睡眠中に大きないびきをかいたり、呼吸が止まっていると指摘されたりすることはありませんか。

特に明け方に夢を見ているような時間帯、つまりレム睡眠中にいびきや無呼吸が悪化するケースは少なくありません。

これは体の筋肉が極端に緩むというレム睡眠特有の生理現象が深く関係しており、通常のいびきよりも酸素不足に陥りやすく、心臓や血管への負担が増大する危険な兆候である場合があります。

本記事ではレム睡眠とノンレム睡眠におけるいびきのメカニズムの違いを詳しく解説し、放置してはいけないリスクと具体的な対策について、医学的な観点から分かりやすく紐解きます。

目次

なぜレム睡眠時は筋肉が緩んでいびきが悪化しやすいのか

レム睡眠中にいびきがひどくなる根本的な理由は、この睡眠段階において全身の骨格筋が急速に弛緩するためです。

睡眠中は誰しも筋肉の緊張が解けますが、レム睡眠期はその度合いが著しく、体を動かすための筋肉がほぼ完全に脱力した状態になります。

これは夢の中で激しく動いたとしても、現実の体が動いて怪我をしないための脳の防御反応とも言えますが、気道を支える筋肉にとっては大きなマイナス要因として働きます。

喉の奥にある軟口蓋や舌を支える筋肉も例外なく緩むため、重力の影響を受けてこれらが喉の奥へと落ち込みやすくなり、空気の通り道である気道が極端に狭くなります。

気道が狭くなると、呼吸によって通過する空気の速度が上がり、粘膜が激しく振動していびき音が発生します。

特にレム睡眠は明け方に多く出現する傾向があるため、朝方に大きないびきをかいている場合は、この筋肉の弛緩が強く影響していると考えられます。

単なる騒音問題として片付けるのではなく、体が呼吸をするために必死にあがいているサインであると捉えることが大切です。

夢を見ている間の体の脱力状態とは

レム睡眠(REM睡眠)はRapid Eye Movementの略であり、眼球が急速に動いていることからも分かるように、脳は比較的活発に活動して夢を見ている状態です。

しかし脳からの運動指令が遮断されているため、体は「金縛り」に近い強い脱力状態にあります。

このとき、首の周りの筋肉や、舌を持ち上げるオトガイ舌筋などの活動レベルは覚醒時やノンレム睡眠時と比較しても著しく低下します。

普段は無意識のうちに気道の広さを維持しているこれらの筋肉が機能を失うことで、喉の組織が重力に負けて内側へと倒れ込みます。

仰向けで寝ている場合、この影響はさらに顕著になります。重力が舌根や軟口蓋を喉の奥へと直接押し下げる形になるため、気道は容易に閉塞します。

夢を見ている最中は、脳は活動しているのに呼吸のための筋肉の働きが弱まっているというアンバランスな状態が生じており、これがいびきの音量を増大させ、さらには呼吸停止を引き起こす引き金となっています。

気道の筋肉が緩むために起こる空気の通り道の変化

気道はホースのような硬い管ではなく、筋肉と粘膜で構成された柔らかい管です。そのため、周囲の筋肉の緊張によってその形状が保たれています。

レム睡眠時の身体反応と気道の変化

項目状態・特徴影響
筋肉の緊張度ほぼ完全に消失(脱力状態)気道を支える力が失われる
脳の活動活発(夢を見る)自律神経が不安定になりやすい
呼吸パターン不規則で浅くなりやすい酸素取り込み量が減少する
気道の形状非常に狭くなる、または閉塞いびき音の増大、無呼吸の発生

レム睡眠時に筋肉の緊張が解けると、気道は支えを失ったテントのようにたわみ、内腔が狭くなります。狭くなった隙間を空気が無理やり通ろうとするときに生じる摩擦音がいびきです。

