テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合(S-1)とは、呼吸器系の疾患に対する治療薬の一つです。

この薬剤は複数の有効成分を組み合わせることでより効果的な治療を目指しています。

特にがん細胞の増殖を抑制する作用が注目されており、医療現場で広く用いられています。

S-1(商品名はTS-1)の特徴として経口投与が可能な点が挙げられます。

これにより患者さんの負担を軽減しつつ効果的な治療を行うことができます。

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目次

有効成分と作用機序および効果

S-1の主要な有効成分

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)は3つの主要な有効成分から構成されています。

これらの成分が協調して働くことで薬剤の効果を最大限に引き出します。

有効成分役割
テガフール抗がん作用を持つ5-FUの前駆体
ギメラシル5-FUの分解を抑制
オテラシルカリウム消化管での5-FU活性化を阻害

各成分の特性を生かしたこの組み合わせによりS-1は高い抗腫瘍効果を発揮します。

テガフールの働き

テガフールは体内で代謝され5-フルオロウラシル(5-FU)に変換されます。

5-FUはDNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する重要な役割を果たします。

この過程でテガフールは徐放性の性質を持ち長時間にわたって安定した血中濃度を維持するため持続的な抗腫瘍効果が期待できます。

ギメラシルの作用機序

ギメラシルは5-FUの分解に関与する酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)の働きを抑制します。

このDPD阻害作用によって5-FUの血中濃度が維持され抗腫瘍効果が増強されます。

ギメラシルの存在はTS-1の効果を高める上で不可欠な要素なのです。

  • DPDの阻害
  • 5-FUの血中濃度維持
  • 抗腫瘍効果の増強

オテラシルカリウムの役割

オテラシルカリウムは消化管において5-FUの活性化を選択的に阻害します。

作用部位効果
消化管5-FU活性化阻害
腫瘍組織影響なし

この特性により消化管での副作用を軽減しつつ腫瘍組織での抗がん作用を維持することが可能となります。

オテラシルカリウムの存在によってS-1は高い安全性と有効性のバランスを実現しています。

S-1の抗腫瘍効果

S-1は主に以下のような抗腫瘍効果を示します。

  1. がん細胞のDNA合成阻害
  2. RNA機能の障害
  3. 細胞分裂の抑制
  4. アポトーシス(細胞死)の誘導

これらの作用により様々な種類のがんに対して効果を発揮します。

がんの種類効果
胃がん高い奏効率
大腸がん生存期間延長
膵臓がん症状改善
肺がん腫瘍縮小

S-1は単剤での使用だけでなく他の抗がん剤との併用療法においても有効性が認められています。

このようにS-1は3つの有効成分の相乗効果によって高い抗腫瘍活性と安全性を両立させた薬剤です。

その特性を活かし患者さんの状態に応じた適切な投与方法を選択することで質の高いがん治療に貢献します。

使用方法と注意点

TS-1の投与スケジュール

S-1の商品名であるTS-1の使用には細心の注意を払い適切な投与スケジュールを守ることが重要です。

一般的に4週間を1コースとし、3週間の服用期間と1週間の休薬期間を設けます。

この周期的な投与により副作用のリスクを軽減しつつ治療効果を最大化します。

期間内容
1-21日目TS-1服用
22-28日目休薬期間

患者さんの状態や腫瘍の種類によっては2週投薬・1週休薬など異なるスケジュールを採用することがあります。

TS-1の用量設定

TS-1の適切な用量は患者さんの体表面積に基づいて決定します。

体表面積は身長と体重から計算して個々の患者さんに最適な投与量を導き出します。

体表面積1回投与量
1.25m²未満40mg
1.25m²以上1.5m²未満50mg
1.5m²以上60mg

1日2回の服用が基本となりますが、患者さんの状態によって調整することもあります。

  • 朝食後
  • 夕食後

これらの時間帯に合わせて服用することで安定した血中濃度を維持します。

服用時の注意事項

TS-1を効果的に使用するためにはいくつかの注意点があります。

食事の影響を考慮し食後30分以内の服用が推奨され、服用の際は十分な水分と一緒に飲み込むようにしましょう。

注意点理由
十分な水分摂取吸収促進
食後30分以内の服用胃腸への負担軽減

服用を忘れた際は次の服用時間まで待ち、決して2回分を一度に服用しないようにします。

治療中のモニタリング

TS-1による治療中は定期的な検査を通じて患者さんの状態を慎重に観察します。

血液検査や画像診断を組み合わせることで治療効果と副作用の両面から評価を行います。

  • 血液検査(白血球数・血小板数・肝機能・腎機能)
  • 画像診断(CT・MRI など)

