テトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシン)とは、細菌感染症に対して効果を発揮する抗生物質の一種です。

この薬剤は、呼吸器系の疾患をはじめ、さまざまな部位の感染症に用いられる広域スペクトル抗菌薬として知られています。

テトラサイクリン塩酸塩は、細菌のタンパク質合成を阻害することで、その増殖を抑制し、感染症の症状改善に寄与します。

アクロマイシンVカプセル250mg(日局テトラサイクリン塩酸塩) | 医療関係者の皆様へ | サンファーマ株式会社 (sunpharma.com)
目次

テトラサイクリン塩酸塩の有効成分と作用機序・効果

テトラサイクリン塩酸塩の化学構造と特性

テトラサイクリン塩酸塩は、抗生物質の一種で、その名前の由来となった四環性の骨格構造を持つ化合物です。

この独特な分子構造により、細菌のリボソームに強固に結合し、高い抗菌作用を発揮します。

特性詳細
分子式C22H24N2O8・HCl
分子量480.90 g/mol
溶解性水に溶けやすい
外観黄色結晶性粉末

本薬剤は幅広い細菌群に対して効果を示す広域スペクトル抗生物質として医療現場で重宝されています。

その抗菌スペクトルは、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで多岐にわたり、様々な感染症の治療に活用されています。

作用機序細菌のタンパク質合成阻害

テトラサイクリン塩酸塩の主たる作用メカニズムは、細菌のタンパク質生成過程を妨げることにあります。具体的には、次のような段階を経て細菌の増殖を抑止します。

  • リボソームとの結合
  • tRNAがリボソームに接着するのを阻止
  • mRNAの翻訳プロセスを遮断

この一連のステップを通じて、テトラサイクリン塩酸塩は細菌のタンパク質合成を効率的に阻害し、結果として細菌の繁殖を抑制するのです。この作用により、感染症の症状改善や治癒へとつながります。

作用段階阻害効果
翻訳開始高い
エロンゲーション中程度
ターミネーション低い

抗菌スペクトルと臨床効果

テトラサイクリン塩酸塩は、多様な細菌に対して効力を発揮する広範な抗菌スペクトルを有しています。

グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に作用し、呼吸器系の感染症や尿路の感染症など、さまざまな細菌性の病気の治療に用いられます。

感受性菌代表的な細菌
グラム陽性菌ブドウ球菌、連鎖球菌
グラム陰性菌大腸菌、クラミジア

特筆すべきは、マイコプラズマやクラミジアといった非定型病原体に対しても優れた効果を示すことです。この特性により、他の抗生物質では対応困難な感染症の治療にも活躍します。

薬物動態学的特性

テトラサイクリン塩酸塩を経口摂取すると、消化管から速やかに体内に取り込まれます。血中濃度は服用後2〜4時間でピークに達し、およそ8時間の半減期を示します。

この薬剤の特徴として以下が挙げられます。

  • 体内吸収率が高い
  • 組織への浸透性に優れる
  • 主に尿を介して体外に排出される
パラメータ
生物学的利用能約77〜88%
分布容積1.6〜1.8 L/kg
血漿タンパク結合率20〜65%

こうした薬物動態学的特性により、テトラサイクリン塩酸塩は1日2〜4回の服用で十分な治療効果を得られます。この投与頻度の少なさは、患者の服薬コンプライアンス向上にも寄与しています。

アクロマイシンの使用方法と注意点

投与方法と用量設定

テトラサイクリン塩酸塩は主に経口投与します。一般的に、成人では1日あたり1000mg〜2000mgを2〜4回に分けて服用しますが、小児の場合は体重を考慮し、慎重に投与量を決めます。

年齢層1日投与量分割回数
成人1000-2000mg2-4回
小児25-50mg/kg4回

感染症の種類や程度によって、投薬量や期間を調整することもあるため、医師の指示に従い、定められた用量を守ることで、治療効果を最大限に引き出せます。

服用時の注意事項

テトラサイクリン塩酸塩は食事の影響を受けやすく、空腹時に摂取するのが基本ですが、食事の1時間前か2時間後に水かぬるま湯で飲むことをお勧めします。

  • 牛乳や乳製品との同時摂取を避ける
  • 制酸剤やミネラルサプリメントとの併用を控える

服用を忘れた場合、気づいたらすぐに飲みますが、次の服用時間が近ければ、その回は飛ばして通常のスケジュールに戻ります。絶対に2回分を一度に服用しないよう気をつけます。

