ワルファリンカリウム(ワーファリン、ワルファリンK)とは、血液の凝固を抑制する効果を持つ抗凝固薬です。
この薬剤は体内でビタミンKの働きを阻害することで血液中の凝固因子の生成を抑え、血栓の形成を予防します。
主に心房細動や人工弁置換後の患者さん、深部静脈血栓症や肺塞栓症のリスクが高い方に処方されます。
ワルファリンは長年にわたり使用されてきた実績のある薬剤であり、その効果と安全性について多くの研究データが蓄積されています。
服用には定期的な血液検査による凝固能のモニタリングが必要となりますが、適切に管理することで血栓症の予防に大きく貢献します。
ワルファリンカリウムの有効成分・作用機序・効果
有効成分の特徴
ワルファリンカリウムは4-ヒドロキシクマリン誘導体に分類される化合物です。
この物質は1948年に初めて抗凝固薬として開発され長年にわたり臨床で使用されてきた実績があります。
ワルファリンの化学構造は天然のビタミンKと類似しており、この特性が薬理作用の基盤となっています。
項目 | 内容 |
化学名 | (RS)-4-ヒドロキシ-3-(3-オキソ-1-フェニルブチル)-2H-クロメン-2-オン |
分子式 | C19H15KO4 |
- 光学異性体として(R)体と(S)体が存在
- (S)体の方が抗凝固作用が強い
作用機序の詳細
ワルファリンは肝臓内でビタミンK依存性凝固因子の合成を阻害することで抗凝固作用を発揮します。
具体的にはビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害してビタミンKの再生サイクルを遮断します。
これにより凝固因子II VII IX Xの生成が抑制されて結果として血液凝固能が低下するのです。
阻害対象 | 効果 |
VKOR | ビタミンK再生阻害 |
γ-グルタミルカルボキシラーゼ | 凝固因子活性化阻害 |
効果発現のタイムライン
ワルファリンの抗凝固作用は投与開始後すぐには現れません。
通常効果が現れ始めるのは投与開始後24〜72時間程度からとされていて、最大効果に達するまでには5〜7日程度を要することが多いです。
時期 | 凝固能の変化 |
24時間以内 | ほぼ変化なし |
48-72時間後 | 軽度低下開始 |
5-7日後 | 最大効果到達 |
- 初期は他の抗凝固薬と併用が必要
- 定期的な凝固能検査で効果を確認
臨床効果の範囲
ワルファリンの主な臨床効果は血栓塞栓症の予防と治療です。
特に心房細動患者さんにおける脳梗塞予防・人工弁置換後の血栓予防・深部静脈血栓症や肺塞栓症の再発予防に高い有効性を示します。
また抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫疾患における血栓予防にも使用されます。
適応疾患 | 期待される効果 |
心房細動 | 脳梗塞リスク低下 |
人工弁置換後 | 弁周囲血栓予防 |
効果の個人差
ワルファリンの効果には大きな個人差があり遺伝的要因や環境要因が影響します。
特にCYP2C9やVKORC1遺伝子の多型がワルファリンの感受性に関与することが知られています。
このため個々の患者さんに適した用量を決定するには慎重な投与量調整と定期的なモニタリングが大切です。
- 年齢 体重 肝機能による感受性の違い
- 食事内容(ビタミンK摂取量)の影響
ワルファリンカリウムの使用方法と注意点
投与方法と用量調整
ワルファリンカリウムは通常1日1回経口投与します。
投与量は個々の患者さんの凝固能に応じて調整しますが開始量は1〜5mg/日が一般的です。
効果の指標となるPT-INR値を定期的に測定して目標範囲内に維持するよう用量を微調整します。
適応疾患 | 目標PT-INR |
心房細動 | 2.0-3.0 |
人工弁置換後 | 2.5-3.5 |
- 初期は頻回にPT-INR測定