このとき、気道内では陰圧(吸い込む力)が高まり、柔らかくなった気道壁がさらに内側へと引き込まれる「ベルヌーイ効果」が発生します。

その結果、いびきは単に音がうるさいだけでなく、吸気努力を増大させる原因となります。

狭い気道を通して空気を肺に送るには、より強い力で息を吸い込む必要がありますが、強く吸えば吸うほど気道は陰圧で潰れやすくなります。

レム睡眠中のいびきが不規則で、時に苦しそうな音が混じるのは、このように気道の狭窄と吸気努力がせめぎ合っているためです。

舌根沈下が引き起こす呼吸への影響

いびきや無呼吸の主要な原因の一つに舌根沈下があります。これは仰向けに寝た際に、舌の付け根が喉の奥に落ち込んで気道を塞いでしまう現象です。

覚醒時やノンレム睡眠の軽い段階では、舌を支える筋肉がある程度の緊張を保っているため、完全に気道を塞ぐケースは稀です。

ところが、レム睡眠期に入り筋肉の緊張が消失すると、舌はその重みで容易に喉の奥へと沈み込みます。

舌根が気道を塞ぐと、呼吸はいったん停止します。その後、脳が酸素不足を感知して覚醒反応を起こし、筋肉の緊張を一瞬取り戻して呼吸が再開するというサイクルを繰り返します。

この呼吸再開時に発せられるのが、爆発するような大きないびきです。

舌根沈下は特に肥満傾向にある人や、顎が小さい人、加齢によって筋力が低下している人で起こりやすく、レム睡眠中にはそのリスクが最大化します。

ノンレム睡眠といびきの関係性を正しく把握

ノンレム睡眠は、大脳を休息させるための深い眠りの段階であり、レム睡眠とは対照的な特徴を持っています。

この段階でも筋肉の緊張はある程度低下しますが、レム睡眠ほど極端な脱力状態にはなりません。そのため、ノンレム睡眠中のいびきは比較的リズムが一定で、音量も安定している傾向があります。

ただ、深いノンレム睡眠においては、脳の呼吸中枢の感度がやや低下するため、呼吸そのものが穏やかになり、結果として換気量が減る場合があります。

いびきとノンレム睡眠の関係を理解することは、睡眠時無呼吸症候群のタイプを見極める上で重要です。

一般的に、寝入ってからすぐに現れるのがノンレム睡眠です。この段階でのいびきは「単純性いびき」であるケースが多く、アルコール摂取や疲労などが原因の一時的なものである場合も含まれます。

しかし、ノンレム睡眠の段階が進むにつれて気道が狭くなり、無呼吸が発生するときもあります。

レム睡眠のいびきが「筋肉の緩み」による閉塞が主因であるのに対し、ノンレム睡眠では「呼吸中枢の制御」の変化も関与しています。

深い眠りにおける呼吸のリズムと安定性

ノンレム睡眠は深さによって段階1から段階3(または4)に分けられます。

深い睡眠段階に入ると、副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が安定し、呼吸も規則正しくなります。

この規則正しいリズムこそがノンレム睡眠の特徴ですが、いびきをかく人の場合、このリズムに乗って「ゴー、ゴー」という連続した音が発生しやすくなります。

レム睡眠時のような不規則な途切れ方や、爆発的な再開音とは異なり、比較的単調なリズムを刻むことが多いです。

レム睡眠とノンレム睡眠のいびきの特徴比較

比較項目レム睡眠(浅い眠り・夢)ノンレム睡眠(深い眠り)
筋肉の状態極度の脱力・弛緩ある程度の緊張を維持
いびきの音不規則、爆発的、極めて大きい比較的規則的、連続的
無呼吸のリスク非常に高い(最長になりやすい)中程度(低呼吸が多い)
発生タイミング明け方に多い入眠直後から一晩中