避けるべき併用物理由
牛乳・乳製品吸収低下
制酸剤効果減弱
鉄剤キレート形成

治療期間と経過観察

テトラサイクリン塩酸塩による治療は、通常7〜14日間続けます。症状が良くなっても、医師の許可なく自分で判断して飲むのをやめないことが大切です。

治療中は定期的に病院を訪れ、経過を確認します。血液検査や細菌培養検査を行い、薬の効き目や副作用の有無をチェックすることもあります。

感染症タイプ標準治療期間
一般細菌感染症7-10日
非定型肺炎10-14日

論文における使用経験報告によると、慢性気管支炎の患者さんにテトラサイクリン塩酸塩を4週間投与したところ、症状が著しく改善し、再発率も下がったそうです。

特別な患者集団での使用

妊婦さんや授乳中の方への投与には特別な配慮が欠かせません。胎児の骨の発育や歯の着色に影響を与える可能性があるため、妊娠中、特に後期の使用は避けるべきです。

高齢の方や腎臓の機能が低下している患者さんでは、薬が体内にとどまる時間が長くなる可能性があるため、投与量の調整や慎重な経過観察が求められます。

  • 腎機能の状態に応じた投薬量の調整
  • 副作用の監視を強化
患者集団使用上の注意
妊婦原則禁忌
授乳婦授乳中止を考慮

小児、特に8歳未満のお子さんへの投与は、永久歯の着色や歯の形成不全のリスクがあるため、他の薬の使用を検討します。やむを得ず使用する際は、保護者の方に十分な説明を行い、同意を得ることが必要です。

薬物相互作用と併用注意

テトラサイクリン塩酸塩は多くの薬と相互作用を起こします。特に、血液を固まりにくくする薬や経口避妊薬との併用には注意が必要です。

また、肝臓の代謝酵素を活性化する薬(リファンピシンなど)と一緒に使うと、テトラサイクリン塩酸塩の血中濃度が下がることがあります。こういった場合は、投与量の調整や別の薬への変更を考えます。

  • 現在使用中の薬のリストを確認
  • 必要に応じて薬の組み合わせを見直す
併用薬相互作用
ワルファリン抗凝固作用増強
経口避妊薬効果減弱

患者さんには、処方された薬だけでなく、サプリメントや市販薬の使用状況も確認し、潜在的な相互作用のリスクを評価することが重要です。

適切な薬物療法を行うために、患者さんとのコミュニケーションを大切にし、情報収集に努めます。

テトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシン)の適応対象となる患者様

呼吸器系感染症患者

テトラサイクリン塩酸塩は呼吸器系の様々な感染症に対して幅広く効果を発揮する抗生物質です。

特に、肺炎マイコプラズマが原因の非定型肺炎や、慢性気管支炎が急激に悪化した患者さんに対して高い有効性を示します。

呼吸器系疾患起因菌
非定型肺炎マイコプラズマ
慢性気管支炎インフルエンザ菌

気管支が異常に拡張する気管支拡張症や、肺に膿がたまる肺膿瘍といった重篤な呼吸器感染症でもこの薬の使用を考えます。

ただし、患者さんの体調全般や感染の深刻さによっては、病院に入院して点滴による治療が必要になるケースもあります。

性感染症患者

クラミジア・トラコマティスが引き起こす尿道炎や子宮頸管炎の患者さんにテトラサイクリン塩酸塩を処方することがあります。

性感染症は自覚できる症状が乏しいことが多いため、定期的に検査を受け、早い段階で治療を始めることが大切です。

  • 尿道炎
  • 子宮頸管炎

パートナーも同時に治療を受けることを検討し、再び感染するのを防ぐよう心がけます。性感染症の治療には、薬による治療だけでなく、心理面のサポートも含めた総合的なアプローチが欠かせません。

皮膚・軟部組織感染症患者

にきびや毛穴の炎症といった比較的軽い皮膚の感染から、皮下組織まで炎症が広がる蜂窩織炎のような重症例まで、様々な皮膚や軟部組織の感染症にテトラサイクリン塩酸塩を使います。