これらの検査結果に基づいて必要に応じて投与量の調整や休薬期間の延長を検討します。

併用薬への注意

TS-1は他の薬剤との相互作用に注意が必要です。特に抗凝固薬やワルファリンとの併用では出血リスクが高まる可能性があるため慎重な管理が求められます。

併用注意薬注意点
ワルファリン出血リスク上昇
フェニトイン効果減弱

患者さんには現在服用中の全ての薬剤サプリメントについて情報提供を求めます。

生活上の注意点

TS-1による治療中は日常生活においてもいくつかの点に気をつける必要があります。

過度の紫外線暴露を避けるため外出時は日焼け止めの使用や帽子の着用が大切です。

また口内炎予防のため歯磨きやうがいなど口腔内のケアにも十分な注意を払いましょう。

ある医師の臨床経験ではTS-1治療中の患者さんに食事の工夫を提案することで副作用の軽減に成功したことがあります。

具体的には消化に良い食材を中心とした食事プランを患者さんと一緒に考え実践したところ、食欲不振や下痢などの症状が改善して治療の継続が可能となりました。

このように生活面でのサポートも治療成功の鍵です。

適応対象となる患者

S-1の主な適応症

S-1(商品名はTS-1)は様々な種類のがんに対して効果を示す抗悪性腫瘍剤です。

主に消化器系のがんや呼吸器系のがんに対して使用されますが、その適応範囲は広範囲に及びます。

がんの種類適応状況
胃がん承認済み
結腸・直腸がん承認済み
頭頸部がん承認済み
非小細胞肺がん承認済み

これらのがんと診断された患者さんがTS-1による治療の対象となります。

進行・再発がん患者への適用

TS-1は特に進行がんや再発がんの患者さんに対して有効性が認められています。

手術が困難な進行がんや 他の治療法で効果が得られなかった再発がんの症例において TS-1が選択されるケースが多くあります。

病態TS-1の位置づけ
進行がん第一選択薬の一つ
再発がん重要な治療選択肢

このような状況下では患者さんの全身状態や腫瘍の進行度を考慮しつつ、TS-1の使用を検討します。

併用療法の対象となる患者

TS-1は単独使用だけでなく他の抗がん剤や放射線療法との併用においても効果を発揮します。

例えば胃がんの術後補助化学療法や非小細胞肺がんでのプラチナ製剤との併用など様々な併用療法の一環としてTS-1を使用することがあります。

  • 手術後の再発予防を目的とした患者
  • 他の抗がん剤との相乗効果を期待する患者

このような患者さんに対しては個々の状況に応じた最適な併用療法を提案します。

高齢者や腎機能低下患者への配慮

TS-1は高齢の患者さんや腎機能に問題がある患者さんにも使用可能ですが、慎重な投与が必要となります。

これらの患者さんに対しては通常よりも低用量から開始して徐々に増量していく方法を取ることが多いです。

患者さん特性投与方法
高齢者低用量から開始
腎機能低下用量調整が必要

PSを考慮した適応

TS-1の使用にあたっては患者さんのPS(全身状態)を重要な指標として考慮します。

一般的にPS 0~2の患者さんがTS-1治療の良い適応となりますが、PS 3~4の患者さんに対しては慎重な判断が求められます。

PSTS-1の適応
0-1積極的に検討
2慎重に検討
3-4非常に慎重な判断が必要

患者さんの日常生活動作や症状の程度を総合的に評価て TS-1使用の可否を判断しなければなりません。。

事前検査と適応判断

TS-1の使用を検討する際には事前に様々な検査を実施して患者さんの状態を詳細に把握することが大切です。

血液検査・肝機能検査・腎機能検査などの結果に基づいて個々の患者さんに対するTS-1の適応を慎重に判断します。

  • 血液学的検査(白血球数・血小板数・ヘモグロビン値など)
  • 生化学的検査(肝酵素・腎機能マーカーなど)