この安定したリズムは、気道が部分的に狭くなっているものの、完全には閉塞していない状態を示しています。

しかし、深い睡眠中は覚醒反応が起きにくいため、多少の息苦しさがあってもすぐには目が覚めません。

そのため、低呼吸状態(呼吸が浅くなった状態)が長く続き、じわじわと酸素不足が進行する場合もあります。

安定しているからといって安心できるわけではなく、気道の狭窄が存在することは体にとって負担となります。

寝入りばなに発生する一時的ないびきの正体

布団に入ってウトウトし始めた頃、自分のいびきで目が覚めた経験がある方もいるかもしれません。これはノンレム睡眠の初期段階(段階1)で起こる現象です。

覚醒から睡眠へと移行する際、上気道の筋肉の活動が少しずつ低下し始めます。この移行期に、舌や軟口蓋が重力の影響を受け始め、気道が狭くなるためいびきが発生します。

特に日中の疲労が蓄積している場合や、お酒を飲んだ後などは、この筋肉の弛緩が急速に進むため、寝入りばなから大きないびきをかくときがあります。

この段階でのいびきは、体位を変えたり、眠りが深くなったりすると消失する場合もあります。

ただ、睡眠時無呼吸症候群の患者においては、ここから一晩中いびきと無呼吸が続く序章に過ぎません。

寝入りばなのいびきが毎晩のように続くようであれば、それは恒常的な気道の狭窄を示唆しており、注意が必要です。

脳の休息期における気道確保の状態

ノンレム睡眠は脳の代謝活動が低下し、脳温が下がる休息の時間です。このとき、体はエネルギー消費を抑えるモードに入ります。

気道を確保するための筋肉群も、必要最小限の活動レベルに維持されます。

健康な人であれば、この最小限の活動でも十分に気道を広げておけますが、肥満による首周りの脂肪沈着や、骨格的な問題がある人の場合、維持すべき気道の広さを保てなくなります。

脳が深く休息しているため、多少気道が狭くなっても、それを広げようとする反射が鈍くなるときがあります。

つまり、気道が狭窄して空気の通りが悪くなっても、脳がそれを「直ちに修正すべき危険」として認識するまでの閾値が上がってしまうのです。

結果としていびきをかき続ける状態が許容されてしまいます。脳の休息を優先するあまり、呼吸の質が犠牲になっているとも言えるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群がレム睡眠期に重症化するリスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の中でも、特にレム睡眠期に無呼吸や低呼吸が集中・悪化するタイプを「レム睡眠関連無呼吸」と呼ぶことがあります。

レム睡眠中は前述の通り筋肉の弛緩が著しいため、気道閉塞が起こりやすく、一度閉塞するとその状態から回復するのに時間を要します。

その結果、無呼吸の持続時間が長くなり、血中の酸素濃度が危険なレベルまで低下する傾向があります。これは心臓や脳に対して極めて大きな負荷をかけることになります。

全体の無呼吸低呼吸指数(AHI)がそれほど高くなくても、レム睡眠中に限って見れば重度の無呼吸状態に陥っている患者は少なくありません。

この「隠れ重症」とも言える状態は、全身疾患のリスクを高める要因となります。特に心血管系への影響は深刻であり、高血圧や不整脈、心筋梗塞などのリスクファクターとして、レム睡眠期の無呼吸は重要視されています。

酸素飽和度の低下が体に与える深刻なダメージ

無呼吸によって呼吸が止まると、血液中の酸素が消費され続け、新しい酸素が供給されないため、動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下します。

レム睡眠中は無呼吸時間が長引きやすいため、このSpO2の低下が著しくなります。

正常値であれば96%以上を維持すべきところが、80%台、重症例では70%以下まで低下するケースもあります。

これは高山病にかかっているような低酸素状態が、毎晩繰り返し体内で起きていることを意味します。

低酸素状態になると、体は生命維持のために心拍数を上げ、血圧を上昇させて酸素を全身に巡らせようとします。これが交感神経を過剰に刺激し、寝ている間も血管や心臓に強いストレスを与え続けます。

血管内皮細胞が傷つき、動脈硬化が進行しやすくなるほか、酸化ストレスの増大により、糖尿病や認知機能の低下とも関連があることが分かってきています。酸素不足は全身の細胞を少しずつ弱らせていくのです。

閉塞性無呼吸が発生しやすいタイミング

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)において、気道が完全に塞がる「閉塞」は、仰向けで寝ているレム睡眠時に最も起こりやすくなります。

一晩の睡眠の中でレム睡眠は90分程度の周期で繰り返し現れますが、明け方に近づくにつれてレム睡眠の時間は長くなります。

つまり、睡眠の後半、本来であれば疲れが取れてスッキリ目覚めるはずの時間帯に、最も過酷な無呼吸発作が頻発することになります。

このタイミングでの無呼吸は、朝起きた時の頭痛や倦怠感、喉の渇きに直結します。

「たっぷり寝たはずなのに体がだるい」「朝から頭が重い」と感じる場合、明け方のレム睡眠期に激しい閉塞性無呼吸を起こしている可能性が高いと言えます。

睡眠時間は確保していても、その質、特にレム睡眠中の質が著しく損なわれているのです。

覚醒反応が繰り返されて起こる睡眠の分断

無呼吸が起こると、最終的には脳が「苦しい」と判断して覚醒反応(アローザル)を起こします。これは完全に目が覚めるわけではなく、脳波上で数秒から十数秒だけ覚醒状態に戻る現象です。