皮膚感染症重症度
にきび軽度
蜂窩織炎中等度〜重度

皮膚科の領域では長期間薬を飲み続ける必要が出てくることもあるので、患者さんが治療を続けやすいよう配慮しながら進めていきます。

塗り薬を併用したり、日常生活での注意点をアドバイスしたりするのも重要な要素となります。

消化器系感染症患者

コレラや腸チフスといった重大な消化器の感染症にもテトラサイクリン塩酸塩が効果を発揮します。特に、発展途上国への旅行歴があり下痢症状がある患者さんには、この薬の使用を考えます。

  • コレラ
  • 腸チフス

ただし、幅広い細菌に効く抗生物質を使うと腸内の善玉菌にも影響を与える可能性があるため、できるだけ短い期間で使用するよう心がけます。水分補給など体全体のケアも併せて行います。

消化器感染症主要症状
コレラ激しい水様性下痢
腸チフス発熱、腹痛、発疹

眼科領域の感染症患者

トラコーマやまぶたの脂腺の炎症であるマイボーム腺炎など、目の周りの感染症の患者さんにもテトラサイクリン塩酸塩を使うことがあります。目薬や軟膏として直接患部に塗ることもできます。

眼科感染症投与経路
トラコーマ内服+点眼
マイボーム腺炎内服

眼科の病気では長い期間治療が必要になることが多いので、患者さんの日常生活に支障がでないよう配慮しながら治療方針を決めます。

定期的に眼科を受診するのはもちろん、内科でも経過を見守っていくことが重要です。

テトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシン)の治療期間

一般的な感染症での投与期間

テトラサイクリン塩酸塩による治療期間は、病気の種類や程度によって変わりますが、大抵の場合7日から14日ほど続きます。

多くの細菌が原因の病気では、症状が良くなってからさらに48時間以上薬を飲み続けると、再び悪くなるリスクを減らせます。

感染症の種類標準的な治療期間
尿路感染症7-10日
呼吸器感染症10-14日

患者さんの具合や検査の結果をよく見ながら、薬を飲む期間を決めていきます。効き目が十分でないときは、もう少し長く飲んでもらったり、別の抗生物質に替えたりすることを考えます。

慢性感染症での長期投与

気管支炎が長引いている場合や、なかなか治らないニキビなどの慢性的な感染症では、何週間も、時には何ヶ月も薬を飲み続ける必要が出てくることもあります。

こういった状況では、定期的に様子を見たり、副作用が出ていないかチェックしたりすることがとても大切になってきます。

  • 慢性気管支炎 4-6週間
  • 重症ニキビ 6-12週間

長い間薬を使い続けると、薬が効かない菌が増えてくる可能性があるので、時々薬を飲むのを休む期間を設けることも考えます。

患者さんが普段の生活を快適に送れるようにしながら、治療を続けていくことが重要です。

慢性感染症長期投与期間
慢性気管支炎4-6週間
重症ニキビ6-12週間

性感染症での短期集中治療

クラミジアなどの性感染症の場合は、短い期間で集中的に治療を行います。1回だけ薬を飲んだり、3日間だけ飲んだりする方法が一般的ですが、感染の状態によっては7日間飲んでもらうこともあります。

パートナーの方にも同時に治療を受けてもらったり、再び感染しないための注意点をお伝えしたりすることも併せて行います。短い期間でしっかりと治療を終えることが、病気が再発するのを防ぐ鍵となります。

性感染症投与期間
クラミジア単回または7日間
淋菌感染症単回

小児における投与期間の配慮

子供の場合は大人に比べて、短い期間で薬が効くことがあります。特に8歳未満のお子さんでは、永久歯の色が変わってしまう心配があるので、できるだけ短い期間で治療するよう心がけます。

  • 中耳炎 5-7日間
  • 肺炎 7-10日間

小児の場合は、体重に合わせて薬の量を調整したり、きちんと薬を飲んでもらえるよう工夫したりすることが大切です。

保護者の方にしっかりと説明し、協力してもらうことが治療をうまく進める上で欠かせません。

小児の感染症推奨投与期間
中耳炎5-7日間
肺炎7-10日間

予防的投与における期間設定

旅行中のお腹の調子を整えるなど、特別な状況では短い期間だけ予防的に薬を飲むことがあります。通常は旅行期間中と、その前後数日間だけ薬を飲みます。

予防のために薬を使うと、薬が効きにくい菌が増える可能性もあるので、慎重に判断する必要があります。旅行先や滞在期間、その人の健康状態などを考えて、薬を飲む期間を決めます。

