トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)とは、特定の遺伝子変異を持つ肺がん患者さんに処方される呼吸器系の薬剤です。

この薬は分子標的薬の一種で、がん細胞の増殖を抑制する働きがあります。

通常錠剤として経口摂取していただきますが副作用管理が重要となります。

メキニストは単独または他の抗がん剤と併用して使用され、症状や病状に応じて投与量を調整することがあります。

悪性黒色腫治療薬の「タフィンラー」「メキニスト」新発売-ノバルティス - QLifePro 医療ニュース
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目次

有効成分と作用機序、効果

有効成分の特徴

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の主たる有効成分はトラメチニブです。

この物質は分子標的薬の一種でありMEK1およびMEK2と呼ばれる酵素を阻害する働きを持ちます。

トラメチニブは低分子化合物として設計されており細胞膜を通過して細胞内で作用することができます。

特性詳細
分類低分子化合物
標的酵素MEK1, MEK2
作用部位細胞内
投与経路経口

作用機序の解明

トラメチニブの作用機序はMAPK経路と呼ばれる細胞内シグナル伝達経路の阻害に基づいています。

MAPK経路は細胞の成長や分裂を制御する重要な仕組みですが、がん細胞ではこの経路が異常に活性化していることがあります。

トラメチニブはMEK1およびMEK2を選択的に阻害することでMAPK経路の過剰な活性化を抑制します。

これによりがん細胞の増殖シグナルを遮断して腫瘍の成長を抑える効果をもたらします。

MAPK経路の構成要素機能
RASシグナル伝達の起点
RAFRASからのシグナルを受け取る
MEKRAFからのシグナルを伝える
ERK細胞増殖を促進

がん細胞への効果

トラメチニブの主な効果はがん細胞の増殖抑制と細胞死(アポトーシス)の誘導です。

MAPK経路の阻害によってがん細胞は生存や分裂に必要なシグナルを受け取れなくなり、結果として腫瘍の縮小や進行の遅延が期待できます。

  • がん細胞の増殖抑制
  • アポトーシス(細胞死)の誘導
  • 腫瘍の縮小
  • 腫瘍の進行遅延

遺伝子変異と治療効果の関連性

トラメチニブの効果は特定の遺伝子変異を持つがんで特に顕著です。

例えばBRAF遺伝子に変異があるメラノーマや非小細胞肺がんでは高い治療効果が報告されています。

このため治療開始前に遺伝子検査を行い適応を慎重に判断することが大切です。

遺伝子変異関連するがん種
BRAF V600メラノーマ、肺がん
NRASメラノーマ
KRAS大腸がん、膵臓がん

他の治療法との併用効果

トラメチニブは単独で使用されるだけでなく他の抗がん剤と組み合わせて使うことで相乗効果を発揮することがあります。

特にBRAF阻害剤との併用療法はメラノーマの治療において標準的な選択肢となっています。

併用療法によって耐性の発現を遅らせ、より長期的な治療効果を維持できる可能性があります。

  • BRAF阻害剤との併用
  • 免疫チェックポイント阻害剤との併用
  • 従来の化学療法との併用

このようにトラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)は分子レベルでがん細胞の増殖を抑制する革新的な薬剤です。

