉が緩むため、気道が狭くなりやすいのです。
睡眠中に筋肉が緩む影響
特に喉の奥にある舌の付け根(舌根)や、のどちんこの周りの軟口蓋(なんこうがい)という柔らかい部分が重力によって喉の奥に落ち込み、気道を塞ぎやすくなります。
この状態が、いびきの直接的な原因となる代表的なものです。
いびきの主な発生場所
発生場所 | 特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
鼻 | 鼻がつまったような音 | 鼻炎、鼻中隔弯曲症 |
喉 | ガーガーという大きな音 | 舌根の落ち込み、軟口蓋のたるみ |
両方 | 複合的な音 | 複数の要因が重なっている |
いびきをかきやすい人の身体的な特徴
生まれつきの骨格が、いびきの原因になることもあります。例えば顎が小さい、または後退している方は、もともと気道が狭い傾向にあります。
また、首が短い、あるいは太い方も首周りの脂肪が気道を圧迫しやすいため、いびきをかきやすいと言えます。
生活習慣が原因となるケース
日々の生活習慣も、いびきに大きく影響します。肥満は首周りに脂肪をつけ、気道を狭くする最大の要因の一つです。
また、就寝前の飲酒は筋肉を過度に弛緩させるため、舌根の落ち込みを助長します。疲労やストレスも筋肉の緊張を解き、いびきを悪化させる一因です。
寝る前の5分で実践!即効性が期待できるいびき対策
毎日の習慣に少し加えるだけで、いびきの改善が期待できる簡単な方法があります。
ここでは寝る前のわずかな時間で取り組める対策を紹介します。継続することで、より効果を実感しやすくなります。
口周りの筋肉を鍛える「あいうべ体操」
口呼吸はいびきの大きな原因です。口周りや舌の筋肉を鍛え、自然な鼻呼吸を促す「あいうべ体操」は手軽で効果的なトレーニングです。
口を大きく動かすことで舌が正しい位置に収まりやすくなり、睡眠中の舌根沈下を防ぎます。
あいうべ体操のやり方
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に大きく広げる
- 「うー」と唇を強く前に突き出す
- 「べー」と舌を下に思い切り伸ばす
これを1セットとし、1日に30セットを目安に行いましょう。声は出さなくても大丈夫です。
鼻の通りを良くする鼻うがい
鼻づまりは口呼吸を誘発し、いびきの原因となります。
寝る前に鼻うがいを行い、鼻腔内の花粉やホコリ、ウイルスなどを洗い流すことで鼻の通りがスムーズになります。市販の鼻うがい専用キットを使うと痛みもなく簡単に行えます。
喉の乾燥を防ぐための工夫
喉が乾燥すると粘膜が炎症を起こしていびきが悪化しやすくなります。
寝る前にコップ一杯の水を飲む、加湿器を使って寝室の湿度を保つなどの対策が有効です。マスクをして寝るのも喉の湿度を保つのに役立ちます。
寝る前の簡単ケア比較
対策 | 目的 | ポイント |
---|---|---|
あいうべ体操 | 舌や口周りの筋力アップ | 毎日継続することが重要 |
鼻うがい | 鼻づまりの解消 | 体温程度のぬるま湯と専用の洗浄液を使用 |
水分補給・加湿 | 喉の乾燥防止 | 寝室の湿度は50~60%が目安 |
寝室の環境を見直して静かな夜を取り戻す
睡眠中の姿勢や寝室の環境も、いびきに大きく関わっています。
少しの工夫で気道の確保を助け、いびきを軽減できる可能性があります。今夜から試せる改善点を見ていきましょう。
枕の高さと硬さの調整
枕が高すぎると顎が引けて気道が圧迫され、低すぎると舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。理想的なのは横になったときに首の骨が背骨とまっすぐになる高さです。
バスタオルなどを重ねて自分に合った高さを探してみるのも一つの方法です。
枕選びのポイント
寝方 | 枕の高さの目安 | 選ぶポイント |
---|---|---|
仰向け寝 | 首のカーブを自然に支える高さ | 後頭部が安定し、呼吸が楽なもの |
横向き寝 | 肩幅に合わせて頭と首を支える高さ | 頭が傾かず、背骨と一直線になるもの |
横向きで寝る習慣をつける
仰向けで寝ると重力で舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、いびきをかきやすくなります。
一方、横向きで寝ると舌の落ち込みが防げるため、気道が確保されやすくなります。抱き枕を使ったり背中にクッションを置いたりして、自然に横向きを維持できるように工夫してみましょう。
適切な湿度と温度の管理
空気が乾燥していると鼻や喉の粘膜が乾き、いびきの原因になります。特に冬場は加湿器を使って寝室の湿度を50~60%に保つことを心がけましょう。
快適な室温を保つことも、リラックスした質の良い睡眠につながります。
いびきを悪化させるNG習慣と改善策
良かれと思ってやっていることや無意識の習慣が、実はいびきを悪化させているかもしれません。
いびきの改善には原因となる生活習慣を見直すことがとても重要です。ご自身の生活を振り返ってみましょう。
アルコール摂取と喫煙の影響
アルコールは全身の筋肉を弛緩させる作用があるため、喉の筋肉も緩み、気道が狭くなってしまいます。特に寝る直前の飲酒は、いびきを大きくする直接的な原因です。
また、喫煙は喉や鼻の粘膜に炎症を引き起こして気道を狭くするため、いびきを悪化させます。禁煙や節酒を心がけることが大切です。
肥満と首周りの脂肪の関係
体重が増加すると首周りにも脂肪がつきます。この脂肪が内側から気道を圧迫し、空気の通り道を狭めてしまいます。
適度な運動やバランスの取れた食事を心がけて体重をコントロールすることは、いびき改善の根本的な対策となります。
体重といびきの関係