予防的投与投与期間
旅行者下痢症旅行中+前後3日間
マラリア予防旅行中+帰国後4週間

論文における使用経験報告によると、鼻の奥の炎症が長引いている患者さんに、普段より少ない量のテトラサイクリン塩酸塩を3ヶ月間飲んでもらったところ、症状がかなり良くなり、再発することも減ったそうです。

副作用・デメリット

消化器系への影響

テトラサイクリン塩酸塩は胃や腸を刺激しやすく、吐き気や嘔吐、お腹の痛み、下痢などの症状を起こします。

食事と一緒に飲むとこれらの症状が和らぐ場合もありますが、そうすると薬が体に吸収されにくくなるという難点があります。

消化器症状発現頻度
吐き気高頻度
嘔吐中頻度
腹痛中頻度
下痢高頻度

長く飲み続けると、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、カンジダ症などの新たな感染症を引き起こします。腸内環境を整えるために、乳酸菌製剤を併用するなどの工夫が大切です。

歯や骨への影響

テトラサイクル系抗生物質の特徴的な副作用として、歯が変色したり、骨の成長が妨げられたりすることが挙げられます。

特に赤ちゃんや小さな子供が使うと、生えてくる永久歯が黄色や茶色に変色したり、骨の発育が十分に進まなかったりする危険性があるため、8歳未満の子供や妊婦さんには使用を避けます。

  • 永久歯が黄褐色に変色
  • 骨の成長が早く止まってしまう

大人でも長期間使用すると歯が変色する可能性があるので、定期的に歯医者さんに診てもらい、しっかり歯を磨くことが重要です。

年齢層リスク
胎児非常に高い
8歳未満高い
8歳以上低い

光線過敏症

テトラサイクリン塩酸塩を飲んでいると、肌が日光に敏感になり、日焼けのような症状が出やすくなります。これは薬が皮膚にたまり、紫外線と反応するためです。

症状部位
赤くなる露出部
むくむ顔面
水ぶくれ手の甲

飲んでいる間は、日光浴や長時間外にいることは控えめにし、外出するときは日焼け止めをしっかり塗るなど、日光から肌を守る対策をとることが必要です。

耐性菌の出現

テトラサイクル系抗生物質を長く使い続けたり、正しく使わなかったりすると、薬が効かない細菌(耐性菌)を生み出してしまいます。

耐性菌が増えると、感染症の治療に使える薬の選択肢が減り、社会全体で見ると感染症の治療が難しくなるという問題があります。

  • メチシリンが効かない黄色ブドウ球菌(MRSA)
  • 多くの薬が効かない緑膿菌

適切な期間と量を守り、必要のない抗生物質の使用を避けることが、耐性菌を防ぐために重要です。

耐性菌影響
MRSA院内感染
多剤耐性緑膿菌重症感染症

薬物相互作用

テトラサイクリン塩酸塩は他の薬と一緒に飲むと、互いに影響し合うことがあります。

特に胃薬や鉄剤、カルシウムのサプリメントと一緒に飲むと、テトラサイクリン塩酸塩の吸収が悪くなり、効果が弱まります。

併用薬影響
胃薬吸収低下
鉄剤効果減弱
ワルファリン出血リスク上昇

避妊薬の効き目を弱めることもあるので、避妊には特に気をつける必要があります。飲んでいる薬やサプリメントについて、薬剤師さんや医師に相談することが大切です。

肝臓と腎臓への影響

テトラサイクリン塩酸塩は主に肝臓で処理され、腎臓から排出されます。そのため、肝臓や腎臓の働きが悪い患者さんでは、副作用が出やすくなります。

臓器影響
肝臓肝機能障害
腎臓腎機能低下

高齢の方や持病のある患者さんでは、薬を使う前に肝臓と腎臓の機能を検査し、必要に応じて薬の量を調整します。

論文における使用経験報告によると、慢性的な気管支炎の患者さんに、通常より少ない量のテトラサイクリン塩酸塩を長期間投与したところ、一般的な副作用はほとんど見られず、耐性菌の発生も抑えられたという興味深い結果が得られました。

テトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシン)の効果がなかった場合の代替治療薬

ニューキノロン系抗菌薬

テトラサイクリン塩酸塩が思うような効果を示さない時、ニューキノロン系抗菌薬が強力な代替薬として登場します。

この薬は幅広い種類の細菌に効き目があり、特にグラム陰性菌と呼ばれる菌に対して強い威力を発揮します。

代表的な薬剤主な適応症
レボフロキサシン呼吸器感染症、尿路感染症
シプロフロキサシン腸管感染症、皮膚軟部組織感染症

ニューキノロン系抗菌薬は飲み薬と点滴の両方があるので、患者さんの症状の重さに応じて使い分けられます。ただし、子供さんや妊婦さんに使う際は、慎重に判断する必要があります。

マクロライド系抗菌薬

マイコプラズマやクラミジアなど、体の中に入り込んで増える厄介な菌による感染症に、テトラサイクリン塩酸塩が効かない時、マクロライド系抗菌薬が頼りになります。

この薬は細胞の中に潜む菌にも効果があり、さらに炎症を抑える働きも持ち合わせています。

  • クラリスロマイシン
  • アジスロマイシン

マクロライド系抗菌薬は副作用が比較的少なく、お子さんにも使いやすいという良い点があります。しかし、長く使い続けると、薬が効かない菌が出てくる可能性があるので気をつけます。

薬剤名特徴
クラリスロマイシン体の組織に行き渡りやすい
アジスロマイシン体内に長くとどまる

βラクタム系抗菌薬

テトラサイクリンが効かない菌による感染症に対しては、βラクタム系抗菌薬が効果的な代わりの薬になることがあります。

特にペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は、幅広い種類の細菌に対して強力に働きかけ、菌を殺す力を持っています。

系統代表的な薬剤
ペニシリン系アモキシシリン
セフェム系セフトリアキソン

βラクタム系抗菌薬は安全性が高く、妊婦さんやお子さんにも使えるものが多いのですが、アレルギー反応には十分注意します。

また、この薬も使いすぎると効かない菌が増える問題があるので、使用には慎重になります。

メトロニダゾール

酸素のないところで生きる菌(嫌気性菌)による感染症に、テトラサイクリン塩酸塩が効果を示さない時、メトロニダゾールが選ばれることがあります。

この薬は特に腸の中や口の中の嫌気性菌に対して強い効き目を持っています。

メトロニダゾールは体の組織によく行き渡り、膿がたまったところの内部にもよく染み込むという特徴があります。ただし、お酒と一緒に飲むと副作用が強く出るため、飲酒は避けるよう患者さんに説明します。

適応症投与経路
クロストリジウム腸炎飲み薬
骨盤内感染症点滴

リファンピシン

結核菌の仲間による感染症や、なかなか治りにくい感染症にテトラサイクリン塩酸塩が効かない場合、リファンピシンが代わりの薬として考えられます。

この薬は結核の治療で最初に選ばれる薬としても知られています。

  • 結核
  • 結核菌以外の抗酸菌による病気

リファンピシンは体の中で変化するため、他の多くの薬と相互作用を起こす可能性があるので注意します。また、長期間使用する場合は、副作用が出ていないかよく観察することが大切です。

特徴詳細
作用の仕方菌のRNA合成を邪魔する
体内での広がり非常に広範囲

論文における使用経験報告によると、慢性的な気管支炎の患者さんの中で、テトラサイクリン塩酸塩による治療がうまくいかなかったケースに対し、マクロライド系抗菌薬を少量ずつ長期間投与したところ、症状が良くなり、急に悪化する回数も減ったそうです。

この治療法は、菌を退治するだけでなく、炎症も抑える効果が期待できるため、今後さらに研究が進むことが望まれます。

テトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシン)の併用禁忌

カルシウム含有製剤との相互作用

テトラサイクリン塩酸塩は、カルシウムイオンと出会うと固くくっつき、体に吸収されにくい化合物を作ってしまいます。

この反応で、テトラサイクリン塩酸塩が体に取り込まれにくくなり、菌を退治する力が弱まったり、なくなったりしてしまうのです。

カルシウム含有製剤相互作用の影響
胃薬吸収低下
骨粗鬆症治療薬効果減弱

牛乳やチーズなど、カルシウムをたくさん含む食べ物と一緒に飲むのも避けましょう。これらの薬や食べ物を摂る時は、テトラサイクリン塩酸塩を飲んでから少なくとも2時間以上空けることをお勧めします。