遺伝子変異の種類や他の治療法との組み合わせによってその効果を最大限に引き出すことが可能となります。

今後さらなる研究によりトラメチニブの新たな適応や使用法が見出される可能性も考えられます。

使用方法と注意点

投与方法と用量調整

トラメチニブジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)は通常1日1回経口投与します。

標準的な開始用量は2mgですが、患者さんの状態や併用薬によって調整が必要となることがあります。

空腹時に服用することで最も効果的に吸収されるため食事の1時間前または食後2時間以降に服用することを推奨します。

投与タイミング推奨事項
食前食事の1時間以上前に服用
食後食事の2時間以上後に服用
1日の服用回数1回
標準開始用量2mg

服薬管理と継続性の重要性

メキニストの効果を最大限に引き出すには規則正しい服用が大切です。

飲み忘れた場合は思い出したときにすぐに服用しますが次の服用時間まで6時間未満の場合は飲み忘れた分はスキップします。

決して2回分を一度に服用してはいけません。

  • 毎日同じ時間に服用する習慣をつける
  • 服薬カレンダーや携帯アプリを活用する
  • 家族や介護者に服薬の確認を依頼する

生活習慣の調整と自己管理

メキニスト服用中は日々の生活習慣にも気を配る必要があります。

過度の紫外線曝露は皮膚への影響を増強させる可能性があるため日焼け止めの使用や帽子の着用を心がけます。

また十分な水分摂取を心がけて脱水症状を予防することも大切です。

  • 日中の外出時は日焼け止めを塗る
  • 帽子や長袖の衣服で肌を保護する
  • こまめに水分を補給する
  • バランスの良い食事を心がける

副作用モニタリングと報告の重要性

メキニスト治療中は定期的な診察と検査が必要です。

患者さんには体調の変化や気になる症状があれば速やかに担当医に報告するよう指導します。

特に発熱発疹・視力の変化・息切れなどの症状は早期発見が重要です。

注意すべき症状対応
発熱速やかに医療機関を受診
発疹皮膚科専門医への相談を検討
視力の変化眼科検査を実施
息切れ心肺機能評価を行う

ある医師の臨床経験ではある患者さんが服薬開始後に軽度の皮膚乾燥を自覚しましたが、保湿剤の使用を指導することで症状が改善し治療を継続できました。

このように早期の症状把握と適切な対応が治療継続のカギです。

長期服用における留意点

メキニストは長期間の服用が必要となることが多いため継続的なフォローアップが重要です。

定期的な血液検査や画像検査を通じて治療効果と安全性を評価します。

また長期服用に伴う心理的負担にも配慮し、必要に応じて心理サポートを提供することも検討します。

フォローアップ項目頻度
血液検査4-8週間ごと
画像検査2-3ヶ月ごと
心理評価状況に応じて実施
副作用チェック毎回の診察時

このように メキニストの効果的かつ安全な使用には医療者と患者さんの緊密な連携が欠かせません。

適切な服薬管理と生活習慣の調整、そして定期的なモニタリングを通じて最適な治療成果を目指します。

適応対象となる患者

BRAF遺伝子変異陽性の悪性腫瘍患者

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)は主にBRAF遺伝子変異陽性の悪性腫瘍を持つ患者さんに対して使用します。

特にBRAF V600E変異またはBRAF V600K変異が確認された場合に本剤の使用を検討します。

この遺伝子変異は腫瘍組織のサンプルを用いた分子生物学的検査によって確認します。

遺伝子変異変異タイプ
BRAF V600E最多
BRAF V600K比較的稀

進行・再発の非小細胞肺癌患者

非小細胞肺癌(NSCLC)の患者さんのうち手術による根治が難しい進行期や再発した症例がメキニストの適応となります。

これらの患者さんでは従来の化学療法に抵抗性を示すことがあり、分子標的薬による治療が有効なオプションとなります。

BRAF遺伝子変異陽性のNSCLC患者さんではメキニストとBRAF阻害剤の併用療法が考慮されます。

NSCLC進行度メキニスト適応
局所進行検討可能
遠隔転移適応あり
術後再発適応あり

転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者

皮膚や粘膜に発生する悪性黒色腫が転移した患者さんもメキニストの重要な適応対象です。

BRAF遺伝子変異陽性のメラノーマでは本剤が腫瘍の増殖を抑制して生存期間の延長に寄与する可能性があります。

メラノーマの部位や転移の程度によって単剤使用や併用療法を選択します。

  • 皮膚原発メラノーマ
  • 粘膜原発メラノーマ
  • 眼球メラノーマ(ぶどう膜メラノーマ)