これにより筋肉の緊張が戻り、呼吸は再開しますが、同時に睡眠は中断されます。

レム睡眠中に無呼吸が頻発すると、この微細な覚醒が何度も繰り返され、睡眠が分断されてしまいます。睡眠が分断されると、睡眠の構造が崩れ、心身の回復に必要な連続した睡眠が得られません。

特にレム睡眠は記憶の整理や感情の処理に関わっているとされるため、この段階が頻繁に中断されることは、日中の集中力低下、イライラ、記憶力の低下、うつ状態などの精神的な不調を引き起こす原因となります。

質の良い睡眠とは、単に長いだけでなく、中断されない連続性が必要なのです。

自覚症状が少ないレム睡眠関連の無呼吸を見抜く

自分自身で寝ている間のいびきや無呼吸に気づくことは非常に困難です。

特にレム睡眠関連の無呼吸は、全体の睡眠時間に対する割合が限定的である場合、日中の眠気がそれほど強く出ないケースもあり、見逃されやすいという特徴があります。

しかし、体は確実にサインを出しています。典型的な「いつでもどこでも眠い」という症状以外にも、朝の体調や気分の変化など、細かな兆候に目を向けると、隠れた無呼吸のリスクを見抜けます。

早期発見は、将来的な健康被害を防ぐための第一歩です。

自分の睡眠状態を客観視するためには、スマートウォッチなどの睡眠計測デバイスを活用するのも一つの手段ですが、最も確実なのは家族やパートナーの証言です。

また、自分自身の起床時の感覚を記録しておくことも役立ちます。

日中の異常な眠気は危険信号かもしれない

レム睡眠が分断されると、脳の回復が不十分なまま朝を迎えることになります。以下のような眠気を感じる場合は、夜間の睡眠に問題がある可能性が高いでしょう。

  • 会議中や運転中など、集中すべき場面で抗えない眠気に襲われる
  • テレビを見ている時や本を読んでいる時、数分で意識が飛ぶ
  • 午前中はなんとか活動できても、昼食後に極度の眠気で動けなくなる
  • しっかりと7時間以上寝ているのに、寝不足感が消えない
  • 休日になると、平日を取り戻すかのように昼過ぎまで寝てしまう

起床時の頭痛や口の渇きに注意を向ける

朝の状態は、夜間の呼吸状態を映し出す鏡のようなものです。特に二酸化炭素の蓄積や口呼吸は、以下のような不快な症状を引き起こします。

  • 朝起きた瞬間から頭が締め付けられるような痛みや重さを感じる
  • 目覚めた時に口の中がカラカラに乾いており、すぐに水を飲みたくなる
  • 喉の奥に痛みや違和感があり、風邪を引いたような感覚がある
  • 寝汗をひどくかいており、枕元やパジャマが湿っているときがある
  • すっきりと目覚めることができず、起き上がるのに時間がかかる

パートナーからの指摘を無視してはいけない理由

他者の目は、自分では決して見ることのできない睡眠中の姿を客観的に捉えてくれます。以下のような指摘を受けたら、感謝と共に速やかに医療機関を受診すべきです。

  • 「息が止まっていた」「苦しそうな呼吸をしていた」と言われたことがある
  • いびきの音が突然止まり、その後に「ガッ」という大きな音で再開すると指摘された
  • いびきがうるさくて別の部屋で寝るようになった経緯がある
  • 寝ている間に足がピクついたり、体全体が動いたりしていると言われる
  • 指摘されたことを「疲れていただけ」と軽視せず、病気のサインと捉える

アルコールや薬がレム睡眠と無呼吸に及ぼす影響

生活習慣、特に摂取する物質が睡眠に与える影響は甚大です。アルコールや特定の薬物は、中枢神経系に作用し、筋肉の弛緩作用を増強させる性質を持っています。

これらはレム睡眠中の筋弛緩をさらに悪化させ、普段はいびきをかかない人でもいびきをかくようにさせたり、軽度の無呼吸症候群を重度へと悪化させたりするトリガーとなります。