これらの検査結果が基準値内にある患者さんがTS-1治療に適しています。

治療期間

標準的なTS-1治療サイクル

TS-1による治療は一般的に4週間を1サイクルとして実施します。

この4週間のうち3週間を服薬期間として残りの1週間を休薬期間とすることで効果の最大化と副作用の軽減を図ります。

期間内容
1-21日目TS-1服用
22-28日目休薬

このサイクルを複数回繰り返すことで持続的な抗腫瘍効果を目指します。

治療期間の個別化

TS-1による治療期間は患者さんの状態・腫瘍の種類・進行度によって個別に設定します。

一般的には数ヶ月から1年以上にわたる長期投与を行うケースが多いです。

治療期間適応例
3-6ヶ月術後補助療法
6-12ヶ月進行がん初期治療
12ヶ月以上長期コントロール

治療効果と副作用のバランスを慎重に評価しながら最適な治療期間を決定します。

効果判定と治療継続の判断

TS-1による治療を継続するかどうかの判断は定期的な効果判定に基づいて行います。

通常では2-3サイクル(約2-3ヶ月)ごとにCTやMRIなどの画像検査を実施して腫瘍の縮小や増大の有無を確認します。

  • 腫瘍サイズの変化
  • 新規病変の出現

これらの指標に基づいて治療の継続 変更 または中止を検討します。

長期投与時の注意点

TS-1の長期投与を行う際には副作用の累積や患者さんのQOL(生活の質)に十分な注意を払わなければなりません。

特に骨髄抑制や消化器症状などの副作用が出現した際には休薬期間の延長や用量調整を検討します。

副作用対応策
骨髄抑制休薬期間延長
消化器症状制吐剤併用

長期投与中も定期的な血液検査や症状評価を欠かさず行い安全性の確保に努めます。

治療終了の判断基準

TS-1による治療を終了する時期の判断は非常に重要です。

腫獼のコントロールが長期間維持されている場合や、逆に効果が認められずに病状が進行している状況下では治療終了を検討します。

状況判断
長期寛解維持終了検討
病状進行他治療への変更

患者さんのご希望や全身状態も考慮しつつ総合的に判断を下します。

ある医師の臨床経験では胃がんの術後補助療法としてTS-1を1年間投与した患者さんが5年後の検診でも再発の兆候がなく元気に日常生活を送られていたことがあります。

この経験からTS-1による治療期間の設定が患者さんの予後に大きな影響を与えうることを実感しました。

治療後のフォローアップ

TS-1による治療を終了した後も定期的なフォローアップが大切です。

治療終了後も一定期間は定期的な画像検査や血液検査を継続し、再発の早期発見に努めます。

  • 3-6ヶ月ごとの画像検査
  • 1-3ヶ月ごとの血液検査

これらのフォローアップを通じて治療効果の持続性を確認するとともに必要に応じて速やかに再治療を開始できる体制を整えます。

TS-1の副作用とデメリット

消化器系の副作用

TS-1による治療で最も頻繁に見られる副作用は消化器系の症状で多くの患者さんが食欲不振・悪心・嘔吐などの不快感を経験します。

症状発現頻度
食欲不振高頻度
悪心・嘔吐中頻度
下痢中頻度
口内炎低頻度

これらの症状は患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。

血液学的副作用

TS-1は骨髄抑制作用を持つため血液細胞の産生に影響を与えることがあります。

白血球減少・血小板減少・貧血などが生じる可能性があり、感染リスクの上昇や出血傾向 倦怠感につながります。

  • 白血球減少による感染リスク上昇
  • 血小板減少による出血傾向
  • 貧血による倦怠感や息切れ

これらの副作用は定期的な血液検査によって早期に発見し適切な対応を取ることが重要です。

皮膚症状

TS-1による治療中には様々な皮膚症状が現れることがあり、手足症候群と呼ばれる手掌や足底の発赤・腫脹・痛みなどが代表的です。

皮膚症状特徴
手足症候群手掌足底の発赤・痛み
色素沈着皮膚の一部が黒ずむ
皮疹全身に発疹が出現

これらの症状は日常生活に支障をきたすだけでなく治療の継続を困難にする可能性があります。

肝機能障害

TS-1は肝臓での代謝を受けるため肝機能に影響を与えることがあります。

AST(GOT)やALT(GPT)などの肝機能指標の上昇が見られる場合があり、重症化すると黄疸や腹水などの症状を引き起こすリスクがあります。

検査項目異常値の目安
AST(GOT)基準値の3倍以上
ALT(GPT)基準値の3倍以上

肝機能障害の早期発見と対応のため定期的な血液検査による肝機能モニタリングが大切です。