前治療歴のある患者への考慮

メキニストは前治療歴のある患者さんにも使用を検討できます。

化学療法や免疫療法に抵抗性を示した症例やこれらの治療後に再発した患者さんが対象となります。

ただし前治療の内容や患者さんの全身状態を慎重に評価して本剤使用の適否を判断します。

前治療メキニスト使用
化学療法後検討可能
免疫療法後検討可能
手術療法後検討可能

併存疾患を有する患者への配慮

メキニストの使用を検討する際患者さんの併存疾患にも注意を払う必要があります。

心疾患・肝機能障害・腎機能障害などの合併症がある場合には慎重な投与が求められます。

これらの併存疾患の程度によっては用量調整や代替療法の検討が大切です。

併存疾患投与時の注意点
心疾患心機能モニタリング
肝機能障害肝機能検査必須
腎機能障害用量調整検討

高齢患者への適応

高齢の患者さんにおいてもメキニストの使用は可能です。

しかし加齢に伴う臓器機能の低下や多剤併用のリスクを考慮し、より慎重な経過観察が必要となります。

個々の患者さんの状態に応じて投与量や投与間隔の調整を行うことが肝要です。

  • 臓器機能の定期的評価
  • 併用薬との相互作用チェック
  • QOL維持を考慮した投与計画

妊娠可能年齢の患者への配慮

妊娠可能年齢の患者さんに対してはメキニスト投与中および投与後一定期間の避妊が必須です。

胎児への潜在的なリスクを考慮して治療開始前に妊娠検査を実施します。

また男性患者さんの場合もパートナーの妊娠に対する注意喚起が重要です。

性別避妊期間
女性患者投与中〜投与後4ヶ月
男性患者投与中〜投与後4ヶ月

治療期間

治療開始から効果判定までの期間

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)による治療を開始した後 効果判定までには一定の期間を要します。

通常は治療開始から6〜8週間後に最初の効果判定を行います。

この期間中患者さんの症状や検査値の変化を注意深く観察して腫瘍の縮小や安定化の兆候を確認します。

評価項目評価時期
画像検査6〜8週間後
血液検査2〜4週間ごと
症状評価毎回の診察時
副作用確認継続的に実施

治療反応性による継続期間の決定

初回の効果判定後メキニストによる治療の継続期間は個々の患者さんの治療反応性に応じて決定します。

腫瘍の縮小や安定化が確認された場合には病状の進行が認められるまで治療を継続します。

一方効果が不十分な場合や副作用が顕著な場合には治療方針の見直しを検討します。

  • 腫瘍縮小例 長期継続を検討
  • 病勢安定例 定期的な再評価を行いつつ継続
  • 効果不十分例 他の治療選択肢を検討

長期投与における注意点

メキニストの長期投与に関しては効果の持続性と安全性のバランスを慎重に評価する必要があります。

治療開始後1年2年と経過する中で定期的な効果判定と副作用モニタリングを継続します。

長期投与例では累積毒性のリスクや耐性獲得の可能性にも注意を払わなければいけません。

投与期間注意点
〜6ヶ月初期効果の確認
6ヶ月〜1年持続効果の評価
1年以上長期毒性のチェック

休薬期間の設定と再開基準

副作用管理や患者さんのQOL維持のため計画的な休薬期間を設けることがあります。

休薬の判断は副作用の程度や患者さんの全身状態を考慮して行います。

再開時期については副作用の回復状況と腫瘍の状態を総合的に評価し決定します。

休薬理由再開基準
グレード2副作用回復後速やかに
グレード 3副作用回復後減量して再開
グレード4副作用慎重に再開を検討

治療終了の判断基準

メキニスト治療の終了を判断する際には複数の要因を考慮します。

病勢の進行が明確になった場合や 許容できない副作用が出現した際には治療の中止を検討します。

また長期奏効例では休薬試験による効果持続の確認を行うこともあります。

終了理由対応
病勢進行次治療線を検討
重篤な副作用支持療法へ移行
長期奏効休薬試験を考慮

ある医師の臨床経験ではある非小細胞肺癌患者さんがメキニスト治療を2年間継続して腫瘍の著明な縮小を維持しました。

副作用も軽微だったため慎重なモニタリングのもと治療を継続し、3年後の現在も良好な状態を保っています。

このように個々の患者さんの状態に応じた柔軟な治療期間の設定が大切です。

患者の意思を尊重した治療期間の決定

治療期間の決定には医学的判断に加え 患者さんの意思や生活の質への配慮が必要不可欠です。

長期治療における患者さんの心理的負担や社会生活への影響を考慮して定期的に治療継続の意思を確認します。

患者さんの希望と医学的見地のバランスを取りながら最適な治療期間を模索することが重要です。

  • 患者さんの価値観や生活スタイルの尊重
  • 治療に対する理解度の確認と情報提供
  • 家族や介護者との連携

このようにトラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の治療期間は画一的なものではありません。

副作用やデメリット

皮膚関連の副作用

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)による治療では皮膚に関連する副作用が高頻度で発現します。

