睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療としてCPAP療法を続けている方の中には、「CPAPをもうやめたいな」「いつまで続ければいいんだろう」と感じている方もいるかもしれません。

CPAPはSASによる健康リスクを減らす上で大変有効な治療法ですが、毎晩装着することに負担を感じることもあるでしょう。しかし、自己判断でCPAPを中止すると様々なリスクが伴います。

この記事ではCPAP治療を中止した場合に考えられるリスクや治療を継続することの重要性、そして「やめたい」と思った時にまず行うべきことについて詳しく解説します。

後悔しない選択をするために、ぜひ最後までお読みください。

CPAP療法を自己判断で中止するリスク

CPAP療法は睡眠中の気道閉塞を防ぎ、無呼吸や低呼吸を抑制することで効果を発揮します。

この治療を自己判断で中断すると治療によって抑えられていた睡眠中の呼吸異常が再び出現し、様々な健康リスクが高まります。

睡眠時無呼吸症候群の再発・悪化

CPAPを中止すると睡眠中の気道閉塞が再び起こりやすくなります。

これにより、治療によって改善していた無呼吸や低呼吸が再発したり、治療前よりも悪化したりする可能性があります。

健康リスクの増加

睡眠中の無呼吸や低呼吸が続くと体内の酸素濃度が低下し、心臓や血管に負担がかかります。

CPAPを中止することで以下のような健康リスクが増加します。

  • 高血圧の悪化
  • 糖尿病の悪化
  • 心筋梗塞や狭心症のリスク増加
  • 脳卒中のリスク増加
  • 不整脈の発生

これらの病気は命に関わる場合もあり、SAS治療を継続することの重要性を示しています。

CPAP中止によるリスク

リスク内容備考
SAS再発無呼吸・低呼吸の増加治療前の状態に戻る可能性
健康リスク心血管疾患など命に関わる病気のリスク上昇
日中症状眠気、集中力低下生活の質の低下

日中の症状の再発

CPAP治療によって改善していた日中の眠気、倦怠感、集中力低下などの症状も、治療を中止すると再び現れる可能性が高いです。

これにより、仕事や日常生活に支障が出たり、居眠り運転などの事故につながる危険性が高まります。

CPAP治療の継続が大切な理由

CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群に対する対症療法であり、病気そのものを完治させる治療ではありません。

しかし、継続することでSASによる様々な悪影響を防ぎ、健康な生活を維持するために重要な役割を果たします。

健康維持への貢献

CPAPを継続して使用することで睡眠中の呼吸が安定し、体内の酸素レベルが正常に保たれます。

成城レベルになれば心臓や血管への負担が軽減され、高血圧や心血管疾患、脳卒中などのリスクを低減できます。

これはCPAP治療が単に症状を和らげるだけでなく、長期的な健康維持に貢献することを示しています。

生活の質の向上

CPAP治療によって日中の眠気や倦怠感が改善すると集中力が高まり、活動的になります。

そうなれば仕事の効率が上がったり、趣味や外出を楽しめるようになったりと、生活の質が大幅に向上します。

CPAPは、より充実した毎日を送るためのサポートとなります。

CPAP継続のメリット

メリット内容備考
健康リスク低減心血管疾患など長期的な視点で重要
生活の質向上眠気改善、集中力向上日中の活動に影響
事故防止居眠り運転など社会的な側面も

合併症の予防・改善

SASは様々な合併症を引き起こす可能性がありますが、CPAP治療を継続することでこれらの合併症の発症を予防したり、すでに発症している合併症(高血圧、糖尿病など)を改善させたりする効果が期待できます。