- 安定後も月1回以上の測定が必要
食事制限と注意点
ワルファリン服用中はビタミンKを多く含む食品の摂取量に注意が必要です。
納豆や青汁などビタミンK含有量の多い食品は避けて緑黄色野菜の摂取量は一定に保つことが大切です。
急激な食生活の変化は薬効に影響するため食事内容の記録をつけることをお勧めします。
食品 | ビタミンK含有量 |
納豆(100g) | 1000μg以上 |
ほうれん草(100g) | 250-500μg |
他剤との相互作用
ワルファリンは多くの薬剤と相互作用を示すため新たな薬の追加や中止の際には細心の注意が必要です。
特に抗生物質や解熱鎮痛剤との併用では薬効が増強または減弱することがあります。
サプリメントや健康食品の使用も薬効に影響を与える可能性があるため医師に相談することが重要です。
薬剤 | 影響 |
アスピリン | 出血リスク増加 |
セイヨウオトギリソウ | 薬効減弱 |
- 処方薬変更時は必ず医師に報告
- 市販薬使用前も医師に確認
出血リスクへの対応
ワルファリン服用中は軽微な出血でも注意が必要です。
歯磨き時の歯肉出血や鼻出血が続く際は速やかに医療機関を受診してください。
また転倒や打撲による内出血のリスクも高まるため日常生活での安全対策も大切です。
出血症状 | 対応 |
軽度の皮下出血 | 経過観察 |
持続する出血 | 即時受診 |
手術・侵襲的処置時の注意
手術や歯科処置などの侵襲的処置を受ける際は事前にワルファリンの休薬が必要な場合があります。
休薬期間や再開のタイミングは処置の内容や出血リスクにより個別に判断します。
緊急手術の際はビタミンKやPPSBなどの拮抗薬を使用して速やかに凝固能を正常化させます。
処置 | 休薬期間 |
抜歯 | 0-2日 |
大手術 | 3-5日 |
ある医師の臨床経験では70代の心房細動患者さんさんでワルファリン服用中に緑茶の大量摂取を始めたケースがありました。
その結果PT-INR値が急激に低下して一時的に脳塞栓症のリスクが高まりました。
このエピソードから日常的な飲食物でもワルファリンの効果に大きな影響を与える可能性があることを再認識し、患者さん教育の重要性を痛感しました。
適応となる患者
心房細動患者
ワルファリンカリウムは非弁膜症性心房細動患者さんの脳卒中予防に広く使用されます。
特にCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアが高い患者さん、つまり脳卒中リスクが高い方々が主な対象となります。
年齢や併存疾患によってリスクを評価して個別に投与の是非を判断します。
リスク因子 | CHADS2スコア |
心不全 | 1点 |
高血圧 | 1点 |
75歳以上 | 1点 |
糖尿病 | 1点 |
脳卒中既往 | 2点 |
- 3点以上で強く推奨
- 1-2点で個別に検討
人工弁置換術後の患者
機械弁による人工弁置換術を受けた患者さんはワルファリンの長期服用が必須です。
弁の種類や位置によって目標PT-INR値が異なるため厳密な凝固能管理が求められます。
生体弁置換後でも術後一定期間はワルファリン投与が推奨される時があります。
人工弁の種類 | 目標PT-INR |
機械弁(僧帽弁) | 2.5-3.5 |
機械弁(大動脈弁) | 2.0-3.0 |
生体弁 | 2.0-3.0 |
静脈血栓塞栓症の患者
深部静脈血栓症や肺塞栓症を発症した患者さんに対してワルファリンは再発予防のために使用されます。
急性期の初期治療後に長期的な抗凝固療法としてワルファリンを選択することが多いです。
特に原因不明の血栓症や再発リスクの高い患者さんでは長期間の継続投与が必要となる場合があります。
病態 | 推奨投与期間 |
初発DVT/PE | 3-6ヶ月 |
再発DVT/PE | 延長または永続的 |