特に発疹・皮膚乾燥・そう痒感などが多くの患者さんで観察されます。

これらの皮膚症状は生活の質に大きな影響を与える可能性があるため早期からの対策が重要です。

皮膚症状発現頻度
発疹約60%
皮膚乾燥約30%
そう痒感約20%
手足症候群約10%

眼科的副作用

メキニスト使用に伴う眼科的副作用には特に注意が必要です。

網膜静脈閉塞や網膜色素上皮剥離などの重篤な合併症が報告されており定期的な眼科検査が大切です。

これらの副作用は視力低下や視野異常として現れることがあるため、患者さんへの症状説明と早期受診の指導が求められます。

  • 網膜静脈閉塞
  • 網膜色素上皮剥離
  • ぶどう膜炎
  • 霧視

消化器系副作用

消化器系の副作用もメキスト治療中によく見られる症状の一つです。具体的には下痢や悪心 嘔吐などが主な症状です。

これらの症状は脱水や電解質異常を引き起こす可能性があるため適切な対症療法と栄養管理が必要となります。

消化器症状対処法
下痢補液・整腸剤
悪心・嘔吐制吐剤・食事指導
食欲不振栄養サポート
口内炎含嗽・鎮痛剤

心血管系への影響

メキニストによる治療は心血管系にも影響を及ぼす可能性があります。

特に左室駆出率(LVEF)の低下や高血圧の発現に注意が必要です。

これらの副作用は無症状で進行することもあるため定期的な心機能検査と血圧測定が重要です。

心血管系副作用モニタリング方法
LVEF低下心エコー検査
高血圧定期的血圧測定
不整脈心電図検査
血栓症D-ダイマー測定

肺関連の副作用

メキニスト治療中には間質性肺疾患(ILD)や肺炎などの呼吸器系合併症にも注意が必要です。

これらの副作用は重篤化する可能性があるため呼吸困難や咳などの症状出現時には速やかな対応が求められます。

定期的な胸部画像検査と呼吸機能検査によるモニタリングが大切です。

  • 間質性肺疾患(ILD)
  • 薬剤性肺炎
  • 気胸
  • 胸水貯留

肝機能障害

メキニスト使用に伴う肝機能障害も注意すべき副作用の一つです。

トランスアミナーゼ上昇やビリルビン上昇などの肝機能検査値異常が報告されています。

重度の肝機能障害に進展する可能性もあるため定期的な肝機能検査と症状観察が必要です。

肝機能検査項目異常値基準
AST基準値の3倍以上
ALT基準値の3倍以上
T-Bil基準値の2倍以上
ALP基準値の2倍以上

ある医師の臨床経験ではある患者さんがメキニスト投与開始後2週間で重度の発疹を発症しました。

ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬の併用、そして一時的な休薬により症状は改善して減量再開後は管理可能なレベルで治療を継続できました。

このように副作用の早期発見と適切な対応が治療継続の鍵です。

耐性獲得によるデメリット

長期的なメキスト使用において 腫瘍細胞が薬剤耐性を獲得するという課題があります。

耐性獲得のメカニズムにはMAPK経路の再活性化や代替経路の活性化などが知られています。

耐性出現後は治療効果が低下するため定期的な効果判定と他の治療選択肢の検討が大切です。

  • BRAF遺伝子の増幅
  • MEK遺伝子の変異
  • PI3K/AKT経路の活性化
  • EGFR経路の活性化

このようにトラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の使用には多様な副作用やデメリットが存在します。

これらのリスクを十分に理解して適切なモニタリングと早期対応を行うことが 安全かつ効果的な治療の継続には不可欠です。

患者さんとの密なコミュニケーションを通じ 症状の変化や生活への影響を把握しながら 個々の状況に応じた副作用管理を行うことが医療者に求められます。

代替治療薬

BRAF阻害剤への切り替え

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の効果が不十分であった場合にはBRAF阻害剤への切り替えを検討します。

BRAF阻害剤はメキニストと同じMAPK経路を標的とするものの作用機序が異なるため効果が期待できます。

代表的なBRAF阻害剤としてはダブラフェニブ・エンコラフェニブなどがあります。

BRAF阻害剤一般名
タフィンラーダブラフェニブ
ゼルボラフベムラフェニブ
ビラフトビエンコラフェニブ

免疫チェックポイント阻害剤への移行

メキニストによる治療が奏功しなかった患者さんにおいては免疫チェックポイント阻害剤への移行も有効な選択肢となります。

PD-1阻害剤やCTLA-4阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤は腫瘍免疫応答を活性化させることで抗腫瘍効果を発揮します。