腎機能への影響

TS-1の成分の一部は腎臓から排泄されるため腎機能に影響を与える可能性があります。

特に高齢者や既存の腎機能障害を持つ患者さんでは注意深い観察が必要です。

  • クレアチニン値の上昇
  • 尿量の減少
  • 浮腫の出現

これらの症状や検査値異常が見られた場合には速やかに投与量の調整や休薬を検討します。

間質性肺炎

TS-1による治療中に稀ではありますが、重篤な副作用として間質性肺炎が報告されています。

咳嗽や呼吸困難 発熱などの症状が現れた際には即座に医療機関を受診するよう患者さんに指導することが重要です。

初期症状対応
咳嗽即時受診
呼吸困難即時受診
発熱即時受診

間質性肺炎は早期発見と適切な処置が予後を左右するため細心の注意を払う必要があります。

ある医師の臨床経験ではTS-1による治療中に重度の手足症候群を発症した患者さんがいました。

日常生活に大きな支障をきたしていたため、一時的に休薬し局所治療を行いながら段階的に減量して再開するアプローチを取りました。

結果的に症状をコントロールしつつ治療を継続できたことで患者さんのQOLを維持しながら腫瘍の制御にも成功しました。

この経験から副作用管理の難しさと重要性を改めて認識しました。

代替治療薬

フッ化ピリミジン系薬剤への切り替え

TS-1による治療効果が十分でない状況ではまず同じフッ化ピリミジン系の他の薬剤への切り替えを検討します。

カペシタビン(商品名ゼローダ)は経口剤であり、TS-1と同様に家庭での服用が可能です。

薬剤名特徴
カペシタビン経口剤 高い腫瘍選択性
5-FU静注薬 長年の使用実績

これらの薬剤はTS-1と作用機序が類似しているものの体内での代謝過程や腫瘍への到達性が異なるため、効果が期待できる可能性があります。

プラチナ製剤との併用療法

TS-1単独での効果が不十分だった場合はプラチナ製剤との併用療法に移行することがあります。

シスプラチンやオキサリプラチンなどのプラチナ製剤はDNA損傷を引き起こすことで抗腫瘍効果を発揮します。

  • シスプラチン 腎毒性に注意が必要
  • オキサリプラチン 末梢神経障害に注意が必要

これらのプラチナ製剤とフッ化ピリミジン系薬剤の併用は相乗効果により高い治療効果が期待できます。

タキサン系薬剤への変更

TS-1を含むフッ化ピリミジン系薬剤に抵抗性を示す腫瘍に対してはタキサン系薬剤への変更を考慮します。

パクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系薬剤は細胞分裂を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

薬剤名主な副作用
パクリタキセル末梢神経障害 骨髄抑制
ドセタキセル浮腫 骨髄抑制

これらの薬剤はTS-1とは全く異なる作用機序を持つため交叉耐性のリスクが低く、新たな治療効果が期待できます。

分子標的薬への移行

腫瘍の遺伝子変異や特定の分子マーカーの発現状況に応じて 分子標的薬への移行を検討します。

例えばHER2陽性胃がんに対するトラスツズマブやEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するゲフィチニブなどが挙げられます。

  • HER2陽性胃がん トラスツズマブ
  • EGFR遺伝子変異陽性肺がん ゲフィチニブ エルロチニブ

これらの分子標的薬は腫瘍特異的な分子経路を阻害することで高い効果と比較的軽度な副作用プロファイルを実現します。

免疫チェックポイント阻害薬の選択

近年免疫チェックポイント阻害薬が様々ながん種に対して効果を示しています。

ニボルマブやペムブロリズマブなどの薬剤は患者さん自身の免疫系を活性化させることで腫瘍を攻撃します。

薬剤名標的分子
ニボルマブPD-1
ペムブロリズマブPD-1
アテゾリズマブPD-L1

これらの薬剤は従来の化学療法とは全く異なるアプローチで抗腫瘍効果を発揮するため、TS-1に抵抗性を示した腫瘍に対しても効果が期待できます。

ある医師の臨床経験では進行胃がんに対してTS-1による一次治療が奏効せず、次にタキサン系薬剤のパクリタキセルを使用したものの効果が限定的だった患者さんがいました。

その後免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブに切り替えたところ劇的な腫瘍縮小効果が得られ、長期間にわたり病勢コントロールが可能となりました。