「やめたい」と思った時にまず行うべきこと

CPAP治療に負担を感じ、「やめたいな」と思った時は自己判断で中止する前に、まず医療機関に相談することが大切です。

医療機関への相談

CPAP治療に関する悩みや不安がある場合は必ず担当の医師やCPAPの専門スタッフに相談してください。

なぜやめたいと思っているのか、具体的にどのような点に困っているのかを伝えましょう。

原因の特定と対処

医療機関では患者さんの悩みを聞き、CPAP装置の使用データなどを確認しながら、なぜCPAP治療が負担になっているのか原因を探ります。

  • マスクの不快感や空気漏れ
  • CPAPの騒音
  • 鼻や喉の乾燥、鼻詰まり
  • CPAPの圧力設定
  • 精神的な慣れの問題

これらの原因に対して、マスクの種類やサイズの変更、圧力設定の調整、加湿器の使用、鼻の治療など適切な対処法を提案します。

「やめたい」時の対応

行動医療機関の対応結果
相談する原因の聞き取り問題点の把握
問題点を伝えるデータ確認、診察原因の特定
アドバイスを受ける対策の提案、調整問題の解決、継続

治療継続のサポート

医療機関は患者さんがCPAP治療を快適に継続できるようサポートを提供します。定期的な診察で治療状況を確認し、困っていることに対してアドバイスや調整を行います。

一人で悩まず、専門家のサポートを活用することが大切です。

CPAP治療を中止できる可能性

CPAP治療は基本的に継続が必要な治療ですが、病気の状態が改善し、医師が判断した場合に限り、中止や他の治療法への変更を検討できることがあります。

病状の改善とは

睡眠時無呼吸症候群の病状が改善する要因としては主に以下のようなものがあります。

  • 大幅な体重減少(特に肥満が原因の場合)
  • 扁桃腺の切除など、気道閉塞の原因に対する外科的治療の成功

これらの要因によって気道が広がり、睡眠中の無呼吸や低呼吸が臨床的に問題とならないレベルまで減少した場合、CPAPが不要になる可能性があります。

医師の判断が必要

CPAP治療を中止できるかどうかは必ず医師が判断します。

病状が改善したかどうかを客観的に評価するために、再度睡眠検査(簡易検査やPSG検査)を行うことが一般的です。

検査結果に基づき、医師が総合的に判断し、CPAPの中止や減圧、あるいは他の治療法への変更が可能かどうかを決定します。

CPAP中止検討の条件

条件評価方法判断者
病状の改善再検査(AHIなど)医師
原因の除去体重減少、手術効果医師
自覚症状問診医師

自己判断での中止は危険

「痩せたから大丈夫だろう」「症状が軽くなった気がする」といった自己判断でCPAPを中止することは非常に危険です。

見た目の変化や自覚症状だけで病状の改善を判断することはできません。必ず専門的な検査と医師の評価が必要です。

正しいCPAPのやめ方・減らし方

医師の許可なくCPAPを完全に中止することは推奨されませんが、医師の指導のもとで、CPAPの使用時間や圧力を調整したり、他の治療法に移行したりすることは可能です。

医師との相談に基づく調整

病状が改善傾向にある場合やCPAP以外の治療法(マウスピースなど)が有効であると判断された場合、医師はCPAPの圧力設定を下げたり、使用時間を短縮したりすることを提案することがあります。

これは患者さんの負担を軽減しつつ、治療効果を維持するために行われます。

他の治療法への移行

軽症のSASに改善した場合やCPAPがどうしても合わない場合など、医師の判断でマウスピース治療や外科的治療など、他の治療法への移行を検討することがあります。

この場合も患者さんの状態を詳しく評価した上で最適な治療法が選択されます。

治療の調整・変更

状況検討される対応判断者
病状改善傾向圧力・時間の調整医師
軽症化マウスピース検討医師
CPAP不適合他治療法検討医師

継続的な経過観察

CPAPの調整や他の治療法への移行を行った後も定期的に医療機関を受診し、病状が安定しているか、治療効果が維持できているかを確認することが大切です。

必要に応じて再度睡眠検査を行うこともあります。

医師の指導のもとで継続的な経過観察を行うことが健康を維持するために必要です。

よくある質問

Q. CPAPを数日休むくらいなら大丈夫ですか?

A. CPAP治療は毎晩継続することが大切です。数日休んだだけでも睡眠中の無呼吸や低呼吸が再び発生し、体への負担がかかります。日中の眠気や集中力低下といった症状が再発する可能性もあります。

旅行などでどうしてもCPAPを持っていけない場合などを除き、可能な限り毎日使用するように心がけましょう。

もし数日休んでしまった場合は、その後すぐに使用を再開してください。

Q. CPAPをやめたらどうなりますか?

A. 医師の許可なくCPAPをやめた場合、治療によって抑えられていた睡眠時無呼吸症候群の症状(いびき、無呼吸、日中の眠気など)が再発または悪化する可能性が非常に高いです。

また、高血圧や心血管疾患、脳卒中などの健康リスクも再び高まります。

CPAPをやめたいと思った時は必ず医師に相談し、リスクを理解した上で判断することが大切です。

Q. CPAPをやめるためにできることはありますか?

A. CPAPをやめるためには睡眠時無呼吸症候群の原因となっている問題を解決し、病状を改善させることが必要です。特に肥満がある場合は、医師や管理栄養士の指導のもとで健康的に体重を減らすことが有効です。

また、扁桃腺肥大など気道閉塞の原因となる問題がある場合は外科的治療が有効な場合もあります。

CPAPをやめたいという希望がある場合はまず医師に相談し、やめるためにどのような治療や生活習慣の改善が必要かを確認しましょう。

以上

参考にした論文

TAGA, H., et al. Consequences and implications of discontinuing oral appliance therapy for obstructive sleep apnea: Be true to the tooth. J Dent Sleep Med, 2025, 12.1.

AKASHIBA, Tsuneto, et al. Sleep apnea syndrome (SAS) clinical practice guidelines 2020. Respiratory Investigation, 2022, 60.1: 3-32.

TSUYUMU, Matsusato, et al. Ten-year adherence to continuous positive airway pressure treatment in patients with moderate-to-severe obstructive sleep apnea. Sleep and Breathing, 2020, 24: 1565-1571.

NOZAWA, Shuhei, et al. The risk assessment by clinical background and cephalometry for obstructive sleep apnea with CPAP indication in Japanese. Sleep and Biological Rhythms, 2021, 19: 145-154.

HIRAGA, Chiho Kondo, et al. Clinical analysis of patients who dropout in oral appliance therapy in obstructive sleep apnea. Oral Science International, 2023, 20.3: 190-198.

SEKIZUKA, Hiromitsu; OSADA, Naohiko; AKASHI, Yoshihiro J. The factors affecting the non-dipper pattern in Japanese patients with severe obstructive sleep apnea. Internal Medicine, 2018, 57.11: 1553-1559.

HIMEJIMA, Akio, et al. Adherence to oral appliance treatment for obstructive sleep apnea in patients with continuous positive airway pressure failure. Journal of Prosthodontic Research, 2025, JPR_D_24_00138.

KATAOKA, Hiroaki, et al. Locomotive syndrome is a risk factor for the dropout of continuous positive airway pressure treatment in patients with obstructive sleep apnea syndrome. In: Healthcare. MDPI, 2020. p. 177.

HOSHINO, Tetsuro, et al. Effect of rapid eye movement-related obstructive sleep apnea on adherence to continuous positive airway pressure. Journal of International Medical Research, 2018, 46.6: 2238-2248.

OYAMA, Jun‐ichi, et al. Continuous positive airway pressure therapy improves vascular dysfunction and decreases oxidative stress in patients with the metabolic syndrome and obstructive sleep apnea syndrome. Clinical cardiology, 2012, 35.4: 231-236.