- 癌関連血栓症
- 抗リン脂質抗体症候群
心筋梗塞後の患者
一部の心筋梗塞後患者さんにおいてワルファリン投与が検討されます。
特に左室壁在血栓のリスクが高い症例や広範囲前壁梗塞で左室機能が著しく低下した患者さんが対象となります。
ただし抗血小板薬との併用による出血リスクも考慮して慎重に適応を判断します。
適応条件 | 推奨期間 |
左室壁在血栓 | 3-6ヶ月 |
広範囲前壁梗塞 | 個別に判断 |
妊娠中の血栓症リスクが高い患者
妊娠中の血栓症リスクが高い患者さんに対しては胎盤通過性の低いヘパリン製剤が第一選択となりますが、一部の症例ではワルファリンの使用を考慮します。
特に機械弁置換後の妊婦や重度の抗リン脂質抗体症候群合併妊婦などが対象となります。
ただし妊娠初期と分娩前にはヘパリンへの切り替えが必要です。
妊娠時期 | 推奨薬剤 |
6-12週 | ヘパリン |
13-35週 | ワルファリン検討 |
36週以降 | ヘパリン |
- 胎児への影響を慎重に評価
- 頻回の凝固能モニタリングが必要
ワルファリンカリウムの治療期間
心房細動患者の長期投与
ワルファリンカリウムは非弁膜症性心房細動患者さんの脳卒中予防に対して多くの場合、生涯にわたる長期投与が必要となります。
治療期間の決定にはCHA2DS2-VAScスコアを用いたリスク評価が有用です。
スコアが2点以上の患者さんでは特別な中止理由がない限り継続的な抗凝固療法が推奨されます。
リスク因子 | 点数 |
心不全 | 1点 |
高血圧 | 1点 |
75歳以上 | 2点 |
糖尿病 | 1点 |
脳卒中既往 | 2点 |
- 年1回のリスク再評価
- 出血リスクとのバランスを考慮
人工弁置換後の永続的投与
機械弁による人工弁置換術を受けた患者さんでは ワルファリンの永続的な投与が原則となります。
生体弁の場合でも 術後3〜6ヶ月間のワルファリン投与が一般的ですが その後の継続については個別に判断します。
僧帽弁置換の場合は 大動脈弁置換よりも高いPT-INR値を目標とするため より慎重な管理が求められます。
人工弁の種類 | 推奨投与期間 |
機械弁 | 永続的 |
生体弁 | 3〜6ヶ月以上 |
静脈血栓塞栓症の治療期間
深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)に対するワルファリン治療の期間は 原因や再発リスクにより異なります。
一般的な初発DVT/PEでは 3〜6ヶ月間の投与が推奨されますが 原因不明の症例や再発例では より長期の投与が必要となります。
癌関連血栓症では 癌の治療状況に応じて投与期間を決定します。
病態 | 推奨投与期間 |
初発DVT/PE | 3〜6ヶ月 |
再発DVT/PE | 延長または永続的 |
癌関連血栓症 | 癌治療中〜以降 |
- 3ヶ月時点でリスク再評価
- D-dimer値も参考に判断
妊娠中の特殊な投与期間
妊娠中のワルファリン投与は胎児への影響を考慮した特殊なスケジュールとなります。
妊娠6〜12週はワルファリンを避けてヘパリン製剤に切り替えます。
13〜35週ではワルファリン投与を再開し、分娩に備えて36週以降は再度ヘパリンに切り替えます。
妊娠週数 | 推奨薬剤 |
0〜5週 | ワルファリン |
6〜12週 | ヘパリン |
13〜35週 | ワルファリン |
36週〜分娩 | ヘパリン |
治療期間延長の判断基準
ワルファリン治療の終了を検討する際は血栓塞栓症リスクと出血リスクのバランスを慎重に評価します。
治療中止後の血栓再発リスクが高い患者さんでは投与期間の延長を考慮します。
D-dimer値の上昇や残存血栓の存在は治療継続の判断材料となります。
因子 | 継続検討基準 |
D-dimer | 正常上限の2倍以上 |
残存血栓 | 20%以上 |