これらの薬剤は分子標的薬とは全く異なる作用機序を持つためメキニスト耐性例にも効果を示す可能性があります。

  • ニボルマブ(オプジーボ)
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
  • イピリムマブ(ヤーボイ)
  • アテゾリズマブ(テセントリク)

他のキナーゼ阻害剤の選択

メキニストが効果を示さなかった場合に他のキナーゼを標的とした阻害剤への切り替えを考慮します。

例えばEGFR阻害剤やALK阻害剤などが選択肢です。

これらの薬剤は特定の遺伝子変異を持つ腫瘍に対して高い効果を示すことがあります。

キナーゼ阻害剤標的遺伝子
ゲフィチニブEGFR
アレクチニブALK
クリゾチニブROS1
カボザンチニブMET

抗がん剤併用療法への移行

メキニストによる分子標的療法が奏功しなかった場合には従来の細胞傷害性抗がん剤を用いた併用療法への移行も選択肢の一つです。

プラチナ製剤をベースとした併用療法やタキサン系薬剤との組み合わせなど様々なレジメンが考えられます。

これらの併用療法は広範囲のがん細胞に対して効果を発揮する可能性があります。

併用療法レジメン構成薬剤
カルボプラチン+パクリタキセルプラチナ製剤+タキサン系
シスプラチン+ペメトレキセドプラチナ製剤+葉酸代謝拮抗薬
ドセタキセル+ラムシルマブタキサン系+血管新生阻害剤

mTOR阻害剤の検討

メキニストが効果を示さなかった患者さんにおいてはmTOR阻害剤の使用も考慮に値します。

mTOR経路はMAPK経路と並行して細胞増殖に関与しているためmTOR阻害剤はメキニスト耐性例に対して効果を発揮する可能性があります。

エベロリムスやテムシロリムスなどのmTOR阻害剤が選択肢です。

mTOR阻害剤商品名
エベロリムスアフィニトール
テムシロリムストーリセル
リダフォロリムス開発中

ある医師の臨床経験ではメラノーマの患者さんでメキニストとBRAF阻害剤の併用療法が奏功しなかったケースがありました。

その後ニボルマブによる免疫チェックポイント阻害療法に切り替えたところ劇的な腫瘍縮小が得られ、長期生存を達成できました。

このように 個々の患者さんに応じた柔軟な治療戦略の立案が重要です。

HDAC阻害剤の可能性

ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤もメキニスト耐性例に対する新たな治療選択肢として注目されています。

HDAC阻害剤はエピジェネティックな制御を通じて腫瘍細胞の増殖抑制やアポトーシス誘導を引き起こします。

メキニスト耐性メカニズムの一部を克服できる可能性があり臨床試験が進行中です。

  • ボリノスタット
  • パノビノスタット
  • ロミデプシン
  • ベリノスタット

CDK4/6阻害剤の活用

細胞周期調節に関与するCDK4/6を標的とした阻害剤もメキニスト治療後の代替薬として考慮できます。

CDK4/6阻害剤は細胞周期のG1期からS期への移行を阻害することで腫瘍増殖を抑制します。

特にホルモン受容体陽性乳がんなどで効果が示されていますが、他のがん種への応用も期待されています。

CDK4/6阻害剤一般名
イブランスパルボシクリブ
ベージニオアベマシクリブ
キスカリリボシクリブ

併用禁忌

CYP3A4誘導剤との併用リスク

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)はCYP3A4によって代謝されるため CYP3A4誘導剤との併用には十分な注意が必要です。

CYP3A4誘導剤はメキニストの血中濃度を低下させて治療効果を減弱させる可能性があります。

そのためリファンピシン・カルバマゼピン・フェニトインなどの強力なCYP3A4誘導剤との併用は避けるべきです。

CYP3A4誘導剤薬効分類
リファンピシン抗結核薬
カルバマゼピン抗てんかん薬
フェニトイン抗てんかん薬
フェノバルビタール催眠鎮静薬

QT延長を引き起こす薬剤との併用注意

メキニストはQT間隔延長のリスクがあるためQT延長を引き起こす可能性のある他の薬剤との併用には慎重を期す必要があります。

特に抗不整脈薬や一部の抗精神病薬 抗うつ薬などとの併用では重篤な不整脈発生のリスクが高まります。

このような薬剤との併用が避けられない際には定期的な心電図モニタリングが重要です。

  • クラスIA抗不整脈薬(キニジン プロカインアミドなど)
  • クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン ソタロールなど)
  • 一部の抗精神病薬(ハロペリドール クロザピンなど)
  • 特定の抗うつ薬(シタロプラム エスシタロプラムなど)