状態 | 気道の状態 | 対策 |
---|---|---|
適正体重 | 気道が確保されやすい | 現状維持 |
肥満 | 首周りの脂肪で気道が圧迫される | 食事改善、運動習慣 |
口呼吸がもたらすデメリット
慢性的な鼻炎などで鼻呼吸がしづらいと無意識に口呼吸になります。口呼吸は口内や喉を乾燥させるだけでなく、舌が喉の奥に落ち込みやすくなるため、いびきの大きな原因となります。
日中から鼻呼吸を意識し、必要であれば耳鼻咽喉科で鼻の治療を行うことも検討しましょう。
いびき対策グッズの効果的な選び方と使い方
ドラッグストアなどでは、いびきを手軽に軽減するための様々なグッズが販売されています。ご自身のいびきの原因に合わせて適切に選ぶことで、一定の効果が期待できます。
代表的なグッズとその特徴を紹介します。
鼻腔を広げる鼻テープ・鼻クリップ
鼻づまりが原因でいびきをかいている場合に有効なのが、鼻腔を広げるタイプのグッズです。
鼻に貼るテープや装着するクリップが物理的に鼻の通りを良くして鼻呼吸をサポートします。手軽に試せるのがメリットです。
口の開きを防ぐ口閉じテープ
睡眠中に口が開いてしまうことによる口呼吸が原因の場合に役立ちます。唇にテープを貼って物理的に口を閉じることで自然と鼻呼吸を促します。
肌が弱い方は、かぶれにくい医療用のテープを選ぶと良いでしょう。
いびき対策グッズの種類と対象
グッズの種類 | 主な目的 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
鼻テープ・鼻クリップ | 鼻腔を広げ、鼻呼吸を促進 | 鼻づまりがある人 |
口閉じテープ | 口を閉じ、鼻呼吸を促進 | 寝ている間に口が開いてしまう人 |
横向き寝促進枕 | 横向き寝を維持し、気道を確保 | 仰向けで寝るといびきをかく人 |
自分に合ったグッズを見つけるポイント
いびき対策グッズは、あくまで対症療法です。自分のいびきの原因がどこにあるのか(鼻なのか、喉なのか)をある程度把握した上で、それに合ったものを選ぶことが重要です。
いくつかのグッズを試してみて、最も効果を感じるものを見つけるのも良いでしょう。ただし、使用しても改善しない、あるいは悪化するような場合は使用を中止し専門医に相談してください。
セルフケアで改善しない場合は専門医へ相談を
様々な対策を試してもいびきが改善しない、または特定の症状が見られる場合は単なるいびきではなく、病気が隠れている可能性があります。
自己判断で放置せず、専門の医療機関を受診することを強く推奨します。
危険ないびきのサインを見逃さない
次のような特徴を持ついびきは注意が必要です。これらは睡眠中に体が酸欠状態に陥っているサインである可能性があります。
- いびきの音が急に止まり、しばらくして大きな音とともに呼吸が再開する
- 毎晩のように家族や隣の部屋の人にまで聞こえるほどの大きないびきをかく
- 日中に耐えがたいほどの強い眠気がある
- 朝起きたときに頭痛や喉の渇き、熟睡感のなさがある
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性
上記のような症状は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の典型的な兆候です。この病気は睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返し、体に大きな負担をかけます。
放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
受診を検討すべき症状
症状 | 考えられるリスク |
---|---|
呼吸が止まるいびき | 睡眠時無呼吸症候群(SAS) |
日中の激しい眠気 | 集中力の低下、事故のリスク |
起床時の頭痛 | 睡眠中の酸欠状態 |
何科を受診すればよいか
いびきや睡眠時無呼吸症候群の相談は、まず「耳鼻咽喉科」や「呼吸器内科」が専門となります。
最近では「いびき外来」や「睡眠外来」といった専門外来を設けているクリニックも増えていますので、お近くの医療機関を探してみるとよいでしょう。
いびきを止める方法に特化したよくある質問
いびき対策に関して、患者様から寄せられることの多い質問にお答えします。
- Qパートナーのいびきを止めるにはどうすればいいですか?
- A
まず、相手を傷つけないように、いびきが健康に良くない可能性があることを優しく伝えてあげてください。
そして横向きに寝るようにそっと体を傾けてあげる、部屋の加湿を試すなど、この記事で紹介した対策を一緒に試してみてはいかがでしょうか。
それでも改善しない場合や呼吸が止まっているような様子が見られたら、専門医への受診を勧めてあげることが大切です。
- Qいびき対策はどれくらいで効果が出ますか?
- A
寝る姿勢の変更や対策グッズの使用など、物理的な対策はすぐに効果が現れる場合があります。
一方、体操や減量などの体質改善を伴う対策は効果を実感するまでに数週間から数ヶ月かかることが一般的です。
大切なのは、諦めずに継続することです。
- Q子供のいびきも同じ対策で大丈夫ですか?
- A
お子様のいびきの主な原因は、アデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)や扁桃腺の肥大であることが多いです。大人と同じ対策では改善しない場合も多く、注意が必要です。
常時大きないびきをかいている、口をぽかんと開けていることが多いといった場合は、小児科や耳鼻咽喉科に相談してください。
以上
参考にした論文
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