「眠れないから」といって安易にこれらに頼るのは、かえって睡眠の質を下げ、無呼吸のリスクを高める結果となりかねません。

寝酒が習慣化している人や、睡眠薬を常用している人は、自分のいびきや呼吸状態がそれらによってどう変化しているかを知る必要があります。

寝酒が筋肉の弛緩を助長してしまう理由

アルコールには筋弛緩作用があります。

お酒を飲むと体の力が抜けてリラックスするのはこのためですが、睡眠中においては気道を支える筋肉(オトガイ舌筋など)の緊張を必要以上に低下させてしまいます。

特にレム睡眠中はもともと筋肉が緩んでいるため、アルコールの影響が加わると、気道の虚脱(潰れる)が決定的になります。

シラフの時は無呼吸にならない人でも、飲酒時には重度の無呼吸を示すケースは非常に多いです。

また、アルコールは鼻の粘膜を充血させて腫れさせ、鼻呼吸をしにくくする作用もあります。その結果、口呼吸が誘発され、舌根沈下がさらに起こりやすくなります。

アルコールが代謝されて体から抜けるまではこの影響が続くため、深酒をした夜は朝方までいびきと無呼吸が続くことになります。

摂取物質と睡眠呼吸障害への影響

物質主な作用無呼吸へのリスク
アルコール強い筋弛緩作用、鼻粘膜の充血気道閉塞の悪化、無呼吸時間の延長
ベンゾジアゼピン系睡眠薬筋弛緩作用、呼吸中枢の抑制無呼吸からの回復遅延、低酸素の重篤化
タバコ(喫煙)気道粘膜の炎症、浮腫気道狭窄、いびきの恒常化

睡眠薬の使用が逆効果になるケース

不眠症治療に使われるベンゾジアゼピン系の睡眠薬などは、筋弛緩作用を併せ持っているものが多くあります。これらの薬は入眠を助ける一方で、上気道の筋肉を緩め、無呼吸を悪化させるリスクがあります。

また、呼吸中枢の反応を抑制する作用を持つものもあり、無呼吸になって血中の酸素濃度が下がっても、脳が危険を感知して覚醒反応を起こすまでの時間が遅れる場合があります。

その結果、無呼吸の時間が長引き、低酸素血症が重篤化する恐れがあります。

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、安易な睡眠薬の服用は禁忌とされるケースもあります。

不眠の訴えがある場合でも、その原因が無呼吸による中途覚醒である可能性を考慮し、医師と相談の上で、呼吸抑制作用の少ない薬剤を選択する必要があります。

晩酌の習慣を見直すだけで変わる睡眠の質

毎日の晩酌がいびきの主犯である場合、その習慣を変えるだけで劇的に症状が改善するときがあります。

完全に禁酒する必要はありませんが、飲む量を減らす、飲む時間を早める(就寝の4時間前には飲み終える)などの工夫が重要です。

アルコールが分解された状態で布団に入ることができれば、筋弛緩作用の影響を最小限に抑えられます。

また、アルコールには利尿作用があり、夜中にトイレで起きる原因にもなります。これも睡眠を分断する要因です。

休肝日を設けて睡眠の状態を観察してみると、お酒を飲まなかった翌朝の目覚めの良さや、家族からのいびきの指摘が減ることに気づくはずです。

生活習慣の修正は、最も副作用がなく、経済的な治療法の一つです。

加齢や体型変化がいびきを加速させる要因

「昔はいびきなんてかかなかったのに」と感じる人は多いものです。いびきや無呼吸は、年齢を重ねるごとの体の変化や、体重の増加と密接に関係しています。

加齢による組織のたるみや筋力の低下は避けられない生理現象ですが、これが気道の維持能力を低下させます。

また、中年以降に増えがちな体重は、首回りへの脂肪沈着を招き、物理的に気道を圧迫します。これらの身体的要因が重なると、レム睡眠中の気道閉塞リスクは加速度的に高まっていきます。

しかし、これらは「年のせいだから仕方ない」と諦めるべきものではありません。原因を正しく理解し、適切な対策を講じると、リスク軽減が可能です。

首回りの脂肪が気道を圧迫する物理的な問題

体重増加は、単に見かけの問題にとどまらず、呼吸の通り道を直接的に脅かす要因となります。

  • 体重が増えると、お腹だけでなく首回りや舌、喉の軟部組織にも脂肪がつく
  • 仰向けになると、首についた脂肪の重みがそのまま気道を押し潰す力となる
  • 気道の内側に脂肪がつくと、空気の通り道そのものが狭くなる
  • 首が太く短い体型の人は、少しの体重増加でも気道への影響が出やすい
  • BMI(体格指数)が25を超えている場合、減量が最も効果的な治療になることが多い