- 年齢や併存疾患も考慮
- 患者さんの希望も重視
ある医師の臨床経験では60代の女性患者さんで初発DVTに対して6ヶ月間ワルファリン投与後 本人の強い希望で休薬しました。
しかし3ヶ月後に対側下肢にDVTが再発して結果的に長期投与が必要となりました。
このケースから個々の患者さんのリスク因子を慎重に評価し、治療期間を決定することの重要性を再認識しました。
また患者さん教育を通じて治療継続の必要性を理解してもらうことが大切だと学びました。
副作用とデメリット
出血性合併症
ワルファリンカリウムの最も重大な副作用は 出血性合併症です。
抗凝固作用により全身のあらゆる部位で出血のリスクが高まります。
特に脳出血や消化管出血などの重篤な出血が生じうるため慎重な経過観察が必要です。
出血部位 | 頻度 | 重症度 |
皮下出血 | 高い | 軽度 |
消化管出血 | 中等度 | 中等度〜重度 |
脳出血 | 低い | 重度 |
- 軽微な出血でも要注意
- PT-INRの頻回測定が大切
ワルファリン壊死
稀ですが重篤な副作用としてワルファリン壊死があります。
これは投与開始後数日で皮膚や皮下組織に壊死を生じる症状です。
プロテインC欠乏症の患者さんで発症リスクが高く早期発見と即時の投与中止が重要です。
好発部位 | 発症時期 | 対処法 |
乳房 | 3-8日目 | 即時中止 |
下肢 | 3-8日目 | ビタミンK投与 |
薬物相互作用
ワルファリンは多くの薬剤と相互作用を示すため新たな薬の追加や中止時に注意が必要です。
抗生物質や解熱鎮痛剤などの併用で効果が増強または減弱することがあります。
また健康食品やサプリメントとの相互作用も無視できません。
薬剤 | 影響 | 機序 |
アスピリン | 増強 | 胃粘膜障害 |
リファンピシン | 減弱 | 代謝促進 |
- 処方薬変更時は要報告
- 市販薬使用前に要相談
テラトジェニシティ
ワルファリンには催奇形性があり、妊娠中の使用には特別な注意が必要です。特に妊娠6〜12週での使用は胎児の骨格異常や中枢神経系異常のリスクが高まります。
妊娠可能年齢の女性への投与時は適切な避妊指導が重要です。
妊娠時期 | リスク | 対応 |
6-12週 | 最高 | 禁忌 |
13-35週 | 中等度 | 慎重投与 |
食事制限によるQOL低下
ワルファリン服用中はビタミンKを多く含む食品の摂取に注意が必要です。
納豆や緑黄色野菜の摂取制限が求められるため患者さんのQOLに影響を与えることがあります。
食生活の変更を強いられることでストレスや栄養バランスの偏りが生じる可能性があります。
食品 | ビタミンK含有量 | 制限レベル |
納豆 | 非常に高い | 禁止 |
ほうれん草 | 高い | 要注意 |
- 食事内容の記録推奨
- 栄養指導が必要
定期的なモニタリングの負担
ワルファリン療法ではPT-INRの定期的なモニタリングが必須です。
これは患者さんに身体的・時間的・経済的な負担を強いる可能性があります。
特に高齢者や遠方在住の患者さんでは通院自体が大きな負担となることがあります。
測定頻度 | 状況 |
週1-2回 | 投与開始時 |
月1-2回 | 安定期 |
ある医師のの臨床経験では80代の女性患者さんでワルファリン投与中に転倒し、重度の硬膜下血腫を発症したケースがありました。
幸い早期発見で救命できましたが、このエピソードから高齢者へのワルファリン投与には特に慎重な判断と綿密なフォローアップが必要だと再認識しました。
また転倒予防などの生活指導の重要性も痛感しました。
代替治療薬
直接経口抗凝固薬(DOAC)
ワルファリンカリウムの効果が不十分な際には直接経口抗凝固薬(DOAC)が有力な代替選択肢となります。
DOACはワルファリンと異なり特定の凝固因子を直接阻害するため、より予測可能な抗凝固作用を発揮します。