抗凝固薬との相互作用

メキニストと抗凝固薬の併用においては出血リスクの増加に注意が必要です。

特にワルファリンとの併用ではINR値の変動や出血傾向の増強が報告されています。

直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)との併用についても慎重な経過観察が求められます。

抗凝固薬併用時の注意点
ワルファリンINR値モニタリング
アピキサバン出血症状の観察
リバーロキサバン腎機能評価
ダビガトラン消化管出血に注意

免疫抑制剤との併用における感染リスク

メキニストと免疫抑制剤の併用では感染症リスクの増加に留意する必要があります。

特に高用量のステロイド剤や生物学的製剤との併用時には日和見感染症の発症に注意が必要です。

このような併用療法を行う際には定期的な感染症スクリーニングと予防的対策が重要となります。

免疫抑制剤感染リスク
プレドニゾロン細菌感染症
タクロリムスウイルス感染症
インフリキシマブ結核再活性化
リツキシマブB型肝炎再活性化

肝代謝酵素阻害剤との相互作用

メキニストの代謝に関与するCYP3A4を阻害する薬剤との併用ではメキニストの血中濃度上昇と副作用増強のリスクがあります。

イトラコナゾールやクラリスロマイシンなどの強力なCYP3A4阻害剤との併用は避けるべきです。

やむを得ず併用する場合にはメキニストの減量や副作用モニタリングの強化が必要となります。

  • イトラコナゾール(抗真菌薬)
  • クラリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)
  • リトナビル(抗HIV薬)
  • ベラパミル(カルシウム拮抗薬)

光感受性を増強する薬剤との併用

メキニストは光感受性を増強する可能性があるため、同様の作用を持つ薬剤との併用には注意が必要です。

テトラサイクリン系抗生物質やフルオロキノロン系抗菌薬などとの併用では皮膚の光線過敏症のリスクが高まります。

このような薬剤との併用時には日光暴露を最小限に抑え適切な皮膚保護対策を講じることが重要です。

光感受性薬剤薬効分類
ドキシサイクリンテトラサイクリン系
レボフロキサシンフルオロキノロン系
アミオダロン抗不整脈薬
ケトプロフェン非ステロイド性抗炎症薬

妊娠・授乳中の併用注意

メキニストは胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため妊娠中や妊娠の可能性がある女性患者さんへの投与は避けるべきです。

また 授乳中の女性に対しても乳児への影響を考慮して投与を控えるか授乳を中止する必要があります。

避妊薬との相互作用にも注意が必要でホルモン性避妊薬の効果を減弱させる可能性があります。

避妊方法メキニスト併用時の注意点
経口避妊薬効果減弱の可能性
皮下埋込型避妊具推奨される方法
子宮内避妊具併用可能
バリア法追加の避妊法として推奨

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の薬価

薬価

トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト)の薬価は2mg1錠あたり29558.4円です。

この価格は厚生労働省が定める公定価格であり全国どの医療機関や薬局でも同一です。

規格薬価(円)
0.5mg1錠7874.9
2mg1錠29558.4

処方期間による総額

メキニストを1週間処方した場合の総額は206,908.8円となります。1ヶ月処方になると886,752円に達します。

処方期間総額(円)
1週間206,908.8
1ヶ月37886,752

ジェネリック医薬品との比較

現時点でメキニストのジェネリック医薬品は存在しません。

新薬の特許期間中であるため今後しばらくは先発品のみの使用となります。

  • 薬価改定による変動の可能性
  • 将来的なジェネリック医薬品開発の見込み

ある医師の臨床経験ではある患者さんが高額な薬価に驚き治療を躊躇されましたが、医療費助成制度の活用により継続が可能となりました。

このように患者さんの経済状況に配慮しつつ利用可能な支援制度の情報提供も大切です。

なお、上記の価格は2024年8月時点のものであり、最新の価格については随時ご確認ください。

以上

参考にした論文