年齢とともに喉の筋力が衰える弊害

体の外側の筋肉と同じように、喉の内部の筋肉も加齢とともにその張りを失っていきます。

  • 加齢により全身の筋肉が衰えるのと同様に、喉や舌を支える筋肉も弱くなる
  • 皮膚や粘膜の弾力性が失われ、喉の組織が垂れ下がりやすくなる(軟口蓋の過長など)
  • 若い頃と同じ枕の高さや寝姿勢では、気道を維持できなくなることがある
  • 特に女性は閉経後、ホルモンバランスの変化により筋肉の緊張が低下しやすくなる
  • 喉の体操(口腔筋機能療法)などで、ある程度筋力を維持・強化することは可能である

顎の小ささが呼吸障害のリスクを高める

日本人に多い「顎が小さい」という特徴も、いびきや無呼吸の大きなリスクファクターです。

  • 日本人は欧米人に比べて顎が小さく後退している(小顎症)傾向がある
  • 顎が小さいと、舌が収まるスペースが狭く、舌が喉の方へ押し出されやすい
  • 痩せているのにいびきがひどい場合、骨格的な問題が主因であることが多い
  • 歯並びや噛み合わせの問題が、気道の狭さに影響している場合もある
  • 骨格自体は変えられないため、マウスピースなどの器具による対症療法が有効となる

質の高い睡眠を取り戻すための生活習慣と対策

レム睡眠中のいびきや無呼吸を改善し、質の高い睡眠を取り戻すためには、医療的な介入だけでなく、日々の生活習慣の見直しが不可欠です。

ちょっとした寝方の工夫や環境づくりが、気道の確保を助け、いびきの音量を下げたり、無呼吸の回数を減らしたりすることにつながります。

横向き寝を導入して気道を確保する工夫

最も即効性のある対策の一つが「横向き寝」です。仰向けで寝ると重力によって舌や軟口蓋が落ち込みますが、横向きで寝るとこの重力の影響を横方向に逃がせます。

これにより、気道が物理的に確保されやすくなり、いびきや無呼吸が大幅に減少することが多くの研究で示されています。

横向き寝を維持するためには、抱き枕を活用するのが有効です。

また、背中にリュックやクッションを背負って寝て、仰向けになるのを防ぐという古典的ですが効果的な方法もあります。

枕の高さも重要で、横向きになった時に首が曲がらず、背骨と一直線になる高さを選ぶと、気道のねじれを防げます。

肥満解消が呼吸の改善につながる理由

肥満がいびきの原因である場合、減量は根本治療となります。体重を減らすと、首回りや喉の内部の脂肪が減少し、気道が物理的に広がります。

研究によると、体重の10%を減らすだけで、無呼吸低呼吸指数(AHI)が大幅に改善するケースが多く報告されています。

急激なダイエットはリバウンドのリスクがあるため、食事の見直しと適度な運動を組み合わせ、月に1〜2kg程度の緩やかな減量を目指すのが理想的です。

特に内臓脂肪を減らすことは、気道の圧迫を減らすだけでなく、横隔膜の動きをスムーズにし、呼吸効率を上げることにもつながります。

寝室の湿度管理と鼻呼吸を促す環境づくり

乾燥した空気は鼻や喉の粘膜を炎症させ、腫れを引き起こします。これが鼻づまりの原因となり、口呼吸を誘発していびきを悪化させます。

寝室の湿度は50〜60%程度に保つよう、加湿器などを活用しましょう。

また、空気清浄機を使用してハウスダストや花粉を除去する取り組みも、アレルギー性鼻炎による鼻づまりを防ぐために大切です。

口呼吸の癖がある場合は、口閉じテープ(マウステープ)を使用するのも一つの方法です。物理的に口が開くのを防ぎ、鼻呼吸を促すため、舌根沈下を防ぐ効果が期待できます。

ただし、重度の鼻づまりがある場合は窒息の危険があるため、まずは耳鼻科で鼻の治療を行うことが優先されます。

今日からできるいびき・無呼吸対策

対策カテゴリ具体的なアクション期待される効果
寝姿勢の改善抱き枕を使って横向きで寝る重力による舌根沈下の防止
寝室環境加湿器で湿度50%以上を維持鼻・喉粘膜の保護、鼻呼吸の促進
グッズ活用口閉じテープの使用口呼吸の抑制、気道の安定化
生活習慣就寝4時間前の禁酒、夕食の軽食化筋弛緩の抑制、胃食道逆流の防止