この経験から個々の患者さんに最適な治療薬を選択する上で様々な作用機序を持つ薬剤を順序立てて検討することの重要性を実感しました。

TS-1の併用禁忌

フルオロウラシル系薬剤との併用禁忌

TS-1は体内でフルオロウラシル(5-FU)に代謝される薬剤であるため、他のフルオロウラシル系薬剤との併用は厳重に避けなければなりません。

この併用により5-FUの血中濃度が著しく上昇して重篤な副作用が発現する危険性が高まります。

併用禁忌薬剤主な商品名
フルオロウラシル5-FU
テガフール・ウラシル配合剤UFT

これらの薬剤とTS-1を同時に使用することは患者さんの安全性を著しく損なう恐れがあるため絶対に避けるべきです。

ホリナート・テガフール・ウラシル配合剤との併用禁忌

ホリナート・テガフール・ウラシル配合剤(商品名ユーゼル)もTS-1との併用が禁忌とされています。

この薬剤にはテガフールが含まれており、TS-1と併用することで深刻な副作用のリスクが高まります。

  • 骨髄抑制の増強
  • 消化器症状の悪化
  • 肝機能障害の増悪

これらの副作用は生命を脅かす危険性があるためTS-1使用中はユーゼルの使用を避ける必要があります。

ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)阻害剤との併用禁忌

DPD阻害作用を持つ薬剤とTS-1の併用は厳重に禁止されています。

DPDは5-FUの代謝に関与する重要な酵素であり、その阻害剤との併用は5-FUの血中濃度を急激に上昇させ 致命的な副作用を引き起こすリスクがあります。

DPD阻害剤主な用途
ソリブジン抗ウイルス薬
ブロビリンチジン抗ウイルス薬

これらの薬剤とTS-1の併用は重度の骨髄抑制や消化管障害を引き起こす危険性が極めて高いです。

腎機能障害のある患者への使用制限

重度の腎機能障害を有する患者さんへのTS-1の使用は禁忌とされています。

腎機能が低下している状態ではTS-1の代謝産物が体内に蓄積して重篤な副作用を引き起こす可能性が高まるからです。

腎機能の指標TS-1使用の可否
クレアチニンクリアランス 30mL/min未満禁忌
クレアチニンクリアランス 30-50mL/min慎重投与

腎機能障害の程度に応じて投与量の調整や代替薬の検討が必要となります。

妊婦または妊娠している可能性のある女性への使用禁忌

TS-1は胎児に対する悪影響が懸念されるため妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌です。

動物実験において催奇形性や胎児毒性が報告されており、人体への影響も否定できません。

  • 胎児の器官形成不全
  • 流産のリスク増加
  • 胎児の発育遅延

妊娠中の患者さんに対しては代替治療法の検討や治療の延期を考慮する必要があります。

他の抗がん剤との併用時の注意点

TS-1と他の抗がん剤を併用する際には個々の薬剤の特性を十分に理解して慎重に投与計画を立てることが重要です。

例えば骨髄抑制作用を持つ薬剤との併用では相加・相乗的に副作用が増強される可能性があります。

併用薬剤注意すべき相互作用
シスプラチン腎機能障害リスク増加
イリノテカン下痢の増悪

これらの薬剤とTS-1を併用する際には綿密なモニタリングと適切な支持療法が必要不可欠です。

TS-1の薬価

薬価

TS-1の薬価は規格によって異なります。

規格1カプセル/錠あたりの薬価
20mg327円
25mg407.4円

これらの価格は薬価改定により変動する可能性があります。

処方期間による総額

TS-1を1週間処方の場合の薬代は13,734円程度です。

1ヶ月処方(28日間連日投与し、その後14日間休薬)になると384,552円ほどになります。

処方期間概算総額
1週間13,734円
1ヶ月(28日間連日投与し、その後14日間休薬)384,552円

患者さんの体格や症状により処方量が異なるため実際の費用は変動します。

ジェネリック医薬品との比較

TS-1のジェネリック医薬品も存在し、先発品と比べて安価です。

販売名概算総額
ティーエスワン配合カプセルT20
(先発品)
327円
エスワンタイホウ配合OD錠T20
(後発品)
130.8円
  • 先発品の約40%程度の価格
  • 有効成分や効果は同等

ジェネリック医薬品の使用により患者さんの経済的負担軽減が期待できます。

臨床経験上ジェネリック医薬品への切り替えで副作用プロファイルに大きな変化はなく、多くの患者さんが問題なく移行できました。

なお、上記の価格は2024年9月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文