鉄剤との併用

テトラサイクリン塩酸塩は鉄とも仲良くなりすぎて、お互いが体に吸収されにくくなってしまいます。貧血のお薬や鉄分の多いサプリメントと一緒に飲むのは避けましょう。

  • 飲み薬タイプの鉄剤
  • 鉄分入りのマルチビタミン剤

鉄剤を飲む時も、カルシウムを含む薬と同じように、テトラサイクリン塩酸塩を飲んでから2時間以上待つことが大切です。貧血の治療中の方は特に気をつけましょう。

鉄剤の種類併用時の影響
クエン酸第一鉄ナトリウムテトラサイクリンの吸収低下
硫酸鉄双方の効果減弱

アルミニウム、マグネシウム含有製剤

胃薬や胃腸薬に含まれるアルミニウムやマグネシウムも、テトラサイクリン塩酸塩と仲良くなりすぎて、薬の吸収を邪魔します。これらの金属を含む薬との併用は避けましょう。

含有成分代表的な製剤
アルミニウム水酸化アルミニウムゲル
マグネシウム酸化マグネシウム

これらの胃薬や胃腸薬を使う時は、テトラサイクリン塩酸塩を飲む時間とずらすことが重要です。急いでいる場合を除いて、同時に飲むのは避けましょう。

ワルファリンとの相互作用

テトラサイクリン塩酸塩は、血液をサラサラにする薬であるワルファリンの効き目を強めてしまう可能性があります。

両方の薬を一緒に使うと、出血しやすくなるリスクが高まるため、慎重に様子を見る必要があります。

  • 血液が固まるまでの時間が長くなる
  • 出血しやすくなる

ワルファリンを飲んでいる患者さんにテトラサイクリン塩酸塩を処方する時は、血液の固まりやすさをこまめにチェックし、必要に応じてワルファリンの量を調整します。

相互作用の仕組み体への影響
ビタミンKを作る菌の減少血液がサラサラになりすぎる
肝臓の酵素への影響ワルファリンの濃度が上がる

経口避妊薬との相互作用

テトラサイクリン塩酸塩は、飲む避妊薬の効き目を弱めてしまう可能性があります。腸内の菌のバランスが変わることで、女性ホルモンの再利用が妨げられることが原因だと考えられています。

テトラサイクリン塩酸塩を飲んでいる間は、飲む避妊薬以外の方法で避妊するか、より強い避妊薬の使用を検討します。治療期間中とその後7日間は、追加の避妊対策をとることが必要です。

避妊薬の種類影響
混合型経口避妊薬効果減弱
プロゲステロン単剤影響軽微

メトトレキサートとの併用

テトラサイクリン塩酸塩とメトトレキサートという薬を一緒に使うと、メトトレキサートの副作用が強く出てしまう可能性があります。

腎臓からの排出が競合したり、タンパク質との結合が置き換わったりすることが原因だと考えられています。

  • 骨髄の働きが弱まるリスクが高まる
  • 胃腸の症状が悪化する

やむを得ず両方の薬を使う場合は、メトトレキサートの量を減らしたり、頻繁に血液検査をして副作用をチェックしたりすることが重要です。患者さんにしっかり説明し、同意を得ることも欠かせません。

併用時のリスク対策
メトトレキサートの血中濃度上昇用量調整
副作用の増強厳重なモニタリング

薬価

テトラサイクリン塩酸塩の値段は、有効成分を何mg含有しているかによって変わってきます。

製剤名規格薬価
アクロマイシンVカプセル50mg50mg1カプセル8.3円
アクロマイシンVカプセル250mg250mg1カプセル10.1円

普通に飲む量で計算すると、1日に使うお薬代は大体40円から80円くらいになります。これは結構お手頃な価格だと言えるでしょう。

処方期間による総額

お医者さんから1週間分もらうと、合計で232.4円から282.8円くらいになります。結構幅があるのは、人によって飲む量が違うからです。

処方期間総額
1週間232.4〜282.8円
1ヶ月996〜1,212円

1ヶ月分となると、996〜1,212円くらいになってしまいます。長く飲み続けるとそれなりの出費になります。

  • 実際に自分で払う金額は、入っている保険によって変わってくるので、思ったより安くなるかもしれません。
  • 長い期間分をもらっても、薬代以外にかかるお金が増えたりしないか気をつけましょう。

ジェネリック医薬品との比較

現在テトラサイクリン塩酸塩のジェネリック版は市場に存在しませんが、将来的に開発される見込みは十分にあります。

後発医薬品が登場すれば、現状でも安い薬価は更に下がり、患者の経済的負担を軽減できます。

以上

参考考にした論文