医療機関での検査と適切な治療の選択

生活習慣の改善だけでは症状が改善しない場合や、日中の眠気が強く生活に支障が出ている場合は、専門の医療機関を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群は、適切な診断と治療を行えば劇的に改善する病気です。自己判断で放置せず医学的な取り組みを取り入れると、睡眠の質だけでなく、将来の健康リスクを大きく下げられます。

受診する診療科は、睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科などが一般的です。まずは問診を行い、疑わしい場合は検査へと進みます。

自宅でできる簡易検査と精密検査の違い

最初に行われることが多いのが「簡易検査(パルスオキシメトリーなど)」です。

自宅に検査機器を郵送してもらい、指先や鼻にセンサーをつけて一晩寝るだけで、酸素飽和度や呼吸の状態を測定できます。

手軽に行えるため、スクリーニング検査として広く用いられています。この結果で一定以上の無呼吸が確認されれば、治療に進む場合もあります。

より詳細なデータが必要な場合は、入院して行う「PSG検査(ポリソムノグラフィー)」が行われます。

脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸状態などを総合的に測定し、レム睡眠・ノンレム睡眠の割合や、無呼吸の種類(閉塞性か中枢性か)、睡眠の深さなどを精密に解析します。

これにより確定診断が行われ、重症度に応じた治療方針が決定されます。

CPAP療法がレム睡眠中の無呼吸に果たす役割

中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して、現在最も効果的とされているのがCPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸)療法です。

鼻に装着したマスクから空気を送り込み、その圧力で気道を内側から広げておく治療法です。まるで空気の添え木をするようなイメージです。

CPAPを使用すると筋肉が緩むレム睡眠中であっても、空気圧によって物理的に気道が確保されるため、いびきや無呼吸がほぼ完全に消失します。

睡眠が分断されなくなるため、朝の目覚めが劇的に良くなり、日中の眠気も解消されます。心血管疾患の予防効果も医学的に証明されています。

マウスピースを用いた気道確保のアプローチ

軽症から中等症の場合や、CPAPが馴染めない場合には、口腔内装置(マウスピース/OA)が選択されるときがあります。

これは下顎を数ミリ前方に突き出した状態で固定する特殊なマウスピースを装着して寝る方法です。

下顎を前に出して、それに繋がっている舌や喉の組織も前方に引っ張られ、気道が広くなります。特に顎が小さいことや舌根沈下が主な原因である場合に高い効果を発揮します。

持ち運びが便利で、電源も不要なため、出張や旅行が多い人にも好まれます。作成には歯科医師による調整が必要であり、健康保険が適用される場合もあります。

主な治療法の比較

治療法適応となる主なケース特徴・メリット
CPAP療法中等症〜重症のSAS効果が確実で即効性がある。世界的な標準治療。
マウスピース(OA)軽症〜中等症、顎が小さい人手軽で携帯性に優れる。装着の違和感が比較的少ない。
外科手術扁桃肥大など明らかな形態異常原因部位を切除・形成する。根本解決になる可能性がある。

Q&A

Q
レム睡眠時のいびきが大きくなる具体的な原因は何ですか?
A

レム睡眠中は全身の筋肉が強く弛緩(脱力)するため、気道を支える筋肉も緩んでしまい、舌や喉の組織が重力で落ち込みやすくなるからです。

これにより気道が極端に狭くなり、空気抵抗が増していびき音が大きくなります。

Q
睡眠時無呼吸症候群の検査はどの診療科を受診すべきですか?
A

「睡眠外来」や「呼吸器内科」、「耳鼻咽喉科」を受診するのが一般的です。

睡眠時無呼吸症候群の専門医がいる医療機関であれば、簡易検査や精密検査(PSG検査)を受けることが可能です。

Q
レム睡眠関連無呼吸症候群はCPAP療法で改善しますか?
A

改善します。CPAP療法は空気の圧力で物理的に気道を押し広げるため、レム睡眠中の著しい筋弛緩による気道閉塞に対しても非常に有効です。

無呼吸を防ぎ、睡眠の分断を解消する効果が期待できます。

Q
肥満ではない人が睡眠時無呼吸症候群になることはありますか?
A

あります。特にアジア人は「小顎症(顎が小さい)」や「下顎後退」などの骨格的特徴により、痩せていても気道が狭くなりやすいため、睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクがあります。

参考にした文献