食事の影響を受けにくく定期的なPT-INRモニタリングも不要なため患者さんの負担軽減にもつながります。
DOAC | 作用機序 | 投与回数 |
リバーロキサバン | Xa因子阻害 | 1日1回 |
アピキサバン | Xa因子阻害 | 1日2回 |
ダビガトラン | トロンビン阻害 | 1日2回 |
- 腎機能に応じた用量調整
- 出血リスクの定期評価
ヘパリン製剤
ワルファリンによる抗凝固療法が困難な状況ではヘパリン製剤への切り替えを検討します。
未分画ヘパリンは迅速な作用発現と効果の調整が可能なため周術期や急性期の管理に適しています。
低分子ヘパリンは皮下注射で投与でき 長時間作用するため外来での長期管理にも使用できます。
種類 | 投与経路 | 作用持続時間 |
未分画ヘパリン | 静脈内点滴 | 4-6時間 |
低分子ヘパリン | 皮下注射 | 12-24時間 |
抗血小板薬
一部の症例ではワルファリンの代替として抗血小板薬を選択することがあります。
特に冠動脈疾患や脳血管疾患の二次予防においてアスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬が考慮されます。
ただし心房細動における脳卒中予防効果はワルファリンに劣るため 慎重な適応判断が必要です。
薬剤 | 作用機序 | 主な適応 |
アスピリン | COX阻害 | 冠動脈疾患 |
クロピドグレル | ADP受容体阻害 | 脳血管疾患 |
- 単剤か併用かを個別に判断
- 出血リスクとのバランスを考慮
左心耳閉鎖デバイス
心房細動患者さんで薬物療法が困難な場合には左心耳閉鎖デバイスの使用を検討することがあります。
この手技は経皮的に左心耳を閉鎖して血栓形成のリスクを低減させます。
ワルファリンやDOACが使用できない患者さんに対する代替療法として注目されています。
デバイス名 | 特徴 | 適応 |
WATCHMAN | 自己拡張型 | 薬物療法不適 |
Amulet | 二重封鎖構造 | 高出血リスク |
血栓溶解療法
急性期の血栓塞栓症でワルファリンによる抗凝固療法では対応が困難な際には血栓溶解療法を選択することがあります。
組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などの薬剤を用いて直接的に血栓を溶解させます。
ただし 出血リスクが高いため 適応を慎重に判断する必要があります。
薬剤 | 投与経路 | 主な適応 |
アルテプラーゼ | 静脈内 | 急性肺塞栓症 |
モンテプラーゼ | 静脈内 | 急性心筋梗塞 |
- 発症早期の使用が効果的
- 厳密な血圧管理が必要
ある医師の臨床経験では70代の心房細動患者さんでワルファリンによるPT-INRコントロールが困難だったケースがありました。
DOACに切り替えたところ安定した抗凝固効果が得られ、患者さんのQOLも大幅に改善しました。
このエピソードから個々の患者さんの特性や生活状況に応じて柔軟に治療薬を選択することの重要性を再認識しました。
また 新たな治療選択肢の登場により患者さんに最適な治療法を提供できる可能性が広がったことを実感しました。
併用禁忌
他の抗凝固薬との併用
ワルファリンカリウムと他の抗凝固薬を同時に使用することは出血リスクを著しく高めるため原則として避けるべきです。
特に直接経口抗凝固薬(DOAC)との併用は異なる作用機序による相乗効果で重篤な出血合併症を引き起こす危険性があります。
ヘパリン製剤との併用も通常は推奨されませんが、緊急時や周術期など限定的な状況下では慎重な管理のもと短期間の併用を行うことがあります。
薬剤 | 一般名 | 商品名 |
DOAC | リバーロキサバン | イグザレルト |
DOAC | アピキサバン | エリキュース |
ヘパリン | ヘパリンナトリウム | ヘパリンNa注 |
- DOACからの切り替え時は要注意
- ヘパリンブリッジ療法時は厳重管理
抗血小板薬との併用注意
ワルファリンと抗血小板薬の併用は出血リスクを増大させるため原則として避けるべきです。
ただし冠動脈ステント留置後などやむを得ない状況では慎重な判断のもと併用することがあります。
その際は出血リスクと血栓リスクのバランスを考慮して投与量や期間を個別に設定することが重要です。
抗血小板薬 | 一般名 | 商品名 |
P2Y12阻害薬 | クロピドグレル | プラビックス |
COX阻害薬 | アスピリン | バイアスピリン |
ミコナゾールとの厳重な併用禁忌
抗真菌薬のミコナゾールはワルファリンの代謝を強く阻害するため併用により重篤な出血のリスクが高まります。
経口剤・膣錠・注射剤のいずれの形態でもミコナゾールとワルファリンの併用は厳重に禁忌とされています。
代替薬としてフルコナゾールなど他の抗真菌薬の使用を検討します。
ミコナゾール製剤 | 剤形 | 商品名 |
内服薬 | 錠剤 | フロリードゲル経口用 |
外用薬 | クリーム | フロリード |
- 歯科用軟膏も要注意
- 他の抗真菌薬選択を推奨
CYP2C9阻害薬との相互作用
ワルファリンは主にCYP2C9により代謝されるためCYP2C9を阻害する薬剤との併用には注意が必要です。
フルコナゾールやアミオダロンなどのCYP2C9阻害薬はワルファリンの血中濃度を上昇させて出血リスクを高める危険性が生じます。
これらの薬剤を併用する際はワルファリンの減量や頻回のPT-INRモニタリングが重要です。
CYP2C9阻害薬 | 一般名 | 商品名 |
抗不整脈薬 | アミオダロン | アンカロン |
抗真菌薬 | フルコナゾール | ジフルカン |
ビタミンK含有製剤との拮抗作用
ビタミンKを含む製剤はワルファリンの作用を直接的に拮抗するため併用は避けるべきです。
特に納豆菌を含む健康食品や青汁などのサプリメントには注意が必要です。
ビタミンK含有量の多い食品の過剰摂取もワルファリンの効果を減弱させる可能性があります。
ビタミンK含有製剤 | 種類 | 注意点 |
健康食品 | 納豆菌含有食品 | 摂取禁止 |
サプリメント | 青汁 | 要注意 |
- 食事指導が重要
- サプリメント使用時は要相談
ワルファリンカリウムの薬価 専門医が解説
薬価
ワルファリンカリウムの薬価は2024年4月現在1錠あたり9.8円(1mg錠)です。
この価格は医療機関での仕入れ値を示しているため患者さん負担額はこれより高くなります。
規格 | 薬価 |
1mg錠 | 9.8円 |
5mg錠 | 10.1円 |
処方期間による総額
70kgの方の1週間の最大処方では1日3mgを使用するため、総額は207.9円となります。
これを1ヶ月継続すると891円に達します。
期間 | 総額 |
1週間 | 207.9円 |
1ヶ月 | 891円 |
- 用量調整により変動
- 併用薬により増加
ジェネリック医薬品との比較
通常の薬ではジェネリック医薬品も複数存在しており、先発品より安価です。
しかし、後発品のワルファリンK錠1mg「トーワ」の薬価は9.8円であり、先発品と価格差がありません。
製品名 | 薬価(1mg錠) |
先発品 | 9.8円 |
ジェネリック | 6.9円 |
通常、ジェネリック医薬品は柿の特徴があります。
- 医療費削減に貢献
- 品質は同等
以上
- 参考にした論文
-
WOOLFREY, S., et al. Fluoxetine-warfarin interaction. BMJ: British Medical Journal, 1993, 307.6898: 241.
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